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相手への心配りなど心の表現を伴う日本の伝統文化「お箸と風呂敷」について伝えたい

お箸と風呂敷を通して日本人の心の表現を伝える伝承師

浅海理惠

浅海理惠 あさみりえ
浅海理惠 あさみりえ

#chapter1

日本人が育んできた精神性をベースにお箸・風呂敷について学ぶ教室を開催

 「お箸も風呂敷もとても奥が深く、面白く、まわりへの心配りに満ちたものだということを広く知ってもらいたいですね」と笑顔を見せるのは、東京都世田谷区でお箸・風呂敷教室を開く「Les Misera Culture School」の代表で、講師の浅海理惠さん。両者の共通点は、「日本の伝統文化の一つであり、心を表現する文化」だと語ります。

 「やってはいけない箸使いとは、そっぽを向いて『ありがとう』と言うのと同じように、目の前にある命やご縁、人の尽力、汗や涙をぞんざいに扱うこと。所作を通して、感謝や敬意を表す方法を学ぶツールがお箸なんです。風呂敷についても、普段使いから慶び事、お悔やみまで、どんな素材や柄にして、どう包み、結ぶのかを通して自分の心を伝える。その表現がおのおのの個性になるわけです」

 浅海さんの講座の特徴は、単にテーブルマナーの一環としてお箸の使い方を教えるのではなく、その根底にある日本人が古来より育んできた精神性を土台とする点。マナーはあくまで形(かた)であり、重要なのは、その形で何を表現しているかだと強調します。

 「日本では、お箸をきちんと扱えないと『みっともない』と言われ、人となりを見られますよね。食事用の単なる道具と捉える外国には、こうした発想はありません。お箸や風呂敷を通して、ハレとケを表現して日々にめりはりを与えたり、大切なモノを大切に扱う所作を身に付けたりすることもできます。目に見えない人の気持ちや生き物の命、そして数多のご縁を想像して大切にすることは、日本人が本来持つ平和の心につながると思っています」

#chapter2

お箸教室の受講者の8割強が30〜40代。コンプレックスで友人と食事に行けないという人も

 浅海さんのお箸教室の受講者の8割強が30〜40代で、50代、60代、小学生や就学前の子どもたちへと続きます。大多数を占めるのは、長年お箸使いにコンプレックスを持つ人。中には、それを理由に友人と食事にも行けない人もいるのだとか。

 「会食の機会が増えるなど社会的な世界が広がる年代で、それまで『下手』で済んでいたことも年齢を重ねると通じなくなり、『恥ずかしい』と感じるようです」

 浅海さんは、基本的にマンツーマンでレクチャー。各人の手の大きさも筋肉の付き方も癖も十人十色だからです。

 「動画投稿サイトには、お箸の持ち方を解説する動画はたくさんありますが、実際にやってみると、自分とはどこが違うのかが分からないがゆえに、言われた通りに持ってもうまく食材がつかめなかったりして、結局解決しないんですね。でも、それは当然で、指の長さも違えば筋肉の備わり方も違うわけで、お箸の当たる箇所も力の伝わり方も人それぞれなんです」

 一方の風呂敷教室の中心は年配層で、ほとんどが女性。しかし浅海さんは、こうした現状に歯がゆさを覚えているそう。

 「本来、風呂敷はジェンダーレス。それに、古風なスタイルを好む人や、着物を着る人たちに向けた特別なものではなく、身近なものなんです。わざわざ買わなくても四角い丈夫なハンカチがあれば、それはもう風呂敷。結び方に不正解というものがない、すごくゆるいものですし、災害などの緊急時にも役立つ使い方があるので、男性や若い人にも活用してほしいですね」

浅海理惠 あさみりえ

#chapter3

海外に発信することよりも重要なのは、日本人がお箸と風呂敷に対する理解を深めること

 手軽に扱えて、結び方や用途もアイデアの数だけ生まれる。こうした風呂敷の特性を生かし、介護予防における脳トレとして取り入れた講習会も開いている浅海さん。幼児の情操教育にもおすすめだと提言します。

 またSDGs(持続可能な開発目標)の一環として、福井県の漆塗り箸製造メーカーの協力の下、使えなくなった野球用バットの端材からマイ箸を作る教室も開催しています。
 「教材費の一部を、バットの素材となるアオダモの植樹費用に当てています。70~80年後にまたバットになって、90年後にはまた誰かのお箸になっているかもしれないですね」

 講師業をしていると「海外にどんどん発信してください」と言われることもあるそうですが、大切なのは、日本人自身がお箸や風呂敷に対する理解を深めることだと考えます。
 「お箸は、師範のもと手引書などから習うお茶やお華のような文化ではなく、各家庭で親が子に手ほどきする口承文化の象徴です。しかも『古事記』の神代の時代から受け継がれてきた、絶対に残すべき誇らしい文化だと思います。でも、欧米化や核家族化、共働きの影響などで、それができる親御さん世代が確実に減っているのが現実です」

 未来に継承できないことへの危機感から、浅海さんは、男女問わず、子育て中や妊娠期を迎えている人に向けた講演活動にも力を入れていきたいと言います。
 「相手の心情を推し量り、細やかに配慮するといった心の在り方も含めて伝え、日本に脈々と息づいてきた素晴らしい文化を次の世代へ紡いでいきたいと思います」

(取材年月:2023年7月)

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専門家プロフィール

浅海理惠

お箸と風呂敷を通して日本人の心の表現を伝える伝承師

浅海理惠プロ

マナー講師

Les Misera Culture School

お箸使い教室は、個々人の癖、指の長さや手の大きさ、筋肉の付き具合に合わせたマンツーマン指導。マナーや所作の根底にある文化や心の面にまで踏み込んで導き、講演や講義も行う。風呂敷教室は、自己表現を重視。

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