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小本紀子

経営者のための心のコンサルタント

小本紀子(こもとのりこ) / 公認心理師

紀凛株式会社

コラム

社員が定着しない理由はなに?成功企業が人材定着のためにやっていること

2018年6月21日

テーマ:会社経営と人材問題

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

企業が利益を上げるための重要な要素の一つとして、離職率の低さが挙げられます。なぜなら企業にとって人材の採用は、非常に多くの手間とコストがかかるからです。

また離職率が高い企業は、社内に知見が蓄積されることがなく、日常的な業務も非効率になり、なかなか利益を上げるためのシステムをつくることができません。

そこで今回はなぜ離職率が高く社員が定着しないのか、成功している企業は人材定着のためにどういった施策を行っているのかについて考えていきます。

社員が仕事を辞めた本当の理由

社員の離職率を下げるためには、なぜ社員が仕事を辞めたのか、その理由を知ることが重要です。中小企業庁が公開している2015年度版中小企業白書によると、仕事を止めた理由は次の通りです。

1.人間関係(上司・経営者への不満) 27.7%(就業後3年以内)、18.8%(就業後3年以降)
2.業務内容への不満 10.7%(就業後3年以内)、10.2%(就業後3年以降)
3.給与への不満 9.6%(就業後3年以内)、9.0%(就業後3年以降)
4.労働時間への不満 8.6%(就業後3年以内)、6.6%(就業後3年以降)
5.会社の経営方針・経営状況が変化した 6.5%(就業後3年以内)、9.4%(就業後3年以降)

この結果からわかることは、人間関係の不満がほかの理由を大きく引き離して離職の理由になっていることです。

しかし例えば業務内容の不満を解消しようとする場合、配置転換が考えられますが、規模の小さな企業でそれを行うことは簡単ではありません。そして給与への不満にかんしても、やはり簡単に賃金アップすることは難しいでしょう。

これらに対して人間関係の不満は、中小企業だからといって解決できない問題ではありません。逆にいえば社内の人間関係が改善されれば、離職率を大幅に下げることも可能だということです。

すべての企業に対して当てはまるというわけではありませんが、離職率を下げるためには、まずは経営者も含め、社内の人間関係を洗い直してみることがポイントであるといえます。

働く上での人間関係の重要性

社会の中で生きていく以上、人は必ず自分以外の人間とかかわっていくことになります。
それは家庭でも学校でも同じですし、もちろん企業でも同様です。そして人間関係が良好であれば、自分のベストなパフォーマンスを出しやすくなります。逆にどうしても馬が合わない人がいれば、人間関係もギクシャクしてしまい、仕事に集中することが難しくなります。

仕事をしていくうえで、モチベーションアップに必要なこととして、給与の高さが重要であると思われるかもしれません。もちろん、給与が高いことは重要ですし、給与が高いことは仕事への評価の高さにもつながるため、モチベーションはアップするかもしれません。

しかし前項で仕事を辞める一番の理由は、給与への不満ではなく、人間関係の不満であったように、どんなに給与が高くても、人間関係がうまくいかなければ、モチベーションも上がらず、ベストパフォーマンスを発揮することは難しいといえます。
それほどまでに働くうえで人間関係が良好であることは、重要な要素なのです。

人材定着に向けたよくある会社の取り組み

ここで2015年度版中小企業白書で紹介されている、人材定着に向けた施策を行い、2009年以降の新入社員離職率0%を実現している山口県柳井市に本社を構える会社の事例をご紹介します。

化学薬品製造業を営む同社では、人材定着率向上の施策として、特に採用時のマッチングと新人研修に力を入れています。採用時のマッチングとは、新入社員の募集段階で応募者に会社見学に来てもらっています。

これだけであればほかの企業でも普通に行っていることですが、同社では見学会の際に実際に働いている社員に、自由に質問ができるようになっています。

これにより、応募者は同社の業務はもちろん、そこで働いている人と肌が合うかどうかを見極めることができます。そして企業側にとっても、質問内容やそこでの態度によって面接だけではわからない応募者の人となりがわかります。

さらに複数社から内定を得て、選択に迷っている応募者には、採用担当者が自ら応募者のもとに訪れ、応募者にとって最善の選択肢が何であるかをお互いが納得できるまで親身になって話し合います。

この結果、応募者は入社の前段階から、同社に対して信頼感や愛情を感じるようになり、大企業の内定を蹴って同社に入社されるかたも少なくないようです。

また新人研修でも、島に二泊三日で社会人としての心構えを教え込むことはもちろん、仲間と共に働くことや絆の重要性を、大自然のさまざまなシーンの中で得られるようになっています。

経営者が人間関係改善のためにできること

今現在、すでに社員が人間関係に不満を持っているということであれば、経営者として一刻も早くその状況を改善しなければなりません。可能であれば配置転換や昇給といったことも有効手段のひとつです。しかしそれよりもまずやるべきことは、労働環境の改善です。

人は忙しくなればどうしても心に余裕がなくなり、言わなくてもいいことを言ってしまったり、しなくてもいいことをしてしまったりしてしまい、人間関係も悪化していきます。

そうならないためには、残業時間の削減を行う、強制的にでも有給休暇を取得させるなどして休息を取らせることを意識するようにします。

また経営者が積極的に社員の意見を聞き、企画を取り入れるなどやりがいを与えることも重要です。そのためには上司との密なコミュニケーションが必要になるため、自然と人間関係が悪化した状態が改善されやすくなります。

経営者としては人間関係が悪化している中に直接入り込むのではなく、上司、部下共にやりがいを与え、話し合うきっかけをつくることが、結果として関係改善につながるのです。

この記事を書いたプロ

小本紀子

経営者のための心のコンサルタント

小本紀子(紀凛株式会社)

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