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コラム

「ドレッサー椅子の座面を捨ててしまったんです!」

2024年1月10日

テーマ:既製品家具の二次加工

コラムカテゴリ:くらし

「ドレッサー椅子の座面がボロボロになって捨てたんです!」

「持っていたドレッサー椅子の座面には布を張ってましたが、木の座面を作れませんか?」
愛媛県新居浜市・N様からお問い合わせをいただきました。
ご結婚から30年以上もお使いで、快適でさらに永く使いたいという問い合わせです。

下の写真は、お預かりした座面がなくなってしまったドレッサー椅子(写真奥)と、これから木の座面を作る北海道産栗材(写真手前)です。
ドレッサー椅子①

既製品の二次加工 作業中①/正確な板材加工

木製品を作る時に一番大切なことは、正確な板材を作ることです。
木材の反りやねじれ、曲がりなどを削りとり正確な板材に加工しなければ良い製品を作りことはできません。

そのため、手押しかんな盤・自動かんな盤を使い、平面精度や直角、木材の厚みを決めていきました。
ドレッサー椅子②
続いて、小型精密横切り盤を使い、長さや幅を決めていきました。
ドレッサー椅子③
TOKI家具館メンテナンスの作業は、細々した作業が多いため、大日精工製 両テーブル移動型の小型精密横切り盤を愛用しています。

両テーブル移動型のため、短い長さならタテ切り作業もできるんです。
こうして、2枚接ぎ板座面の材料取りができました。
ドレッサー椅子④

既製品の二次加工 作業中②/ドミノジョイント接合

TOKI家具館メンテナンスが板材を幅接着する時は、必ず “つなぎ” を入れて圧着するようにしています。
“つなぎ” を入れて圧着しておくと、湿度の変化などで幅接着しているヵ所が切れるということが起こりにくくなるからです。

N様の板座面接合に選んだのが、ドイツ製フェスツール社製 ドミノジョイントです。
フェスツール社製 電動工具は、高価な道具ではありますが純正集塵機と繋ぐことが容易で衛生的、なおかつ強固に接合することができます。

写真奥がドミノジョイントカッター、板材の上に置いているのがドミノチップです。
ドレッサー椅子⑤
まずは、接合面に接着剤をローラーで塗っていきました。その後、ドミノジョイントカッターで開けた穴やドミノチップにも接着剤を塗っていきました。
ドレッサー椅子⑥
続いて、ソマックス製T型クランプ4本を使い、両面から圧着していきました。
このように、柾目部分を外側に、板目部分を内側に接合しますと、一見すると一枚板のように見えます。
ドレッサー椅子⑦
板座面の面取り作業や塗装工程に入る準備をします。
ドレッサー椅子の座面は、普通の椅子と比べますと小型のものが多いです。
そのため、曲面加工などは控えて、少しの面取り作業をしました。

この写真は、トリマーで面取り加工をした板座面をドレッサー椅子フレームに仮合わせしたものです。
ドレッサー椅子⑧
塗装作業で大切なことは、いかにして塗装部材に触れずに、早く最後まで拭き付け作業ができるかを考えることです。
今回は、板座面ウラ側でフレームと重なる部分に木ネジを入れて、ひっくり返しながら吹付することとしました。
ドレッサー椅子⑨

既製品の二次加工 作業中③/ウレタン塗装作業

下地着色作業を伴うウレタン塗装はむつかしいです。
それは、下地着色した時の色と、塗装作業ができ上がった時の色が違うからです。
下地着色の色から、完成後の色を想像できないといけないのです。
N様の板座面の下地着色に選んだのは、キャピタルペイントさんのピュアPGステイン(油性)です。
ミディアムブラウン・ダークブラウン・マホガニーの3色を調合して下地着色剤を作りました。
ドレッサー椅子⑩
下地着色剤を塗った写真です。
下地着色作業で緊張するのは、塗れば塗るほど濃くなっていくということです。
ですから、止め時を判断することが大切な作業となります。

フレーム本体を見ながら、板座面の下地着色作業をしました。
ドレッサー椅子⑪
ウレタン塗料は、大谷塗料さんのセーフティーワルツを永年愛用しています。
TOKI家具館メンテナンスのウレタン塗料は、親父(土岐敏勝/88歳)の代から大谷塗料さんの塗料使っています。
この塗料を使って、親父にさんざん指導を受けたので愛着があるんです・・・。
ドレッサー椅子⑫
TOKI家具館メンテナンスの一般的な木材へのウレタン塗装は、サンディングシーラー×3工程(都度 ケバ取り研磨)→ 調色作業 → ウレタンフラット×3工程(都度 ケバ取り研磨)です。

こうして仕上がったのが、下の写真の板座面です。
ドレッサー椅子⑬
ドレッサー椅子と合わせてみても、かなり近い色合いに仕上がったと想います。こういう時が、一番うれしい時でもあります。
ドレッサー椅子⑭

既製品の二次加工 作業中④/板座面の取り付け+調整作業

無垢材板座面の取り付けで気を付けていることは、『無垢板は動く』ということに尽きます。
『無垢板は動く』ということを考えて使っているのが、駒止め金具です。
一見、ふつうのアングル金具のように見えますが、無垢材の動きを止めないような工夫がされている金具なんです。
ドレッサー椅子⑮
「木ウラを表面にせえよー!」
この言葉は、親父の口癖です。
木ウラを表面にして取り付けしますと、反った時も板座面両端が跳ね上がることはありません。
ドレッサー椅子⑯

既製品の二次加工 作業後/板座面のドレッサー椅子が完成しました。

ドレッサー椅子の座面は布張り座面が多い中、愛媛県新居浜市・N様のご依頼で初めて板座面仕様を作ってみました。
布張り座面と比べますと、重くはなりますが、丈夫で末永くお使いいただけるものと想います。N様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
ドレッサー椅子⑰

この記事を書いたプロ

土岐泰弘

家具の修理とリノベーションのプロ

土岐泰弘(有限会社土岐家具店(屋号:TOKI家具館メンテナンス))

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