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【離婚】「慰謝料はどのくらい?」離婚事件の早期解決のコツ

2016年12月13日

コラムカテゴリ:法律関連

寒い日が続きますね。
今年はインフルエンザが流行らなければいいのですが・・・
体調には気をつけたいものですね。

今回のコラムは、離婚事件の慰謝料請求について
平成28年9月まで家事調停官を勤めた経験を活かして
述べていきたいと思います。

離婚事件で最もよく聞かれる質問は
「離婚による慰謝料はどのくらい取れますか」というものです。

インターネット上で、様々な情報が飛び交う内容でもあります。

ところで、離婚事件の慰謝料は、どうやって決まるのでしょうか。

( ※注 以下「慰謝料」とは、
     「離婚及び離婚までの事実によって被った
      肉体的・精神的苦痛を慰謝するための損害賠償」
    という意味で使います。
     夫婦で形成した財産を分け合う「財産分与」とは異なります)

それは、「どのような場合に離婚ができるか」という話と密接に関連します。

日本では、協議離婚・調停離婚の場合、当事者の『双方の合意』がないと
絶対に離婚できません。

離婚訴訟を得た判決離婚の場合は、当事者の一方の意思のみで
離婚が実現できます。
ただ、この場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」が必要になります。

そして、離婚訴訟の場合、訴訟で慰謝料を求めていれば
判決で、相当な慰謝料額を算定し(0円の場合もあります)、支払いを命じてもらえます。

では、離婚事件のほとんどを占める、
協議離婚・調停離婚の場合は、
どのようにして慰謝料額が決まるのでしょうか。

それは、「どのような場合に離婚ができるか」という話と全く同じで
『双方の合意』によって決まるのです。

そうすると、協議離婚・調停離婚の場合、慰謝料を得るためには、
「どのような慰謝料の額での合意を目指すか」
「合意に向け、どのように交渉していくか」
ということが、重要となってきます。

単に「慰謝料これだけ請求します」「これだけ支払ってもらわないと困ります」
と繰り返し言うだけでは、
慰謝料請求の相手方は合意せず、慰謝料は請求できません。

しっかりと準備し、方針を立て、交渉を行っていくことが
重要になります。

交渉に向け準備すべき点は、以下の情報に関する収集です。

1.判決での慰謝料額の見込み

  これは
  (1)離婚期間及び離婚の原因となった事実関係(不貞・浮気など)
  (2)上記事実関係がどの程度証拠により立証可能か
  (3)上記(1)、(2)を踏まえた先例等の調査
 等を考慮して検討します。

  性格の不一致や、双方に原因がある場合などは、
  慰謝料請求が認められない場合も多いです。
  また、高額でも300万を超える慰謝料は判決では出されないのが通常です。

2.当事者双方が、どの程度早期の離婚を望んでいるか

  多くの人は、早期の離婚を強く望むと
  「早く多額の慰謝料を支払って離婚したい」
  あるいは
  「低額な慰謝料になってもいいから、早く離婚したい」と
  考える方向に働きます。

  そのため、当事者のどちらか一方が早期の離婚を強く望む場合は、
  判決見込み額よりも高額あるいは低額の慰謝料額での合意になる可能性が
  あります。

3.当事者の現時点での離婚意思

  例えば、数か月前に夫に不貞行為をされた妻に、離婚の意思がなく、
  また、他に夫側に法律上の離婚事由もない場合、
  夫は、離婚を求めて離婚訴訟を提起したとしても、
  敗訴する見込みが高いです。

  この場合、夫が離婚するためには、
  多額の慰謝料を支払い、妻に
  「これだけの慰謝料であれば、離婚に応じても仕方がない」
  と思ってもらい、離婚に合意してもらう必要があります。

  そのため、このような場合の合意による慰謝料額は、
  判決見込み額よりも高額になることが多いです。

4.当事者双方が訴訟による解決をどの程度避けたいか

  基本的に、訴訟を避け、交渉または調停での合意を強く望む場合は、
  「訴訟になるくらいなら、早く多額の慰謝料を支払って離婚したい」
  あるいは
  「訴訟になるくらいなら、低額な慰謝料になってもいいから、早く離婚したい」  と考えます。
  そのため、このような意思を持っている当事者がどちらか一方にいる場合は、
  判決見込み額よりも高額あるいは低額の慰謝料額での合意がなされる可能性が
  高くなります。

5.婚姻費用の支払の有無及び支払状況

  離婚事件の中には、夫と妻が別居中であり、
  夫は毎月の収入から
  婚姻費用(別居中の妻と子に支払う生活費。養育費とは異なります)を
  支払っている場合があります。
  婚姻費用は、通常、養育費(離婚後に子に支払う生活費)よりも
  高額になります。

  この場合、夫側としては
  「離婚成立まで婚姻費用を支払い続けるくらいであれば、
   少々慰謝料が高額になったとしても
   早く離婚しよう」と考える場合が多いです。
  そのため、婚姻費用を支払っている夫がいる場合は、
  判決見込み額よりも高額あるいは低額の慰謝料額での合意がなされる可能性が
  高くなります。

  なお、同様のことは、今後夫が妻から婚姻費用を請求される
  可能性がある場合にもあてはまります。
  
6.慰謝料を支払う側の経済的状況

  基本的に日本の法律は
  「財産・収入がない者、又は財産・収入が分からない者」からは
  判決を得ても強制執行ができず、
  回収ができない仕組みになっています。
  また、当事者以外の親族に慰謝料を請求する権利もございませんし、
  当事者以外の親族に連帯保証人となることを要求する権利もございません。

  そのため、慰謝料を支払う側の経済的状況が悪ければ、
  たとえ争いを継続していくらかの慰謝料の支払いを命じる判決を得たとしても
  「絵に描いた餅」になってしまい、
  慰謝料請求が実現できなくなります。

  このため、慰謝料を請求する側としては、
  慰謝料を支払う側の経済的状況によっては
  「判決を得ても回収ができないなら、
  交渉または訴訟でいくらか慰謝料をもらっておくほうがましだ」
  と考え、
  判決見込み額よりも低額の慰謝料額での合意がなされる可能性が
  高くなります。

  この話は、特に女性側が不貞行為を行った場合に良く当てはまります。

7.その他

  その他、不貞行為の相手方への請求の有無・資力の有無などを
  確認することもあります。

上記の1~7の情報を確認し、
方針を検討し、準備した上で、
離婚交渉・離婚調停で合意による慰謝料の実現を目指し、
それが無理なら、離婚訴訟で判決による慰謝料の実現を目指すことに
なります。

離婚交渉・離婚調停・離婚訴訟についても
法律相談及び事件のご依頼を承っております。

法律相談は、30分5400円(クレジットカード払い可能)です。

有料である分
「弁護士の回答が役立ち、解決できた」と思っていただけるよう、
具体的・実践的なアドバイスを心がけております。

事件のご依頼に際し必要な弁護士費用についても
クレジットカード払いが可能です。
費用の概算についても、お気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。

この記事を書いたプロ

荻原卓司

借金問題・個人再生のプロ

荻原卓司(オギ法律事務所)

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