【風俗トラブル・ホストクラブ】『色恋だと分かっていたはずだ』と言われた|困惑類型の主張の立て方
この記事は、2026年10月時点の弁護士法(72条)、弁護士職務基本規程(52条など)、刑法の規定をもとに書いています。風俗店の店長らが弁護士法違反の疑いで逮捕されたという報道(2026年2月)に触れていますが、報道時点では容疑の段階であり、有罪が確定したものではありません。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
風俗店でのトラブルのあと、店から「こちらは弁護士を立てます」「あとは弁護士から連絡させます」と告げられ、そのまま連絡が途切れてしまった、というご相談は少なくありません。お客様の側からは「いつ、どこに、何が届くのか分からず落ち着かない」という声を、またキャストや店舗の事情を知る立場の方からは「本当に弁護士に頼むつもりなのかは店によって違う」という声を、それぞれ伺います。
「弁護士から連絡が来たら慌てて払わずに相談を」という一般的な説明は、それ自体は誤りではありません。ただ、実際のご相談では、連絡が来る前の数日から数週間のあいだに、ご本人が店へ何度も電話をかけたり、記録を消してしまったりして、その後の交渉が難しくなっている場面も見られます。予告から最初の連絡までの「待っている期間」の過ごし方は、意外と説明されていません。
この記事では、店から「弁護士を立てる」と言われてから、相手方の代理人から実際に連絡が来るまでの期間に絞って、その言葉が持つ意味と、控えたい行動、しておきたい準備を整理します。弁護士名の書面が届いた後の読み方や、店の顧問弁護士が出てきた場面の確認事項は、それぞれ別の記事で扱っています。
「弁護士を立てる」という言葉が意味すること・しないこと
まずは、店が口にした「弁護士を立てる」という言葉を、落ち着いて分解してみます。
予告の段階では、法的な期限も義務もまだ生じていない
「弁護士を立てる」というのは、あくまで今後の方針を伝える言葉です。この一言によって、何日以内に支払わなければならないといった法的な期限が始まるわけではありませんし、お客様の側に何かを回答する義務が生じるわけでもありません。
一方で、店やキャストの側が法的な手段も含めて検討しているというサインではあるため、軽く受け流してよい話でもありません。予告の段階は「何も決まっていないが、準備はできる期間」と捉えるのが現実的です。
誰の代理人になるのかで、請求の中身が変わる
店が「弁護士を立てる」と言ったとき、その弁護士が誰の代理人になるのかは、実はまだ分かっていません。トラブルの当事者は、多くの場合、店ではなく実際にサービスを提供したキャスト本人です。キャスト本人の損害と、店の営業上の損害とは、請求の根拠も金額の考え方も異なります。
| 誰の代理人か | 主に考えられる請求 | 後で確かめたい点 |
|---|---|---|
| キャスト本人 | 慰謝料など、キャスト個人が受けたとする損害 | 本人からの委任の有無、被害届についての意向 |
| 店(経営者) | 規約上の違約金、営業上の損害など | 規約に同意した経緯、損害の具体的な中身 |
連絡が来た段階で、代理人が誰の依頼を受けているのかを書面で確認することが、請求内容を整理する出発点になります。
店のスタッフが交渉を続けることとの違い
弁護士ではない人が、報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉などを行うことは、弁護士法で禁じられています(弁護士法72条)。2026年2月には、無店舗型の性風俗店をめぐり、店長らが従業員に代わって客と示談交渉をし、示談金を受け取ったなどとして、弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。
この点からすると、店が「弁護士を立てる」と言うこと自体は、法的にはむしろ筋の通った進め方といえます。注意したいのは、「弁護士を立てる」と言いながら、実際には店のスタッフが引き続き金額の交渉をしてくるような場合です。その場合のやり取りは、後から経緯を確認する材料として残しておくことが大切です。
代理人から連絡が来るまでに起きていること
予告から実際の連絡までの間、相手方の側では、依頼する弁護士の選定や、お客様の連絡先・住所の確認などが進んでいることがあります。
相手方が把握している連絡先・住所を確認しておく
代理人がまず確かめるのは、通知をどこに送るかです。予約時の電話番号しか伝えていない場合もあれば、身分証を見せたり、自宅に派遣を頼んだりして住所まで知られている場合もあります。
ご自身が店に何を伝えたのか、何を見せたのかを思い出して書き出しておくと、どのような形で連絡が来そうかの見当がつきます。電話番号などから相手方を特定する仕組みについては、弁護士会照会とは|風俗トラブルで相手方を特定する仕組みで解説しています。照会にどこまで応じるかは照会先によって異なり、必ず住所まで分かるとは限りません。
最初の連絡は書面のことも電話のこともある
代理人からの最初の連絡は、受任したことを知らせる書面(受任通知)や、内容証明郵便による請求書の形をとることが多いですが、住所が分からない場合には電話やショートメッセージで連絡が来ることもあります。
受任通知が持つ意味については、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかをご覧ください。
連絡が来ないまま時間が過ぎる場合もある
「弁護士を立てる」と言われたまま、結局何の連絡も来ないこともあります。予告が交渉上の言葉にとどまっていた可能性もあれば、相手方の側で方針が変わった可能性もあります。
ただ、連絡が来ないことを理由に記録を処分してしまうと、後になって連絡が来た場合に経緯を説明しにくくなります。連絡が来ない期間が続いても、手元の材料は一定の期間保管しておくのが無難です。
この期間に控えたい行動
連絡を待つ期間は不安が大きく、何かをして早く終わらせたいという気持ちになりやすいものです。ただ、次のような行動は、その後の交渉を難しくすることがあります。
「今日払えば弁護士は立てない」という提案に応じる
「弁護士を立てる」と告げたうえで、「今日中に払えば弁護士には頼まない」と持ちかけられることがあります。この場合、金額の根拠が示されないまま、急いで支払うことになりがちです。また、店に支払っても、キャスト本人との関係が整理されないまま残ることもあります。
期限を切られたときの返答の仕方は、【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方で整理しています。
キャストや店へ繰り返し連絡する
謝罪をしたい、事情を説明したい、被害届を出さないでほしいとお願いしたい、という気持ちから、キャスト本人や店へ何度も連絡を取ろうとする方もいます。しかし、相手方から見ると、こうした連絡は圧力と受け取られることがあり、かえって態度を硬くさせるおそれがあります。
相手方が代理人を立てる方針を示した以上、当事者どうしの直接のやり取りは控えるのが基本です。すでに連絡してしまった場合の影響と立て直し方は、【風俗トラブル】弁護士に頼む前に自分で連絡してしまった|その後の交渉への影響をご覧ください。ご家族が代わりに店とやり取りすることにも、別の注意点があります(【風俗トラブル】家族が代わりに交渉に出た|本人以外が動くことの是非)。
やり取りや記録を消してしまう
店とのやり取りが残ったメッセージや通話の録音を、見たくないという理由で消してしまう方もいます。ですが、これらはお客様の側の言い分を支える材料にもなり得ます。たとえば、店のスタッフがどのような言葉で金額を示したのかは、後の交渉で請求の妥当性を検討する手がかりになります。
この期間にしておきたい準備
控えたい行動の裏返しとして、待っている期間にこそ進めておける準備があります。
時系列と手元の材料を整理する
利用した日時、店名、キャストの源氏名、その場で何があったのか、店から何を言われたのかを、記憶が新しいうちに時系列でメモにしておきます。あわせて、次のような材料を一か所にまとめておくと、相談の際に話が早く進みます。
- 予約や利用の記録(予約画面、通話履歴、決済の記録など)。
- 店やキャストとのメッセージのやり取りの画面。
- その場でのやり取りの録音や、帰宅後に書いたメモ。
- すでに支払った金銭があれば、その領収書や振込の記録。
- 署名した書面や、店に預けた物があれば、その内容が分かるもの。
材料の作り方は【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料、録音の扱いは録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方で詳しく扱っています。
郵便物や電話の受け方を決めておく
自宅の住所を知られている場合、弁護士名の封筒や内容証明郵便が家族の目に触れることを心配される方は多いです。どなたが郵便物を受け取ることが多いのか、知らない番号からの電話にどう対応するのかを、あらかじめ考えておくと、実際に連絡が来たときに慌てずに済みます。
家族や勤務先に知られないための考え方は、家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説で整理しています。
こちらも代理人を立てるかを判断する
相手方の代理人からの連絡を待つ前に、お客様の側でも弁護士に依頼するという選択肢があります。弁護士は、相手方に弁護士などの代理人が就いたときは、正当な理由がない限り、その代理人の承諾なく相手方本人と直接交渉してはならないとされています(弁護士職務基本規程52条)。
つまり、先にこちらの代理人が就いていれば、相手方の弁護士からの連絡は原則としてこちらの弁護士に向かうことになります。ご自身で直接やり取りをする負担が減るほか、郵便物が自宅に届く場面を減らせることもあります。もっとも、依頼には費用がかかりますので、請求の見込み額や刑事手続きの可能性を踏まえて判断することになります。
代理人から連絡が来たら最初に確かめること
実際に連絡が来たら、内容に反応する前に、次の点を確かめます。詳しくは関連記事に譲り、ここでは要点だけ挙げます。
本当に弁護士か、誰の代理人か
書面や電話の相手が実在する弁護士かどうかは、日本弁護士連合会の弁護士情報検索などで確認できます。あわせて、代理人がキャスト本人の依頼を受けているのか、店の依頼を受けているのかを確認します。
確かめ方の手順は【不当要求対応】『弁護士に相談した』と言われた|本当に代理人が就いたのかを確かめる、店の顧問弁護士が出てきた場合の確認事項は風俗トラブルで店の「顧問弁護士」が出てきた|客側がまず確認すべきことで解説しています。
請求の根拠と金額、回答期限の扱い
代理人からの書面には、請求の根拠、金額、回答期限が書かれていることが一般的です。回答期限は相手方が設定したものであり、それを過ぎたことだけで直ちに法的な効果が生じるわけではありません。ただし、何も返さずに放置すると、相手方が訴訟や刑事手続きを検討する方向に進む可能性があるため、期限内に何らかの方針を伝えるのが望ましいといえます。
書面の読み方は弁護士名の請求書が届いた|代理人が就いた場合の意味と内容証明が弁護士名で届いた|慌てて払う前にやるべきことで取り上げています。
刑事手続きの見通しを分けて考える
代理人の書面に、被害届や刑事告訴に触れる記載がある場合もあります。民事上の金銭の話と、刑事手続きがどう進むかは、関係はしていても別の問題です。被害届が出されるかどうかの考え方は、被害届が出る場合と出ない場合|キャスト・店の判断で何が変わるかをご覧ください。
よくあるご質問
店から「弁護士を立てる」と言われました。こちらから店に連絡して、どの弁護士なのか聞いてもよいですか。
確認すること自体が禁じられているわけではありません。ただ、問い合わせをきっかけに金額の話へ進んでしまうこともあるため、聞く場合は短く、書面に残る形で行うのが無難です。こちらで弁護士に依頼する場合は、弁護士を通じて確認するほうが落ち着いて進められます。
相手方に弁護士が就いたら、言われた金額をそのまま払うしかないのでしょうか。
そうとは限りません。弁護士が就いた場合でも、請求の根拠や金額が適切かどうかは別に検討されます。相手方の弁護士の対応に疑問がある場合に、こちらから指摘して解決に至った例もあります(【解決事例】デリヘル自宅利用時のトラブル|相手方弁護士の不適切な対応を追及した事案)。
連絡が来ないまま数か月が過ぎました。もう心配しなくてよいですか。
連絡が来ない理由は事案によってさまざまで、一概には言えません。民事の請求や刑事の手続きには、それぞれ時効などの期間の定めがありますが、どの期間が当てはまるかは事情によって異なります。不安が続く場合は、記録を手元に残したまま、一度ご相談いただくのがよいと思います。
まとめ
- 店からの「弁護士を立てる」は予告であり、その一言で法的な期限や回答義務が生じるわけではありません。
- 弁護士が誰の代理人になるのか(キャスト本人か店か)によって、請求の根拠と中身は異なります。
- 弁護士でない店のスタッフが報酬目的で示談交渉を行うことは、弁護士法72条との関係で問題になり得ます。
- 「今日払えば弁護士は立てない」という提案に応じて急いで支払うことは、慎重に考える必要があります。
- 待っている期間は、キャストや店への直接の連絡を控え、記録を消さずに時系列で整理しておくことが大切です。
- こちらも先に代理人を立てれば、相手方の弁護士は原則としてこちらの弁護士と交渉することになります(弁護士職務基本規程52条)。
- 連絡が来たら、相手が実在する弁護士か、誰の代理人か、請求の根拠と回答期限を最初に確かめます。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。店から「弁護士を立てる」と言われて連絡を待っている段階でも、ご相談いただくことで、控えたい行動と準備しておくことを具体的に整理できます。
すでに相手方の代理人から書面や電話が届いている方、これから届くことが心配な方のいずれも、お一人で判断する前に、どうぞお気軽にご相談ください。


