【風俗トラブル】キャバクラでキャストに触れたと言われた|請求と刑事の両面

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月1日時点の法令にもとづいて作成しています。刑法の性犯罪規定は令和5年7月13日施行の改正後のもの(不同意わいせつ罪)、刑罰は令和7年6月1日から導入された拘禁刑の表記によっています。迷惑防止条例は、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」を例に説明しています。


「酔って隣のキャストの脚に触れてしまい、会計のときに店長から別室に呼ばれた」「店を出た後で、キャストから『触られたことを警察に相談する』と連絡が来た」。キャバクラでの身体接触をめぐるご相談は、こうした形で始まることが少なくありません。一方で、「肩に手を置いた程度で数十万円を求められた」「触れた覚えのない内容で罰金の書面を出された」と、請求の中身に納得がいかないというご相談も寄せられます。

 キャバクラでのお触りは犯罪になりうる、示談で解決するのが一般的だ、という説明は、それ自体は誤りではありません。ただ実際には、「キャスト本人からの請求」「店からの請求」「警察の捜査」という三つの流れが同時に動くことがあり、どれに対して何を答えるのかを整理しないまま書面に署名したり金銭を支払ったりすると、後から争う余地が狭まることがあります。

 この記事では、キャバクラでキャストに触れたと言われた客側の立場から、請求の面と刑事の面がどう重なり、どこで切り分けるべきかを整理します。メンズエステでの接触についてはメンズエステでお触りをして「触られた」と言われた。不同意わいせつ罪のリスクと対応、示談金の金額の考え方については風俗トラブルの示談金相場は?本番・盗撮・お触り別に弁護士が解説で扱っています。

キャバクラで「触れた」ことが問題になる理由

接待の場であっても、身体への接触は予定されていない

 キャバクラは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)上の風俗営業の一つで、客の隣に座って会話やお酌をする「接待」を提供する営業です(風営法2条1項1号、同条3項)。性的なサービスを提供する性風俗関連特殊営業とは、法律上の位置づけが異なります。

 接待は、歓楽的な雰囲気を醸し出す方法で客をもてなすことを指しますが、キャストの身体に触れることまでがサービスに含まれているわけではありません。多くの店が「お触り禁止」を掲げているのはこのためです。店内の雰囲気や距離の近さがあっても、それだけで触れることへの同意があったとは扱われにくいという点が、この問題を考える出発点になります。

同じ出来事に「請求」と「刑事」が重なる

 キャストに触れたと言われたとき、問題は二つの面に分かれます。一つは、キャスト本人や店から金銭を求められる民事の面です。もう一つは、警察が捜査し、検察官が処分を決める刑事の面です。

 二つは別々の手続ですが、実際には同時に進むことがあります。たとえば「示談金を払えば警察には行かない」という申し出は、民事の請求と刑事の見通しを一つにまとめたものです。どちらの面について何を約束するのかを分けて考えることが、その後の対応を左右します。

問題にされやすい場面

 ご相談の中で多いのは、次のような場面です。

  • 隣に座ったキャストの太もも・胸・腰などに手を伸ばした。
  • 抱き寄せる、キスをしようとするなどの行為があった。
  • 酔っていて、どこにどの程度触れたかを本人がはっきり覚えていない。
  • 同伴やアフターなど、店の外で一緒にいた時間に触れた。
  • 本人は肩や手に軽く触れた程度と考えているが、キャストや店はそれ以上の行為を主張している。


 このうち、店の外での出来事や、本人の認識と相手の主張がずれている場面では、後で触れるように請求の相手や事実の確かめ方が変わってきます。

刑事の面|どの罪が問題になるのか

不同意わいせつ罪(刑法176条)

 胸や下半身に触れる、キスをするなどの行為は、相手が同意していない場合、不同意わいせつ罪にあたる可能性があります。法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めはありません(刑法176条1項)。

 同条は、暴行や脅迫を用いた場合だけでなく、アルコールの影響がある状態(同項3号)や、同意しない意思を形成し、表明するいとまがない状態(同項5号)に乗じたわいせつな行為も対象にしています。キャバクラでは、キャスト自身も接客の中で飲酒していることが多く、会話の流れで不意に触れられて拒む間がなかったという主張がされやすい点に注意が必要です。服の上からの接触がどこまで「わいせつな行為」にあたるかは、服の上から触れた|わいせつな行為の範囲はどこまでかで詳しく扱っています。

 また、接客中で強く拒めなかったという事情は、同意の有無を判断するうえで考慮されることがあります。キャストが笑って受け流していたように見えたことは、それだけで同意があったことの裏付けにはなりにくいといえます。

迷惑防止条例は店内での接触にも及ぶのか

 東京都の迷惑防止条例は、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または不安を覚えさせるような方法で、衣服の上からまたは直接に人の身体に触れることを禁じています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項1号)。違反した場合の法定刑は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(同条例8条1項2号)。

 ただし、この規定が対象としているのは「公共の場所又は公共の乗物」での接触です。条例は公共の場所を道路、公園、広場、駅、興行場などで例示しており(同条例2条)、仕切られた客席でキャストが接客するキャバクラの店内がこれに含まれるかは、店の構造や接触の状況によって判断が分かれうるところです。電車内以外での立件の考え方は電車内以外の痴漢|路上・店舗・エスカレーターでの立件、刑法と条例のどちらが適用されるかで何が変わるかは条例か刑法か|痴漢事件の罪名がどちらになるかで何が変わるかで整理しています。

わいせつな行為とまではいえない接触の場合

 肩や腕をつかむ、手を引いて引き寄せるといった接触は、わいせつな行為とまではいえない場合でも、相手の意に反して身体に力を加えたものとして暴行罪(刑法208条)が問題になることがあります。

 どの罪が問題になるかは、触れた部位、時間、回数、触れ方、その前後のやり取りによって決まります。主な行為と罪名の関係をまとめると、次のとおりです。

主な行為検討される罪法定刑
胸や下半身に触れる、キスをする不同意わいせつ罪(刑法176条)6月以上10年以下の拘禁刑
衣服の上から身体に触れる(公共の場所にあたる場合)迷惑防止条例違反(東京都条例5条1項1号)6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
腕をつかむ、無理に引き寄せる暴行罪(刑法208条)2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
わいせつな行為の際にけがをさせた不同意わいせつ致傷罪(刑法181条1項)無期または3年以上の拘禁刑


 「手が当たっただけ」と説明したい場合の考え方は、手が当たっただけだと説明したい|接触の態様と故意の認定をご覧ください。

刑事の面|その後の手続はどう動くのか

その場で警察が呼ばれた場合

 キャストや店が110番通報すると、警察官が店に来て双方から事情を聴き、警察署への同行を求めることがあります。この段階で、自分の認識と違う内容の説明を求められても、その場で認める必要はありません。

 一方で、警察を呼ぶ前に、店から「警察を呼ぶか、ここで示談するか」と選択を迫られる場面もあります。どちらを選ぶかをその場で決めず、まず事実関係を落ち着いて確認する時間を確保することが、その後の選択肢を残すことにつながります。

後日、警察から連絡が来る場合

 その場では謝罪して店を出たのに、数日から数週間後に警察から連絡が来ることがあります。キャバクラでは、指名や会計の記録、クレジットカードの利用記録、店内の防犯カメラの映像などから、客を特定することができます。キャストが店に相談し、そのうえで警察に相談するという流れも見られます。

 不同意わいせつ罪の公訴時効は12年とされており(刑事訴訟法250条3項)、日が経てば問題にされなくなるとは言い切れません。警察から電話があったときの対応は、警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応で扱っています。

被害届が出ていなくても終わりとは限らない

 不同意わいせつ罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる罪です。被害届は捜査のきっかけの一つにすぎず、店やキャストが「今回は届けない」と言っていたとしても、その後に考えが変わることもあります。どのような事情で被害届が出され、または出されないのかは、被害届が出る場合と出ない場合|キャスト・店の判断で何が変わるかで詳しく扱っています。

請求の面|誰から、何を求められるのか

キャスト本人からの請求|慰謝料

 意に反して身体に触れられたことによる精神的な苦痛については、キャスト本人が不法行為にもとづく損害賠償(慰謝料)を求めることができます(民法709条、710条)。この請求は、刑事事件として扱われるかどうかとは別に成り立ちます。

 金額は、触れた部位や態様、時間、回数、その後のやり取りなどによって変わります。刑事事件化の可能性がある場面では、慰謝料だけでなく、被害届を出さないことや取り下げることへの合意を含めた「示談金」として提示されることが多く、慰謝料だけを請求する場合より金額が高くなる傾向があります。

店からの請求|「罰金」と営業損害

 店から「お触りは罰金〇万円と掲示している」として請求されることがあります。私人である店が刑罰としての罰金を科すことはできず、問題になるのは、その規定が入店時に客との契約の内容になっていたか、なっていたとしても金額が有効か、という民事の問題です。消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされることがあり(消費者契約法10条)、著しく過大な金額は公序良俗に反するとされることもあります(民法90条)。考え方の詳細は、「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないで扱っています。

 また、「キャストが出勤できなくなった分の売上を補償してほしい」という請求も見られます。店自身に生じた損害を客が賠償すべきかは、触れた行為との間に相当な因果関係があるかによって判断され、店が示す売上の見込み額がそのまま認められるとは限りません。店の損害とキャスト個人の損害は別のものであり、誰に何を払うのかを分けて確認することが重要です。詳しくは誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別をご覧ください。

店が窓口になって示談を持ちかけてくる場合

 キャバクラでのトラブルでは、キャスト本人ではなく、店長や店のスタッフが話を進めることが少なくありません。ただ、キャストの慰謝料についての交渉を、弁護士でない者が報酬を得る目的で代わりに行うことは、弁護士法72条との関係で問題になりえます。

 また、店に支払った金銭がキャストに渡っていなければ、キャストとの関係では解決していないことになりかねません。店が交渉の窓口になることの問題点は、店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点で整理しています。

請求と刑事をつなぐのは示談の中身

一つの合意で民事と刑事の両方を整理する

 キャストとの示談では、金銭の支払いとあわせて、次のような事項を取り決めるのが一般的です。

  • 謝罪を受け入れ、刑事処罰を求めないこと(宥恕)。
  • 被害届を出さないこと、すでに出している場合は取り下げること。
  • 合意した金額のほかに、互いに金銭を請求しないこと(清算)。
  • 今後お互いに連絡や接触をせず、客として店に来店しないこと。
  • この件を第三者に話さないこと(口外禁止)。


 刑事の面についての取り決めと民事の清算を、キャスト本人との同じ書面で結ぶことで、二つの面を一度に整理することができます。店とだけ合意しても、キャスト本人との関係が残ることがある点には注意が必要です。

店が用意した書面にその場で署名しない

 トラブルの直後に、店が用意した示談書や誓約書、借用書への署名を求められることがあります。これらには、事実を全面的に認める文言や、相場から離れた金額が書かれていることがあり、署名した後で効力を争うのは容易ではありません。書面の条項に潜む問題は、店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴で扱っています。

 あわせて、運転免許証などの身分証を撮影させるよう求められることもあります。応じるかどうかの考え方は、身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結をご覧ください。

示談が成立しても、刑事手続がすぐに終わるとは限らない

 すでに警察が捜査を始めている場合、示談が成立しても、それだけで手続が終わるわけではありません。検察官は、示談の内容やキャストの処罰感情のほか、行為の態様や前歴の有無なども踏まえて処分を決めます。この点は、示談が成立しても処分が残る場合|示談=不起訴ではない理由で詳しく扱っています。

店内で指摘を受けたとき・翌日以降にしておきたいこと

その場で決めず、持ち帰ってよいこと

 店内でキャストや店長から指摘を受けたとき、謝罪の気持ちを伝えること自体は問題ありません。一方で、次のような事項はその場で決めず、持ち帰って検討することができます。

  • 提示された金額で支払うことに同意すること。
  • 示談書・誓約書・借用書などの書面に署名すること。
  • 身分証を撮影させること、勤務先や家族の連絡先を伝えること。
  • ATMに同行して現金を引き出すこと。
  • 事実関係について、相手の主張どおりの内容を書面や録音で認めること。


 話し合いが終わらないまま店から帰してもらえない場合の考え方は、その場から帰してもらえない|監禁と不退去の境界で扱っています。

記憶が曖昧なまま説明を求められたとき

 飲酒していて、どこにどの程度触れたかを覚えていないというご相談も少なくありません。その場合は、入店から退店までの流れをできるだけ早く時系列で書き出し、会計明細、クレジットカードの利用記録、同席していた知人の記憶など、客観的に確認できるものを手元に集めておくことが役に立ちます。

 覚えていないことを、相手の説明どおりに認める必要はありません。ただし、覚えていないことと、行為がなかったことは同じではないため、説明の仕方には注意が必要です。飲酒と同意の関係は、双方が酔っていて記憶がない|アルコールと不同意の認定で扱っています。

触れていない、または認識が違うと考えるとき

 触れた事実がない、あるいは相手の主張する内容とは違うと考える場合は、認める部分と争う部分を分けて整理することが出発点になります。店内の防犯カメラの映像は店の側が管理しており、時間が経つと上書きされることもあるため、事実を争う場合は早い段階で動くことが大切です。

 キャバクラでのトラブルで、事実関係や金額を整理し直して解決に至った例として、【解決事例】キャバクラのキャストに対する不当要求|弁護士の介入で数百万円の支払を回避した事例もご参照ください。

よくあるご質問

店に「お触り禁止・罰金10万円」と掲示されていました。払わなければいけませんか。

 掲示があったことだけで、その金額を支払う義務が当然に生じるわけではありません。その規定が入店時の契約の内容になっていたか、金額が店の実際の損害と比べて過大でないかによって判断されます。キャスト本人への慰謝料とは別の請求であるため、店とキャストのどちらに何を払うのかを分けて確認することが大切です。

その場で謝って会計を済ませました。それでも後から警察に呼ばれることはありますか。

 あります。キャバクラでは会計や指名の記録から客を特定できるため、キャストが後日警察に相談すれば、警察から連絡が来ることがあります。不同意わいせつ罪は告訴がなくても起訴できる罪であり、公訴時効も12年とされています。気がかりなことがある場合は、警察から連絡が来る前の段階でも弁護士に相談しておくことで、示談の進め方を含めて準備することができます。

同伴やアフターなど、店の外で触れた場合も同じように考えるのですか。

 刑事の面は、店の中か外かで大きくは変わりません。不同意わいせつ罪や暴行罪は場所を問わず問題になり、飲食店や路上など公共の場所での接触であれば、迷惑防止条例が適用されることもあります。一方、請求の面では、店の営業の外での出来事であるため、店の規定にもとづく「罰金」が及ぶ根拠は乏しいことが多く、請求の主体は基本的にキャスト本人になります。店が請求してくる場合には、その根拠を確認する必要があります。

まとめ


  1. キャバクラは接待を提供する風俗営業であり、キャストの身体に触れることはサービスに含まれていない(風営法2条1項1号、同条3項)。
  2. 胸や下半身に触れる、キスをするなどの行為は不同意わいせつ罪にあたる可能性があり、法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑である(刑法176条1項)。
  3. 東京都の迷惑防止条例は公共の場所での接触を対象としており、店内の接触に及ぶかは店の構造や状況によって判断が分かれうる(同条例5条1項1号)。
  4. キャスト本人は、刑事事件になるかどうかとは別に、慰謝料を請求することができる(民法709条、710条)。
  5. 店の「罰金」は刑罰ではなく、契約の内容になっていたか、金額が有効かという民事の問題になる(消費者契約法10条、民法90条)。
  6. 店が報酬目的でキャストの代わりに慰謝料の交渉をすることは、弁護士法72条との関係で問題になりうる。
  7. 宥恕・被害届の取下げ・清算をキャスト本人との書面で取り決めることで、請求と刑事の両面を整理できるが、示談の成立がそのまま不起訴を意味するわけではない。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。キャバクラでキャストに触れたと言われ、店やキャストから金銭を求められている方、警察から連絡があった方、ご自身の認識と違う内容で書面への署名を求められている方は、お一人で判断する前にご相談ください。
弁護士が窓口となって、キャスト本人と店のそれぞれに何をどこまで約束するのかを整理し、請求の面と刑事の面の両方を見通したうえで、対応の方針をご提案します。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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