【風俗トラブル】ホテルを出た後に「不同意性交であった」と店から連絡、一緒に警察へ行くべき?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月14日時点の刑法、刑事訴訟法、刑事訴訟規則、犯罪捜査規範の規定をもとに、風俗店の利用客の立場から書いています。刑法の法定刑は、2025年6月1日に施行された拘禁刑への一本化を反映した表記です。令和5年の刑法改正により、旧強制性交等罪は不同意性交等罪に改められています。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。


「ホテルを出て駅に向かっている途中で店から電話があり、『女の子が不同意性交だったと言っている。これから一緒に警察に行きましょう』と言われた」。デリヘルを利用した方からのご相談には、このような場面から始まるものがあります。指摘された行為に心当たりがあり、逃げていると思われたくないので応じるべきかと迷う方もいれば、同意があったと考えていて、警察で説明すれば分かってもらえるはずだと、むしろ自分から出向こうとする方もいます。

 インターネット上では「警察に行くと言われたらすぐに弁護士へ」「その場で示談に応じない」といった説明がよく見られます。いずれも誤りではありませんが、店から「一緒に」警察へ行こうと誘われた場合に、その誘いに応じることが法的に何を意味するのか、応じないときにどう伝えればよいのかまでは、あまり書かれていません。同行に応じるかどうかは、その後の取調べや示談の進み方に影響することがあります。

 この記事では、ホテルを出た後に店から「不同意性交だった」と連絡があり、警察への同行を求められた場面に絞って、応じる義務の有無、同行した場合に起こりうること、断るときの伝え方を順に整理します。ホテルの部屋に店のスタッフが来た場面は【風俗トラブル】ホテルの部屋に店のスタッフが来た|ドアを開ける前に考えることで、言われた翌日の過ごし方は【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で扱っていますので、あわせてご覧ください。

店から「一緒に警察へ」と言われたときに押さえておくこと

 電話口で同行を求められると、その場で返事をしなければならないように感じるものです。まずは、店の誘いが法的にどのような位置づけのものかを確認しておきます。

店と一緒に警察へ行く法的な義務はない

 店は捜査機関ではなく、店のスタッフや店長から警察への同行を求められても、それに応じなければならない法的な根拠はありません。警察から直接出頭を求められた場合でさえ、逮捕や勾留をされていない段階であれば、出頭を拒むことも、出頭した後にいつでも退去することもできるとされています(刑事訴訟法198条1項ただし書)。店からの誘いは、それよりもさらに任意の性格が強いものです。迎えの車に乗るよう求められたり、待ち合わせ場所を指定されたりしても、その場で応じる必要はありません。任意同行一般の考え方は、「任意同行」は断れるのか|断った場合に起きることで説明しています。

届出をするのは通常キャスト本人

 性的な行為をめぐる被害について警察に申告するのは、通常、被害を受けたとされるキャスト本人です。店が「一緒に行こう」と言っていても、キャスト本人が届出を望んでいるのか、店の判断で話しているのかは、電話の段階では分かりません。被害の届出があれば警察はこれを受理しなければならないとされていますが(犯罪捜査規範61条1項)、届出をするかどうかを決めるのは本人であり、客が同行するかどうかで届出ができるかどうかが変わるわけではありません。キャストが警察に相談したと聞かされた場合の確かめ方は、【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで扱っています。

「一緒に」という誘いが持ちうる意味

 店がなぜ客に同行を求めるのかは、事案によって異なります。キャストの申告を受けて、事実関係を警察の場で確かめたいと考えている場合もあれば、「警察に行くか、ここで話をまとめるか」と選択を迫るための言葉として使われている場合もあります。後者のように金銭の支払いと結び付けて告げられたときは、その告げ方によっては恐喝罪(刑法249条1項・10年以下の拘禁刑)が問題になり得ます。ただし、交渉の言葉に見えても実際に届出がなされることもあるため、誘いの意図を電話口で決めつけず、応じるかどうかの返事をいったん保留することが出発点になります。告知と脅迫の境目は、「被害届を出す」と言われた|正当な権利の告知と脅迫の境界で整理しています。

 店から告げられる言葉ごとに、考えられることと、その場で優先したいことを整理すると、次のようになります。

店から告げられた言葉考えられることその場で優先したいこと
「今から一緒に警察に行こう」キャストの申告に立ち会わせようとしている、または決断を急がせている可能性がある同行の返事を保留し、弁護士に相談してから連絡すると伝える
「警察署の前で待っている」その日のうちに動くよう求めている指定された場所に一人で向かわず、通話の日時と内容を記録する
「来ないなら女の子と二人で届け出る」届出を予告している届出を止めようとしてキャスト本人に直接連絡せず、相談を急ぐ
「警察に行くか、今払うか選んでほしい」金銭の支払いと届出が結び付けられているその場で支払いや支払いの約束をしない
「迎えの車を出すので乗ってほしい」店の管理する場所や警察署へ連れて行こうとしている車には乗らず、自分の居場所を詳しく伝えない


店と一緒に警察署へ行くと起こりうること

 同行に応じた場合に何が起こりうるかを知っておくと、応じるかどうかを落ち着いて判断しやすくなります。

準備のないまま供述し、調書が作られる

 店やキャストと同時に警察署へ行くと、申告を受けた警察官から、そのまま事情を聞かれることが考えられます。取調べでは、自己の意思に反して供述する必要がないことが告げられ(刑事訴訟法198条2項)、作成された調書は読み聞かせや閲覧を経て、誤りがあれば訂正を求めることができ、署名押印を拒むこともできます(同条4項・5項)。しかし、ホテルを出た直後の動揺した状態で、記憶や認識を整理しないまま話した内容が調書になると、後で説明を補おうとしても「供述が変わった」と受け止められることがあります。自分に不利益な事実を認めた供述調書は、署名押印があれば、後に裁判で証拠とされることがある点にも注意が必要です(刑事訴訟法322条1項)。取調べで聞かれる項目は風俗事件の取調べで聞かれること|供述が争点に直結する項目で、説明が変わることの評価は供述が途中で変わると不利になる理由|変遷の評価で説明しています。

その日のうちに身柄を拘束される可能性

 警察署に出向いたからといって、直ちに逮捕されるとは限りません。逮捕は原則として裁判官の発する逮捕状によって行われ(刑事訴訟法199条1項)、逃亡や証拠隠滅のおそれなどからみて明らかに逮捕の必要がない場合には、逮捕状は発付されないとされています(同条2項、刑事訴訟規則143条の3)。一方で、不同意性交等罪(刑法177条1項・5年以上の有期拘禁刑)のように法定刑の重い罪については、罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があり、急速を要する場合に、逮捕状を得る前に逮捕する緊急逮捕の規定もあります(刑事訴訟法210条1項)。申告をした側と並んで出向く場面は、警察から見れば当事者がそろっている状況でもあり、どの程度の可能性があるかを見通せないまま出向くことは避けたほうがよいでしょう。在宅のまま捜査が進む場合との違いは、在宅事件と身柄事件の違い|風俗トラブルで逮捕を避けるための弁護活動で扱っています。

一緒に出向いても自首として扱われるとは限らない

 「自分から警察に行けば自首になり、有利に扱われるのではないか」と考えて、同行に応じようとする方もいます。自首は、罪を犯した人が、犯罪や犯人が捜査機関に発覚する前に、自ら自分の犯罪事実を申告することをいい、刑を減軽することができるとされています(刑法42条1項)。店やキャストが申告するのと同時に出向いた場合に、これが自首と評価されるかは事情によって分かれ、認められないこともあります。また、同意があったと考えて事実を争うために出向くのであれば、そもそも自首には当たりません。自首が成り立つ場面は、自分から出頭すべきか|自首の成否と実務上の意味で説明しています。

同行を断るときの伝え方と、その後に備えること

 同行に応じないと決めた場合も、その伝え方と、その後の過ごし方によって、事態の進み方は変わります。

断るときは連絡を絶つのではなく、窓口を示す

 同行に応じないことと、連絡を無視することは同じではありません。電話に出ない、着信を拒否するといった対応をとると、店が「話し合いに応じない」と受け止め、届出に気持ちが傾くこともあります。応じないときは、「今日は一緒には行けません。弁護士に相談したうえで、こちらから改めて連絡します」と短く伝え、その場で事実を認めたり否定したりする説明は控えるのが無難です。帰宅途中に着信が続く場面での考え方は、【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくことで扱っています。

やり取りを記録に残す

 店からの電話の日時、誰が何と言ったか、同行を求めた理由、金額の提示があったかどうかなどを、できるだけ早く書き留めておきます。通話を録音できた場合は保存し、メッセージや着信履歴も消さずに残します。「一緒に警察に行こう」と言われたこと自体も、後に事実関係を整理する材料になります。録音の扱いは、録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方で紹介しています。

キャスト本人に直接連絡しない

 届出を思いとどまってもらおうと、キャスト本人に直接連絡を取ろうとする方もいます。しかし、接触そのものが相手の負担になり、かえって届出を後押しすることがあります。刑事事件の捜査に必要な知識を持つ人に対し、正当な理由なく面会を強く求めたり、強い言葉で迫ったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)が問題になり得ます。示談を考える場合も、申入れは弁護士を通じて行うのが安全です。この点は、性犯罪の示談交渉を弁護人に任せる意味|本人が連絡してはいけない理由で説明しています。

自分から警察に行くことを考える場合の順序

 店と一緒には行かないとしても、いずれ自分から警察に事情を話すべきかどうかは、指摘された行為についての自分の認識によって考え方が分かれます。

指摘された行為に心当たりがある場合

 心当たりがある場合は、キャスト本人の被害に向き合い、謝罪と賠償を通じた示談を目指すのが基本的な方向になります。届出の前に示談がまとまれば、刑事事件として扱われずに終わる可能性が高まります。もっとも、不同意性交等罪は親告罪ではないため、示談で「被害届を出さない」と約束しても、捜査を法的に止めるものではありません。示談の成立と宥恕は、起訴するかどうかの判断で考慮される事情になります(刑事訴訟法248条)。自分から警察に事情を話すことを選ぶ場合も、店と一緒に出向くのではなく、弁護士と方針を決め、必要に応じて弁護士が同行する形をとるのが一般的です。示談の時期による違いは、示談を始めるタイミング|被害届前・受理後・起訴前で何が違うかで整理しています。

同意があったと考えている・事実が違うと考えている場合

 同意があったと考えている場合や、指摘された内容が事実と異なる場合は、警察で説明すれば分かってもらえると考え、早く出向きたくなるものです。ただ、自分が同意があったと受け止めていたことと、相手が同意していたと認められるかどうかは、別の問題として判断されます(刑法177条1項、176条1項各号)。密室での出来事について、どの事情が争点になるかを整理しないまま話すと、意図とは違う受け止め方をされることがあります。争点になる事情は「同意があったと思っていた」|不同意性交等罪で争点になる事情で、条文上の成立要件は「本番=即逮捕」ではない|不同意性交等罪の成立要件を条文から確認するで説明しています。

警察から直接連絡が来たときに備える

 店やキャストが実際に届出をした場合、後日、警察から直接連絡が来ることがあります。その場合も、逮捕されていない段階での呼出しは任意の出頭の求めであり(刑事訴訟法198条1項)、日程を調整し、弁護士に相談してから応じることができます。弁護士が警察署まで同行することはできますが、取調室への同席は認められないことが多いのが現在の運用です。呼出しへの対応は警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応で、取調べと弁護人の関係は取調べに弁護人は立ち会えるのかでご覧いただけます。

よくあるご質問

同行を断ったら、逃げていると思われて不利になりませんか

 同行を断ったこと自体が、直ちに不利な事情として扱われるわけではありません。警察からの任意の求めでさえ、出頭を拒むことは認められています(刑事訴訟法198条1項ただし書)。ただ、連絡を一切絶つ、住居を離れる、記録を消すといった行動は、逃亡や証拠隠滅のおそれをうかがわせる事情と受け止められかねません。断るときは、弁護士を通じて連絡するという窓口を示しておくことが大切です。

店のスタッフから「警察官が来ているので電話を代わる」と言われました。どう応じればよいですか

 電話口では、相手が本当に警察官かどうかを確かめられないことがあります。名乗られた所属と氏名を書き留め、いったん電話を切ったうえで、警察署の代表番号を自分で調べてかけ直すと確かめられます。その際も、事実関係を詳しく話す前に弁護士に相談したいと伝えることができます。警察からの電話への考え方は、「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのことで整理しています。

すでに店と一緒に警察署へ行き、話をしてしまいました。今からできることはありますか

 話をした後でも、弁護士に相談して方針を立て直すことはできます。どのような内容を話したか、調書に署名したかどうかを、思い出せる範囲で書き出しておくと、その後の見通しを立てやすくなります。キャスト本人との示談も、届出が受理された後に進めることができます。受理後の流れは【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間で、警察から連絡が入った後に示談に至った当事務所の例は【解決事例】デリヘルの本番行為で警察から連絡があり150万円を請求された男性が75万円の示談で解決した事例でご紹介しています。

まとめ


  1. 店から警察への同行を求められても応じる法的な義務はなく、警察からの任意の出頭の求めでさえ、逮捕・勾留されていなければ拒むことができる(刑事訴訟法198条1項ただし書)。
  2. 届出は通常キャスト本人がするもので、受理は警察の義務とされている(犯罪捜査規範61条1項)。店の誘いがキャスト本人の意思と一致しているとは限らない。
  3. 「警察に行くか、払うか」のように金銭と結び付けた告げ方は、内容によって恐喝罪(刑法249条1項)が問題になり得る。
  4. 準備のないまま同行すると、その場で取調べを受けることがあり、不利益な事実を認めた調書は後に証拠とされることがある(刑事訴訟法198条、322条1項)。
  5. 不同意性交等罪(刑法177条1項)は緊急逮捕の対象となり得る罪であり(刑事訴訟法210条1項)、身柄拘束の可能性を見通せないまま出向くことは避けたい。
  6. 店やキャストの申告と同時に出向いても、自首(刑法42条1項)として扱われるとは限らない。
  7. 同行を断るときは連絡を絶たずに弁護士を窓口として示し、キャスト本人への直接の連絡は控える(刑法105条の2)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ホテルを出た後に店から「不同意性交だった」と連絡があり、警察への同行を求められている段階でも、ご相談いただけます。

指摘された行為に心当たりがある方も、同意があったと考えている方も、店とのやり取りの経過をうかがったうえで、同行に応じるかどうか、警察とキャスト本人にどう向き合うかを、刑事手続と示談の両面から検討いたします。お一人で警察署に向かう前に、まずは状況をお聞かせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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