本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗店の利用後に、相手の女性から「妊娠した。中絶費用を払ってほしい」「慰謝料も払ってほしい」と請求され、どう対応すべきか分からず不安を抱えていませんか。高額な金額を提示され、その場の勢いで支払ってしまいそうになっている方もいるかもしれません。

 まず落ち着いて確認したいのは、①本当に妊娠していて、自分に関係のある事柄なのか、②法律上、負担すべきなのはどこまでなのかという2点です。相手の言い値のすべてに応じなければならないとは限りません。

 この記事では、妊娠・中絶費用を請求されたときに知っておきたい法律の考え方と、現実的な対処法を、過度に不安をあおることなく、また相手方の状況にも配慮しながら整理します。

まず確認すべきこと:妊娠の事実と「自分に関係するのか」

 支払いの是非を考える前に、事実関係の確認が出発点になります。

 確認したいのは、妊娠が事実なのか(診断書などで確認できるか)、妊娠の時期と自分が関係を持った時期が整合するのか、そして父となる可能性が本当に自分にあるのか、という点です。相手が不特定多数と接する立場である場合、父子関係が当然の前提になるとは限りません。父子関係については、DNA鑑定によって確認する方法があります。

 残念ながら、妊娠を口実に高額な金銭を求める、という不当な請求が存在することも事実です。だからこそ、事実の裏づけがないまま安易に「自分の責任だ」と認めたり、その場で支払ったりすることは避けるべきです。

 一方で、これは相手の女性の心身にも大きな負担がかかりうる、デリケートな問題です。事実は冷静に確認しつつ、いたずらに相手を敵視するような対応は、かえってトラブルを長引かせます。

中絶費用は誰が負担するのか

 妊娠が事実で、自分に関係することも確認できた場合、次に問題になるのが負担の範囲です。

 性行為は男女の共同行為であり、その結果生じる妊娠・中絶の負担も、双方で分担するのが基本的な考え方です。したがって、合意のうえでの性交渉から妊娠し、中絶に至った場合、中絶にかかった費用については、その半額程度を負担するのが原則的な目安になります。

 裏を返せば、「全額を払え」という請求が、当然に認められるわけではありません。中絶費用は、手術を受ける時期(妊娠週数)によって金額が大きく変わります。まずは実際にかかった費用の裏づけを確認し、そのうえで負担の範囲を考えることになります。実費を大きく超える請求には、その根拠を求めてよいのです。

慰謝料は「合意があれば原則発生しない」——ただし例外がある

 請求には「中絶費用」だけでなく「慰謝料」が含まれていることがあります。ここは誤解が多いところなので、丁寧に整理します。

 双方が合意のうえで性交渉を行い、その結果として妊娠・中絶に至った場合、中絶したこと自体を理由とする慰謝料は、基本的には認められません。慰謝料は相手の違法な行為(権利侵害)によって生じるものですが、同意のある性行為には、原則としてその権利侵害がないと考えられるためです。

 ただし、次のような事情がある場合には、例外的に慰謝料が認められることがあります。

  • そもそも性交渉自体に同意がなかった場合
  • 「避妊する」と偽るなどして、妊娠に関する自己決定を侵害した場合
  • 脅迫や暴力によって中絶を強要した場合
  • 妊娠・中絶をめぐって、男性の対応が著しく不誠実だった場合(話し合いに一切応じないなど)

 最後の点については、裁判例でも、性行為が共同行為である以上、男性には女性の心身の負担を軽減する義務があるとされ、その義務を怠った場合に、生じた損害の半分程度の慰謝料の支払いが命じられた例があります。一方で、同様に合意のあった事案でも、認められた慰謝料が数十万円程度にとどまった裁判例もあり、金額は事情によって大きく異なります。

 なお、避妊の方法について女性もリスクを引き受けていたと評価できる場合には、慰謝料は認められにくくなる傾向があります。いずれにせよ、請求された慰謝料の金額が妥当かどうかは、経緯を踏まえた個別の判断が必要です。

過大な請求・脅しには、そのまま応じる義務はない

 事実の裏づけがないのに高額を求められたり、「払わなければ会社や家族に知らせる」といった言葉で支払いを迫られたりする場合、それは不当な請求であり、脅しの内容によっては恐喝罪にあたる可能性もあります。

 こうした場面では、その場で支払わない、示談書や念書にサインしない、身分証を渡さない、本人だけで直接交渉しない、という対応が基本です。脅すような言動があった場合は、そのやり取りの記録を証拠として残しておいてください。

出産する場合(認知・養育費)は、また別の問題

 相手が中絶ではなく出産を選ぶ場合には、話が変わります。父子関係が認められれば、認知や養育費といった、子ども自身の権利に関わる問題が生じます。これは当事者間の「手切れ金」で清算できる性質のものではなく、中絶費用の請求とは切り分けて、別途慎重に対応する必要があります。

トラブルになったら

  • まず、妊娠の事実と父子関係の確認を求める。裏づけのないまま認めたり支払ったりしない。
  • 中絶費用は折半という考えが基本、慰謝料は合意があれば限定的、という枠組みを踏まえ、請求された金額が妥当かを見極める。
  • 過大な請求や脅しには、そのまま応じない。
  • できるだけ早く弁護士に相談する。弁護士が窓口に入れば、相手方への連絡や交渉を任せられ、家族・職場へ知られるリスクを抑えつつ、内容証明への対応や示談を適正な範囲で進めやすくなる。

まとめ

  • 妊娠・中絶費用を請求されたら、まず妊娠の事実と父子関係を確認する。裏づけのないまま認めたり支払ったりしない。
  • 合意のうえの性交渉による中絶なら、中絶費用は折半という考えを基本に話し合いで調整する、全額請求が当然に通るわけではない。
  • 慰謝料は、合意があれば原則発生しない。避妊に関する虚偽、不同意、中絶の強要、著しく不誠実な対応などの例外がある場合に、事情に応じて認められうる。
  • 過大請求や脅しには応じる義務はない。出産の場合の認知・養育費は別問題。
  • 一人で抱え込まず、早めに弁護士へ相談を。

 若井綜合法律事務所は、男女間のトラブルや風俗にまつわるトラブルを、家族や職場に知られることなく、穏便かつ迅速に解決することを大切にしている法律事務所です。まずはお気軽にご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼