【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのか

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2026年10月1日時点の法令をもとに作成しています。個人情報保護法の条番号は、2022年4月1日施行の改正後のものです。2026年7月17日に公布された個人情報保護法の改正(不正提供罪の対象拡大、不正取得への罰則新設、課徴金の導入など)は、一部を除き公布から2年以内に施行される予定のため、本文では施行前の規定を前提にしています。個別の事情によって結論が変わることがあります。


風俗店を予約するとき、名前と電話番号を伝えるのは当たり前の手順になっています。ご相談の場でも「本名をそのまま伝えてしまったが、あの情報はどこに残っているのか」という声や、「トラブルは何もないのに、店の名前を出した見知らぬ番号から電話が来た」という声をいただきます。

 電話番号は予約の確認や顧客管理のために使われるもので、通常の利用であれば過度に心配する必要はない、という説明がよくなされます。この説明自体は誤りではありません。ただ、店の手元に置かれた情報が、その後どのような場面で店の外に出ていくのか、店がどのようなルールのもとで扱うべきなのかについては、あまり語られていません。

 この記事では、予約時に伝えた本名と電話番号が、店の中でどう使われ、どのような経路で外に出る可能性があるのかを、個人情報保護法の枠組みに沿って整理します。トラブルが起きた後に電話番号から身元をたどられる経路や、情報を握られて要求を受けている場面の対応は、それぞれ別の解説に譲ります。

この記事で扱う範囲

 この記事では、次の点を順に取り上げます。

  • 予約時の名前と電話番号を、店が何のために控えているのか。
  • 店が守るべき個人情報保護法のルールと、その適用範囲。
  • 情報が店の外に出ていく主な経路と、キャストの手元に渡る範囲。
  • 流出した情報を使った連絡の典型と、本人が店に求められること。


予約時の情報は何のために控えられているのか

予約の確認と当日の連絡

 電話番号が求められる一番の理由は、予約の確認と当日の連絡です。予約の直前に確認の電話を求める店や、到着時刻の調整のために折り返しの連絡をする店もあります。非通知での予約を受け付けない店が多いのも、連絡が取れない予約を避けるためです。

顧客台帳と来店履歴

 多くの店は、電話番号を軸にして、名前、来店日、指名したキャスト、利用したコースなどを記録しています。2回目の予約で名乗る前に名前で呼ばれるのは、着信した番号と台帳が結びついているためです。

利用を断る客の記録

 無断キャンセルや店のルールに反する行為があった客の番号を、予約を受けない客として記録している店もあります。こうした記録は、同じ経営者が運営する系列店で共有されていることもあります。

 店が控える情報と、それが店の外に出る場面を整理すると、次のようになります。

店が控える情報店が控える主な理由店の外に出る可能性がある場面
電話番号予約の確認、当日の連絡、来店履歴の管理系列店との共有、店の譲渡、従業者の持ち出し
名前(本名・仮名)予約の照合、顧客の呼び分けキャストへの伝達、店の譲渡、照会への回答
来店日・指名・コース顧客管理、キャストの売上管理摘発時の押収、従業者の持ち出し
利用を断る客の記録トラブルの再発防止系列店や同業者との共有


店が守るべきルール|個人情報保護法は小さな店にも及ぶ

規模や業種で適用が外れるわけではない

 名前と電話番号を結びつけて検索できるように管理している事業者は、個人情報保護法上の「個人情報取扱事業者」にあたります(個人情報保護法16条2項)。かつては取り扱う人数が少ない事業者は対象外とされていましたが、2017年5月の改正法施行以降、この区別はなくなっています。台帳が紙であっても、店の業務用スマートフォンの電話帳であっても、検索できる形で整理されていれば対象になりうると考えられます。

利用目的の範囲で使うことが原則

 店は、情報を何に使うのかをできる限り特定し(同法17条1項)、取得の際に通知または公表することが求められます(同法21条1項)。もっとも、予約の確認に電話番号を使うことのように、取得の状況から目的が明らかな場合は、通知や公表がなくても許されるとされています(同法21条4項4号)。そして、本人の同意なく、特定した目的の範囲を超えて情報を使うことは禁じられています(同法18条1項)。

不適正な使い方の禁止

 さらに、違法または不当な行為を助長したり誘発したりするおそれのある方法で個人情報を使うことも禁じられています(同法19条)。たとえば、来店の事実を家族や勤務先に知らせると告げて金銭を求めるために顧客情報を使うことは、予約の管理という目的から外れるだけでなく、この規定にも反する使い方と評価されうるものです。

情報が店の外に出ていく主な経路

系列店・グループ店での共有

 同じ会社が複数の店を運営している場合、店舗間で台帳を共有しても、法律上は同じ事業者の内部での利用にとどまります。これに対し、経営主体が別の店と情報をやり取りする場合は「第三者提供」にあたり、原則として本人の同意が必要です(同法27条1項)。共同で利用する相手や項目などをあらかじめ本人が知り得る状態にしていれば、同意なく共有できる仕組みもありますが(同法27条5項3号)、その手順を踏んでいる店は多くないのが実情です。

店の譲渡・経営者の交代

 店が別の経営者に引き継がれた場合、顧客台帳も一緒に移ることがあります。事業の承継に伴う移転は第三者提供にあたらないとされているため(同法27条5項2号)、利用した当時とは別の経営者の手元に情報が残っている可能性があります。

法令に基づく照会と押収

 捜査機関からの照会に応じるなど、法令に基づく場合は本人の同意がなくても提供できます(同法27条1項1号)。店が摘発された場合の顧客名簿や予約履歴の扱いについては、【風俗トラブル】利用した店が摘発された|顧客名簿・予約履歴はどこまで捜査に使われるのかで解説しています。

従業者による持ち出し

 顧客情報の流出は、外部からの不正アクセスよりも、従業者や元従業者による持ち出しが問題になる場面が少なくありません。業務で扱った顧客データベースを、自分や第三者の不正な利益を図る目的で提供したり盗用したりすると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(同法179条)。また、不正な目的による漏えいが起きた場合、店は個人情報保護委員会への報告と本人への通知を求められます(同法26条1項・2項)。

キャストの手元に渡る情報

店がキャストに伝える範囲

 店がキャストに伝えるのは、予約の名前と時間、場所といった、接客に必要な範囲が一般的です。電話番号まで伝えるかどうかは店の運用によって異なります。店がキャストに情報を伝えることは、接客という目的の範囲内での利用と考えられますが、それを超えて私的な連絡に使うことは、目的の範囲外の利用にあたりうるものです。

キャスト個人の端末に残る情報

 キャストと直接やり取りした場合、こちらの番号やアカウントはキャスト個人の端末に残ります。この情報は店の台帳とは別に管理されるため、店に削除を求めても、キャストの端末にある記録まで消えるとは限りません。店に伝えた情報と、キャストと直接交わした情報は、管理する人が違うと考えておくことが大切です。

電話番号から本名にたどり着く経路

予約に偽名を使っていても番号は残る

 予約時に偽名を伝えていても、電話番号から契約者の情報をたどる経路はあります。トラブルが起きた後の特定の流れは、【風俗トラブル】偽名で利用していた|本名を知られていない場合の請求で整理しています。弁護士が受任事件について行う照会の仕組みは、弁護士会照会とは|風俗トラブルで相手方を特定する仕組みをご覧ください。

スマートフォンの設定から伝わる情報

 見落とされやすいのが、スマートフォンのアプリの設定です。メッセージアプリの中には、電話帳に登録された番号をもとに友だち候補を表示する機能があり、こちらの設定によっては、店の端末に自分のアカウント名やアイコンが表示されることがあります。アカウント名を本名にしている場合、予約時に偽名を伝えていても、そこから本名が伝わる可能性があります。

流出した情報を使った連絡の典型

「顧客リストにあなたの番号があった」という連絡

 利用した店とのあいだに何もトラブルがないのに、「利用した店で問題が起きている」「調査中の顧客リストにあなたの番号があった」と告げ、名前や住所を聞き出そうとする連絡が寄せられることがあります。示談をまとめるという名目で振込を求める手口も見られます。非通知や見知らぬ番号からのこうした連絡に対して、その場で本名や住所を伝えたり、支払いを約束したりすることは控えてください。

店やキャストの名前を出した請求

 実際の利用に関係する請求であっても、連絡してきた相手が本当に店の関係者なのか、どのような根拠で何を求めているのかは、記録を残したうえで確認する必要があります。情報を握られて要求を受けている場面の対応は、風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはで解説しています。連絡を無視し続けた場合に起こりうることは、店からの電話・LINEを無視し続けるとどうなるか|放置の先に起きることの時系列をご参照ください。

本人が店に求められること|開示・利用停止とその現実

開示と利用停止の請求

 本人は、店が保有している自分の情報の開示を求めることができます(同法33条1項)。目的外の利用や不適正な利用がされている場合のほか、店がその情報を利用する必要がなくなった場合や、本人の権利または正当な利益が害されるおそれがある場合には、利用の停止や消去を求めることもできます(同法35条1項・5項)。これらの請求は、代理人を通じて行うこともできます(同法37条3項)。

求める前に考えておきたいこと

 ただし、法律上の請求ができることと、それが実際に役立つかどうかは別の問題です。請求の際には本人確認を求められるのが通常で、予約時に偽名や番号だけを伝えていた場合、請求をきっかけに店が新しい情報を得ることになりかねません。店に連絡を取る前に、何を求め、何を伝えずに済ませるのかを決めておくことが大切です。店が摘発された後に記録の削除を頼むことは、別の問題を生じさせるおそれがあるため、この場面での対応は前述の摘発の記事に譲ります。

これから予約するときに意識したいこと

名前と書面は分けて考える

 予約時に本名以外の名前を伝えることと、示談書や誓約書のように責任を引き受ける書面に偽名で署名することとでは、法的な意味が大きく異なります。予約の名前をどうするかと、書面に何を書くかは、分けて考えておくことをおすすめします。

身分証の提示を求められたとき

 会員登録の際に身分証の提示や撮影を求められると、名前だけでなく住所や生年月日まで店の手元に残ることになります。応じる義務があるのかどうかは、身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結で解説しています。

よくあるご質問

トラブルがなければ、予約時の情報が悪用されることはないのでしょうか。

 通常の利用であれば、予約時の情報は予約の管理や来店履歴の記録に使われるにとどまることがほとんどです。ただし、従業者による持ち出しや店の譲渡など、こちらにトラブルがなくても情報が店の外に出る経路はあります。見知らぬ相手からの連絡には、その場で応じないことが基本です。

店に自分の情報を消してもらうことはできますか。

 利用する必要がなくなった場合などには、利用の停止や消去を求めることができます(個人情報保護法35条5項)。ただし、求める際に本人確認が必要になることが多く、偽名で利用していた場合などは、かえって情報を伝えることになりかねません。求めるかどうか、どの範囲で求めるかは、事前に整理しておくことが大切です。

店の名前を出した連絡が本物かどうか、どう確かめればよいですか。

 その場で名前や住所を伝えたり、支払いを約束したりせず、着信履歴やメッセージを残したうえで、連絡してきた相手の所属や請求の根拠を書面で示すよう求めるのが一つの方法です。自分で確かめることに不安がある場合は、弁護士に窓口を任せることも考えられます。

まとめ


  1. 予約時の名前と電話番号は、予約の確認、来店履歴の管理、利用を断る客の記録などに使われています。
  2. 名前と番号を検索できる形で管理する店は、規模にかかわらず個人情報取扱事業者にあたります(個人情報保護法16条2項)。
  3. 店は特定した目的の範囲で情報を使うことが原則で、不適正な使い方も禁じられています(同法18条1項・19条)。
  4. 経営主体が別の店との共有は原則として本人の同意が必要ですが、事業の承継に伴う移転は第三者提供にあたりません(同法27条1項・5項2号)。
  5. 従業者が顧客データベースを不正な利益を図る目的で提供すると刑事罰の対象になり、店には漏えいの報告と本人への通知が求められます(同法179条・26条)。
  6. キャストと直接交わした情報は店の台帳とは別に管理されるため、店への削除の求めだけでは消えないことがあります。
  7. 開示や利用停止を求めることはできますが(同法33条1項・35条)、請求をきっかけに新しい情報を伝えることにならないよう、事前の整理が欠かせません。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談いただけます。

予約時に伝えた情報をもとに見知らぬ相手から連絡が来ている方も、これから店とのやり取りが控えていて情報の扱いに不安がある方も、状況を整理するところからご一緒します。お一人で判断される前に、まずはお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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