【風俗トラブル】「生でもいい」と言われて応じた後に請求されたら、どう考えればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて書いています。刑法の性犯罪規定は2023年7月施行の改正で「不同意性交等罪」に改められており、本文は改正後の条文を前提にしています。個別の事情によって結論は変わりますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


「向こうから『生でもいい』と言ってきたのに、帰り道に店から電話があり、規約違反だからお金を払えと言われた」。風俗トラブルのご相談では、このような声を男性側から伺うことがあります。一方で、キャストの側からは「その場の雰囲気で断りきれなかった」「外に出す約束だったはずだ」という受け止め方が示されることもあり、同じ場面でも双方の記憶や受け止め方が食い違うのが、この種のトラブルの特徴です。

 ネット上では「相手から言い出したのだから同意があり、罪にはならない」という説明をよく見かけます。この説明自体が誤りというわけではありません。ただ、「生でもいい」という一言が法的に意味を持つのはどこまでなのか、後から届く請求がどの名目によるものなのかによって、その一言の重みは大きく変わります。

 この記事では、キャストから避妊具を使わない行為を持ちかけられ、それに応じた後に金銭を求められた場面に絞り、請求の名目ごとの考え方、手元に残しておきたい記録、請求への向き合い方を整理します。本番行為一般の罪の成否や、避妊の有無が争点になる場面全体については、それぞれ「本番=即逮捕」ではない|不同意性交等罪の成立要件を条文から確認すると避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求に譲ります。

「生でもいい」という一言が答えになる範囲と、ならない範囲

 最初に押さえておきたいのは、キャストの一言が、どの問いに対する答えなのかという点です。一言で全てが決まるわけではなく、答えになっている部分と、別に問われる部分があります。

その一言が示すのは、避妊具を使わないことへの了解

 「生でもいい」という言葉は、文字どおりに受け取れば、避妊具を着けずに行為をすることへの了解です。行為そのものをキャストから持ちかけられたのか、すでに始まっていた行為について避妊具の有無を尋ねられたのかによっても、言葉の位置づけは変わります。

 また、了解していたのは「避妊具なしでの挿入」までで、「膣内での射精」までは含んでいなかったと後から主張されることもあります。避妊具を使わないことに了解があったとしても、その了解がどこまでを含んでいたのかは、別に問われる余地があるということです。

同意があったかどうかは、言葉が出た状況ごと評価される

 不同意性交等罪(刑法177条1項)は、暴行や脅迫、アルコールの影響、経済的・社会的な立場に基づく影響力など、刑法176条1項に挙げられた8つの事由やこれに類する事由によって、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが難しい状態で性交等をした場合に成立します。言葉の上で「いい」と言っていたかどうかだけでなく、その言葉がどのような状況で出たのかが評価の対象になります。

 たとえば、強い口調で何度も求めた後にようやく出た言葉なのか、キャストのほうから自然に持ちかけた言葉なのかによって、同じ「いい」でも受け止め方は変わり得ます。反対に、キャストから自発的に持ちかけた経緯があり、行為中もそれと食い違う様子がなかったのであれば、同意があったことをうかがわせる事情として意味を持ちます。キャストから誘われた場合の考え方は、デリヘル嬢から誘われた本番でも罪になる?「同意していた」が通用しない理由でも詳しく扱っています。

店の規則に反することと、罪に当たることは別の問題

 多くの店は、本番行為や避妊具を使わない行為を規則で禁じています。キャストが「いい」と言ったとしても、店の規則がそれで変わるわけではないため、店からは「規約違反」として請求が来ることがあります。

 ただし、店の規則に反したことと、刑事上の罪に当たることは、分けて考える必要があります。追加の料金を払って本番に至った場合の売春防止法上の位置づけは、対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかをご覧ください。

後から届く請求は、名目ごとに分けて考える

 後から届く請求は、一本の電話や一通のメッセージの中に、いくつもの名目が混ざった形で示されることが少なくありません。まずは名目ごとに分け、それぞれ誰が、何を根拠に求めているのかを確かめることが出発点になります。

請求の名目主に請求してくる相手確かめたいこと
規約違反・罰金・違約金店規約をいつ、どのように示されたか。金額が実際に生じ得る損害と釣り合っているか。
妊娠・中絶に関する費用キャスト本人(店を通す場合もある)妊娠の事実と時期。費用の内訳。
性感染症の検査・治療費キャスト本人(店を通す場合もある)感染の事実。感染した時期と経路。
同意がなかったことを前提とする示談金キャスト本人、店、または代理人弁護士同意を否定する主張の中身。被害届や警察への相談の有無。


店からの「規約違反」「罰金」名目の請求

 店が「罰金」という言葉を使っていても、私人が刑罰としての罰金を科すことはできません。規約にあらかじめ違約金の定めがあった場合は、損害賠償額の予定(民法420条)として扱われる余地がありますが、規約がきちんと示されていたか、金額が実際に生じ得る損害と比べて過大でないかによっては、公序良俗(民法90条)に照らして効力が制限されることもあります。詳しくは「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないと損害賠償額の予定(民法420条)は風俗の規約でも有効かで解説しています。

 また、キャストのほうから持ちかけたという事情は、規約違反の責任がどちらにあるのかを店に問い直す材料にもなります。店の規則を知る立場にあるキャストから持ちかけられた場面では、客だけに違反の責任を求める理由は乏しくなることがあります。

妊娠や中絶に関する費用の請求

 避妊具を使わずに行為をした以上、後になって妊娠を告げられる可能性はあります。交際関係にあった男女の事案で、中絶によって女性が受ける負担を軽くするための行動を男性側にも求め、これを怠ったことについて責任を認めた裁判例(東京高裁平成21年10月15日判決)があり、「相手から言い出したことだから自分には関係がない」とまでは言い切れない面があります。

 その一方で、風俗店での行為の場合、妊娠の時期と利用日が整合しているのかといった点は、交際関係の場合以上に丁寧な確認が必要です。医療機関の書類で妊娠の事実と時期を確かめ、費用の内訳を示してもらったうえで、どこまでを負担するのかを話し合うことになります。具体的な進め方は本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説をご覧ください。

性感染症の検査費や治療費の請求

 性感染症をうつされたとして、検査費や治療費、休業中の収入を求められることもあります。この場合、請求する側が、感染の事実と、その行為によって感染したという因果関係を示す必要があります。風俗店での行為では、感染の時期や経路の特定が交際関係に比べて難しく、争点になりやすいところです。

 一方で、ご自身の健康のためにも、早めに医療機関で検査を受けておくことをお勧めします。検査結果の扱いを含めた考え方は、【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方で整理しています。

「同意はなかった」という主張に切り替わった場合

 当初は規約違反や妊娠を理由にしていた請求が、やり取りの途中で「本当は同意していなかった」という主張に切り替わることがあります。この段階では刑事手続に進む可能性も考えに入れる必要があり、民事上の金額の話だけでは収まらなくなります。金額の話を進める前に、主張の中身が途中で変わったこと自体を記録しておくことが大切です。

 罪名を示されたときの整理の仕方は、【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理で解説しています。

「生でもいい」と言われたことをどう示すか

 請求に向き合ううえでは、キャストからの一言があったことを、どのような材料で示せるのかが重要になります。

言葉そのものより、前後の流れが手がかりになる

 多くの場合、「生でもいい」という発言は録音などの形では残っていません。そのため、行為の前後のやり取り、行為中のキャストの様子、終了後の会話、店への連絡がいつ行われたかといった前後の流れから、発言があったことや同意があったことを推し量ることになります。証拠となるものとその限界については、「同意があった」を証明できるか|風俗トラブルの証拠と限界で詳しく扱っています。

早めに手元に残しておきたい記録

 記憶は時間とともに薄れていきます。次のような事柄は、できるだけ早く、書き留めた日時を添えて残しておくとよいでしょう。

  • 利用した日時、店名、キャストの源氏名、利用場所(ホテル名や部屋番号など)。
  • キャストが「生でもいい」と言った時点と、その前後に交わした会話の内容。
  • 行為中や終了後のキャストの様子と、店への連絡がいつ行われたか。
  • 店やキャストからの連絡の日時、電話番号、LINEなどのメッセージの画面。
  • 請求額や請求の名目が、連絡のたびにどう変わったか。


 記録の整理の仕方は、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料も参考にしてください。

謝罪や事実を認める文面を急いで送らない

 早く収めたいという気持ちから、「すみませんでした」「無理をさせてしまった」といったメッセージを送ってしまう方がいます。こうした文面は、後から同意がなかったことを裏づける材料として扱われるおそれがあります。すでに送ってしまった場合の考え方は、本番を認める発言をしてしまった後にできること|自認の撤回と限界で解説しています。

請求を受けたときの進め方

 請求への対応は、金額の多い少ないよりも、手順を誤らないことが結果を左右します。

その場で金額を決めず、書面に署名しない

 「今すぐ払えば終わる」と言われ、その場で示談書に署名したり、身分証を撮影させたりしてしまうと、後から内容を見直すことが難しくなります。即時の支払いを求められたときの判断は、【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断をご覧ください。

 請求が脅しを伴う場合には、恐喝罪(刑法249条)に当たる可能性も出てきます。その場合の対応は、「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で整理しています。

交渉の相手が誰なのかを確かめる

 妊娠や性感染症、同意の有無をめぐる請求は、本来、キャスト本人の権利に関わるものです。店がキャストに代わってこれらの交渉を行い、報酬を得ている場合には、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うことを禁じた弁護士法72条との関係が問題になり得ます。実際に、風俗店の関係者が客との示談交渉をめぐって弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられた例もあります。

 店とだけ話をまとめても、キャスト本人が別に請求してくる可能性が残ることを踏まえ、誰がどの立場で求めているのかを確かめることが重要です。

支払いに応じる場合も、書面の中身で終わり方が変わる

 一定の金額を支払って解決すると決めた場合でも、合意書の当事者にキャスト本人が含まれているか、今後の請求をしない旨の清算条項があるか、被害届を出さない旨の定めがあるかなどによって、その後の見通しは大きく変わります。合意書に入れておきたい条項は、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。

 膣内での射精を理由に請求を受けた方の解決事例として、【解決事例】デリヘルで膣内射精を主張された男性が、相談当日の交渉で解決金15万円の示談に至った事例もご紹介しています。

よくあるご質問

「生でもいい」と言われた録音があれば、請求に応じる必要はありませんか

 録音は、同意があったことをうかがわせる有力な材料になり得ます。ただし、録音があるからといって店の規約に基づく請求がすべて否定されるわけではなく、了解の範囲(射精の場所など)や、その言葉が出た状況が争われることもあります。録音の扱いについては、録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方をご覧ください。

妊娠したと言われましたが、自分の子かどうか分かりません

 まずは、医療機関の書類で妊娠の事実と時期を確かめることが先です。子が生まれた場合には、DNA鑑定によって親子関係を確かめる方法もあり、認知を求められるかどうかもその結果に左右されます。急いで金額を約束せず、確認の手順を踏むことが大切です。妊娠を理由とした請求の見極め方は、「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方で解説しています。

店に支払いを済ませた後に、キャスト本人から別に請求されました

 店との合意書にキャスト本人が当事者として加わっていない場合、キャスト本人の請求は合意の対象外とされる余地があります。店との合意の内容と、支払いの名目を確かめたうえで対応を考えることになります。合意の効果と刑事手続との関係は、【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続で整理しています。

まとめ


  1. 「生でもいい」という一言は避妊具を使わないことへの了解を示すもので、了解の範囲やその言葉が出た状況は別に問われることがあります。
  2. 不同意性交等罪(刑法177条1項)の成否は、刑法176条1項の事由などによって、同意しない意思を表すことが難しい状態だったかどうかで判断されます。
  3. 店の規約違反を理由とする「罰金」は刑罰ではなく、違約金(民法420条)としての効力も、公序良俗(民法90条)の観点から制限されることがあります。
  4. 妊娠や中絶に関する費用は、妊娠の事実と時期、費用の内訳を確かめたうえで、負担の範囲を話し合います。
  5. 性感染症を理由とする請求では、感染の事実と因果関係を請求する側が示す必要があります。
  6. キャスト本人の権利に関わる交渉を店が報酬を得て代行することは、弁護士法72条との関係で問題になり得ます。
  7. 支払いに応じる場合は、キャスト本人を当事者に含め、清算条項などを備えた合意書を交わすことが大切です。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。店やキャストとのやり取りの窓口を弁護士が引き受けることで、ご本人が直接対応する負担を減らしながら、請求の名目ごとに筋道を立てて交渉を進めることができます。

すでに請求を受けて対応に迷っている方はもちろん、まだ連絡は来ていないものの「後から何か言われるのではないか」と不安を抱えている方も、早めにご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】「生でもいい」と言われて応じた後に請求されたら、どう考えればいい?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼