不同意性交等罪とは?風俗の本番トラブルで問題になる点を弁護士が解説
この記事は、2026年10月13日時点の刑法、刑事訴訟法、民法、犯罪捜査規範の規定をもとに、風俗店の利用客の立場から書いています。令和5年の刑法改正により、旧強制性交等罪・旧強制わいせつ罪はそれぞれ不同意性交等罪・不同意わいせつ罪に改められています。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。
「店から『女の子が被害届を出すかもしれない』と言われた。それから二週間、店からもキャストからも何の連絡もない」。こうしたご相談は、風俗トラブルでは珍しくありません。一方で、キャストの側に近い立場の方からは、「出すかどうか本人もまだ決めていない」「店を辞めるときに相談しようか迷っている」といった話を伺うこともあります。
「様子を見るしかない」「被害届が出る前に示談を」という説明は、どちらも誤りではありません。ただ、「出すかもしれない」という言葉は、出すとも出さないとも決めていない段階の言葉です。その状態で連絡が途絶えたとき、待つのか、弁護士に窓口だけ用意しておくのか、自分から区切りをつけに行くのかは、手元の事情によって選び方が変わります。
この記事では、「被害届を出すかもしれない」と言われたまま連絡が途絶えた場面に絞り、その言葉が意味するもの、時間の経過による見え方の変化、取りうる三つの構えとその選び方を整理します。言われた翌日の過ごし方、警察に相談したと告げられた場合の確かめ方、民事の請求が時効で消えるかどうかは、それぞれ別の記事に譲ります。
「出すかもしれない」は、何を決めていない言葉なのか
風俗トラブルで告げられる言葉には、「被害届を出した」「警察に行く」「出すかもしれない」など、いくつかの段階があります。このうち「かもしれない」は、届出をするかどうかの判断が、まだ誰かの手元に残っていることを示す言葉です。
届出をするかどうかを決めるのは、通常キャスト本人
性的な行為をめぐる被害について届出をするのは、通常、被害を受けたとされるキャスト本人です。店のスタッフが「出すかもしれない」と告げた場合でも、それが本人の意向をそのまま伝えたものか、店の見立てや交渉上の言葉なのかは、外からは分かりません。被害の届出があれば警察はこれを受理しなければならないとされていますが(犯罪捜査規範61条1項)、届出の時期に期限は設けられていません。届出に至るかどうかを左右する事情は、被害届が出る場合と出ない場合|キャスト・店の判断で何が変わるかで整理しています。
「かもしれない」に含まれうる三つの状態
同じ言葉でも、その背後にある状態はいくつか考えられます。
| 考えられる状態 | その後に起こりうること | こちらから見分けられるか |
|---|---|---|
| キャスト本人が届出を迷っている | 決めきれないまま時間が過ぎることも、後になって届出に至ることもある | 見分けることは難しい |
| 店が交渉の材料として言葉を残している | 金額の提示とともに連絡が再開することも、そのまま途絶えることもある | 金額や期限が添えられていたかが手がかりになる |
| すでに警察や弁護士に相談を始めている | 警察や相手方の代理人から連絡が来ることがある | 通常は分からない |
どの状態にあるのかを外から確かめる方法は、ほとんどありません。「かもしれない」と言われたことだけでは、届出がされるとも、されないとも決められないというのが出発点になります。警察に相談したと告げられた場合の考え方は、【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで扱っています。
言葉そのものが問題になる場合
「払えば出さない」「払わなければ出すかもしれない」のように、金銭の支払いと結び付けて告げられることもあります。被害を受けた人が警察に申告すること自体は正当な権利ですが、告げ方が権利の告知の範囲を超えると、恐喝罪(刑法249条1項)が問題になることがあります。もっとも、交渉の言葉に見えても実際に届出がされる場合はあるため、言葉の性質だけで判断するのは控えたほうがよいでしょう。境目の考え方は、「被害届を出す」と言われた|正当な権利の告知と脅迫の境界で解説しています。
連絡が途絶えた期間を、時間の経過とともにどう見るか
連絡が途絶えた状態は、何日たったかによって見え方が少しずつ変わります。ただし、どの時点でも「これで終わった」と法的に区切られるわけではない点は共通しています。
数日から数週間|相手がまだ判断の途中にある時期
言われてから間もない時期は、キャスト本人や店が、届出をするか、金銭の請求をするかを考えている途中であることが少なくありません。この時期に連絡がないことは、届出がないことも、届出がされたことも意味しません。言われた直後の動き方は、【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で順を追って説明しています。
数か月が過ぎたとき|何もないまま終わることもあるが、区切りの規定はない
実際には、届出がされないまま連絡が途絶え、そのまま何も起きない例もあります。ただ、刑事手続には、連絡がないまま一定の期間が過ぎれば終わるという規定はありません。法律に区切りとして定められているのは、犯罪について起訴できる期間(公訴時効)で、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年とされています(刑事訴訟法250条3項)。同意のない撮影が問題になる撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条1項)は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。罪ごとの期間は風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかで、届出の後に連絡が来ない期間に何が進んでいるかは捜査が長引く理由と待ち方|連絡が来ない期間に何が起きているかで整理しています。
相手側の事情が変わる時点
連絡が途絶えた後でも、相手側の事情が変わることで、話が動き出すことがあります。たとえば、キャストが店を辞めて店との関係から離れた後に、改めて相談先を探す場合や、別の客をめぐる事件の捜査の中で店の記録が調べられ、そこから自分の名前が挙がる場合です。後者の仕組みは、【風俗トラブル】別の客の事件で自分の名前が挙がった|芋づる式に連絡が来る仕組みで説明しています。連絡が途絶えた期間は、相手が判断を終えた期間とは限らず、こちらから見えないだけの期間であることもあると受け止めておくと、後で慌てずに済みます。
三つの構えから選ぶ|待つ・窓口だけ決めておく・自分から区切りをつける
連絡が途絶えたまま、こちらから取りうる構えは、大きく三つに分けられます。どれが正解というものではなく、手元の事情によって向き不向きがあります。
| 構え | 向いている状況 | 注意しておきたい点 |
|---|---|---|
| 記録を整えて待つ | 心当たりが乏しい、相手に本名や勤務先を知られていない、金額の提示もない | 連絡が来たときに慌てないよう、手順だけは決めておく |
| 弁護士に相談し、窓口だけ決めておく | 待つつもりだが、警察や相手方の代理人から連絡が来たときの対応に不安がある | 相手方には連絡しないため、こちらから事態を動かすことはない |
| 弁護士を通じて示談を申し入れる | 心当たりがある、相手に身分証や勤務先を把握されている、早く区切りをつけたい | 止まっていた話を動かすことになり、金銭の負担も生じる |
記録を整えて待つ
指摘された事実に心当たりが乏しく、相手が自分の本名や勤務先を把握していない場合などには、こちらから動かずに待つことも合理的な選択です。ここでいう「待つ」は何もしないことではなく、当日の経過を書き出した記録や店とのやり取りを保管したうえで待つという意味です。記録の作り方は、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料で紹介しています。
弁護士に相談し、連絡が来たときの窓口だけ決めておく
待つと決めた場合でも、事前に弁護士に事情を伝えておけば、警察や相手方の代理人から連絡が来たときに、誰が何を伝えるかを先に決めておくことができます。この段階では相手方に通知を送るわけではないため、止まっている話をこちらから動かすことにはなりません。被疑者は、いつでも弁護人を選任することができるとされており(刑事訴訟法30条1項)、捜査の連絡が来てから依頼することもできます。相談の時点で事情を共有しておけば、その後の対応に移りやすくなります。
弁護士を通じて示談を申し入れる
指摘された事実に心当たりがある場合や、早く区切りをつけたい場合には、弁護士を通じてキャスト本人に謝罪と示談を申し入れる方法があります。届出の前に示談が成立し、届出をしないことや処罰を求めないこと(宥恕)を確認できれば、刑事事件として扱われずに終わる可能性が高まります。示談は、当事者が互いに譲り合って争いをやめる和解契約です(民法695条)。
一方で、申し入れることは、止まっていた話を動かすことでもあります。不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は告訴がなくても起訴できる罪であり、示談で「届出をしない」と約束しても、捜査機関の捜査を法的に止めるものではありません。それでも、示談の成立と宥恕は、起訴するかどうかの判断で考慮される事情になります(刑事訴訟法248条)。申し入れるかどうかは、心当たりの有無と、相手が自分の情報をどこまで持っているかを踏まえて選ぶことになります。時期による違いは示談を始めるタイミング|被害届前・受理後・起訴前で何が違うかで、キャスト本人に自分で連絡してはいけない理由は性犯罪の示談交渉を弁護人に任せる意味|本人が連絡してはいけない理由で説明しています。
どの構えを選ぶかを分ける事情
三つの構えのどれが合うかは、主に次の三つの事情によって変わります。
指摘された事実に心当たりがあるか
心当たりがある場合は、キャスト本人の被害に向き合い、示談を視野に入れて考えるのが基本的な方向になります。心当たりがない場合や、同意があったと考えている場合には、示談の申し入れが事実を認めたように受け取られないか、慎重に検討する必要があります。争うか示談するかで迷う場合の考え方は、無実でも示談すべき?否認と示談のジレンマで扱っています。
相手が自分の何を知っているか
本名、電話番号、勤務先、身分証の写しなど、相手が把握している情報が多いほど、時間がたってから連絡が来る経路も多くなります。予約時の名前と電話番号しか伝えていない場合でも、電話番号を通じて連絡が来ることはあります。自分が何を伝え、何を見せたのかを書き出しておくことが、構えを選ぶ材料になります。予約時の情報の扱いは【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのかで、身分証の情報を渡してしまった場合は身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処で説明しています。
金額や書面の話が出ていたか
「出すかもしれない」と言われた際に、金額や期限を示されていたり、念書などに署名していたりする場合には、刑事の問題とは別に、民事の請求がどうなっているかも確かめておく必要があります。連絡が途絶えても請求そのものが消えるわけではない点は、【風俗トラブル】店の担当者と連絡が取れなくなった|請求が消えたのか、止まっただけなのかで整理しています。
待つと決めた場合に、今のうちにしておくこと
待つ構えをとる場合でも、何も準備しないまま待つのとは違います。次のような準備は、どの構えを選ぶ場合にも共通して役に立ちます。
- 当日の経過、言われた言葉、伝えた個人情報を、日付を入れて書き出しておく。
- 店とのやり取りや着信履歴、支払いの記録を消さずに保管しておく。
- 電話番号の変更や転居をする場合は、連絡がつかない状態にならないよう配慮しておく。
- 連絡が来たときに誰に相談するかを決め、連絡先を控えておく。
- 端末の初期化や機種変更は、記録を移したことを確かめてから行う。
連絡が来たときの手順を、先に決めておく
連絡は、店、キャスト本人、相手方の代理人、警察のいずれから来るか分かりません。誰から来たかによって、最初の対応は変わります。
| 連絡してきた相手 | 最初の対応 | あわせて確かめたいこと |
|---|---|---|
| 店のスタッフ | その場で金額や事実を認める返答をしない | 名乗り、店名、求められている内容 |
| キャスト本人 | 直接のやり取りを続けず、弁護士を通じる方針を伝える | 連絡の経路と内容の記録 |
| 相手方の代理人(弁護士) | 書面や連絡の内容を確かめ、回答の期限を把握する | 代理人の氏名と所属、依頼者が誰か |
| 警察 | すぐに折り返さず、伝える内容を整理してから連絡する | 担当部署と担当者の氏名 |
警察からの着信に折り返す前の考え方は「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのことで、相手方に弁護士がついた場合については【風俗トラブル】店から「弁護士を立てる」と言われた|相手の代理人から連絡が来る前にで扱っています。
様子をうかがう連絡は控える
連絡が途絶えると、「どうなったのか」を確かめたくなるものです。しかし、店に問い合わせたり、キャスト本人のSNSや連絡先を探して接触したりすると、止まっていた話を自分から動かすことになりかねません。刑事事件の捜査に必要な知識を持つ人やその親族に対し、正当な理由なく面会を強く求めたり、強い言葉で迫ったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)が問題になることもあります。確かめたい気持ちは、相手ではなく弁護士への相談に向けるのが安全です。
よくあるご質問
先に自分から警察に行って事情を話したほうがよいでしょうか
罪を犯した人が捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑を減軽することができるとされています(刑法42条1項)。ただし、自首は自分の行為を申告することを前提にしており、心当たりの有無や事実関係の整理がつかないまま一人で決めることは控えたほうがよいでしょう。届出がされていない可能性もある段階では、なおさら慎重な判断が求められます。自首が成り立つ場面は、自分から出頭すべきか|自首の成否と実務上の意味で説明しています。
被害届が出ているかどうか、警察に問い合わせれば教えてもらえますか
捜査の有無や内容は、届出をされた側からの問い合わせに対して明かされないのが通常です。問い合わせの際の受け答えが記録に残ることもあるため、確かめたい場合は、問い合わせる前に弁護士にご相談ください。
一年以上何もありません。記録はもう処分してよいでしょうか
時間がたつにつれて不安が薄れるのは自然なことです。ただ、公訴時効の期間は罪によって10年を超えるものもあり、後から連絡が来た場合に当時の経過を示せるのは手元の記録です。人目に触れない形で保管を続けておくことをおすすめします。時間がたってから連絡が来た場合の考え方は、【風俗トラブル】数か月前の利用について突然連絡が来た|時間が経ってからの請求で扱っています。
まとめ
- 「被害届を出すかもしれない」は届出の判断が残っている段階の言葉であり、届出は通常キャスト本人が行う。届出があれば警察は受理しなければならないが(犯罪捜査規範61条1項)、届出の時期に期限はない。
- 金銭の支払いと結び付けた告げ方が権利の告知の範囲を超えると、恐喝罪(刑法249条1項)が問題になることがある。
- 連絡が途絶えても法的な区切りはなく、公訴時効は不同意性交等罪15年、不同意わいせつ罪12年、撮影罪3年である(刑事訴訟法250条2項6号・3項)。
- 取りうる構えは、記録を整えて待つ、弁護士に相談して窓口だけ決めておく、弁護士を通じて示談を申し入れる、の三つに分けられる。
- 示談は和解契約であり(民法695条)、捜査を法的に止めるものではないが、起訴するかどうかの判断で考慮される(刑事訴訟法248条)。
- どの構えを選ぶかは、心当たりの有無、相手が把握している個人情報、金額や書面の話が出ていたかによって変わる。
- キャスト本人への直接の接触は控える。面会を強く求めたり強い言葉で迫ったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)が問題になり得る。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。「被害届を出すかもしれない」と言われたまま連絡が途絶え、待つべきか動くべきか判断がつかない段階でも、ご相談いただけます。
すでに警察や相手方の代理人から連絡があった方や、店に自分から連絡してしまった方も、それまでの経過をうかがったうえで、交渉と刑事手続の両面から対応を検討いたします。お一人で判断される前に、まずは状況をお聞かせください。


