その場から帰してもらえない|監禁と不退去の境界
本記事は2026年11月時点の法令にもとづいて解説しています。売春防止法については、「買う側」の勧誘行為を規制する方向での見直しが議論されています。改正の内容や施行時期が決まった際には、最新の情報もあわせてご確認ください。
風俗店の利用後に「本番行為をしただろう」と告げられ、店から「罰金」や「示談金」の名目で金銭を求められるご相談は少なくありません。突然の請求に動揺し、その場で支払いや署名に応じてしまうと、後から内容を見直すことが難しくなる場合があります。
この記事では、本番行為を理由とする請求を受けたときに押さえておきたい前提を整理したうえで、場面ごとの「やるべきこと」と「避けたいこと」を判断表にまとめました。請求にどう向き合うか迷っている方の、整理の手がかりとしてお読みください。
請求を受けたときに押さえておきたい3つの前提
店のいう「罰金」は刑罰ではない
法律上の罰金は、刑事裁判を経て国が科す刑罰です。店が規約や誓約書に書いている「罰金」は、店が独自に定めた違約金の一種と考えられ、記載があるからといって、その金額をそのまま払う義務が当然に生じるわけではありません。利用時に規約が示されていたか、金額が実際の損害と比べて著しく高すぎないかといった点によって、効力が限定されることがあります。考え方の詳細は【風俗トラブル】店から『うちの規約では』と言われた|規約の効力を確かめる順序や損害賠償額の予定(民法420条)は風俗の規約でも有効かで解説しています。
同意の有無と、店との約束違反は分けて考える
キャストとの間で同意があったかどうかは、不同意性交等罪にあたるかという刑事上の問題に関わります。一方で、店が禁止している行為をしたというルール違反は、店との民事上の問題です。現行の売春防止法には客を処罰する規定はありませんが、同意のない性交は不同意性交等罪(刑法177条、5年以上の有期拘禁刑)の対象となります。この2つが混ざったまま話が進むと、「警察に行かれたくなければ払え」という構図に押されやすくなります。罪の成立要件については不同意性交等罪とは?風俗の本番トラブルで問題になる点を弁護士が解説をご覧ください。
正当な損害が問題になる場面もある
店やキャストに実際の損害が生じている場合、たとえば検査や治療の費用、キャストが出勤できなくなった期間の損失などは、事情によっては相当な範囲で賠償の対象になり得ます。請求を一律に拒むのではなく、名目と金額の根拠を確かめ、払う理由のある部分と、根拠の乏しい部分を切り分ける姿勢が大切です。
状況別の判断表|やるべきこと・避けたいこと
請求の場面は、店の事務所で支払いを迫られる段階から、帰宅後の電話、書面の到着、警察からの連絡まで幅があります。次の表は、ご相談の多い場面ごとに、まず取りたい行動と、後で不利になりやすい行動を並べたものです。
| 場面 | やるべきこと | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 店の事務所やホテルで支払いを迫られている | 請求の名目・金額・相手の名前を聞き取り、後日回答すると伝えて安全に場を離れる | その場で全額を払う、借用書に署名する |
| 身分証や名刺の提示を求められている | 提示する範囲を絞り、何を見せたか・撮られたかを記録する | 勤務先や家族の連絡先まで書面に書く |
| 念書・謝罪文・示談書への署名を求められている | 全文を読み、写真を撮る。事実と違う記載は直すよう求める | 「無理やりした」など事実と異なる内容を認める |
| 帰宅後に電話やLINEが続いている | やり取りを保存し、着信の日時を記録する | 何も返さず放置する、感情的に反論する |
| 「警察に行く」「家族や会社に知らせる」と言われた | 発言の日時と内容を記録し、早めに弁護士へ相談する | 不安から求められた額を急いで払う |
| 同意があったと記憶している | 誘われた経緯や会話の内容を時系列でメモする | 相手の主張に合わせて強要を認める |
| 本番行為をした覚えがない | 利用日時・予約記録・店の実在を確認する | 「払えば終わる」と考えて支払う |
| すでに支払った、または署名してしまった | 領収書や示談書の控えを確保し、条項を確認する | 追加の請求に応じ続ける |
| 警察から連絡が来た | 担当者の氏名・部署・連絡先を控え、出向く前に弁護士へ相談する | 呼び出しを放置する、店との交渉だけを進める |
どの場面にあたるかによって、急ぐべき程度も変わります。警察から連絡が来ている場合や、家族・勤務先への連絡を告げられている場合は、ご自身だけで判断せず、早めに専門家へ相談することをおすすめします。場面ごとの全体像は【保存版】風俗トラブルで今すぐやるべきこと・やってはいけないことでも整理しています。
その場で求められやすい行為と、避けたい理由
その場での支払い
「今払えばこの場で終わる」と言われても、払った金額を後の交渉で取り戻せるとは限りません。また、一度支払ったことで「認めた」と受け取られ、追加の請求につながることもあります。その場では金額と名目を聞き取り、後日改めて回答すると伝える方法が考えられます。即時払いを迫られたときの考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で解説しています。
事実と異なる書面への署名
念書や示談書に「無理やり行為をした」など事実と異なる内容が書かれている場合、その書面が後の請求や刑事手続で、ご自身に不利な資料として扱われるおそれがあります。署名を求められたら、まず全文を読み、可能であれば写真を撮っておきましょう。写真を撮れなかった場合は【風俗トラブル】店の事務所で書かされた紙の写真を撮っていない|内容を後から確かめる方法が参考になります。
必要以上の個人情報の提供
身分証の提示を強く求められ、拒みにくい場面もあるかもしれません。ただ、勤務先の名刺や家族の連絡先まで渡すと、後日の連絡が自宅や職場に及ぶ経路が増えます。提示する範囲はできるだけ絞り、何を見せたか、何を撮影されたかを記録しておくことが、その後の対応を考える材料になります。
帰宅後にやるべきこと
その場を離れた後は、記憶が鮮明なうちに事実を整理しておくことが、店との交渉でも刑事手続でも土台になります。次の順序で進めると、相談の際にも状況を伝えやすくなります。
- 利用日時・店名・キャストの名前・やり取りの流れを、時系列でメモに書き出します。
- 店とのLINE・メール・着信履歴を消さずに保存し、書かされた書面や受け取った書類も手元に残します。
- 請求の名目(罰金、示談金、検査費用など)と金額、その根拠として店が挙げた理由を分けて書き出します。
- 請求してきた店が実在するか、振込先の名義が店と一致しているかを確認します。
- 警察への届出や家族への連絡に言及されている場合は、早めに弁護士へ相談します。
請求元の確認は、身に覚えのない請求や、店の名前を使った第三者からの請求を見分けるうえでも欠かせません。確認の方法は【風俗トラブル】請求元の店が実在するか分からない|払う前の確認方法や【風俗トラブル】振込先が個人名義の口座だった|払う前に確かめることをご覧ください。
脅しを伴う請求と、話し合いによる請求の分かれ目
店の側にも、実際に生じた損害の賠償を求めること自体は認められています。ただし、「払わなければ家族や会社に知らせる」「払うまで帰さない」といった言動で支払いを迫る場合には、恐喝罪(刑法249条)や強要罪(刑法223条)が問題になり得ます。また、「被害届を出す」と告げること自体が直ちに違法とはいえませんが、本来の目的を離れて過大な金額を引き出す手段として使われている場合には、評価が変わることがあります。
脅しと受け取れる発言があったときは、日時と内容を記録し、録音が残っていれば保存しておきましょう。恐喝にあたるかどうかの考え方は「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で解説しています。
自分で対応するか、弁護士に任せるかの目安
請求額が小さく、相手方と落ち着いて話ができている場合には、ご自身で対応できることもあります。一方で、次のような事情があるときは、交渉の窓口を弁護士に移すことを検討する目安になります。
- 請求額が数十万円以上にのぼっている、または連絡のたびに金額が変わっている場合。
- 同意がなかったと主張され、警察への届出をほのめかされている場合。
- 家族や勤務先への連絡を告げられている場合。
- すでに示談書や念書に署名し、その内容に不安がある場合。
- 身に覚えのない請求で、相手方が誰なのかもはっきりしない場合。
弁護士が窓口になると、店からの連絡を弁護士に集約できます。示談に応じる場合も、清算条項やキャスト本人の合意を含めた書面を整えることが可能です。書面に入れておきたい条項は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない、依頼するかどうかの判断は【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情で解説しています。
当事務所が対応した例としては、【解決事例】性風俗店から本番行為の罰金100万円を請求された|弁護士の介入により請求額を20万円へ減額した事例や【解決事例】風俗店で「警察に行く」と告げられた本番行為トラブル|解決金30万円で三者示談が成立した事例があります。なお、解決の内容は事案ごとの事情によって異なります。
よくあるご質問
払わなければ、必ず被害届を出されますか
必ずそうなるとはいえません。店の関係者が「警察に行く」と言っても、実際には届出に至らないこともあれば、支払いを断ったことをきっかけに相談に行かれることもあります。いずれの場合でも、同意の有無に関わる当日の経緯を整理しておくことが、警察から連絡が来たときの備えになります。届出の前後の動きは【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で解説しています。
店に払えば、キャスト本人との関係も終わりますか
店との間だけで合意しても、キャスト本人が当事者として示談書に加わっていなければ、本人から別途請求や被害申告がなされる余地が残ります。示談を結ぶ場合は、誰が当事者になっているか、清算条項や被害届を出さない旨の条項が入っているかを確認することが大切です。【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続もあわせてご覧ください。
家族や勤務先に知られずに進められますか
弁護士に依頼した場合、連絡の窓口を弁護士に一本化し、書面の送付先を調整するなど、知られる経路を減らす工夫ができます。ただし、相手方がすでに自宅や勤務先を把握している場合など、完全に防げるとは言い切れない場面もあります。家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説もあわせてお読みください。
まとめ
本番行為を理由とする店からの請求では、その場で払わない、事実と異なる書面に署名しない、記録を残すという3点が、後の選択肢を守る基本になります。そのうえで、店のルール違反の問題と、同意の有無に関わる刑事上の問題を分けて整理すると、払う理由のあるものとそうでないものが見えやすくなります。判断表で自分の場面を確かめ、迷う段階で相談先を確保しておくことが、落ち着いて対応するための近道です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


