AV・アダルトライブ配信をめぐるトラブル|視聴・購入側の論点
この記事は、2026年10月1日時点の法令にもとづいて書いています。売春防止法については、法務省の有識者検討会で「買う側」に関する規定の見直しが議論されており、今後の法改正によって内容が変わる可能性があります。
「お店ではなく個人同士だから、何かあっても大ごとにはならないと思っていた」。SNSで知り合った相手と有料で会った後にトラブルになった方から、こうした言葉を聞くことがあります。反対に、お金を受け取って会う側からも「お店を通していないので、約束の金額が払われなくても誰にも相談できない」という声が寄せられます。
「成人同士なら、個人間の売春に罰則はない」「食事だけなら問題はない」という説明は、それ自体が誤りというわけではありません。ただ、その説明からは、店がないことで何が欠けるのか、トラブルになったときにどこで行き詰まるのかが見えにくくなっています。
この記事では、「風俗店ではない」という状態が、刑事・民事・相手方の特定・相談先の四つの面で何を意味するのかを整理します。相手が18歳未満だった場合の刑事責任、立ちんぼや援デリといった個別の類型、前払い金の返還については、それぞれ別の記事で詳しく扱っていますので、本文中のご案内からご覧ください。
「風俗店ではない」とはどういう状態か
風営法の規制は「営業」を前提に組み立てられている
風俗店は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)にもとづき、公安委員会に届出をして営業しています。店舗を構える形であれば店舗型性風俗特殊営業(風営法2条6項)、ホテルや自宅に人を派遣する形であれば無店舗型性風俗特殊営業(同法2条7項)にあたり、営業者には届出や従業者名簿の備付けなどの義務が課されます(同法27条、31条の2、36条)。
これらの規制は、事業者が客にサービスを提供する「営業」を対象にしています。SNSで知り合った個人が、自分自身の時間を対価と引き換えに提供するという形は、この枠組みにそのまま当てはまらない場面が多く、「店ではない」とは、風営法が予定している監督や義務の外側にいる状態だと考えると分かりやすいでしょう。
店があれば当然に存在していたもの
風俗店を利用する場合、客はあまり意識しないまま、いくつかの仕組みの上に乗っています。店がない場合には、次のようなものがはじめから存在しません。
- 働く人の年齢を確認する義務を負った事業者。
- 相手方としての営業者と、届け出られた事務所や店舗の所在地。
- 料金表や店の規約など、交渉の起点になる取り決め。
- 公安委員会への申告など、行政に問題を伝える経路。
たとえば風俗店では、営業者が、客に接する業務に就かせる人の生年月日を確認する義務を負っています(風営法36条の2)。個人と会う場合、この確認を担う人はいません。後で述べるとおり、この差は刑事面で大きな意味を持ちます。店が存在しない場合のトラブル全般については立ちんぼ・個人売春の相手とのトラブル|店が存在しない場合もあわせてご覧ください。
「個人」を名乗る業者という中間形態
SNS上で「個人です」と名乗っていても、実際には背後に人を手配する者がいて、届出をしないまま派遣を繰り返しているという場合があります。この場合は「店がない」のではなく、「届出のない店がある」状態です。届出の義務を負うのは営業を営む側であり、利用した客が風営法で処罰されるわけではありませんが、摘発の際に参考人として事情を聴かれる可能性はあります。具体的な場面は援デリ・派遣型の個人売春トラブル|店を介さない危険で解説しています。
刑事面|店の有無で変わらないことと変わること
売春防止法は店の有無を区別していない
売春防止法は、「売春」を、対償を受け、または受ける約束で不特定の相手方と性交することと定め(売春防止法2条)、売春をすること、その相手方となることを禁じています(同法3条)。ただし、この禁止そのものに罰則はなく、現行法で処罰されるのは、売る側の勧誘(同法5条)や周旋、場所の提供など、売春を助長する行為です。
この構造は、相手が店で働いている人か個人かで変わりません。成人同士の個人間の行為について、客を売春防止法で処罰する規定は、2026年10月1日時点ではありません。また、食事や同席だけの約束であれば、そもそも売春の定義には当たりません。対価を払って性交に至った場合の位置づけは対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかで詳しく扱っています。
相手が18歳未満だった場合、確認の責任は自分に残る
店の有無で大きく変わるのは、相手の年齢の問題です。18歳未満の者に対価を払い、または払う約束をして性交や性交類似行為をすると、児童買春として5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になります(児童買春・児童ポルノ禁止法2条2項、4条)。対価のやり取りがなくても、都道府県の青少年健全育成条例で処罰される場合があります。
風俗店であれば、年齢を確認する義務は営業者が負っています。個人と会う場合にはその仕組みがないため、相手の年齢を確かめる負担は、事実上、会う側に残ります。SNSでのやり取りや会ったときの様子から、18歳未満かもしれないと認識し得たと判断されることもあり、「成人だと言われた」という事情だけで責任を免れられるとは限りません。詳しくはJKビジネス・パパ活で相手が18歳未満だったら|客に問われる刑事責任のすべてとSNSで知り合った未成年とのやり取り|どの段階から違法になるかをご覧ください。
「買う側」をめぐる法改正の議論
売春防止法については、法務省の「売買春に係る規制の在り方検討会」で見直しが議論されています。報道によれば、検討会では買う側の処罰規定の導入の是非や、売春として禁止する行為の範囲が論点として整理され、2026年9月には、買う側の勧誘行為などへの罰則を盛り込んだ報告書案がまとめられたと伝えられています。
2026年10月1日時点で改正法は成立しておらず、どのような行為が対象になるかも確定していません。ただ、SNS上で「有料で会える人」を募る書き込みは、議論されている「買う側の勧誘」と重なりやすい行為です。これまで売る側の勧誘だけが処罰されてきた構造が変わる可能性がある点は、知っておいたほうがよいでしょう。
民事面|約束した金額はどう扱われるか
食事や同席への対価と、性的関係への対価
食事や会話に付き合ってもらうことへの対価は、合意があれば契約として扱われ、それ自体が違法になるわけではありません。これに対し、性的関係を持つことを対価とする約束は、公序良俗に反して無効と判断される可能性が高いと考えられます(民法90条)。
そのため、性的関係を内容とする約束について「約束した金額を払え」と請求されても、法的にその支払いを強制する根拠は乏しいことになります。受け取る側から見れば、約束の金額が払われなくても裁判で請求することは難しいということでもあります。店がないトラブルでは、約束の内容が食事や同席にとどまっていたのか、性的関係を含んでいたのかが、その後の評価を分けることになります。パパ活から性的関係に至った場合の評価はパパ活から性的関係に至った後のトラブル|対価と同意の評価で扱っています。
払った後に取り戻せるか
公序良俗に反する約束にもとづいて支払ったお金は、不法原因給付として返還を求めることが難しくなります(民法708条)。性的関係を内容とする約束で前払いをし、相手が来なかったという場合、返還の請求は簡単ではありません。
一方、食事や同席の約束で前払いをし、相手が現れなかった場合には、約束が果たされなかったことを理由に返還を求める余地があります。会う前の段階で「保証金」や「登録料」といった名目の支払いを求められ、相手がはじめから会うつもりがなかったと疑われる場合には、警察への相談も検討することになります。もっとも、相手の氏名や住所が分からなければ請求の相手方を特定できず、金額が小さければ費用との兼ね合いも問題になります。具体的な進め方は前払いしたのに相手が来ない|個人間の前払いトラブルで解説しています。
消費者保護の仕組みが届きにくい
消費者契約法は、消費者と事業者の間の契約を対象にしています(消費者契約法2条)。風俗店のように事業者が相手であれば、不当な違約金の定めや、誤認・困惑による契約に対して、この法律を使った主張を検討できます。有料でデートの相手を手配する業者を通した場合も、業者が事業者として相手方になります(【男女トラブル】有償の恋愛代行サービス(レンタル彼氏・彼女)のトラブル)。
個人と個人の間の約束には、原則としてこの法律は適用されません。各地の消費生活センターも、事業者と消費者の間のトラブルを主に扱う窓口であるため、純粋な個人間の問題では対応が限られることがあります。ただし、相手が個人を名乗っていても、同じような取引を反復して収入を得ている場合には、事業者として扱われる余地もあります。
トラブルになったときに起きやすいこと
相手の氏名や住所が分からない
個人とのトラブルでまず直面するのは、相手が誰なのか分からないという問題です。SNSのアカウント名と、待ち合わせのときに見た顔しか知らないということも珍しくありません。
弁護士が受任すれば、電話番号や決済の記録などを手がかりに、弁護士会照会(弁護士法23条の2)を通じて相手方の情報を照会できる場合があります。照会に応じるかどうかは照会先の判断によりますが、相手方を特定して交渉に進んだ例として【解決事例】マッチングアプリで出会った相手から盗撮された|弁護士会照会による身元特定と交渉で画像削除および解決金受領を実現した事例があります。
第三者が現れて金銭を求められる
店であれば、トラブルの相手方は店かキャスト本人に限られるのが通常です。個人と会った場合には、会った後に「彼氏」や「知人」を名乗る人物が現れ、慰謝料や示談金を求められることがあります。相手方の立場も請求の根拠も不明確なまま支払うと、後になって別の人物から再び請求されるおそれもあります。
請求を受けたときは、誰が、どのような権利にもとづいて求めているのかを確かめることが先決です。見分け方は美人局と正当な慰謝料請求の見分け方|払う前に確認すべきこと、支払った後に生じる問題は【風俗トラブル】支払った後に相手が別人だと分かった|本人確認をしない示談の危うさで扱っています。
「警察に通報する」と言われたとき
「売春で通報する」と告げられて金銭を求められるというご相談もあります。前に述べたとおり、成人同士の行為について客を処罰する規定は現行法にはなく、通報を背景にした金銭の要求は、内容によっては恐喝(刑法249条)にあたる可能性があります。
ただし、相手が18歳未満だった可能性がある場合や、同意の有無が争われている場合は事情が異なり、通報の告知を軽く考えるべきではありません。いずれの場合も、その場で支払いや書面への署名に応じず、やり取りを残したうえで、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
店がある場合と比べた手段の違い
届出をした風俗店を利用した場合と、個人と有料で会った場合とでは、トラブルの際に頼れる仕組みが次のように異なります。
| 論点 | 風俗店を利用した場合 | 個人と有料で会った場合 |
|---|---|---|
| 相手方の所在 | 届出により営業者と所在地が把握されている | 氏名や住所が分からないことが多い |
| 相手の年齢 | 営業者に生年月日の確認義務がある | 確認する仕組みがなく、負担は会う側に残る |
| 料金・ルール | 料金表や規約があり、交渉の起点になる | SNS上のやり取りがすべてになる |
| 行政への申告 | 公安委員会への申告などが使える | 風営法上の申告の対象になりにくい |
| 消費者保護 | 店が事業者として消費者契約法の対象になる | 個人間の約束は原則として対象外 |
風俗店とのトラブルであれば、【風俗トラブル】公安委員会への申告はどう行うのか|110番・生活安全課との使い分けで紹介しているような行政の経路も使えます。個人とのトラブルでは、こうした経路が使えないぶん、警察への相談と弁護士による交渉が中心になります。身の危険を感じる場合やお金をだまし取られた場合は警察へ、相手方の特定や請求への対応が必要な場合は弁護士へ、という使い分けが基本になります。
よくあるご質問
食事だけのつもりで有料で会いました。お金を払ったこと自体が問題になりますか。
食事や会話に付き合ってもらう対価を払うこと自体は、違法ではありません。ただし、相手が18歳未満であれば、深夜に連れ出すことなどが青少年健全育成条例に触れる場合があります。また、会っているうちに性的関係を求める流れになれば、評価は変わります。店のように年齢を確認する仕組みがない以上、相手の年齢に疑問があるときは会わないという判断も含めて考えることが大切です。
相手は「個人」と言っていましたが、後で業者が関わっていたと分かりました。私はどうなりますか。
届出をせずに派遣を行っていた場合、風営法上の責任を負うのは営業を営んでいた側です。利用しただけの客が、そのことを理由に風営法で処罰されることは通常ありません。ただし、業者が摘発されると、予約や連絡の記録から客に事情聴取の連絡が来ることがあります。対応の考え方は【風俗トラブル】無許可営業の店を利用していた|罰則強化後に客の立場はどうなるかをご覧ください。
風俗店で知り合ったキャストと、店を通さずに有料で会うのは「個人」と同じですか。
店を通さないという点では個人と会う場合と同じく、店の仕組みの外側に出ることになります。それに加えて、店とキャストの間の取り決めに反する可能性があり、後から店側に知られて金銭を求められるなど、店との関係でのトラブルが加わることがあります。詳しくは【風俗トラブル】『店を通さずに会おう』と持ちかけられた|裏引きの当事者になる危険で解説しています。
まとめ
- 「風俗店ではない」とは、届出をした営業者に課される監督や義務(風営法27条、31条の2、36条)の外側にいる状態を指す。
- 売春防止法は店の有無を区別しておらず、成人同士の行為について客を処罰する規定は2026年10月1日時点ではない(売春防止法3条、5条)。
- 店がない場合は相手の年齢を確認する仕組みがなく、相手が18歳未満であれば児童買春として処罰の対象になる(児童買春・児童ポルノ禁止法4条)。
- 性的関係を対価とする約束は無効とされる可能性が高く、支払ったお金の返還も難しくなる(民法90条、708条)。
- 個人間の約束には原則として消費者契約法が適用されず、消費生活センターの対応も限られることがある(消費者契約法2条)。
- 相手方の特定には弁護士会照会が使える場合があり、通報をちらつかせた金銭の要求は恐喝にあたる可能性がある(弁護士法23条の2、刑法249条)。
- 買う側の勧誘などを処罰の対象に加える法改正が議論されており、今後の動向に注意が必要である。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店や個人間の有料の出会いをめぐるトラブルに関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手が誰なのか分からない、会った後に金銭を求められている、通報すると言われているといった状況でも、まずは事実関係を整理するところからお手伝いします。
請求を受けて対応に迷っている方も、約束が守られずお金を取り戻したいとお考えの方も、一人で相手とのやり取りを続ける前にご相談ください。


