本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説
「嬢の方から誘ってきたのだから、同意はあったはず。だから自分は大丈夫」——本番行為をめぐって、こう考えている方は少なくありません。
確かに、真に合意があったのであれば、本番行為をしたこと自体を理由に、お客様側が処罰されるわけではありません。しかし現実には、「向こうから誘ってきた」「同意していた」という認識が、そのままあなたを守ってくれるとは限らないのです。自ら警察に通報したにもかかわらず、かえって疑いをかけられてしまった、という事例さえ報じられています。
この記事では、なぜ「同意していた」が通用しないことがあるのか、その理由を法律と実務の両面から、過度に不安をあおることなく整理します。
前提:合意があれば、本番行為だけで客が罰せられるわけではない
まず正確に押さえておきましょう。売春防止法は、売春のあっせんや経営を罰する一方で、買う側(お客様)を直接罰する規定を置いていません。そして、不同意性交等罪(刑法177条)は、あくまで「同意しない」性交等を処罰する犯罪です。したがって、当事者間に真意に基づく合意があった本番行為であれば、不同意性交等罪は成立しません。
つまり「デリヘル嬢に誘われて本番をした=即座に犯罪」という単純な話ではありません。ここは、いたずらに不安をあおる情報に惑わされないでください。
問題は、その「同意」を、後から、そして客観的に示せるかどうかにあります。以下では、「同意していた」という主張が通用しにくくなる理由を、4つに分けて見ていきます。
「同意していた」が通用しないことがある4つの理由
理由1:密室での出来事で、同意を証明できない
本番行為は、二人きりの密室で行われます。つまり、当事者以外に状況を知る者がいません。「相手から誘われた」「同意していた」と主張しても、それを裏づける客観的な証拠は、多くの場合残っていないのです。
そのため、相手が後になって「本当は嫌だった」「怖くて断れなかった」と主張すると、立場が一気に逆転しかねません。実際に、行為後に相手側とのやり取りに恐怖を感じてお客様自身が110番通報したところ、かえって不同意性交等の疑いで捜査・逮捕の対象になった、という事例も報じられています。「自分から警察を呼んだのだから大丈夫」とは限らないのです。
理由2:その場の「応じる素振り」と、法的に有効な「同意」は違う
不同意性交等罪は、暴行・脅迫がなくても成立し得ます。刑法は、相手が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」であったかどうかに着目しており、その原因となる事由を8つの類型として挙げています(刑法176条1項各号)。
デリヘルの場面でとりわけ問題になりやすいのが、「同意しない意思を表明するいとまがない」という類型です。サービスの流れの中で挿入され、相手が拒む間もなかった、と評価されるケースです。「はっきり拒まれなかったから、暗黙の同意があると思った」「素股をしている流れで挿入してしまった」といった認識は、後から否定されるおそれがあります。
裁判例でも、金銭の授受があることと、性交への同意があることは別問題であると判断されています。お金を払った(あるいは相手が受け取った)からといって、それが性交への同意を意味するわけではない、という考え方です。
理由3:最初から「誘って、後で請求する」という構図(美人局)
見落とされがちなのが、悪質な店やキャストが、あえて本番を誘導したうえで、後から「無理やりされた」「本番をした」と主張し、高額な示談金や口止め料を求めてくる手口です。
「向こうから誘ってきた」こと自体が、実は罠の入り口だった、というケースもあります。この場合、本番そのものには同意があったと評価される余地もありますが、そうだとしても安心はできません。問題が不同意性交等罪から、恐喝や不当請求へと形を変えるだけだからです。いずれにせよ、一人で対応するのは危険です。
「誘われた」から起きる妊娠・避妊トラブル
「出していい」と言われたと思っても、後になって、その容認があったかどうかをめぐり、妊娠・中絶費用・慰謝料といったトラブルに発展することがあります。避妊をしなかった場合、こうしたリスクは大きく跳ね上がります。相手から促されたとしても、それが後日の争いを防いでくれるわけではありません。
トラブルになってしまったら
- 相手や店の言い値で、その場でお金を支払わない。示談書や念書にサインしない。身分証を渡さない。
- 相手と直接交渉しない。感情的なやり取りは、不利な発言として使われることがある。
- 行為をすぐに中止した経緯や、相手とのやり取りの記録(メッセージなど)は、有利な事情になり得るため、消さずに残しておく。
- 示談の成否は、起訴・不起訴の判断に大きく影響する。一方で、不当に高額な請求にそのまま応じる必要はない。
- できるだけ早く弁護士に相談する。弁護士が窓口に入れば、相手方や店が本人・家族・職場へ直接連絡することを抑えやすくなる。
まとめ
- 真に合意があれば、本番行為をしたこと自体で客が処罰されるわけではない。「誘われた本番=即犯罪」ではない。
- しかし、「同意していた」は次の理由で通用しないことがある——①密室で同意を証明できない、②その場の素振りと有効な同意は別、③誘って後で請求する美人局の構図もあり得る。
- 金銭を渡した・相手が受け取ったことは、性交への同意を意味しない、と裁判例でも判断されている。
- 最も確実なのは、店が禁止している本番行為をしないこと。トラブルになったら、一人で抱え込まず早めに弁護士へ相談を。
若井綜合法律事務所は、風俗にまつわるトラブルを、お客様側の立場で、家族や職場に知られることなく、迅速かつ穏便に解決することを大切にしている法律事務所です。まずはお気軽にご相談ください。


