「写真と違う」容姿詐欺・サービス不履行|返金は求められるか
警察から一度話を聞かれたきり、あるいは店とのやり取りが警察の話に及んだきり、その後の連絡が途絶えている。数週間、ときには数か月が過ぎても何も届かない。この状態に置かれると、終わったのか、これから何か起きるのかが分からず、日常の判断まで止まってしまいます。
この記事では、風俗店の利用に関して捜査の対象になっているかもしれない方に向けて、連絡が来ない期間に何が進んでいるのかと、その期間をどう過ごすかを整理します。捜査が長引くことには、いくつかのはっきりした理由があります。理由が分かると、待ち方も変わります。
なお、期間の目安や呼び出しの回数といった数値は、事件の内容や地域によって幅が大きいため、ここでは扱いません。代わりに、時間がどこで使われているのかという工程の側から説明します。
この記事が前提としている状況
次のような状況を想定しています。
- 風俗店の利用をめぐって、客の側が捜査の対象になっているかもしれない場面を扱います。
- 現在は身体を拘束されておらず、日常生活を続けている状態を前提とします。
- 事実を認めているかどうかは問いません。どちらの立場でも共通する部分だけを扱います。
- すでに逮捕・勾留されている場合は時間の進み方が別物になるため、この記事の対象外です。
「連絡が来ない」には二つの状態がある
同じ「連絡が来ない」でも、待っている位置は二通りに分かれます。ここを取り違えると、待ち方も相談の仕方もずれてしまいます。
一度は接触があり、その後途絶えている
警察から電話があった、事情を聞かれた、任意で何かを提出した、といった接触がすでにある場合です。このときは、自分が捜査の対象として認識されていること自体は分かっている状態で、次の接触がいつ来るかだけが見えていません。
そもそも一度も連絡がない
店やキャストとの間でトラブルがあったものの、警察からは何も来ていない場合です。このときは、被害届や告訴が出されているのか、通報があったのかも分かりません。捜査が始まっているかどうか自体が不明という点で、前者とは不安の質が違います。
二つの違いは、後で述べる「こちらから確認できることの範囲」に効いてきます。
長引く理由① 時間のかかる工程が組み込まれている
捜査は、担当者が机に向かえば進むものばかりではありません。外部からの回答を待つ工程がいくつも挟まります。
記録や機器の解析
捜査機関は、犯罪の捜査をするについて必要があるときに、被疑者以外の者に鑑定を嘱託することができます(刑事訴訟法223条1項)。端末の中身の解析や資料の鑑定は専門の部署や機関に回されるため、そこで順番待ちが生じます。依頼した側でも仕上がりの時期を動かせません。
照会の回答待ち
捜査については、公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます(197条2項)。店の記録、通信の記録、口座の記録などがこれにあたります。照会を出してから回答が返るまでの時間は、捜査機関の側でも短縮しにくい部分です。
関係者の予定
キャスト、店のスタッフ、その場に居合わせた人など、話を聞く相手の都合がつかなければ聴取は進みません。連絡が取れない関係者がいると、そこで止まります。
これらは、待っている本人が何かをしたから遅れているわけではありません。工程の性質として時間がかかっています。
長引く理由② 手続は一直線に進むわけではない
警察が犯罪の捜査をしたときは、書類および証拠物とともに事件を検察官に送致します(246条本文)。身体を拘束していない事件では書類と証拠だけが送られ、これが一般に「書類送検」と呼ばれているものです。
ここで多くの方が、送致されれば後は検察官が判断するだけだと考えます。実際には戻りの工程があります。検察官は必要と認めるときは自ら犯罪を捜査することができ(191条1項)、自ら捜査する場合において必要があるときは司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができます(193条3項)。送致を受けた後で、足りない部分の補充が警察側に求められることがある、ということです。
どの段階で時間が使われやすいかを並べると、次のようになります。
| 段階 | そこで行われていること | 待ち時間の性格 |
|---|---|---|
| 警察の捜査 | 関係者の聴取、記録の収集、照会の発出 | 相手の回答や都合に左右される |
| 解析・鑑定 | 端末や資料の解析、専門部署への依頼 | 順番待ちが生じる |
| 送致の準備 | 書類の整理と作成 | 担当者の手持ち件数に左右される |
| 送致後の検討 | 検察官による記録の検討 | 他の事件との優先順位に左右される |
| 補充の往復 | 足りない部分の追加の捜査 | 一往復ごとに時間が加算される |
一往復あるごとに、こちらから見える動きは何もないまま時間だけが過ぎます。連絡が来ない期間が長いことと、事件が放置されていることは、同じではありません。
長引く理由③ 期限のある事件が先に処理される
身体を拘束されている事件には、法律上の期限があります。期限のある事件と期限のない事件が同じ担当者の手元にあれば、期限のあるほうから処理されます。これは事件の軽重を評価した結果ではなく、時間切れが許されない順に並べているだけです。
加えて、担当者の異動や部署の再編があると、引き継ぎのために一時的に動きが止まることがあります。年度の変わり目に連絡が途切れる例は、この類型にあたることがあります。
したがって、「後回しになっている」という事実から「軽く扱われている」と読み取ることはできません。逆に、「時間がかかっている」という事実から「重い事件だ」と読み取ることもできません。
相手が何を出したかで進み方が変わる
風俗の場面では、動いているのが店なのかキャスト本人なのかによって、手続の入口が変わります。
告訴・告発が出ている場合
司法警察員は、告訴または告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類および証拠物を検察官に送付しなければならないとされています(242条)。告訴には、書類を検察官へ送る扱いが条文の形で書かれているという点が、他の入口との違いです。
被害届にとどまる場合
被害届は、被害の事実を申告する書面で、処罰を求める意思表示までは含みません。告訴のような送付の規定も置かれていません。実際にどう進むかは、内容と証拠の状況によります。
何も出ていない場合
店が金銭の請求だけを続けていて、警察には何も出していないこともあります。この場合、警察からの連絡がないのは当然のことで、待っている対象がそもそも存在しません。ただし、後から出される可能性は残ります。
どれに当たるかを外から見分ける方法はありません。分からないまま待つことになりますが、どれであっても、こちら側の準備の中身はほとんど変わりません。
こちらから確認できること・できないこと
待つ側から働きかける余地はあります。ただし、聞けば分かることの範囲は限られています。
確認しやすいこと
- 担当している部署と担当者の氏名。最初の接触の際に控えておくと、後の連絡が取りやすくなります。
- 事件が検察庁に送られているかどうか。送致の有無については、警察の担当部署に問い合わせて教えられることがあります。
- 検察庁に送られている場合、どの庁が扱っているか。次の連絡がどこから来るのかの目安になります。
答えが返りにくいこと
- いつ処分が決まるのかという時期の見通し。捜査の途中では答えられないのが通常です。
- どのような処分になりそうかという内容の見通し。判断そのものを事前に示すことは想定されていません。
- どこまで捜査が進んでいるかという中身。捜査の内容は原則として明かされません。
なお、検察官は、公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨を告げなければならないとされています(259条)。請求があって初めて告げられる仕組みであり、処分が決まる前に請求しておくことはできません。
代理人がいる場合
弁護士が就いていると、連絡の窓口がそちらに移ります。呼び出しの連絡を本人の携帯ではなく代理人宛てにしてもらう、日程を調整する、といったやり取りができるようになります。捜査の中身が明かされるわけではありませんが、次の接触が突然来る形を避けられる点に意味があります。
待っている間にしておけること
連絡が取れる状態を保つ
電話に出られない、郵便が届かないという状態が続くと、連絡がつかないこと自体が見られ方に影響することがあります。番号を変えた、引っ越した、長期で家を空けるといった事情があるときは、こちらから連絡先を伝えておくほうが安全です。
記憶を書き残す
時間が経つほど、日付、順序、言葉のやり取りは曖昧になります。連絡が来ない期間は、記憶がそのまま薄れていく期間でもあります。思い出せるうちに、日付と出来事だけの簡単な形で書き残しておくと、後の聴取や相談で役に立ちます。
手元の記録を消さない
店とのやり取り、支払の記録、予約の履歴などは、消さずに残しておきます。自分に不利に見える記録も含めてです。残っているかどうかで、後から説明できる範囲が変わります。
呼び出しが来た場合の段取りを考えておく
急に日程を指定されたときに、仕事の休みが取れるか、費用をどう用意するかを先に考えておくと、その場の判断に追われずに済みます。
生活の判断で迷いやすい三つ
引っ越し・転職
捜査の対象になっていることを理由に、引っ越しや転職を禁じる規定はありません。ただし、連絡先が変わったことを伝えないまま連絡がつかなくなると、状況の見られ方が変わることがあります。転居した場合は、担当部署に新しい連絡先を伝えておくのが無難です。
海外への渡航
旅券については、死刑、無期もしくは長期2年以上の刑に当たる罪について訴追されている者、またはこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状などが発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者について、発給または渡航先の追加をしないことができるとされています(旅券法13条1項2号)。起訴されている段階や令状が出ている段階を想定した規定であり、捜査を受けているというだけで当然に当てはまるものではありません。もっとも、状況は途中で変わり得ます。渡航の予定があるときは、出発前に弁護士に確認しておくと判断がつけやすくなります。
端末の整理
容量が足りない、機種を変えたいといった事情はあるでしょう。ただし、捜査の対象になっている時期の初期化や機種変更は、意図と関係なく説明を求められることがあります。判断に迷う場合は、先に相談しておくほうが安全です。
避けたほうがよい待ち方
相手側に直接確認しに行く
店やキャストに「警察に何か出したのか」と直接尋ねる行為は、確認になるどころか、新たなやり取りとして記録に残ります。確認の意図であっても、接触したという事実だけが残ることがあります。
終わったと決めて記録を捨てる
連絡が来ないことを終了の合図と受け取り、やり取りを消してしまう例があります。処分が済んでいるかどうかは、消した後では確かめられません。
事情をネットに書く
匿名の場で経緯を書くと、書いた内容が後から出てくることがあります。相談は、内容が外に出ない場所で行うほうが安全です。
よくある受け止め方と、その修正
「半年も連絡がないから終わった」
連絡がないことは、処分が終わったことも、終わっていないことも示しません。公訴を提起しない処分は、請求があって初めて告げられる仕組みだからです。連絡がないという事実からは、どちらとも読み取れません。
「催促すれば早く終わる」
問い合わせによって処分の時期が早まるとは限りません。一方で、連絡が取れる状態にしておくこと自体には意味があります。急がせることと、連絡がつくようにしておくことは別の話です。
「連絡が来てから考えればよい」
呼び出しの連絡は、多くの場合、日程の指定を伴います。何も準備がない状態でその日を迎えると、整理しきれないまま話すことになります。準備の時間として使えるのは、連絡が来ていない今の期間です。
まとめ
連絡が来ない期間について、押さえておきたい点をまとめます。
- 捜査には、解析や照会など、当事者にも捜査機関にも短縮しにくい工程が組み込まれています。
- 手続は送致で一方向に進むとは限らず、補充のために戻る往復があります。
- 期限のある事件が先に処理されるため、順番が後になること自体は事件の評価を示しません。
- こちらから確認しやすいのは担当部署や送致の有無までで、時期や内容の見通しは通常示されません。
- 連絡が取れる状態を保ち、記憶と記録を残しておくことが、この期間にできる中心的な準備です。
連絡が来ない期間は、何も起きていない期間ではなく、こちらから見えないところで記録が形になっていく期間です。その間に何を整えておくかで、次の接触の場で話せる内容が変わります。
当事務所では初回のご相談を無料でお受けしており、お問い合わせは24時間受け付けています。連絡が途絶えている状況の整理や、呼び出しがあった場合の対応についても、あわせてご相談いただけます。


