利用した風俗・メンエスが摘発された|客も逮捕・事情聴取されるのか
この記事は、2026年10月時点の刑法、民法、弁護士法に基づいて記載しています。不同意性交等罪については、2023年7月13日施行の改正刑法による規定を前提にしています。
「プレイの途中で避妊具が破れていることに気づき、その場でアフターピル代として1万円を渡した。帰り道から店の番号で何度も着信があり、折り返すのが怖い」。「店のスタッフから『女の子が不安で仕事を休んでいる。罰金と慰謝料で50万円』と言われた。破れたのはわざとではないのに、払わなければいけないのか」。避妊具が破れた後の金銭の請求については、このようなご相談が寄せられます。
インターネット上では、「店の罰金に払う義務はない」という説明と、「早めに示談したほうがよい」という説明の両方が見つかります。どちらもそれ自体が誤りというわけではありません。ただ、避妊具が破れたという出来事には、破れた経緯、その前に行われていた行為の内容、求められているお金の名目という複数の要素が重なっており、どちらの説明が当てはまるかは、その組み合わせによって変わります。
この記事では、避妊具が破れたこと自体の法的な位置づけと、店から求められたお金を名目ごとに仕分けて「払うべきか」を判断する考え方を扱います。避妊の有無そのものが争点になる場面は避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求で、後から妊娠を理由に請求された場面は本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説で取り上げています。
避妊具が破れたことは、それだけで責任を生じるのか
破れたことと、外したことは分けて考えられる
避妊具は、正しく着けていても、使用中に破れたり外れたりすることがあります。損害賠償の責任(民法709条)は、故意または過失によって相手に損害を与えた場合に生じるものです。適切に着けていたのに破れてしまった場面と、相手に告げずに自分から外した場面とでは、法的な評価の出発点が異なります。
一方で、破れていることに気づいた後もそのまま続けた、気づいたのに相手に伝えなかった、といった事情があると、破れた後の振る舞いについて配慮を欠いていたと指摘されることがあります。破れたという同じ出来事でも、前後の事情によって評価は変わり得ます。
問われやすいのは、破れる前の行為のほう
デリバリーヘルスや店舗型のヘルス、メンズエステなど、性交がサービスに含まれていない業態では、避妊具が破れたということは、性交が行われていたことを意味します。そのため、店やキャストとの話し合いでは、破れたことそのものよりも、性交に同意があったかどうかが中心の論点になることが少なくありません。
同意のない性交は、不同意性交等罪(刑法177条1項)として扱われる可能性があり、この場合は避妊具が破れたかどうかとは別に、刑事手続の見通しを考える必要が出てきます。反対に、キャストの側から持ちかけられた場合や、双方の合意のうえで行われた場合には、店の規約違反の問題は残るとしても、刑事事件として扱われる場面とは前提が異なります。
破れた後にどう振る舞ったかも見られる
破れたことに気づいた時点でキャストに伝え、行為を止め、受診や費用について話をしたという経過は、誠実に対応したことを示す事情になります。反対に、その場を急いで立ち去った、連絡に一切応じていないといった経過は、相手方の不信感を強め、請求の金額や態度に影響することがあります。避妊具が破れたこと自体よりも、その前の行為に同意があったか、破れた後にどう振る舞ったかが、評価の中心になります。
求められたお金を、名目ごとに分けて考える
総額ではなく、内訳を確かめる
店から示される金額は、「示談金」や「罰金」として一つの数字で示されることが多くあります。しかし、その中には性質の異なるお金が混ざっていることがあり、名目ごとに見ると、根拠を確かめられるものとそうでないものに分かれます。
| 名目 | 考え方の出発点 | 確かめておきたいこと |
|---|---|---|
| 緊急避妊薬(アフターピル)の費用 | 実際にかかった費用であれば、負担を話し合う余地がある | 金額、受診した日、領収書の有無 |
| 性感染症の検査費用 | 同上。検査は時期をあけて複数回行われることがある | 検査の内容と時期、領収書の有無 |
| 休業の補償 | 実際に休んだ日数と、そのために得られなかった収入が前提になる | 休んだ期間と、その根拠 |
| 慰謝料 | 破れた経緯や、性交への同意の有無によって大きく変わる | 何についての慰謝料なのか |
| 罰金・違約金 | 私人が罰金を科すことはできず、規約上の違約金も金額によっては効力が制限される | 規約の内容と、利用時に示されていたか |
| 店の損害 | 店自身にどのような損害が生じたのかが具体的に示される必要がある | 損害の内容と金額の根拠 |
実費は、領収書と引き換えに考える
緊急避妊薬は、性交後できるだけ早く服用することが求められる薬であり、キャストにとっては急いで受診する必要がある事情です。避妊具が破れた直後に、その費用を負担すると申し出ることは、相手への配慮として自然な対応といえます。
ただし、渡すときには、何の費用として、いくらを渡したのかを記録しておくことが大切です。後日、領収書の写しを示してもらい、実際にかかった費用と照らし合わせることができれば、実費の範囲で区切りをつける話し合いがしやすくなります。治療費や検査費、休業の補償がどこまで認められるかは、治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討で項目ごとに整理しています。
慰謝料は、何についての慰謝料かを確かめる
慰謝料は、精神的な苦痛に対する賠償です(民法710条)。避妊具が破れたことによる不安を理由とするのか、同意のない性交を理由とするのかによって、前提も金額の考え方も大きく異なります。請求の理由が曖昧なまま金額だけが示されている場合には、まず何についての請求なのかを確かめることになります。
「罰金」という名目だけでは支払う根拠にならない
刑罰としての罰金を科すことができるのは裁判所だけであり、店が客に罰金を科すことはできません。店の規約に「本番行為は罰金〇〇万円」といった定めがある場合でも、それは損害賠償額の予定(民法420条1項)として扱われる余地があるにとどまり、そもそも利用時に規約が示されていたか、金額が過大でないか(民法90条)といった点が問題になります。詳しくは「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないをご覧ください。総額で示された請求も、名目ごとに分ければ、実費として話し合えるものと、根拠を確かめる必要があるものに分かれます。
その場で払うかどうかを決める前に
一部を払っても、それで終わるとは限らない
避妊具が破れた直後にアフターピル代を渡したものの、その後に店から改めて連絡があり、慰謝料や罰金を求められたというご相談は少なくありません。その場でのお金のやり取りが口頭だけで済まされていると、それがどの範囲の清算だったのかが後から争いになります。
支払いによって一切を終わらせるのであれば、支払う金額のほかに、これ以上の請求をしないことを確認する条項(清算条項)を含む書面を交わすことが一般的です(民法695条・696条)。店側が用意した書面に署名する場合の注意点は、店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴で取り上げています。
即時払いを求められたときは、名目と引き換えを言葉にする
「今払えばこの場で終わる」と言われると、早く解放されたい気持ちから応じたくなるものです。その場で払うかどうかを考える際には、何の名目で、いくらを、何と引き換えに支払うのかが明確になっているかが手がかりになります。この点は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断でも整理しています。
支払いと通報や家族への連絡が結び付けられたとき
損害の賠償を求めること自体は、正当な権利の行使です。ただし、「払わなければ家族や職場に知らせる」といった告げ方によって支払いを求めることは、権利の行使であっても社会通念上許される範囲を超えると、恐喝罪(刑法249条1項)が問題になることがあります。境界の考え方は店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界をご参照ください。
また、キャスト本人に生じた損害について、店が報酬を得る目的で代わりに交渉することには、弁護士法72条との関係で問題が指摘されることがあります。店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点もあわせてご覧ください。その場で払うかどうかは、払う名目、金額、払うことで何が終わるのかが言葉になっているかで判断します。
状況によって変わる「払うべきか」の判断
性交への同意が争われていないとき
性交への同意が争われておらず、避妊具が破れたことへの対応だけが問題になっている場合には、緊急避妊薬や検査にかかった実費を中心に、負担の範囲を話し合う形が考えられます。罰金や過大な慰謝料が含まれていれば、その部分は根拠を確かめたうえで交渉することになります。
「同意がなかった」と言われたとき
避妊具が破れたことをきっかけに、キャストや店から性交への同意がなかったと主張された場合には、民事上の請求だけでなく、被害届が出される可能性を含めて考える必要があります。この場面での示談は、刑事手続の見通しにも関わるため、支払う金額と書面の内容をより慎重に検討することになります。当事務所が扱った例として、【解決事例】デリヘルで膣内射精を主張された男性が、相談当日の交渉で解決金15万円の示談に至った事例もご参照ください。
後から妊娠や感染症を告げられたとき
避妊具が破れた後、しばらくしてから妊娠や性感染症を告げられることもあります。この場合は、主張の裏付けとなる資料が示されているか、時期が利用日と整合しているかといった点を確かめることが出発点になります。感染症については【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方、裏付けの乏しい請求の見分け方については「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方で取り上げています。
| 状況 | 判断の中心になること |
|---|---|
| 同意のうえの行為中に破れ、すぐに伝えた | 実費の範囲で負担を話し合い、書面で区切る |
| 同意のうえの行為だが、罰金や高額な慰謝料も求められている | 実費とそれ以外を分け、それ以外は根拠を確かめる |
| 性交への同意がなかったと主張されている | 刑事手続の見通しを踏まえて示談の内容を検討する |
| 後から妊娠や感染症を告げられた | 裏付けの資料と時期の整合性を確かめる |
同じ「避妊具が破れた」という出来事でも、同意が争われているかどうかによって、払うべきかの判断は大きく変わります。
弁護士に相談すると変わること
連絡の窓口を一本にできる
弁護士に依頼すると、店やキャストとのやり取りは弁護士が窓口となり、ご本人に直接届いていた電話やメッセージへの対応を任せることができます。窓口の切り替えについては、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで説明しています。
実費とそれ以外を切り分けて交渉できる
弁護士は、請求の内訳を確認し、領収書などの資料の提示を求めたうえで、実費として負担するものと、根拠を確かめる必要があるものを切り分けて交渉します。支払いをする場合には、清算条項や接触禁止を含む書面を整え、後から蒸し返されにくい形で区切りをつけることを目指します。妊娠を理由とする高額な請求について、当事務所が介入した例として、【解決事例】ソープ嬢からの妊娠報告・中絶費用請求|弁護士の介入により300万円を20万円に減額した事例もご参照ください。弁護士が入ることで、負担すべき費用と根拠の乏しい請求を分けたうえで、書面によって区切りをつけやすくなります。
よくあるご質問
その場でアフターピル代を渡しました。後日さらに請求されたら、払う必要がありますか?
渡したお金が何の費用だったのか、それで一切を終わらせる約束があったのかによって変わります。口頭のやり取りだけで、清算の範囲が決まっていなかった場合には、追加の請求が直ちに否定されるわけではありません。ただし、追加の請求についても、名目と根拠を確かめたうえで判断することになり、言われた金額をそのまま払う必要があるとは限りません。
店の規約に「罰金」と書いてあった場合は、払わなければいけませんか?
店が客に刑罰としての罰金を科すことはできません。規約の定めは損害賠償額の予定として扱われる余地はありますが、利用時に規約が示されていたか、金額が過大でないかといった点が問われます。規約に書いてあることだけを理由に、示された金額を支払う義務が当然に生じるわけではありません。
店からの着信に出ていません。このまま放っておいても大丈夫ですか?
すぐに折り返さなければならない法的な義務はありません。ただ、連絡に一切応じないままでいると、相手方の不信感が強まり、請求の態度や、被害届を出すかどうかの判断に影響することもあります。ご自身で対応するのが難しい場合には、弁護士に窓口を任せたうえで、相手方の言い分を確かめる方法もあります。
まとめ
- 損害賠償の責任は故意または過失がある場合に生じるため(民法709条)、適切に着けていた避妊具が破れた場面と、告げずに外した場面とでは評価の出発点が異なる。
- 性交がサービスに含まれない業態では、破れたことよりも性交への同意の有無が中心の論点になりやすく、同意がなければ不同意性交等罪(刑法177条1項)が問題になり得る。
- 店から示された金額は、緊急避妊薬や検査の実費、休業の補償、慰謝料(民法710条)、罰金・違約金などの名目に分けて根拠を確かめる。
- 店が客に罰金を科すことはできず、規約上の違約金も損害賠償額の予定(民法420条1項)として扱われるにとどまり、過大な部分は効力が制限されることがある(民法90条)。
- その場で一部を支払っても、清算条項を含む書面がなければ追加の請求が続くことがあるため、払う名目と範囲を書面で明確にする(民法695条・696条)。
- 支払いと家族や職場への連絡を結び付けた求め方は、権利の行使の範囲を超えると恐喝罪(刑法249条1項)が問題になることがある。
- 弁護士に依頼すると、窓口を一本にしたうえで、実費とそれ以外の請求を切り分けて交渉し、書面で区切りをつけることを目指せる。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。避妊具が破れた後に、店やキャストから金銭の支払いを求められている場合もご相談いただけます。
求められている金額のうち、どこまでを負担するのが妥当なのか分からない方、その場で一部を支払ったものの後から追加の連絡が続いている方は、お早めにご相談ください。


