本番で被害届を出されたら?取り下げの可否と示談交渉の進め方

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 性風俗店で本番行為(挿入行為)をめぐるトラブルになり、女性従業員や店側から「被害届を出す」と言われた、あるいはすでに被害届を出されて警察から連絡が来た——。こうした状況で、多くの方がまず考えるのが「被害届を取り下げてもらえないか」という点だと思います。

 結論から申し上げると、被害届を取り下げてもらうためのカギは、被害者との適切な示談です。ただし、「被害届は取り下げれば必ず不起訴になる」といった単純な話ではなく、その効果には正確に理解しておくべき限界があります。また、示談交渉を当事者本人が直接行うことには大きなリスクがあり、弁護士を通じて進める必要があります。

 この記事では、風俗トラブルに注力する弁護士が、以下の点を整理して解説します。

  • 「本番で被害届」とは、どのような罪が問題になる状況なのか
  • 被害届は「取り下げ」できるのか——その正確な意味と限界
  • 本番トラブルにおける示談交渉の具体的な進め方と注意点

 なお、すでに被害届を出された・出すと言われていて早急に対応したいという方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。

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「本番で被害届」とは——どのような罪が問題になるのか

店のルール違反と「刑事事件」は別のレイヤー

 まず整理しておきたいのは、「店の本番禁止ルールを破ったこと」そのものと、「刑事事件になること」は、法的には別の問題だという点です。

 多くの性風俗店は本番行為を店のルールで禁止しています。これを破ったことは、店との関係では違約金請求などの民事上の問題になり得ます。一方で、警察に「被害届」が出されるのは、女性従業員や店側が「犯罪の被害に遭った」と主張しているケースです。つまり、被害届が問題にする中心は、店のルール違反ではなく、女性本人に対する性犯罪の成否です。

問われうる主な罪名は「不同意性交等罪」

 本番行為をめぐって被害届が出される場合、中心的に問題となるのは刑法177条の不同意性交等罪(2023年7月13日より前は強制性交等罪・強姦罪と呼ばれていた罪)です。挿入に至らない行為の場合は、刑法176条の不同意わいせつ罪が問題になることもあります。

 不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑とされており、性犯罪の中でも重い部類に位置づけられています。

 ここでの最大の争点は「同意があったかどうか」です。相手が風俗サービスの従事者であることは、それ自体では本番行為への同意を意味しません。同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態でなされたと評価されれば、不同意性交等罪が成立し得ます。

「自分は同意があったと思っている」場合でも訴えられることがある

 注意が必要なのは、ご自身は「同意のうえだった」と認識していても、後日、女性側から「本当は拒めなかった」「無理やりだった」と被害を訴えられるケースがあるという点です。当事者間で認識が食い違うことは珍しくなく、だからこそ、感情的に否認したり、逆に不用意に不利な発言をしたりせず、冷静に対応することが重要になります。

被害届は「取り下げ」できるのか——正確な理解

 「被害届を取り下げてもらえれば解決する」というイメージを持たれる方は多いのですが、ここは正確に理解しておく必要があります。

被害届と告訴の違い、そして「取り下げ」の位置づけ

 被害届は、被害者が捜査機関に被害の事実を申告する書類であり、捜査の"きっかけ"の一つにすぎません。告訴のように、それ自体が特別な法的効果(親告罪における起訴の条件など)を持つものではありません。

 そのため、正確に言えば、被害届には告訴の取消しのような確立した「取下げ手続き」が制度として用意されているわけではありません。実務上は、被害者が「処罰を望まない」という意思を示すことが、被害届の「取り下げ」に相当する意味を持ちます。

 また、被害届が取り下げられた(処罰意思が撤回された)からといって、捜査が自動的に終わるわけでも、必ず不起訴になるわけでもありません。この点は誤解が多いところです。

カギを握るのは「宥恕付き示談」

 では、実務上、被害者の「処罰を望まない意思」をどう形にするのか。その中心が宥恕(ゆうじょ)付きの示談です。

 宥恕付き示談とは、示談書のなかに「被害者は加害者を許し、その処罰を望まない」という趣旨の条項(宥恕文言)を盛り込んだものをいいます。示談金の支払いに加えて、この宥恕の意思が書面で示されることが、その後の刑事処分の判断に影響していきます。

「示談すれば必ず不起訴」ではない——非親告罪化を正しく理解する

 ここで正確にお伝えしておくべき重要な点があります。

 不同意性交等罪などの性犯罪は、2017年の法改正で非親告罪となりました。非親告罪とは、被害者の告訴がなくても検察官が起訴できる罪のことです。つまり、示談が成立し宥恕が得られたとしても、制度上は、検察官が起訴することが可能なのです。

 したがって、「示談さえすれば自動的に不起訴になる」という理解は正確ではありません。

 もっとも、実務においては、起訴・不起訴を判断するにあたって被害者の処罰意思が重視されるのも事実です。とりわけ性犯罪では、被害者が加害者を宥恕し、処罰を望まないという意思を示していることは、不起訴・微罪処分・早期釈放の方向に働く重要な事情になります。示談は「不起訴を確約するもの」ではなく、「不起訴に向けて可能性を高める、最も重要な弁護活動の一つ」と理解するのが適切です。

本番トラブルにおける示談交渉の進め方

タイミングが結果を左右する

 示談は、早ければ早いほど選べる選択肢が広がります。

 被害者が被害届を提出する前であれば、そもそも事件化(捜査・逮捕)自体を避けられる可能性があります。すでに提出された後でも、検察官が起訴・不起訴を判断する前に示談を成立させ、その結果を検察官に示すことが重要です。逮捕・勾留されている場合には、早期釈放につながる可能性もあります。いずれにせよ、時間の経過は不利に働きやすいため、早期の着手が肝心です。

本人が直接交渉することは避ける

 「早く解決したい」という思いから、ご本人が女性や店に直接連絡を取ろうとする方がいますが、これは避けるべきです。理由は複数あります。
 
 第一に、当事者同士では交渉がこじれやすく、かえって態度を硬化させてしまうことが多い点です。突然の連絡が相手に警戒感を与え、逆効果になることも少なくありません。

 第二に、不当な金銭請求や、いわゆる美人局(つつもたせ)・恐喝といったトラブルに巻き込まれるリスクがある点です。落ち度につけ込まれ、相場を大きく超える金額を要求される事例もあります。

 第三に、店側が女性に代わって示談交渉に出てくるケースには注意が必要です。弁護士でない店関係者が報酬を得て示談交渉や示談金の受領を行うことは、弁護士法が禁じる非弁行為にあたるおそれがあります。実際に2026年2月には、店の女性従業員と本番行為をした客に対して店長らが示談交渉などを行ったとして、弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられています。店が交渉に出てきた場合、そのやり取りを記録に残しておくことは、後日の自衛のためにも意味があります。

弁護士が入ることで得られる実務上のメリット

 示談交渉を弁護士に委ねることには、次のような実務的なメリットがあります。

  • 連絡窓口の一本化:ご本人宛の連絡をすべて弁護士が受けるため、ご家族や勤務先に直接請求や嫌がらせの連絡が向かう事態を防ぎやすくなります。
  • 適正な金額での交渉:相場を踏まえて冷静に交渉することで、不当に高額な請求を適正な水準に是正できる可能性があります(示談金の水準は事案によって幅があります。
  • 示談書の内容の適正化:後述する宥恕条項・清算条項などを漏れなく盛り込み、蒸し返しを防ぎます。
  • 連絡先の取得:被害者の連絡先を知らない場合でも、捜査機関を通じ、被害者の意思を確認したうえで弁護士が窓口となって交渉を進められます。

示談書で必ず確認したい条項

 示談書は「作れば何でもよい」というものではありません。とくに本番トラブルでは、次の条項の有無が後の安心を大きく左右します。

  • 宥恕条項:前述のとおり、不起訴に向けて重要な意味を持ちます。
  • 清算条項:「今後、互いに本件に関して追加の金銭請求等をしない」という約束です。店側が用意した示談書には清算条項が入っていないことがあり、一度支払って解決したつもりでも、後日あらためて示談金を請求される事態が起こり得ます。
  • 秘密保持・接触禁止の条項:示談成立後に自宅や勤務先へ連絡しないよう取り決めることができます。
  • 身分証コピーの破棄:運転免許証などのコピーを控えられている場合、それを破棄する条項を加えることも可能です。

落ち度があっても、適正な解決を目指せます

 本番行為をしてしまったという負い目から、「相手の言い値を払うしかない」「反論できる立場ではない」と考えてしまう方は少なくありません。しかし、ご自身に落ち度がある場合でも、相場を無視した高額請求や脅しめいた要求にそのまま応じる必要はありません。適正な内容で示談をまとめることと、不当な要求から身を守ることは両立します。

 当事務所は、風俗トラブルにおいて一貫して利用者(お客様)側の立場に立ち、不当な要求に対して毅然と対応しながら、被害者の方との適切な示談成立を目指します。宥恕付き・清算条項付きの示談を成立させ、不起訴や早期釈放につなげるための弁護活動に注力しています。

 「被害届を出すと言われて不安だ」「警察から連絡が来たがどう対応すべきかわからない」「店から高額な示談金を請求されている」——そうしたお悩みは、おひとりで抱え込まず、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。対応が早いほど、取り得る選択肢は広がります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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