「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗店やキャストとのトラブルの後、店側や関係者から「金を払わなければ警察に通報する」「示談金を払わないなら家族や職場にバラす」などと迫られ、その場でお金を要求されてしまう。こうした相談は少なくありません。

 不安な気持ちにつけ込まれ、要求どおりに支払ってしまう方もいますが、一度応じると請求が繰り返されるケースもあり、慎重な対応が必要です。「通報するぞ」という言葉を用いた金銭要求は、状況によっては恐喝罪や脅迫罪にあたり得ます。つまり、脅している相手の側が犯罪に問われる可能性があるということです。

 この記事では、風俗トラブルで「金を払わなければ通報する」と脅された場合に、どのように考え、どう対処すればよいかを解説します。

なお、今まさに脅されて困っている、周囲に知られず穏便に解決したいという方は、記事を読み進めていただいたうえで、当事務所の無料相談もご検討ください。

「金を払わなければ通報する」は恐喝罪・脅迫罪にあたり得る

 まず押さえておきたいのは、相手の言動がどの犯罪に該当し得るのかという点です。自分が受けている行為の性質を把握しておくと、警察や弁護士への相談もスムーズになります。

恐喝罪(刑法249条)

 恐喝罪は、暴行や脅迫を手段として人を怖がらせ(畏怖させ)、お金などの財物を交付させる犯罪です。法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めがありません。

 「金を払わなければ通報する」「バラされたくなければ示談金を払え」といった言葉で相手を怖がらせ、実際にお金を支払わせれば、恐喝罪が成立し得ます。支払わせようとしたものの支払いに至らなかった場合でも、恐喝未遂として処罰の対象になり得ます。

強要罪(刑法223条)

 謝罪文への署名や示談書へのサインなど、義務のない行為を脅して無理やりさせようとする行為は、強要罪にあたる可能性があります。法定刑は3年以下の拘禁刑です。

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰です。

「正当な請求」との線引き

 注意したいのは、店側やキャスト側に何らかの正当な請求権(損害賠償など)がある場合でも、その取り立て方が行き過ぎれば違法になり得るという点です。

 判例では、権利を持つ者がその権利を実行することは、権利の範囲内であり、かつその方法が社会通念上一般に許容される程度を超えない限り違法にはならないが、その範囲・程度を逸脱すれば恐喝罪が成立し得る、と判断されています。

 つまり、「本来支払うべきものがあるかどうか」と「相手の要求のやり方が適法かどうか」は別の問題です。相手に一定の言い分があるように見えても、脅すような形での過大な金銭要求には応じる必要がない場合があります。

落ち度の有無で対応が変わる|2つのケース

 風俗トラブルで脅されたときの対応は、利用者側に落ち度があるかどうかで考え方が分かれます。

ケース1|利用者にまったく落ち度がない場合

 こちらに非がないにもかかわらず、言いがかりのような形で金銭を請求されているケースです。たとえば、

  • ルール違反も違法行為もしていないのに、「本番を強要された」などと事実と異なる主張をされてお金を請求される
  • キャストと店が連携して、虚偽の内容で金銭を要求してくる

 こうした場合、利用者はむしろ恐喝・脅迫の被害者の立場です。毅然と対応してよく、証拠を確保したうえで警察や弁護士に相談することが有効です。

ケース2|利用者にも一定の落ち度がある場合

 一方、本番行為や盗撮など、利用者側にも問題となり得る行為があったケースでは、「警察に相談すると自分の行為も明るみに出るのではないか」とためらう方が多くいます。

 ここで押さえておきたいのは、自分に落ち度があることと、相手の要求が適法であることは別問題だということです。仮に何らかの示談が必要な事情があったとしても、「通報するぞ」と脅して法外な金額を要求する行為までが正当化されるわけではありません。

 また、行為の性質によって法的な位置づけは異なります。たとえば、キャストの同意のある本番行為について、利用客が売春防止法違反で処罰されることは基本的にありません(同法違反が問われ得るのは店側です)。一方で、同意のない性的行為は不同意性交等罪などの重い犯罪に問われ得ます。自分の行為が法的にどう評価されるのかは判断が難しいため、支払いや示談を決める前に弁護士に確認することが大切です。

落ち度の有無を問わず、その場で結論を出さないことが重要です。次のセクションで、なぜその場での支払いが危険なのかを説明します。

1|その場で支払わない・書面にサインしない


その場で支払ってはいけない理由

 脅されている状況から早く抜け出したい一心で、要求された金銭をその場で支払ってしまう方は少なくありません。しかし、これは慎重に避けたい対応です。

一度支払うと請求が繰り返されやすい

 一度お金を支払うと、それで解決するとは限らず、日を改めて追加の金銭を要求されるケースが見られます。「支払ってくれる相手」と認識され、請求がエスカレートすることがあります。

支払ったお金を取り戻すのは容易ではない

 民法上、強迫によって行った意思表示(お金を払うという約束など)は取り消すことができます(民法96条1項)。しかし、「強迫があった」ことを証明する責任は脅された側にあり、そのハードルは高いのが実情です。清算条項(これ以上の支払義務がないことを確認する条項)を入れた書面を交わさないまま支払ってしまうと、後から追加請求を受ける余地も残ります。

 このため、その場で現金を渡したり、示談書・誓約書にサインしたりする前に、いったん立ち止まって専門家に相談することが望まれます。

脅されたときにとるべき対応

 ここでは、実際に「金を払わなければ通報する」と迫られたときの具体的な対応を整理します。

1|その場で支払わない・書面にサインしない

 現金の支払いも、示談書や誓約書へのサインも、その場で応じないことが基本です。「弁護士に相談してから改めて連絡します」と伝え、いったん持ち帰る姿勢で問題ありません。金額や条件をその場で確定させない、と考えてください。

2|証拠を確保する

 相手の言動を裏づける証拠は、後の交渉や被害申告で重要になります。

  • 通話や対面でのやりとりの録音
  • LINE・メール・SMSなどのメッセージ
  • 要求された金額・日時・状況を記録したメモ

 やりとりは削除せず、できる範囲で保存しておきましょう。

3|身分証などの取り扱いに注意する

 相手に身分証や名刺、保険証の写真を渡してしまうと、後日の連絡や請求の材料に使われることがあります。求められても、その場では応じずに持ち帰る対応が無難です。すでに渡してしまった場合でも、弁護士が窓口となって相手の接触を止められるケースがあります。

4|警察への相談を検討する

 害悪の告知を伴う金銭要求は、恐喝罪・脅迫罪として警察に相談できます。緊急性が高い場合は110番、そうでない場合は警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署への相談が考えられます。被害届の提出も選択肢です。

 ただし、行為が軽微だと判断されたり証拠が不十分だったりすると、民事不介入を理由に事件として扱ってもらえないこともあります。また、自分にも落ち度がある場合は警察への相談をためらう方もいるでしょう。そうした場合の受け皿となるのが弁護士です。

5|弁護士に相談する

 警察が動きにくいケースや、周囲に知られず穏便に解決したいケースでは、弁護士への相談が有力な選択肢になります。弁護士が代理人として窓口に入ることで、相手からの直接連絡を止め、適正な条件での解決を図ることが期待できます。

弁護士に相談するメリット

家族や職場に知られずに解決を目指せる
 弁護士が代理人として窓口になると、相手は本人・家族・勤務先に直接連絡しにくくなります。依頼者本人の携帯電話のみに連絡するなど、プライバシーに配慮した対応も可能です。

適正な金額・条件での解決が期待できる
 支払う必要のないケースでは支払わずに解決を、示談が必要なケースでは法的に妥当な金額での合意を目指せます。相手の要求に法的根拠がない部分については、根拠を示して反論できます。

相手と直接やりとりする負担がなくなる
 交渉の窓口を弁護士に一本化することで、脅してくる相手と直接対峙する精神的負担が軽減されます。相手方に対して、本人・家族・勤務先への接触禁止を求めることもできます。

落ち度がある場合も含めて見通しを立てられる
 本番や盗撮など自分にも問題となり得る行為があった場合でも、逮捕の可能性やその回避策を含めて助言を受けられます。示談が必要なケースでは、口外禁止条項や清算条項など、必要な条件を盛り込んだ形での解決を図れます。

当事務所の解決事例

 当事務所では、風俗トラブルや男女トラブルに関連する恐喝・脅迫の相談を多数お受けしています。関連する解決事例の一例を紹介します。

  • 出会い系サイトで相手方から恐喝されたものの、弁護士の介入により追加の金銭を支払うことなく解決に至った事例
  • マッチングアプリで美人局の被害に遭った男性について、弁護士が交渉し、追加の金銭支払いなしに「今後一切接触しない」旨の合意書を取り交わした事例

 いずれも、脅されて金銭を要求された段階で弁護士が代理人として介入することで、被害の拡大を防ぎ、穏便な解決につなげた事例です。風俗トラブルにおいても、早い段階での相談ほど取り得る選択肢が多くなります。

よくある質問

Q. 自分にも落ち度があります。それでも相談していいのでしょうか

 はい。落ち度の有無にかかわらず相談できます。仮に示談が必要な事情があっても、脅すような形での過大な要求に応じる義務まではありません。自分の行為の法的な位置づけと適正な対応を、支払いを決める前に確認することをおすすめします。

Q. すでにお金を払ってしまいました。取り戻せますか。

 強迫による支払いは民法上取り消せる可能性がありますが、立証のハードルは高く、状況によります。追加請求を止めることも含め、早めに弁護士へご相談ください。

Q. 家族や職場に知られたくありません。内密に解決できますか

 弁護士が窓口になることで、相手が家族や勤務先に接触しにくくなり、周囲に知られずに解決を目指せるケースがあります。連絡方法にも配慮いたします。

Q. 相手が「訴える」「通報する」と言っています。従うしかないのでしょうか

 必ずしもそうではありません。相手に正当な請求権があるかどうかと、その要求のやり方が適法かどうかは別問題です。まずは支払いやサインを保留し、証拠を確保したうえでご相談ください。

まとめ

  • 「金を払わなければ通報する」という金銭要求は、恐喝罪・脅迫罪にあたり得ます。
  • 相手に一定の言い分があっても、脅すような過大な要求に応じる義務があるとは限りません。
  • その場での支払いやサインは避け、証拠を確保しましょう。一度支払うと請求が繰り返されることがあります。
  • 自分に落ち度がある場合でも、弁護士に相談することで見通しを立て、周囲に知られずに解決できる可能性があります。

 当事務所では、風俗トラブル・男女トラブルに伴う恐喝・脅迫の相談を、24時間・全国対応の無料相談で受け付けています。「脅されて支払うべきか迷っている」「周囲に知られず解決したい」という方は、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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