ソープランドの「自由恋愛」の建前と本番|客が知っておくべき法的リスク
「警察で一度話を聞かれたきり、何か月も連絡がない」「検察庁に呼ばれたが、その後どうなったのか分からない」。風俗店でのトラブルをきっかけに在宅事件として捜査を受けている方から、こうしたご相談が寄せられます。
在宅事件は、逮捕や勾留をされないまま捜査が進む事件のことをいいます。生活はこれまでどおり続きますが、手続がどこまで進んだのかは本人の側からは見えにくく、「いつまで続くのか」という問いに日数で答えることが難しい形になっています。
この記事では、期間の目安を並べる代わりに、連絡がない時間の中で何が動き、何が動いていないのかを整理します。見えない時間の中身が分かると、いま何を確かめ、何を保留にしておけばよいかを判断しやすくなります。
この記事が前提にしている範囲
- 風俗店を利用した側、つまり客側の立場を前提にしています。
- 成人同士のトラブルを前提としています。相手方が18歳未満に関わる場合は扱いが大きく変わるため、個別にご相談ください。
- すでに逮捕・勾留されている場合は、時間の進み方が別の仕組みで決まります。
- 事実関係を争うかどうかで取るべき対応は変わります。ここでは、どちらの場合にも共通する「時間の見え方」を扱います。
在宅事件に「いつまで」の答えがない理由
身柄事件の時間制限は、捜査の期限ではない
逮捕された場合の手続には、はっきりした時間の区切りがあります。警察は、身体を拘束した時から48時間以内に事件を検察官へ送る手続をとることとされ(刑事訴訟法203条1項)、検察官は受け取った時から24時間以内、かつ身体を拘束された時から通じて72時間以内に勾留を請求します(同法205条1項・2項)。勾留は請求の日から10日、延長されても更に10日が上限です(同法208条)。
ここで押さえておきたいのは、これらが捜査を終える期限を定めた規定ではないという点です。人の身体を拘束する以上その状態を長く続けるわけにはいかない、という考え方から、身体拘束の上限を区切っているにすぎません。
そうすると、身体を拘束していない在宅事件では、この区切りが働く場面そのものがありません。「在宅事件には時間制限がない」と説明されるのは、制限をなくす特別な規定があるからではなく、制限を置く前提だった身体拘束がないからです。ここが、期間を日数で示しにくい根っこの部分です。
「在宅事件」も「書類送検」も、法令の言葉ではない
条文を探しても、「在宅事件」という言葉の定義は出てきません。捜査や報道の現場で使われている呼び方で、身柄を拘束せずに捜査を進める事件を指しています。
「書類送検」も同じです。警察は捜査した事件を検察官に送るのが原則で(刑事訴訟法246条本文)、在宅事件では身柄を伴わず記録と証拠だけを送ることになります。これを書類送検と呼んでいるだけで、本人に「送りました」と知らせる手続が法律上定められているわけではありません。
見えないのは、本人に届く節目が限られているから
在宅事件が見えにくいのは、捜査が特別に秘密裏に行われているからというより、手続の節目のうち本人に通知される場面が限られているためです。節目ごとに整理すると、次のようになります。
| 手続の節目 | 本人に届くか | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 捜査の開始 | 届かない | 開始を本人に知らせる仕組みがない |
| 被害届・告訴の受理 | 届かない | 受理は捜査機関と申告した側の間の手続 |
| 検察官への送致(書類送検) | 届かないことが多い | 本人に通知する定めがない |
| 検察官の取調べ | 呼出しという形で届く | 出頭を求められて初めて分かる |
| 不起訴 | 請求したときに告知される | 請求があるときは速やかに告げる(259条) |
| 略式手続 | 届く | 請求前に説明があり異議の有無を確かめられる(461条の2) |
| 公判請求 | 届く | 起訴状の謄本が送達される(271条1項) |
書面という形で手元に届く節目は、手続の終盤に集中しています。途中の経過が見えないのは、この設計によるものです。
なお、検察庁には、被害を申告した側に処分の結果などを知らせる通知の制度があります。一方で、捜査を受けている側に経過を定期的に知らせる制度は用意されていません。連絡がないことは、手続が止まっている合図ではなく、通知の対象になる場面をまだ通過していないことを示しているにすぎないと考えたほうが実態に近いといえます。
連絡がない間に進んでいる三つのもの
一つ目 捜査機関の側では記録が形になっていく
供述調書、端末の解析結果、店内や周辺に残っていた記録、店側が保管している予約履歴や誓約書。連絡がない期間にも、こうした材料は集められ、整理されていきます。
時間が経つほど、事件の見え方はひとつの形にまとまっていきます。後から違う説明をしようとすると、すでに形になっているものとの食い違いを説明する必要が生じます。何も起きていないように見える時期は、こちらの言い分を差し込む余地が少しずつ狭くなっていく時期でもあります。
二つ目 お金の話は別の線で動く
店や相手方からの請求は、刑事の手続とは別に動きます。捜査からの連絡が途絶えている時期に請求だけが続くこともありますし、逆に刑事の手続が動いたからといって請求が止まるとは限りません。
この二つを一本の流れとして受け取ると、「刑事が止まっているのだからお金の話も終わったはずだ」という誤解につながります。別々に進むものとして分けて考えておくほうが、判断を誤りにくくなります。
三つ目 自分の側では材料が減っていく
記憶は薄れます。端末のやり取りは自動削除の設定や機種変更で失われます。領収の記録や当日の移動の記録も、時間が経つほど取り戻しにくくなります。
捜査機関の側で材料が増えていく一方、自分の側では材料が減っていく。時間は双方に同じようには働きません。この非対称が、在宅事件で待つことの実質的な負担です。
連絡がない間も進まないもの
待っていれば終わる仕組みにはなっていない
公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行します(刑事訴訟法253条1項)。期間は罪の重さによって異なり、公訴が提起されると進行は停止します(同法254条1項)。
もっとも、これは待つことで解決を図る性質のものではありません。捜査が進んでいる事件では、時効が完成する前に処分が決まるのが通常の流れです。時効の年数を数えて過ごすよりも、いまの段階でできることを確かめるほうが現実的です。
連絡がないことは、処分の内容を意味しない
連絡が来ない状態には、いくつかの可能性が重なっています。期限のある事件が優先されて処理が後になっている場合、捜査が続いていて方針が定まっていない場合、すでに処分が決まっている場合。外から見分けることはできません。
言い換えると、沈黙は良い知らせでも悪い知らせでもありません。どちらかに読み替えて生活の判断を変えてしまうと、後で調整が難しくなります。
在宅であること自体は、軽い扱いの証明にはならない
ごく軽微な事件では、検察官があらかじめ指定した類型に限って送致せずに処理する取扱いがあります(刑事訴訟法246条ただし書、犯罪捜査規範198条)。ただし対象は限られており、性的な事案でこの扱いが用いられることは通常想定しにくいところです。
在宅事件であっても、起訴されれば裁判の手続に進みます。罰金で終わった場合も有罪であることに変わりはありません。身体を拘束されていないことと、処分が軽くなることは別の話です。
この期間は、制度上の弁護人がつかない区間
費用の負担が難しい方のために国が弁護人を付ける仕組みがありますが、捜査段階でこれが使えるのは、勾留状が発せられている場合または勾留が請求されている場合とされています(刑事訴訟法37条の2第1項)。いったん逮捕された後に釈放されて在宅になった場合も、それまで付いていた弁護人の選任は効力を失います(同法38条の2)。
弁護士会が逮捕された方のもとへ弁護士を派遣する仕組みも、身体を拘束されていることが前提です。つまり在宅事件の期間は、制度の側から弁護人が届く区間ではなく、自分で選んで依頼するかどうかを決める区間ということになります。連絡がないまま時間だけが過ぎやすいのは、この空白も一因です。
在宅のまま状況が変わることがある
逮捕は、疑いがあるというだけで行われるものではありません。逃亡や証拠隠滅のおそれといった必要性が問われ、明らかにその必要がないときは逮捕状が発せられない仕組みになっています(刑事訴訟法199条2項ただし書、刑事訴訟規則143条の3)。
在宅で捜査が進んでいるのは、その時点で必要性が高くないと判断されているからです。そしてこの判断は途中で変わることがあります。次のような状態は、その評価に触れやすい場面といえます。
- 連絡先や住まいが変わったのに、担当者に伝えていない。
- 理由を示さないまま、呼出しに応じない状態が続いている。
- 相手方や店に、自分から直接連絡を取ろうとしている。
- 事件に関係する端末や記録を処分している。
誤解のないように書き添えると、これは発覚を避けるための注意点ではありません。取調べのための出頭を断ること自体は法律上認められていますし(刑事訴訟法198条1項ただし書)、都合がつかない日は日程の調整を求めることもできます。問題になるのは、理由を示さないまま連絡がつかない状態が続くことです。
風俗のトラブルに特有の事情
相手方の連絡先は、こちらからはたどれない
分かっているのは源氏名だけということが少なくありません。捜査機関が相手方の連絡先を教えることもありません。
謝罪や被害弁償の意向を伝えたい場合も、自分で探して連絡を取る方法は取れません。代理人を通じて、捜査機関を経由して意向を届けるところまでが現実的な進め方です。そこから先、話し合いに応じるかどうかは相手方の意思によります。連絡を待つ時間が長くなりやすいのは、この構造もあります。
店からの請求は、刑事の進み方と連動しない
店側からの請求は、刑事の手続とは切り離して動きます。捜査からの連絡が半年途絶えている時期に、店からの連絡だけが続くこともあります。
店の担当者が弁護士でない場合、その担当者と示談の交渉をすること自体に別の問題が生じることもあります。請求書が届いた段階で、名目と根拠を確かめておくほうが安全です。
生活への影響は限られるが、ゼロではない
在宅事件では、身柄事件のように突然の長期不在が生じることはありません。ただし、呼出しに応じるために平日の時間を空ける必要は出てきます。予定の調整をどう説明するかは、あらかじめ考えておくと負担が軽くなります。
いま自分がどこにいるかを確かめる
- 手元にある書類と、連絡してきた相手を確かめます。警察署の担当課からの連絡か、検察庁からの連絡かで、段階の見当がつきます。
- 警察の取調べが一区切りついた後、やり取りの相手が検察庁に変わっていれば、捜査の中心が移った可能性があります。
- 処分が決まったかどうかを知りたい場合、不起訴の告知は請求したときに受けられます(刑事訴訟法259条)。ただし処分が決まった後でなければ請求できないため、途中経過の確認には使えません。
- 分かっている事実を時系列で書き出しておきます。日付、場所、やり取りの相手、支払った金額と方法を、思い出せる範囲で構いません。
見えない時間の過ごし方
- 端末やアカウントに残っている記録を、整理したり削除したりしない。
- 呼出しには日程を調整したうえで応じる。難しい日は理由を伝える。
- 支払や書面への署名を求められても、その場で決めずにいったん持ち帰る。
- 店・相手方・捜査機関からの連絡の窓口を一つにまとめる。
- 連絡先や住まいが変わったときは、担当者に伝えておく。
どれも派手な手当てではありませんが、見えない時間の中でこちらの選択肢を減らさないための行動です。何かを取り戻す行動より、いま残っているものを減らさない行動のほうが、この時期には効きます。
よくある受け止め方
「半年も連絡がないので、もう終わったはずだ」
終わっている可能性はありますが、処理が後になっているだけの可能性も残ります。在宅事件では書類送検の時期も本人には知らされないため、経過した時間の長さから段階を推測することはできません。
「在宅なのだから、軽い処分で終わる」
在宅であることは、身体を拘束する必要が高くないと判断されたことを意味するだけで、処分の内容を先に決めるものではありません。在宅のまま起訴されることもあります。
「一度呼ばれて話したので、もう終わり」
警察での取調べが終わっても、その後に検察官の取調べが入ることがあります。呼出しの回数に法律上の決まりはありません。一区切りついたように見えても、手続の途中である場合があります。
まとめ
- 在宅事件に時間制限がないのは、期限を置く前提だった身体拘束がないためで、特別な規定があるからではありません。
- 書面として手元に届く節目は手続の終盤に集中しており、途中経過が見えないのは通知の仕組みによるものです。
- 連絡がない間も、捜査機関の側では記録が形になり、お金の話は別の線で動き、自分の側では材料が減っていきます。
- 連絡がないことは、良い知らせでも悪い知らせでもありません。段階を推測するのではなく、確かめられる範囲で確かめることが判断の土台になります。
- この期間は制度の側から弁護人が届く区間ではないため、相談するかどうかを自分で決める必要があります。
早く動けば望んだ結果になる、という単純な関係ではありません。ただ、選べる手段が残っているうちであれば、選ぶことはできます。連絡が来ないまま時間だけが過ぎている状況は、それ自体が判断を先送りしやすい状況でもあります。
当事務所では、初回無料の相談を24時間受け付けており、全国からご相談いただけます。呼出しを受けた段階でも、連絡が途絶えたまま何か月も経っている段階でも、いまの位置を確かめるところから一緒に整理します。


