メンズエステでお触りをして「触られた」と言われた。不同意わいせつ罪のリスクと対応
風俗店やメンズエステでの盗撮をめぐるご相談のなかで、意外に多いのが「撮ったこと」よりも「そのあと」が問題になっているケースです。撮った画像を友人に見せるつもりでLINEで送った、常連仲間のグループに投稿した、口コミサイトや掲示板に上げた——。本人としては軽い気持ちだったとしても、法律上は撮影とは別個の、より重い犯罪として扱われる可能性があります。
2023年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法(令和5年法律第67号)は、盗撮そのものを処罰する「撮影罪」だけでなく、撮られた画像・動画が広がっていくことを止めるための罪をあわせて新設しました。この記事では、性風俗を利用される男性の方が実際に直面しやすい場面に即して、「送る」「上げる」という行為がどう評価されるのかを整理します。
1.「撮った」と「送った・上げた」は別の罪
まず押さえていただきたいのは、撮影罪と提供罪等はそれぞれ独立して成立するという構造です。撮影について立件されたうえで、提供についても別に立件されれば、その分だけ刑事責任は重くなり得ます。
性的姿態撮影等処罰法が定める罪を整理すると、次のようになります(2025年6月1日施行の拘禁刑一本化を反映)。
| 条文 | 罪名 | どのような行為か | 法定刑 |
|---|---|---|---|
| 2条 | 性的姿態等撮影罪 | ひそかに性的な部位・下着等を撮影する | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 3条1項 | 性的影像記録提供等罪(提供) | 盗撮画像を他人に渡す・送る | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 3条2項 | 同(不特定・多数への提供/公然陳列) | 不特定または多数に提供する、ネット上に上げる | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり) |
| 4条 | 性的影像記録保管罪 | 提供・公然陳列の目的で保管する | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 5条 | 性的姿態等影像送信罪 | ライブ配信等でリアルタイムに送信する | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり) |
| 6条 | 性的姿態等影像記録罪 | 5条の送信であると知りながら記録する | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
注目していただきたいのは、3条2項だけ拘禁刑と罰金の併科が定められている点です。それだけ、拡散という結果が重く見られているといえます。
なお、3条の対象になるのは「性的影像記録」、つまり撮影罪等に当たる行為で作られた画像・動画です。同意を得て撮影したものを無断で公開した場合は、この条文ではなく、いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)の公表罪や、名誉毀損罪・プライバシー侵害の問題として検討されることになります。どちらの土俵で争われるかは、撮影時の事情によって変わります。
2.どこからが「公然陳列」なのか|よくある5つの場面
「不特定または多数」という言葉は、条文を読んだだけではイメージしにくいところです。風俗利用の場面に引き付けて考えてみます。
① 友人1人に見せる・送る
特定の少数者への提供として、3条1項の提供罪が問題になり得ます。「1人だけだから」は、罪の成否そのものを打ち消す事情にはなりません。
② 常連仲間のグループチャットに投稿する
人数によっては「多数の者」に対する提供と評価される余地があります。リベンジポルノ防止法の公表罪についても、仲間内のグループでの共有やある程度の人数へのメール送信で成立し得るとの指摘があり、閉じた場だから安全という理解は成り立ちにくいところです。
③ SNS・口コミ掲示板・匿名掲示板にアップする
典型的な公然陳列です。ここで重要なのは、実際に誰かが閲覧したかどうかは問われないという点です。不特定または多数の人が見られる状態に置いた時点で成立し得ます。また、鍵アカウントや限定公開であっても、参加者の範囲によっては公然性が認められる可能性があると指摘されています。
④ 販売する・有償で配る
有償か無償かは提供罪の成否を分けません。ネット販売のように購入者を募る形になれば、不特定・多数への提供として3条2項の射程に入り得ます。
⑤ ビデオ通話・ライブ配信でその場を流す
この場面は3条ではなく、5条の影像送信罪の問題です。記録したデータを渡す「提供」と、リアルタイムで映像を流す「送信」は条文が分かれており、後者は5年以下の拘禁刑と、提供罪の基本形(3条1項)より重く設定されています。解説記事のなかにはこの二つを混同しているものも見受けられますので、ご自身の行為がどちらに当たるのかは慎重に整理する必要があります。
3.自分で撮っていなくても「提供」になり得る
見落とされやすいのが、転送です。3条の提供罪は、その画像を自分が撮影したことを要件にしていません。誰かから回ってきた盗撮画像をグループに投稿したり、他人に転送したりする行為も、提供として処罰の対象になり得ます。実際に、自ら撮影していない画像をSNSグループに投稿した事案が提供の疑いで立件された例も報じられています。
また、4条の保管罪は「提供または公然陳列の目的で」保管することを要件とする、いわゆる目的犯です。したがって、
- まだ送っていない段階でも、送る目的が認められれば保管罪が問題になり得る
- 反対に、自分ひとりで見るために持っているだけ(単純所持)は、この法律の処罰対象ではない
という二方向の意味を持ちます。「まだ送っていないから大丈夫」とも、「持っているだけで即座に罪になる」とも言い切れない、というのが正確なところです。
4.刑が重なり、時効も長くなる
撮影罪と提供罪の双方で起訴されれば、併合罪として処理され、処断される刑の上限は引き上げられます。もっとも、上限が上がることと、実際に言い渡される刑が単純に重くなることは同じではありません。件数、拡散の範囲、被害者の数、被害回復の状況などを踏まえた総合判断になります。
公訴時効にも差が出ます。長期3年の罪(撮影罪・3条1項の提供罪)は3年、長期5年の罪(3条2項の不特定・多数への提供/公然陳列、5条の送信罪)は5年です。「撮影自体は数年前だから」と考えていても、その後に送った・上げたという行為があれば、そちらはまだ時効が完成していない、という事態が起こり得ます。
5.相手が18歳未満だった場合は別の法律が重なる
写っている方が18歳未満であれば、児童ポルノ禁止法の製造罪・提供罪・公然陳列罪が併せて問題になります。同法は、提供・公然陳列だけでなく、自己の性的好奇心を満たす目的での単純所持も処罰対象としており、性的姿態撮影等処罰法よりも規制が広い点に注意が必要です。
年齢確認が形式的にしか行われていない店舗を利用していた場合など、「知らなかった」という認識が問題になる場面もありますが、これは自己判断が難しい領域です。心当たりがある場合は、早い段階で弁護士にご相談ください。
6.削除すれば終わり、とはならない3つの理由
投稿を消せばなかったことになる、というご相談を受けることがありますが、次の3点は分けて考える必要があります。
(1)成立した罪は消えない
公然陳列は、不特定または多数の人が閲覧できる状態に置いた時点で成立し得ます。あとから削除しても、成立した犯罪そのものが遡ってなくなるわけではありません。
(2)データは手元から消えても残る
一度アップロードされた画像は、保存・転載され、別のサイトに流れていることが少なくありません。被害者の方にとっての被害は、あなたが削除した時点では終わりません。この点は、後述する民事の評価にも直結します。
(3)消し方によっては不利に働く
被害の拡大を止めるために公開を取り下げることと、捜査の対象になり得る端末内のデータやアカウントを消してしまうことは、性質がまったく異なります。後者は証拠隠滅と評価され、身柄拘束や量刑の判断に不利に働くおそれがあります。どこまで自分で手を付けてよいかは、弁護士に確認したうえで進めることをおすすめします。
なお、ネット上に残っている画像への対応としては、情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月1日施行)に基づく送信防止措置の申出といった手続があります。また、性的姿態撮影等処罰法は、押収されたデータの消去等の手続を法律自体のなかに定めており、事件処理のなかでデータの抹消が図られる仕組みになっています。
7.民事の責任は「撮っただけ」の場合と別次元になる
刑事とは別に、被害者の方からの慰謝料請求という問題が残ります。ここで、拡散があった事案は、撮影のみの事案と同じ物差しでは測れません。
- 画像が第三者に渡っている以上、被害は継続しており、金額の評価が上がりやすい
- 削除依頼や発信者情報開示にかかった費用が損害として主張されることがある
- 源氏名や勤務先の店舗が特定できる形で公開された場合、就業や私生活への実害が具体的に主張されやすい
また、風俗の場面では、誰と話をつけるのかという点も整理が必要です。店舗から連絡が来ることが多いのですが、店舗に支払っても、被害者ご本人との示談が成立したことにはなりません。示談書の当事者と清算条項が及ぶ範囲は、必ず確認してください。提示された金額がそのまま支払義務の額になるわけでもありません。
さらに、性的姿態撮影等処罰法の各罪は親告罪とはされていません。示談が成立し、宥恕(許すという意思)を得られたことは処分を軽くする方向に働き得る重要な事情ですが、示談=不起訴が確約されるという関係にはない点も、あらかじめご理解いただければと思います。
8.いま取るべき対応・避けたい対応
取るべき対応
- いつ、どこで、何を撮り、どこに、誰に対して送った・上げたのかを時系列で整理する
- 投稿先やアカウント、やり取りの記録を、消さずに保全する
- 窓口を弁護士に一本化し、連絡はそこを通す
- 早い段階で相談する(削除の可否、示談の進め方、供述の方針は、いずれも初動で選択肢が変わります)
避けたい対応
- その場で高額な支払いに応じる、内容を確認しないまま示談書や誓約書に署名する
- 端末のデータやアカウントを独断で消す
- 被害者ご本人に直接連絡して謝罪しようとする(かえって二次被害と評価されるおそれがあります)
- 店舗や相手方と一人で交渉を続ける
もっとも大切なのは、被害に遭われた方が現に存在するという前提を外さないことです。拡散という結果が生じている事案では、被害の回復に向けて何ができるかを具体的に積み上げていくことが、結果としてご本人の負担を軽くすることにもつながります。
まとめ
- 盗撮画像を送る・上げる行為は、撮影とは別の犯罪として立件され得る
- 特定少数への提供は3年以下、不特定・多数への提供や公然陳列は5年以下(併科あり)と、拡散の範囲で法定刑が変わる
- 自分で撮っていない画像の転送も提供になり得る/送る目的での保管も処罰対象になり得る
- 削除しても罪は消えず、消し方によっては不利に働くおそれがある
- 民事・示談は撮影のみの事案とは別の水準で検討する必要がある
「送ってしまった」「上げてしまった」という段階でご相談いただければ、被害の拡大防止と、その後の手続の両面で取り得る選択肢があります。一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください。


