【どう選ぶ!?子どものお箸選び】お箸文化伝承のプロが掲げる3つのポイント
お箸は何歳くらいから可能?
幼児の手根骨の骨化核がほぼ揃うのは五歳頃である。その頃になると、これらの手根骨を連結する筋肉も発達し、筋力も増し、かなり複雑な手首の動きが出来るようになり、練習による手を使う技術の習得が可能になる。
『ものと人間の文化史 102・箸(はし)』(向井由紀子/橋本慶子著、(財)法政大学出版局発行、2001年11月26日初版第1刷発行)にはこのように記されています。
そして10年以上幼い子どものお箸教育に携わった経験上、最もお箸使いについて理解できていると感じる年齢の平均もやはり4~5歳頃(早くて3.5歳)です。
なぜ急ぐ?子どものお箸
上記から、決して2~3歳というごく幼いうちから伝統的なお箸の持ち方・動かし方を子どもに求める必要がないことはお分かりいただけるかと存じます。
ただこのご時世、SNSで「2歳の我が子は既にお箸で食事をしています!」などという投稿を目にすると焦る親御さんの気持ちも大変よく分かります。
そして、幼稚園でも年中からはほとんどのお子さまがお箸で食事をし出しますし、小学校受験では、“お箸は正しく持ち、扱えて当然”という流れがあります。
また、一旦身に付いたお箸使いを直すことに自信がおありの親御さんはほぼいらっしゃらないでしょう。
このような環境下で、“お箸使い教育は急ぐ必要はない”と言っても、なかなか難しいことでしょう。
また“お箸使いを教える”ことは急がなくとも、“お箸使いができるようになるための準備を開始すること”は早いに越したことはありません。
幼い頃から身に付ける時に陥りがちな盲点
ただし、年少以下からお箸を使って食事ができている子の内、本当に正しく扱えている子どもはほんの一握りです。
なぜならその多くが、「お箸を扱うこと」ではなく「お箸で食材を掴むこと」が目的となっているから。
伝統的なお箸使いには、人差し指の指先1~1.5cm以外の力はほぼ要りません。
しかしながら、骨や筋肉、神経が未発達のうちにお箸を扱おうとすると、とにかく手のひらや指の付け根、腕や肩に力(ちから)が入ります。
未発達の手指では、自然に美しい伝統的なお箸使いを行うことはできないため、食材を掴むためには、とにかく力(ちから)をかけて扱うしかないのです。
でも実はこれは大きな盲点。
一旦力の入った手指の力やその癖を抜くことは、簡単ではありません。
私たち日本人は365日毎日、1~3回、何年もお箸を扱います。
お箸を扱った総時間数は、相当な時間になります。
力をかけてそれだけの時間扱っていれば、手指の筋肉や神経は認識を誤ったまま発達し、力は無意識のうちに入ることになります。
その力を抜き、指のお箸が当たる箇所、動きの方向、力加減といったこと全てを一旦リセットし、一から身に付けなければ、お箸使いを直すことはできません。
これがなかなかに難しいことは、容易に想像できますよね。
いつからがベストタイミング!?
もちろん個人差はありますが、上記のことから以下を目安にしてください。
※別コラム【何から始める?】編もご参考ください。
離乳食期~
・下持ちを開始
2.5歳頃~
・一本のお箸、ポンキーなど細めの棒状のものを遊びに取り入れて、親しませる
・ポイントは親指、中指、人差し指の3つの指で持つ癖をつけること
3.5歳頃~
・マイ箸を選び、食卓にフォークやスプーンと一緒に準備する
・使いたい時だけ、お箸を扱わせる(強制しない!!!)
5歳頃~
・食卓にはフォークとお箸だけを配膳するようにする。
5.5歳ころ~
・お箸だけで食事を完結するように導く。
お箸使いや持ち方、扱い方は、自らがやる気にさえなれば、40代になっても50代になっても、いくつになっても、伝統的な持ち方(一般に言う“正しい持ち方”)に直すことが可能です。
尚お教室にいらして、最もすんなり一旦身に付いた誤った持ち方が直る年齢は、小学校3年生頃です。
焦らないで欲しい。その子の未来のために
日本人にとって、亡くなるまで数十年に渡って扱い続けるのがお箸です。
そして、案外、お箸使いというものは大人になってから、人としての自信や心のゆとりに繋がる所作でもあります。
だからこそ、初めのほんの数年、数ヶ月、周りと比較して焦らないでください。
大丈夫。
お箸使いは、大変、理にかなった扱いです。
動きやコツが理解できれば、必ず扱えるようになります。
どうしても早くからお箸を扱えるようにしてあげたいという場合には、少しずつステップを踏ませてあげてください。