【風俗トラブル】別の客の事件で自分の名前が挙がった|芋づる式に連絡が来る仕組み

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

別の利用者が関わる事件の捜査の中で自分の名前が出たらしい、と人づてに聞かされると、次は自分のところに連絡が来るのではないかという不安が先に立ちます。何をどこまで準備すればよいのかも見えにくく、日常の中で落ち着かない時間が続きます。

 インターネット上では、この現象が「芋づる式」という言葉で語られます。ただ、この言い方は外から見えた形を表しているだけで、手続の中身を説明したものではありません。実際には、名前がどの経路で伝わったかによって、その後に確認が行われるかどうかも、行われるまでの時間も変わってきます。

 ここでは、別の客が当事者となっている事件の中で自分の名前が挙がったと聞いた場面を想定し、名前がどこから伝わるのか、それがどのように扱われるのか、連絡が来たときにどこまで対応すればよいのかを順に整理します。

この記事で扱う範囲


  • 別の利用者の事件の中で、自分の名前が出てくる経路を整理します。
  • 名前が出た段階と、疑いが自分に向いた段階の違いを説明します。
  • 連絡までに時間が空くことがある理由を扱います。
  • 連絡が来た場面で、立場を悪くしやすい行動に触れます。


 店そのものが摘発された場合の顧客名簿や予約履歴の扱い、予約サイトや店のアカウントに残る記録の所在については、別の解説に譲ります。参考人から被疑者へ立場が移る条件についても、別の解説で扱っています。

「名前が挙がった」とは、どのような状態か


対象になっているのは、別の人の事件

 捜査は、事件ごとに誰の何という行為を対象とするのかが決まった形で進みます。別の客が当事者となっている事件は、その人の行為について立てられたものであり、その中であなたの名前が出たとしても、同時にあなたを名宛人とする事件が立ち上がるわけではありません。

 この段階で求められるのは、事件の当事者ではない立場からの説明です。捜査機関は、犯罪の捜査をするについて必要があるときに被疑者以外の者の出頭を求めて取り調べることができるとされており(刑事訴訟法223条1項)、同条2項によって、出頭を拒むことができ、出頭した後もいつでも退去できるという定めが準用されています。

名前が出ることと、疑いが向くことは同じではない

 名前が出たという事実は、捜査の材料が一つ増えたことを意味します。そこから先に進むには、あなた自身の行為について処罰する規定があること、そしてその行為があったと言えるだけの材料が別に集まることが前提になります。

 風俗店の利用をめぐる事件では、店の側の営業のあり方が問われる一方で、客側の行為に処罰規定が及ぶかどうかは、利用の中身や関与の度合いによって分かれます。名前が名簿やメッセージに残っていること自体が、そのまま刑罰の対象になる行為の証明になるわけではありません。

名前が伝わる三つの経路


名前が伝わる経路出てくる場面そのあとに行われやすいこと
人の話取調べや事情聴取で経緯を説明する場面話を裏づける記録があるかどうかの確認
端末や記録やり取りの相手方として残っている場面通信や決済の記録との突き合わせ
店側の説明営業の実態が問われる場面日時と結びつく資料の確認


人の話から出る場合

 もっとも多いのが、当事者となった人が自分の経緯を説明する中で、周辺の事情として第三者の名前に触れる形です。同じ場に居合わせた人、紹介した人、店を教えた人などが話に出ることがあります。

 ただし、この種の説明には「本人から聞いた」「そう聞いている」という形の、また聞きが混じることが少なくありません。話した本人が直接見聞きしていない部分は、そのままでは事実の裏づけとして弱いものにとどまります。

端末や記録から出る場合

 当事者の端末に残ったやり取りの中に、相手方として名前や連絡先が残っている場合です。個別のメッセージのほか、複数人が参加していたやり取り、送金の記録、店の紹介に関するメッセージなどが該当します。

 この場合は、人の記憶ではなく形の残った記録が出発点になるため、日時や相手方が具体的に特定されやすくなります。記録がどこに置かれ、どのような手続で捜査機関の手元に移るのかについては、別の解説で扱っています。

店側の説明から出る場合

 従業員や関係者が営業の実態を説明する過程で、常連客の呼び名や連絡先に触れることもあります。もっとも、店に関する事件で問われているのは、いつからどのような規模で営業が行われ、誰が指示をしていたかという点です。客一人ひとりの氏名が、店側の責任を決める事実になっているわけではありません。

「名前が出ていた」という話そのものの確かさ

 名前が挙がったという情報自体が、人づてに伝わってくることも多いものです。伝えてきた人が捜査の中身を直接知る立場にあるとは限らず、話が広がる過程で内容が変わっていることもあります。まれに、事情を知っているかのように装って金銭を求める連絡が来ることもあります。

 誰から、どのような経緯で聞いた話なのかを書き留めておくと、後から状況を整理するときの手がかりになります。伝えてきた相手に詳しい事情を尋ねようとして連絡を重ねると、その行為自体が別の問題につながることもあるため、確かめ方には注意が要ります。

名前が出ただけでは進みにくい理由


供述には裏づけが求められる

 警察の捜査の手順を定めた犯罪捜査規範は、取調べによって供述があったときは、それが不利な供述であるか有利な供述であるかを問わず、直ちにその供述の真実性を明らかにするための捜査を行い、物的証拠や情況証拠その他必要な証拠資料を収集するものとしています(同規範173条1項)。同条2項は、集めた証拠を踏まえて、客観的事実と符合するかどうか、合理的であるかどうかを検討し、その真実性を判断するものとしています。

 つまり、誰かが名前を口にしたという事実は、それ自体が結論を動かす材料としては扱われず、記録や状況と突き合わせる作業が予定されているということです。

公判に進んだ場面での扱い

 仮に事件が起訴された場合、人から聞いた話をそのまま事実の証明に用いることは原則としてできません(刑事訴訟法320条1項)。捜査の段階でも、この先の使い道を見越した材料の集め方がされるため、また聞きの部分だけで手続が進むことは考えにくいといえます。

連絡が来る場合・来ない場合

 こうした仕組みから、名前が出たという話を人づてに聞いても、確認の連絡が来ないまま終わることがあります。反対に連絡が来た場合は、名前が何らかの記録と結びついている、あるいはその日時のやり取りを知る立場にあると見られている、という背景が考えられます。

 もっとも、連絡が来ないことをもって手続が終わったと言い切ることもできません。次に述べるとおり、時間が空いてから連絡が来る場面があるためです。

連絡までに時間が空くことがあるのはなぜか


先に進む事件の順序

 身体を拘束されている事件には、法律上の期限が定められています。捜査機関は、期限のある事件の処理を先に進める必要があるため、周辺の関係者への確認は、その後にまわることがあります。

解析と照会に時間がかかる

 端末の中身を調べる作業や、事業者への照会に対する返答には、相応の時間がかかります。名前が出た時点と、その名前が記録と結びつく時点との間に、数か月の開きが生じることも珍しくありません。

時効との関係

 公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行します(刑事訴訟法253条1項)。期間は罪の重さによって異なり、刑事訴訟法250条に区分が定められています。したがって、一定の時間が経過したという事実だけで、捜査の対象から外れたと判断することはできません

連絡が来たときの受け答え


まず確かめること

 連絡は、電話、書面、自宅への訪問といった形で届きます。応対の際には、どこの警察署の誰からの連絡か、どの件についての用件か、いつまでに何を求められているのかを確認しておくと、その後の整理がしやすくなります。

 日程についても、仕事や家庭の予定を伝えて調整を求めることはできます。連絡を受けたその場で長く話し込むよりも、日時を決めたうえで落ち着いて臨むほうが、記憶の整理という意味でも実際的です。

記憶の範囲で答えるということ

 事情を聞かれる立場であっても、話した内容は書面に記録されます。取調べの場では、相手方がこのように話しているという形で、こちらの記憶とずれのある内容を示されることがあります。その内容が相手の説明のとおりであるかどうかを、その場で確かめる手段は限られています。

 記憶にない部分を「そうだったかもしれない」と埋めてしまうと、後から訂正することが難しくなります。覚えていないことは覚えていないと伝え、時期や回数について自信のない点は、その旨を添えて答えることが基本になります。立場が事情を聞かれる側から調べられる側へ移る条件については、別の解説で扱っています。

かえって立場を悪くしやすい行動


相手に連絡を取って話を合わせる

 名前が挙がったと聞いた直後に、当事者となっている相手へ連絡を取りたくなる場面があります。しかし、別の客の事件は、あなたから見れば他人の刑事事件です。他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、変造し、あるいは偽造した証拠を使用した場合には、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(刑法104条)。

 また、自己または他人の刑事事件の捜査や審判に必要な知識を有すると認められる人やその親族に対して、正当な理由なく面会を強く求めたり、強談威迫にあたる行為をしたりした場合には、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(刑法105条の2)。この規定は、自分自身の事件に関する場面も対象に含んでいます。最高裁判所の決定は、不安や困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送って内容を知らせる方法も、ここでいう威迫にあたる場合があるとしています(最決平成19年11月13日)。

記録を消す・端末を初期化する

 自分の事件に関する証拠を自分で処分する行為は、刑法104条が対象とする「他人の刑事事件」にはあたりません。もっとも、削除や初期化を行った事実自体が、後から説明を求められる事情として残ります。やり取りの相手方の側に同じ内容が残っていることもあり、消したはずの記録が別の経路から現れることもあります。

店へ問い合わせる

 名簿から名前を外してほしい、自分の名前が出たのかを教えてほしい、といった問い合わせも避けたいところです。店は事件の当事者の側であり、問い合わせの事実そのものが記録に残ります。また、その連絡をきっかけに金銭を求められる例も報告されています。

よくあるご質問


名前が出たかどうかを、こちらから確認できますか

 捜査中の事件の内容は、原則として外部に明らかにされません。自分から出向いて説明を申し出るという選択肢もありますが、それが常に有利に働くとは限らず、何をどこまで話すかによって受け止められ方も変わります。まずは事実関係と時期を自分の側で整理しておくことをおすすめします。

連絡がないまま数か月が過ぎました。終わったと考えてよいですか

 時間の経過だけで判断することはできません。解析や照会に時間がかかること、他の事件の処理が先に進むことなど、連絡までに間が空く理由はいくつもあります。待つ間にも、当時の予定や支払いの記録を手元で確認しておくといった準備はできます。

事情を聞かれるだけの立場でも、弁護士に相談してよいのでしょうか

 立場を問わずご相談いただけます。事情を聞かれる立場であっても、話した内容は書面として残り、後の手続でも参照され得ます。どの範囲の記憶を、どのような形で伝えるかを事前に整理しておくことには意味があります。

まとめ


  1. 別の客の事件は、あなたを名宛人とする事件ではありません。
  2. 事情を聞かれる立場での出頭は任意であり、退去についても定めが準用されています(刑事訴訟法223条1項・2項)。
  3. 名前が伝わる経路は、人の話、端末や記録、店側の説明の三つに整理できます。
  4. 供述には裏づけの捜査と吟味が予定されています(犯罪捜査規範173条)。
  5. また聞きの部分は、そのまま事実の証明には使いにくい扱いになっています(刑事訴訟法320条1項)。
  6. 連絡までに時間が空く理由には、他の事件の処理の順序、解析や照会に要する時間があります。
  7. 時間の経過だけで対象から外れたとは判断できません(刑事訴訟法253条1項)。
  8. 当事者への働きかけや記録の処分は、別の問題を生じさせることがあります(刑法104条・105条の2)。


ご相談について

 名前が挙がったらしいという話だけを手がかりに、自分で情報を集めようとすると、かえって行動が記録として残る場面があります。どの範囲までが自分に関わる話なのか、連絡が来た場合に何を伝えるのかを、早い段階で整理しておくことが、その後の負担を軽くします。

 弁護士法人若井綜合法律事務所は、池袋と新橋に事務所を置き、風俗店の利用をめぐるトラブルについてのご相談を承っています。まだ連絡が来ていない段階でも、状況の整理からお手伝いできます。お一人で抱え込まず、ご相談ください。

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Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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