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修理とリノベーションで家具に新たな命吹き込む

家具の修理とリノベーションのプロ

土岐泰弘

土岐泰弘 ときやすひろ
土岐泰弘 ときやすひろ

#chapter1

県内外から相談毎月100件以上

 長年使い、愛着がある木製家具でも、傷みが激しくなったり、ライフスタイルが変化したりして使い勝手が悪くなることがあります。新居浜市で土岐家具店を経営する土岐泰弘さんは、こうした家具に、修理に加えて二次加工を施す「リノベーション」で、新たな命を吹き込みます。
 確かな技術と経験が評判を呼び、県内外から相談が寄せられ、塗装直しやぐらつき補正などの問い合わせも合わせると、その数は毎月100件以上。修理・リノベーションには高いニーズがあります。
 近年多いのは、椅子に座って使えるように、座卓の高さを変えたいとの要望です。高さ35cmほどの座卓の脚を交換し、約70cmに作り替えます。脚を新しく作った場合、価格は8万~13万円ほど。価格を抑えたい場合は、既製品の脚を付ければ3万5千円から対応できます。
 このほか、たんすをテレビボードに、玄関に置いてあった一枚板のついたてをテーブルに、6人掛けのテーブルを2人掛けのテーブル2つに、箱火鉢を応接テーブルにするなど、相談は実にさまざま。
 嫁入り道具だった鏡台の鏡を、姿見に変えてほしいという依頼もありました。自店でできない依頼には、自身が所属する愛媛県技能士会の職人と協力することもあります。開業医の病院用木製家具の修理をはじめ、法人の家具修理にも力を入れている、とのこと。
 「品ぞろえが多く低価格の大型店やネットショップとの競争が激しく、地域の小型店の生き残りは難しい。職人の手作業だからできる『効率が悪い、めんどくさい』仕事こそ、小型店が追求するサービスではないか」と土岐さん。土岐家具店の販売件数の内訳は、20年ほど前は8割が既製品で、同社工場で作った家具は2割でしたが、今では7割近くが工場で作ったり、修理・リノベーションしたりしたもの。子育てが一段落した50歳代以降からの依頼が多く、最近は会員制交流サイト(SNS)の効果で県外からの依頼が増えています。

#chapter2

長年使った家具への愛情に職人技で応える

 2020年2月、沖縄に住む女性から、東京の実家に残したライティングデスクの修理を頼まれました。いわゆる子ども用学習机ではなく、アンティーク家具のようなデスクで子どもの頃に両親から贈られたということでしたが、あちこち傷があったり、引き出しが開けにくくなっていたりするうえ、色あせも進んでいました。
 製造した会社はすでになく、女性は都内で修理を請け負ってくれる業者を探しましたが、断られ困っていたところ、SNSを通じて土岐さんを知りました。
 女性の「子どもの頃は皆と同じピンクの学習机が良かったと親に怒ったことも。でも調子が悪くなったら父が直してくれるなど、傷の一つ一つにも思い出がある大切な机。娘に譲りたい」との思いを知った土岐さんは、デスクを引き取り、研磨、金物交換、再塗装などを施しました。
 女性からは「美しく生き返ったよう。これからは娘の思い出も刻みながら、長い年月を大切に使っていきたい」とのメールが届いたそう。土岐さんは「お客さまの家具への愛情に応えることができ、うれしいですね」とほほ笑みます。

土岐泰弘 ときやすひろ

#chapter3

メンテナンスの時代へ 専門校で再修業

 土岐家具店の創業は昭和元年(1926年)、80歳を超えた今も現役の父・敏勝さんから引き継ぎ、土岐さんは3代目です。大学卒業後、他県の家具店での厳しい修業を経て入社しました。
 転機は46歳の時。環境問題のニュースに接するなどして「今までは既製品を売る方が、お客さまにもメリットが大きかった。でも使い捨ての時代は終わり、21世紀はメンテナンスの時代になる」との思いを強くし、木工技術を基礎から学び直すため、愛媛県立宇和島産業技術専門校に進学しました。小学生から高校生まで3人の子どもがいたこともあり、妻や敏勝さんは大反対。それでも1年間、平日は宇和島市で学び、土・日は新居浜市で仕事という二足のわらじを履きました。そこで得た最大の「宝」は、仲間や恩師との絆です。今も相談し合える力強い人脈になりました。

 選択が正しかったことを証明するように、修理やリノベーションの宣伝をしていないにもかかわらず、十数年前から個人・法人問わず依頼が増え始め、メーン事業となるまでに成長。さらに5~6年前からは、同業者からの修理依頼も舞い込むようになりました。
 そこで土岐さんは昨年、屋号を「TOKI家具館メンテナンス」に変更。さらに「家具の想談館」という名称で商標登録を取得しました。修理やリノベーションで特に重要な「相(想)談」に力を入れたい、との思いからです。

 今春、うれしい出来事がありました。地元企業に就職していた三男が、家業を継ぐため北海道立旭川高等技術専門学院に進学することになったのです。「お客さまの反応がダイレクトに返ってくるこの仕事の面白さに、改めて気づいたのかも」と土岐さん。「三男は何でも器用にこなす。まだまだ負けられない」と笑います。

(取材年月 2020年6月)

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土岐泰弘

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土岐泰弘プロ

家具の製作・販売・修理業

有限会社土岐家具店(屋号:TOKI家具館メンテナンス)

私は、経営者+家具職人+営業マンです。“めんどくさい系”の家具の仕事である修理、リノベーション家具製作の相談に、心を込めてお受けしています。令和2年、商標登録「家具の想談館」を取得しました。

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