【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われたとき自分で動く前に確認したい8項目|相談に切り替える目安つき

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年11月時点の刑法(2023年改正後の不同意性交等罪・不同意わいせつ罪)、性的姿態撮影等処罰法、刑事訴訟法、民法、弁護士法の規定をもとに、風俗店を利用した方の側から見た一般的な考え方を整理したものです。個別の事案の見通しは、事実関係によって変わります。


風俗店を利用した方からのご相談では、「終わった後に店のスタッフが来て『警察に行くか、ここで話をつけるか』と言われた」「帰り道に店から電話があり、『女の子が警察に行くと言っている』と告げられた」というお話を多く伺います。一方で、キャスト側から見れば、望まない行為をされたと感じ、警察への相談を本気で考えている場面もあります。

 ネット上には「店の言う『警察』はほとんど脅しだから無視してよい」「すぐに払って終わらせたほうがよい」といった説明が見られます。どちらも一部の場面には当てはまりますが、誰が・何を理由に・何を求めているのかによって、取るべき対応は大きく変わります。そこを確かめないまま動くと、後から取り返しにくい書面や支払いが残ることがあります。

 この記事では、「警察に行く」と言われた後、ご自身で店と連絡を取ったり支払いを決めたりする前に確認しておきたい8つの項目と、弁護士への相談に切り替える目安を整理します。被害届が出た後の手続の流れや示談書の条項については、それぞれ別の記事で解説していますので、本文中のリンクからご覧ください。

「警察に行く」と言われたときに押さえておきたい前提

被害届や告訴は、被害を受けたと話す本人が出すもの

捜査のきっかけとなる被害届や告訴は、通常、被害を受けたと話す本人から出されます。告訴をすることができるのは「犯罪により害を被った者」とされており(刑事訴訟法230条)、風俗の場面であれば、問題になるのは店ではなくキャスト本人の意思です。

 そのため、「店が警察に行く」と言っている場合と、「キャスト本人が警察に相談したいと言っている」場合とでは、意味合いが異なります。店のスタッフの言葉だけで状況を判断せず、誰の意思として伝えられているのかを確かめることが出発点になります。

「警察に行く」は、交渉の言葉として使われることもある

 実際のご相談では、「警察に行かれたくなければ示談金を払え」という形で、警察という言葉が金銭の要求と一緒に示される例が少なくありません。この場合、本当に刑事手続を望んでいるのか、それとも支払いを引き出すための言葉なのかは、外からは見分けにくいところです。

 ただし、「脅しに違いない」と決めつけて連絡を一切断つことも、「警察に行かれたら終わりだ」と考えて言われるままに払うことも、どちらも状況を悪くするおそれがあります。本当に被害を訴えている方がいる可能性を残しつつ、要求の中身を冷静に確かめる姿勢が大切です。キャストが警察に相談したと聞かされた場合の確かめ方は、【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで解説しています。

店が客と示談交渉をすることには、法律上の制限がある

 弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉することは、弁護士法72条で禁じられています。キャストと客の間の問題について店が当事者のように交渉を進める場面では、この点が問題になることがあり、店の関係者が客との示談交渉をめぐって弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられた例もあります。

 とはいえ、店が連絡してきた時点で交渉そのものが無効になるわけではありません。ご自身で対応する場合も、「店との話し合いが、キャスト本人との問題の解決につながっているか」という視点を持っておくことが大切です。

自分で動く前に確認したい8項目(前半)|相手と主張の中身

 次の8項目は、店と連絡を取る前、あるいは支払いや署名を決める前に、手元で整理しておきたい事柄です。

  1. 「警察に行く」と言っているのは誰か。
  2. 何をしたと言われているのか。
  3. 自分の記憶と相手の主張は、どこが同じでどこが違うのか。
  4. 何を、いつまでに、どういう方法で求められているのか。
  5. 自分のどの個人情報が相手に渡っているのか。
  6. いま身の安全や行動の自由は確保できているか。
  7. 手元にどのような記録が残っているか。
  8. 支払いや合意をした場合に、誰との関係が解決するのか。


 前半では①〜④を、後半では⑤〜⑧を順に見ていきます。

①「警察に行く」と言っているのは誰か

最初に確かめたいのは、警察に行くと言っているのがキャスト本人なのか、店のスタッフなのか、それとも交際相手や知人を名乗る第三者なのかという点です。前提で触れたとおり、刑事手続の中心になるのは本人の意思です。

 店のスタッフから「女の子が警察に行くと言っている」と伝えられただけで、本人の言葉を直接聞いていない場合もあります。誰からどの言葉を聞いたのかを、日時とあわせてメモしておくと、後の判断や相談がしやすくなります。

②何をしたと言われているのか

 「本番行為を強要された」「盗撮された」「無理に触られた」「怪我をさせられた」など、相手の主張によって問題になり得る罪名は変わります。たとえば、同意のない性交等は不同意性交等罪(刑法177条)、同意のないわいせつな行為は不同意わいせつ罪(同法176条)、無断での撮影は性的姿態撮影等処罰法の撮影罪(同法2条)、暴力による怪我であれば傷害罪(刑法204条)が検討されることになります。

 相手が何を理由に「警察」と言っているのかが曖昧なまま話を進めると、金額の妥当性も、刑事事件になる可能性も判断できません。言われた内容をできるだけ具体的に書き出しておきましょう。

③自分の記憶と相手の主張のずれ

 相手の主張と、ご自身の記憶とが一致している部分・食い違っている部分を分けて整理します。「行為自体はあったが同意があったと思っている」「撮影はしていないが、スマホを置いていた」など、ずれのある部分こそが後の判断の中心になります。

 その場で強く問い詰められると、謝罪の言葉とともに事実と違う内容まで認めてしまう方がいます。謝ることと、相手の主張する事実をすべて認めることは別のものです。その場で認める・認めないを決めきらず、「確認してから改めて連絡します」と伝えるにとどめることも一つの方法です。

④何を、いつまでに、どういう方法で求められているのか

 金額だけでなく、期限、支払方法(現金の手渡し・振込・電子マネーなど)、署名を求められている書面の有無を確認します。「罰金」「違約金」として店の規約に金額が書かれていても、その金額をそのまま支払う義務があるとは限りません。盗撮をめぐって店が求めた迷惑料について、利用者に支払義務はないと判断した裁判例(東京地方裁判所平成29年2月28日判決)もあります。

 また、「今日中に払えば警察には言わない」といった短い期限は、考える時間を削る方向に働きます。即時払いを求められたときの考え方は、【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で解説しています。

自分で動く前に確認したい8項目(後半)|安全・記録・合意の相手

⑤自分のどの個人情報が相手に渡っているのか

予約時の電話番号のほか、身分証や免許証を撮影された、勤務先や実家の住所を伝えた、という場合があります。どの情報がどの方法で渡ったのかを整理しておくと、家族や勤務先への連絡を心配する場面で、どこまでの備えが必要かを見積もりやすくなります。

 財布やスマホ、身分証を店に預けたまま帰ってきた場合は、その返還も交渉の対象になります。詳しくは【風俗トラブル】財布やスマホを店に預けさせられた|所持品を返してもらう方法で解説しています。

⑥いま身の安全や行動の自由は確保できているか

 店の事務所やホテルの部屋で、複数人に囲まれて退出させてもらえない、所持品を返してもらえないといった状況では、まず安全の確保を優先します。退出を妨げられる状態が続く場合は監禁罪(刑法220条)、害悪を告げて金銭を出させようとする場合は恐喝罪(同法249条)、義務のないことを無理に行わせる場合は強要罪(同法223条)が問題になり得ます。

 身の危険を感じる状況では、ご自身から110番通報をすることも選択肢の一つです。警察を呼ぶとご自身の行為についても話を聞かれる可能性はありますが、その場で安全を確保し、高額の支払いや書面への署名を避けるという意味があります。

⑦手元にどのような記録が残っているか

 予約の履歴、店やキャストとのメッセージ、着信履歴、通話の録音、書かされた書面の写真、支払いをした場合の振込記録などを、消さずに残しておきます。書面の写真を撮っていない場合でも、書いた内容をできるだけ早くメモにしておくと役立ちます。

 ご自身の記憶も記録の一つです。入店から退出までの流れ、言われた言葉、相手の人数や名前を、時間が経たないうちに時系列で書き出しておきましょう。

⑧支払いや合意をした場合に、誰との関係が解決するのか

 店と話をつけてお金を払っても、合意の当事者にキャスト本人が入っていなければ、本人との関係が解決したとは言いにくい場合があります。弁護士ドットコムの相談でも、店とだけ示談した後にキャストから告訴や請求をされないかを心配する声が多く見られます。

 合意をするなら、誰が当事者になるのか、被害届を出さない・取り下げるといった内容が含まれるのか、これ以上の請求をしないという清算の取り決めがあるのかを確認しておく必要があります。示談書に入れておきたい条項は、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。

弁護士への相談に切り替える目安

ご自身で対応しても差し支えが少ない場面

相手の主張がはっきりしていて、ご自身の記憶とも食い違いがなく、求められている金額も具体的な根拠が示されている、という場面では、ご自身で話し合いを進める方もいます。その場合でも、⑦の記録を残し、⑧の合意の相手と内容を確かめてから支払うことが前提になります。

 店との交渉を自分でするか弁護士に任せるかの分かれ目は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情でも整理しています。

弁護士に任せたほうがよいサイン

 次のような事情が1つでも当てはまる場合は、ご自身で連絡を重ねる前に、弁護士への相談に切り替えることをおすすめします。

  • 相手の主張とご自身の記憶に、大きな食い違いがある。
  • 不同意性交等罪や盗撮など、具体的な罪名を挙げられている。
  • 数十万円以上の金額や、根拠の分からない「罰金」「違約金」を求められている。
  • 身分証や勤務先、家族の連絡先などを相手に知られている。
  • 期限を切って支払いや来店を迫られている、または夜間や勤務先に連絡が続いている。
  • すでに書面に署名した、または一部を支払った後に、追加の要求がある。
  • 警察から電話があった、または被害届が受理されたと聞かされた。


 当てはまる項目が多いほど、早い段階で窓口を弁護士に切り替える意味は大きくなります。弁護士が代理人として入ることで、店やキャストとの連絡を弁護士に一本化でき、ご本人が直接やり取りする場面を減らすことができます。

相談の前に、すでに自分で連絡してしまっていても遅くはない

 「自分で店に連絡してしまったから、もう弁護士に頼んでも意味がないのでは」と心配される方もいますが、途中から弁護士に切り替えることは可能です。ただ、それまでに伝えた内容や書いた書面によって、その後の進め方が変わることはあります。詳しくは【風俗トラブル】弁護士に頼む前に自分で連絡してしまった|その後の交渉への影響で解説しています。

 弁護士が介入した実際の例としては、【解決事例】風俗店で「警察に行く」と告げられた本番行為トラブル|解決金30万円で三者示談が成立した事例もご覧ください。

よくあるご質問


「警察に行く」と言われたら、必ず刑事事件になるのですか?

そうとは限りません。実際に被害届が出されるか、警察が捜査を始めるかは、キャスト本人の意思や、相手の主張を裏付ける事情があるかどうかなどによって変わります。ただし、本当に被害を訴えている方がいる可能性もあるため、「どうせ脅しだ」と放置せず、①〜⑧を整理したうえで対応を考えることが大切です。被害届が出る前の時間の使い方は、【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で解説しています。

店に「払えば警察には言わない」と言われました。払えば終わりますか?

 店の約束だけでは、キャスト本人が警察に相談する可能性がなくなるとは言い切れません。⑧で触れたとおり、合意の当事者と内容によって、解決する範囲は変わります。口約束の意味と限界については、【風俗トラブル】店が「警察には言わない」と約束してきた|口約束の意味と限界で解説しています。

その場で書かされた念書や示談書には、従わなければならないのですか?

 書面に署名した事実は残りますが、内容や作成された状況によっては、その効力を争える場合があります。強迫によってした意思表示は取り消すことができ(民法96条1項)、公序良俗に反する内容は無効とされます(同法90条)。書いた内容を記録したうえで、支払いを続ける前にご相談ください。

時間が経てば、問題にならなくなりますか?

 刑事事件には公訴時効がありますが、不同意性交等罪の公訴時効は改正により15年とされており(刑事訴訟法250条3項)、数か月や数年で問題にならなくなるものではありません。時間が経ってから連絡が来る例もあるため、⑦の記録は消さずに残しておくことをおすすめします。

家族や勤務先に知られずに相談できますか?

 弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容がご本人の同意なく家族や勤務先に伝わることはありません。連絡の方法や時間帯についても、ご希望をお伺いしたうえで調整します。詳しくは家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説で解説しています。

まとめ


  1. 被害届や告訴は、被害を受けたと話す本人が出すものであり(刑事訴訟法230条)、まずは誰が「警察に行く」と言っているのかを確かめる。
  2. 何をしたと言われているのかによって、不同意性交等罪(刑法177条)、不同意わいせつ罪(同法176条)、撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条)など、問題になる罪名が変わる。
  3. 店の規約にある「罰金」「違約金」を、そのまま支払う義務があるとは限らない。
  4. 退出を妨げられるなど身の危険がある場面では、監禁罪(刑法220条)や恐喝罪(同法249条)も問題になり得るため、110番通報も選択肢になる。
  5. その場で書かされた書面も、強迫による取消し(民法96条1項)や公序良俗違反(同法90条)を理由に争える場合がある。
  6. 店とだけ合意しても、キャスト本人との関係が解決するとは限らないため、合意の当事者と清算の内容を確認する。
  7. 主張の食い違い、具体的な罪名、高額の要求、個人情報の把握などが1つでも当てはまれば、弁護士への相談に切り替える目安になる。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。店から「警察に行く」と言われ、支払いや書面への署名を迫られている方、ご自身で連絡を始めたものの話がまとまらずお困りの方は、当日・翌日のご相談にも可能な限り対応しますので、お早めにご連絡ください。

身に覚えのない主張をされている方も、ご自身の行為に思い当たる部分があり相手と誠実に話し合いたいと考えている方も、まずは状況をお聞かせください。8項目のメモや手元の記録をお持ちいただければ、具体的な見通しをお伝えしやすくなります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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