【解決事例】デリヘル(自宅利用)での本番トラブル|不同意性交等罪を否認し300万円請求を40万円に減額、不起訴も獲得した事例
この記事は、2026年10月時点の刑法(2023年7月13日施行の改正後)、刑事訴訟法(2023年6月23日施行の公訴時効に関する改正後)、民法(2020年4月1日施行の改正後)の規定に基づいて記載しています。何年も前の行為については、行為の時期によって当てはまる規定が異なります。個別の事情については弁護士にご相談ください。
「数年前に利用したお店の女性から、突然『あのときのことは不同意性交だった』とメッセージが届いた」「当時は何も言われなかったのに、今になって弁護士名の通知書が来た」。当事務所には、利用からかなりの時間が経ってから連絡を受けた方のご相談が寄せられます。一方で、被害を受けたと感じている側が、時間をかけてようやく声を上げられるようになることも少なくありません。
「性犯罪の公訴時効は15年に延びたので、何年経っても責任を問われる可能性がある」という説明は、それ自体誤りではありません。ただ、その説明だけでは、行為の時期によって当てはまる法律が違うことや、刑事と民事で時間の数え方が別であることは見えにくくなります。
この記事では、何年も前の風俗利用について「不同意性交だった」と連絡が来た場面に絞って、最初に確かめること、当時の法律の当てはめ方、時間の経過が双方に与える影響、連絡の経路ごとの対応を整理します。数か月程度前の利用についての連絡は【風俗トラブル】数か月前の利用について突然連絡が来た|時間が経ってからの請求で、罪名ごとの時効の一覧は風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかで扱っています。
連絡を受けた直後に確かめたいこと
何年も前のことについて突然連絡が来ると、驚きや不安から、すぐに返事をしたくなるものです。最初の対応で後の選択肢が変わることがあるため、返事をする前に、いくつかの点を落ち着いて確かめておくことをおすすめします。
連絡してきたのは誰か
まず確かめたいのは、連絡の差出人です。女性本人からの個人的な連絡なのか、店や知人を名乗る人物からなのか、弁護士名の通知書なのか、警察からなのかによって、その連絡が持つ意味と、次にとるべき対応は大きく変わります。
本人や知人を名乗る連絡の場合、本当にその人なのか、誰の代わりに連絡しているのかがはっきりしないこともあります。差出人の名前、連絡に使われた手段(電話、LINE、SNS、郵便など)、届いた日時は、画面の保存なども含めてそのまま残しておきます。
問題にされている利用の時期と内容
次に、相手がいつの利用を問題にしているのかを確かめます。後で述べるとおり、2023年7月13日より前の行為には、現在の不同意性交等罪ではなく、当時の法律が当てはまります。また、刑事の公訴時効も民事の消滅時効も、行為の時期を起点に数えるものがあるため、「いつの、どの行為が問題にされているのか」が特定できるかどうかが、その後の見通しを考える出発点になります。
相手の連絡に日付や店名がなく、時期がはっきりしない場合でも、こちらから「〇年〇月のことですか」と具体的に尋ねて返事を引き出すことは控えたほうがよい場面があります。こちらの問いかけ自体が、利用の事実や内容を認める材料として扱われるおそれがあるためです。
その場で認める・謝る・支払うを急がない
連絡の内容に心当たりがある場合でも、ない場合でも、その場で事実を認める返事をしたり、謝罪の言葉を送ったり、求められた金額を支払ったりすることは急がないでください。謝罪の文面は、後に「行為を認めていた」という証拠として示されることがあります。
また、相手に繰り返し連絡したり、当時の様子を問いただしたりすることは、相手の負担になるだけでなく、申告している人への働きかけと受け取られるおそれもあります。返事をする場合も、「内容を確認したうえで改めて連絡します」といった、事実関係に踏み込まない短い返答にとどめておくのが無難です。
2023年7月より前の利用には、当時の法律が当てはまる
「不同意性交」という言葉は、2023年7月13日に施行された改正刑法で設けられた罪名です。何年も前の利用が問題にされている場合、まず、その行為にどの時期の法律が当てはまるのかを整理する必要があります。
罪名と要件は、行為の時期で決まる
憲法は、実行の時に罪とされていなかった行為について刑事上の責任を問わないことを定めています(憲法39条)。刑罰の規定は、行為の時点の法律で判断するのが原則です。そのため、2023年7月12日以前の行為については、不同意性交等罪ではなく、当時の強制性交等罪や強姦罪などに当たるかどうかで判断されます。
時期ごとの主な違いは、次のとおりです。
| 行為の時期 | 当てはまる主な罪名 | 処罰の中心となる要件 | 公訴時効(現在の扱い) |
|---|---|---|---|
| 2017年7月12日以前 | 強姦罪・準強姦罪 | 暴行・脅迫を用いた性交、または心神喪失・抗拒不能に乗じた性交 | 15年(経過措置の適用関係は個別に確認が必要) |
| 2017年7月13日〜2023年7月12日 | 強制性交等罪・準強制性交等罪 | 暴行・脅迫を用いた性交・肛門性交・口腔性交、または心神喪失・抗拒不能に乗じたもの | 15年 |
| 2023年7月13日以降 | 不同意性交等罪(刑法177条) | 8つの行為・事由により、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態での性交等 | 15年 |
「性交等」に含まれる行為の範囲も時期で違う
処罰の対象となる行為の範囲も、時期によって異なります。2017年の改正前の強姦罪は膣への性交に限られ、2017年の改正で肛門性交と口腔性交が加わりました。さらに2023年の改正で、膣や肛門に身体の一部(陰茎を除く)や物を挿入する行為も「性交等」に含まれるようになりました(刑法177条1項)。
たとえば、2023年7月より前に指を挿入する行為があったとされる場合、当時の法律では強制性交等罪ではなく、強制わいせつ罪に当たるかどうかが問題になります。強制わいせつ罪や現在の不同意わいせつ罪との線引きは、挿入がなくても罪になる場面|不同意わいせつ罪との線引きで解説しています。
相手の言葉と、法律上の評価は分けて考える
相手が「不同意性交だった」と表現していても、その言葉がそのまま法律上の評価になるわけではありません。行為の時期、具体的に何があったとされているのか、当時どのような状況だったのかによって、問題となる罪名や要件は変わります。現在の不同意性交等罪の読み方については、【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理やどの類型で立件されているのか|不同意性交等罪の8つの要因の読み方も参考にしてください。
ただし、「当時の法律では暴行・脅迫が必要だったから問題にならない」と自分で結論を出すのは早計です。暴行・脅迫の程度は個別の事情で判断されますし、刑事上の責任とは別に、民事上の損害賠償(民法709条)が問題になることもあります。民事では、刑事の要件を満たさない場合でも、相手の意思に反する行為があったと認められれば、賠償の責任が生じる可能性があります。
時間の経過は、刑事と民事で別々に数える
何年も前のことだと、「もう時効ではないか」と考える方も多いと思います。時効には刑事の公訴時効と民事の消滅時効があり、それぞれ期間も数え始める時点も異なります。
刑事の公訴時効
公訴時効は、犯罪行為が終わった時から一定の期間が経つと、検察官が起訴できなくなる制度です(刑事訴訟法250条、253条)。2023年6月23日施行の改正で、性犯罪の公訴時効は5年延長され、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年となりました。改正の施行時点で時効が完成していなかった事件にも延長後の期間を当てはめる経過措置が置かれているため、改正前の期間(強制性交等罪であれば10年)で考えると見通しを誤るおそれがあります。
また、相手が行為の当時18歳未満だった場合には、18歳になるまでの期間が加算されます(同法250条4項)。行為者が国外にいた期間は時効の進行が止まる扱いもあります(同法255条1項)。
民事の消滅時効
損害賠償の請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。人の生命や身体を害する不法行為では、3年が5年に延びます(同法724条の2)。性的な被害がこの「身体を害する」場合に当たるかは、心身への影響の内容などによって判断が分かれうるところです。
風俗利用の場面で注意したいのは、「加害者を知った時」は、行為の時点とは限らないという点です。相手が利用者の本名や連絡先を知らなかった場合、後になって身元が分かった時点から3年(または5年)が数えられる可能性があります。予約時に伝えた情報がどのように扱われるかは、【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのかで解説しています。
時効の判断を自分だけで済ませない
民事の時効は、完成していない段階で相手の権利を認めると、その時点から期間が新たに数え直されます(民法152条1項)。一部の支払いや、責任を認める内容の謝罪がこれに当たる場合があります。また、時効の期間が過ぎた後でも、相手に債務を認める言動をすると、その後に時効を主張することが信義則上許されないと判断されることがあります(最高裁昭和41年4月20日判決)。
「何年も経っているから大丈夫だろう」と考えて相手に応じた結果、かえって時効を主張しにくくなることもあります。起算点の考え方や停止・更新の事情は個別に異なるため、時効を前提に対応を決める前に、弁護士に確認しておくことをおすすめします。
時間の経過が、双方の証拠に与える影響
時間が経っていることは、連絡を受けた側にとって不利にだけ働くわけではありません。申告する側、請求する側にとっても、立証が難しくなる面があります。
申告・請求する側の立証
民事で損害賠償を求める場合、行為があったことや相手の意思に反していたことは、請求する側が立証する必要があります。刑事でも、犯罪の成立を立証する責任は検察官にあります。何年も前の出来事では、店の記録や防犯カメラの映像が残っていないことが多く、当事者の記憶も細部があいまいになりがちです。
もっとも、被害を申告する人の供述は、内容が具体的で一貫しており、他の事情と矛盾しなければ、それ自体が重要な証拠として扱われます。「客観的な証拠が残っていないはずだから問題にならない」とは言い切れないことも、あわせて押さえておく必要があります。
利用した側に残っている記録を確かめる
時間が経っていても、利用した側の手元に記録が残っていることがあります。たとえば、次のようなものです。
- 予約時のメールやSMS、店の会員サイトの利用履歴。
- クレジットカードの明細や電子決済の記録。
- 当時の女性本人や店とのLINE・メッセージのやり取り。
- 利用の後に相手から届いた連絡で、当時の関係や様子がうかがえるもの。
- 当日の行動が分かる手帳、スケジュールアプリ、交通系ICカードの履歴。
これらは、利用の日時や当日の流れ、その後の関係を確かめる手がかりになります。都合の悪い記録を消したくなることもあるかもしれませんが、記録を削除すると、自分にとって有利な事情まで確かめられなくなりますし、削除したこと自体が不自然に受け取られるおそれもあります。手元の記録は消さずに残しておいてください。同意の有無をめぐる証拠の考え方は、「同意があった」を証明できるか|風俗トラブルの証拠と限界で解説しています。
記憶があいまいなときの向き合い方
何年も前のことは、細かい点を思い出せないのが自然です。思い出せない部分を推測で補って説明すると、後で記録と食い違ったときに、説明全体の信用性が疑われることがあります。
覚えていること、記録で確かめられること、思い出せないことを分けて、時系列のメモにしておくと、弁護士に相談する際にも役立ちます。分からない点は「分からない」と区別しておくことが、結果的に自分の説明を守ることにつながります。
連絡の経路ごとの対応の分かれ目
連絡の差出人によって、その連絡が持つ意味と、急ぐべき度合いが変わります。代表的な経路ごとに整理します。
本人や店、知人を名乗る人物からの連絡
女性本人や店、知人を名乗る人物から、「不同意性交だった」として金銭の支払いを求められることがあります。この段階では、相手が警察に相談しているのか、民事の請求として考えているのか、はっきりしないことも多いものです。「警察に相談した」と伝えられた場合の受け止め方は【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで、本人以外の人物から連絡が来た場合は【風俗トラブル】キャストの交際相手・知人を名乗る男性から連絡が来たで扱っています。
求められた金額を支払う場合でも、何についての支払いなのか、今後の請求や申告がどう扱われるのかを書面で定めなければ、問題が終わらないことがあります。当事者同士でのやり取りを続ける前に、弁護士を窓口にすることを検討してください。
弁護士名の通知書が届いた
相手の代理人弁護士から通知書が届いた場合、相手は請求や刑事手続を具体的に検討していると考えられます。通知書には、問題にされている行為の時期や内容、求められている金額、回答の期限が書かれていることが多く、内容を正確に読み取ることが対応の出発点になります。
通知書を放置すると、民事訴訟の提起や、警察への被害届・告訴に進む可能性があります。回答の期限が迫っている場合でも、事実関係を整理しないまま回答書を出すことは避け、弁護士を通じて対応するのが安全です。詳しくは相手方の弁護士から通知書が届いた|無視のリスクと対応をご覧ください。
警察から連絡が来た
警察から事情を聴きたいと連絡が来た場合は、被害届や告訴を受けて捜査が始まっている可能性があります。何年も前の出来事について取調べを受けると、記憶があいまいなまま、相手の申告に沿った内容の供述調書が作られてしまうおそれがあります。
出頭の日程を決める前に弁護士に相談し、何を聞かれる可能性があるか、どう答えるかを整理しておくことが大切です。呼び出しへの対応は警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応で、取調べでの注意点は「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点で解説しています。
よくあるご質問
何年も前のことで、逮捕されることはありますか。
公訴時効が完成していなければ、捜査の対象になる可能性はあります。ただし、何年も前の事件で、住所や勤務先がはっきりしており、捜査にも応じる姿勢を示している場合には、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むことも少なくありません。逮捕の可能性は、事件の内容や証拠の状況、本人の対応によって変わるため、早い段階で弁護士に相談し、捜査への向き合い方を決めておくことが大切です。
当時は同意があったと思っています。今からできることはありますか。
当時のやり取りの記録や、利用後の相手との関係が分かる資料を確かめ、消さずに残しておくことが第一です。そのうえで、覚えていることと思い出せないことを分けて整理しておくと、相手の主張に対して何を述べるべきかを弁護士と検討しやすくなります。同意があったと考える場合でも、相手に直接その旨を伝えて説得しようとすることは控えてください。
連絡を無視していれば、そのうち終わりますか。
連絡が途絶えることもありますが、相手が民事訴訟や警察への申告に進む可能性もあり、無視していれば終わるとは言い切れません。特に、弁護士名の通知書や警察からの連絡を放置すると、相手の主張だけが手続に反映されるおそれがあります。返事をしないと決める場合でも、その判断が妥当かどうかを弁護士に確認しておくと安心です。
まとめ
- 何年も前の利用について連絡が来たら、差出人と、問題にされている行為の時期・内容をまず確かめる。
- その場で事実を認める返事や謝罪、支払いを急がず、届いた連絡はそのまま保存する。
- 2023年7月12日以前の行為は、不同意性交等罪ではなく、当時の強制性交等罪や強姦罪などで判断される(憲法39条)。
- 「性交等」の範囲も時期によって異なり、指などの挿入が含まれたのは2023年の改正後である(刑法177条1項)。
- 公訴時効は2023年の改正で延長され、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年となった(刑事訴訟法250条)。
- 民事の消滅時効は「損害と加害者を知った時」から数えるため、行為から何年経ったかだけでは判断できない(民法724条、724条の2)。
- 時効を前提に相手に応じると、かえって時効を主張しにくくなる場合があるため、事前に弁護士に確認する(民法152条1項)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。何年も前の利用について連絡が来た場合でも、行為の時期や連絡の経路を整理することで、とるべき対応が見えてくることがあります。
突然の連絡に驚き、どう返事をすればよいか分からないまま時間が過ぎている方、相手や警察への対応を一人で抱えている方は、返事をする前に一度ご相談ください。


