ラブホテル・ビジネスホテルでの撮影|「公共の場所」ではない場所の扱い
本記事は2026年10月時点の法令と一般的な実務をもとにした解説です。個別の事情によって取れる手段は変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
風俗店でのトラブルについて弁護士への相談を考えたとき、「相談したことが店に知られるのではないか」「弁護士を通すと、かえって自分の名前や住所が店に伝わるのではないか」と心配される方は少なくありません。予約の段階で電話番号を伝えていたり、その場で身分証を見せていたりすると、これ以上の情報は渡したくないと考えるのは自然なことです。
この記事では、弁護士への「相談」と「依頼」の段階ごとに、店に伝わる情報と伝わらない情報を整理します。あわせて、示談書や示談金の支払いで個人情報をどう扱うか、弁護士が入っても取り戻せない情報は何かについても解説します。
相談しただけで店に連絡が行くことはない
弁護士には法律で守秘義務が課されています(弁護士法23条)。相談の中で聞いた内容を、相談者の了解なく第三者に伝えることは原則としてできません。誰が相談に来たのかということ自体も、守られるべき秘密に含まれると考えられています。
そのため、法律相談をしただけで弁護士から店に連絡が入ることはありません。店が「弁護士に相談したらしい」と知るとすれば、相談者ご自身が店に伝えた場合か、正式に依頼を受けた弁護士が店に連絡を入れた後であるのが通常です。
なお、相談の際に店の名前を尋ねることがありますが、これは当事務所がその店の側から依頼を受けていないか(利益相反)を確認するためのもので、店へ連絡するためではありません。
警察や家族、勤務先に伝わることもない
守秘義務は店に対してだけ及ぶものではありません。相談の内容が警察や勤務先、ご家族に伝わることも、相談者の了解がない限りありません。ご自身に不利な事情を話したとしても、それを理由に弁護士が通報することはありません。むしろ、不利な事情も含めて話していただくほうが、見通しを正確に立てやすくなります。
依頼して店と交渉する段階で伝わるもの
正式に依頼すると、弁護士は店に対して「代理人に就任した」と連絡を入れます(受任通知)。どの利用客の件なのかが分からなければ交渉が始まらないため、店がすでに把握している範囲で、相談者を特定できる情報を示すことになります。
一方で、店がまだ知らない情報を交渉のために新しく伝える必要は、多くの場合ありません。弁護士の氏名と事務所の連絡先が窓口となり、以後のやり取りは弁護士を通すよう求めるのが一般的な進め方です。情報ごとの扱いの目安は次のとおりです。
| 情報 | 店に伝えるか | 補足 |
|---|---|---|
| 氏名 | 店が把握している範囲で示す | 予約名が偽名の場合は、示し方を弁護士と相談して決める |
| 電話番号 | 新たには伝えない | 店が知っている番号にも、今後は連絡しないよう求める |
| 住所 | 原則として伝えない | 示談書にも記載しない形を検討できる |
| 勤務先・家族構成 | 伝えない | 交渉の内容に関係しないため |
| 口座情報 | 伝えない | 示談金は弁護士の預り金口座から支払える |
何を伝えるかは依頼者と決める
どの情報をどこまで伝えるかは、依頼者と弁護士が事前に確認したうえで決めます。弁護士が依頼者の了解なく住所や勤務先を店に伝えることはありません。依頼の段階で「これだけは伝えたくない」という情報を弁護士に伝えておくと、交渉方針に反映しやすくなります。
示談書と示談金の支払いで情報を出さない工夫
示談書に住所を書くことは必須ではない
示談書は、当事者の間で何を約束したかを残すための書面です。当事者が誰なのかを特定できれば足り、住所の記載がなければ示談が成立しないというものではありません。弁護士ドットコムにも「示談書に住所を書きたくない」という質問は加害者側・被害者側の双方から多く寄せられており、住所を記載しない形がとられることもある、という趣旨の回答が見られます。
弁護士が代理人になっている場合、依頼者の住所の代わりに代理人の事務所を連絡先として記載する、あるいは代理人が記名押印する、といった形をとることがあります。ただし、相手方が本人の署名や住所の記載を求めてくることもあり、どこまで応じるかは交渉事項になります。
示談金は弁護士の口座を通して支払える
示談金を店に直接振り込むと、振込元の口座名義や金融機関が店に伝わります。弁護士が窓口になる場合は、依頼者から弁護士の預り金口座にいったん入金し、弁護士から相手方に支払う方法をとるのが一般的です。これにより、依頼者の口座情報が店に渡ることを避けられます。
示談書で個人情報の扱いを決めておく
示談書には、金額だけでなく個人情報の扱いについての約束も入れておくことが大切です。たとえば次のような内容が考えられます。
- 店が持っている依頼者の身分証の写し・写真・動画などを削除または返還すること。
- 依頼者の家族・勤務先への連絡や、第三者への口外をしないこと。
- 今後の連絡は代理人弁護士を通すこと。
条項の考え方については風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないでも解説しています。
弁護士が入っても、店がすでに持っている情報は消えない
弁護士に依頼しても、店がすでに手にしている情報まで消えるわけではありません。予約時に伝えた電話番号、その場で撮影された免許証の写真、書かされた念書などは、店の手元に残っています。
弁護士ができるのは、これらの情報を使った連絡や公表をやめるよう求めること、示談の条件として削除や返還を約束させることです。約束が守られなかった場合に備えて、違約金の条項を設けることもあります。ただし、本当に削除されたかを外から確かめる方法は限られており、合意によってリスクを小さくしていくという考え方になります。
予約時の情報の扱われ方については【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのか、情報を握られたときの対応については風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはもあわせてご覧ください。
偽名で利用していた場合
予約やサービスを偽名で利用していた場合、本名を明かさずに交渉を進められるかは事情によります。示談書は当事者を特定できないと、後になって効力を争われるおそれがあります。本名をどの段階でどこまで示すかは、弁護士と相談して決めることになります。詳しくは【風俗トラブル】偽名で利用していた|本名を知られていない場合の請求で解説しています。
相手方が弁護士を立てた場合
店の側が弁護士に依頼した場合、相手方の弁護士が、把握している電話番号などをもとに弁護士会照会という手続で情報を調べようとすることも考えられます。照会に回答するかどうかは照会先の判断によりますが、店に知られていない情報であっても、手続によって明らかになる可能性がまったくないとはいえません。仕組みについては弁護士会照会とは|風俗トラブルで相手方を特定する仕組みをご参照ください。
「弁護士を入れたら家族に言う」と言われたとき
店から「弁護士を入れたら話は終わりだ」「家族や会社に知らせる」と言われ、相談をためらう方もいます。弁護士が入ったことをきっかけに店が態度を硬くする場面はありえますが、家族や勤務先に事実を知らせると告げて金銭を求める行為は、恐喝や脅迫として問題になることがあります。
弁護士は受任通知の中で、依頼者本人やその家族、勤務先への直接の連絡を控えるよう求めます。そのうえで、店がそれでも連絡をした場合に生じうる法的な責任を示し、店の行動を抑える方向に働きかけていきます。すべての連絡を確実に止められると約束できるものではありませんが、相談者がひとりで店とやり取りを続けるよりも、店に渡る情報を増やさずに済むことが多いと考えられます。
関連する内容は【風俗トラブル】店から「弁護士を入れたら話は終わりだ」と言われたや家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説でも取り上げています。
相談の前に整理しておきたいこと
店に何が伝わっているかを弁護士が把握できていると、伝える情報と守る情報の線を引きやすくなります。相談の前に、次の点を思い出せる範囲で整理しておくとよいでしょう。
- 予約に使った名前・電話番号・メールアドレス・SNSアカウント。
- 店で見せた、または撮影された身分証の種類。
- 書かされた念書・借用書・示談書の有無と、その控えや写真の有無。
- 店から届いたメッセージや着信の記録。
- 家族や勤務先について店で話した内容。
- 弁護士から店に伝えてほしくない情報。
すべてがそろっていなくても相談はできます。分からない部分があること自体も、弁護士にとっては方針を考える材料になります。
よくあるご質問
弁護士事務所からの郵便物で家族に知られることはありますか
連絡方法は、最初の段階で相談者と確認します。郵送を避けたい、電話は決まった時間帯にしてほしいなど、ご希望があれば遠慮なくお伝えください。当事務所では、電話・メール・LINEでのやり取りに対応しています。
相談したことが警察に伝わることはありますか
弁護士の守秘義務は警察に対しても及びます。相談者の了解なく、弁護士が相談の内容を警察に伝えることはありません。警察への対応が必要になる場面では、どう向き合うかを相談者と一緒に検討します。
店から示談書に住所を書くよう求められたら、断れますか
住所の記載は示談の成立に必須ではないため、代理人の事務所を連絡先とする形などを提案して交渉する余地があります。ただし、相手方の同意が得られるかどうかは事案によります。応じるかどうかを決める前に、弁護士にご相談ください。
弁護士への相談は、情報を広げないための手段
弁護士に相談することは、店に新しい情報を渡すことではなく、店に渡る情報を必要な範囲にとどめるための手段です。すでに店に知られている情報がある場合でも、これ以上広げないための手立てを一緒に考えることができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


