メンズエステでお触りをして「触られた」と言われた。不同意わいせつ罪のリスクと対応

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 「メンズエステでセラピストに触れてしまい、後から『触られた』『やめてと言った』と言われている」——そうした状況で、この先どうなるのかと強い不安を抱えて、この記事にたどり着いた方が多いのではないでしょうか。

 先に整理しておくと、セラピストの身体に触れる行為がすべて直ちに重い犯罪になるわけではありません。触れた部位や状況、悪質性の程度によって、成立しうる罪や見通しは大きく変わります。一方で、相手が「同意していなかった」と主張し、店側が通報・被害届に踏み切った場合には、不同意わいせつ罪などに問われる可能性が出てきます。

 この記事では、過度に不安をあおることなく、どのような場合にどんな法的リスクが生じるのか、そして今取るべき現実的な対応を、正確な法律知識に基づいて整理します。

なぜメンズエステでの「お触り」が問題になるのか

 まず前提として、メンズエステは、アロマオイルマッサージやリラクゼーションを目的とした施術サービスであり、法律上は性風俗店とは位置づけが異なります。多くの店舗は風営法上の性的サービスを前提としておらず、セラピストへの接触(お触り)はサービス内容に含まれていません。

 この点が、いわゆる風俗店との大きな違いです。セラピストは「施術をすること」に同意しているのであって、「客から身体に触れられること」に同意しているわけではない、というのが原則的な考え方です。だからこそ、客側がセラピストの身体に触れる行為は、相手の同意がない接触として問題になりやすいのです。

 多くの店舗では、入店時に「セラピストへのタッチ禁止」といった誓約書へのサインを求めます。これは、こうしたトラブルを未然に防ぐための取り決めです。

触れた内容・部位によって、成立しうる罪は変わる

 「お触り」と一口に言っても、どこに、どのように触れたかによって、問題となる法律は異なります。ここは誤解が多いところなので、丁寧に整理します。

胸部・陰部など性的な部位に触れた場合

 相手の同意なくこれらの部位に触れる、下着の中に手を入れる、キスをするといった行為は、不同意わいせつ罪(刑法176条)に該当する可能性があります。法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑です。

足・腰などに触れた場合

 性的な部位とまでは言えない箇所に触れた場合は、状況により暴行罪や、各都道府県の迷惑防止条例(痴漢行為等の規定)に問われる可能性があります。
 なお、触れた程度が極めて軽微な場合(たとえば一度足に触れた程度など)には、処罰に値するだけの違法性がないと判断され、不起訴となる可能性も十分にあります。実際の見通しは、行為の内容と相手の被害感情、証拠の有無などを総合して判断されます。

不同意わいせつ罪の成立要件

 「触られた」と言われて最も不安が大きいのが、この不同意わいせつ罪でしょう。ここでは成立要件を、メンズエステの状況に即して整理します。

 不同意わいせつ罪は、2023年7月13日施行の改正刑法で新設された犯罪です(刑法176条)。従来の強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪を統合し、「暴行・脅迫があったか」だけでなく、「相手が同意しない意思を示せる状況だったか」に着目した点に特徴があります。

 条文上、成立するパターンは大きく次の3つです。

  1. 一定の行為・事由により、相手が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」でわいせつな行為をした場合
  2. わいせつな行為ではないと誤信させる、または人違いをさせるなどした場合(刑法176条2項)
  3. 16歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合(刑法176条3項)

 メンズエステのトラブルで主に問題となるのは、1つ目のパターンです。

「同意しない意思」を困難にする8つの類型

 刑法は、相手が同意しない意思を「形成・表明・全う」できなくなる原因となる行為・事由を、8つの類型として例示しています(刑法176条1項各号)。

  • 一 暴行もしくは脅迫を用いること、またはそれらを受けたこと
  • 二 心身の障害を生じさせること、またはそれがあること
  • 三 アルコールもしくは薬物を摂取させること、またはそれらの影響があること
  • 四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、またはその状態にあること
  • 五 同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと
  • 六 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させること、またはその事態に直面して恐怖・驚愕していること
  • 七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること、またはそれがあること
  • 八 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、またはそれを憂慮していること

 これらに直接あてはまらなくても、類似する行為・事由があれば要件を満たしうるとされています。

「施術への同意」と「身体接触への同意」は別

 ここで押さえておくべきなのは、繰り返しになりますが、セラピストが施術に応じていたことは、身体に触れられることへの同意を意味しないという点です。施術中に客が突然身体に触れれば、セラピストにとっては予想外の事態であり、とっさに拒否の意思を示せなかったとしても、「同意があった」と評価されるとは限りません。

「同意していると思った」という認識は通用するか

 犯罪が成立するには、行為者に故意が必要です。相手が同意していると本当に誤信していた場合には、故意が否定され、犯罪が成立しないと判断される余地はあります。

 もっとも、これはあくまで「同意していると信じたことに合理性があるか」が問われる話です。相手が明確に拒否の言葉を述べていたり、嫌がる態度を示していたりした場合には、「同意があると思った」という説明は通りにくくなります。そして密室での出来事である以上、同意があったことを客側が客観的に立証するのは容易ではありません。

セラピストから誘われた・裏オプションだった場合も注意

 一部の店舗では、セラピストの側から際どいサービスや、いわゆる裏オプションを持ちかけてくることがあります。しかし、その場でのやり取りで応じたとしても、後になって「無理やりだった」と主張されるリスクは残ります。誘いに応じた経緯を客観的に示せないと、厳しい立場に置かれることがある点は知っておくべきでしょう。

ケガをさせた場合はさらに重い罪に

 わいせつな行為の過程で相手にケガを負わせた場合には、不同意わいせつ致傷罪(刑法181条1項)が成立する可能性があります。法定刑は「無期または3年以上の拘禁刑」と、大幅に重くなります。

通報・逮捕されると、その後どうなるのか

 店側やセラピストが警察に通報したり、被害届を提出したりすると、警察は双方から事情を聞き、捜査を進めます。その場で現行犯逮捕されることもあれば、逮捕はされず在宅事件として、呼び出しに応じて取調べを受ける形で捜査が進むこともあります。

 刑事事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが、起訴・不起訴の判断に大きく影響します。まだ事件化していない段階であれば、示談によって刑事事件化そのものを避けられる場合もあります。仮に被害届が出された後でも、示談書の存在は本人に有利な事情として考慮されます。

【解決事例】お触りで警察に通報されたが、不起訴処分となったケース

 当事務所(若井綜合法律事務所)が実際に対応し、不起訴処分を獲得した事例をご紹介します。

 都内のメンズエステを利用していた男性が、施術中にセラピストの身体へ触れてしまい、セラピストが強く制止したことでその場は中止となりました。しかし店長が110番通報し、駆けつけた警察官による事情聴取を受け、後日警察署への出頭を指示される事態となりました。家族に知られることへの不安から、当事務所にご相談いただいたケースです。

 弁護士が代理人として店側・被害者との窓口に入り、不同意わいせつ罪に問われうるリスクを整理したうえで示談交渉を進めました。当初は高額な示談金が提示されましたが、行為の内容や過去の相場を踏まえて適正額を主張し、最終的に示談が成立。検察へ示談成立を報告した結果、不起訴処分となり、前科を回避することができました。

 この事例が示すように、必ずしも最も重い罪で立件されるとは限りません。早い段階で弁護士が介入し、適切に対応することで、結果が大きく変わる余地があります。

トラブルを悪化させないための対応

 不安な状況でも、初動を誤らないことが重要です。次の点にご注意ください。

誓約書に、内容を確認しないままサインしない。

 悪質な店舗では、内容を十分に説明せず、高額な違約金(罰金)条項を含む誓約書にサインさせるケースがあります。署名を求められたら、金額や条件をよく確認してください。

その場で言われるまま高額な金銭を支払わない。

 店側が「罰金」「違約金」として高額を請求してくることがありますが、法律上の「罰金」は刑罰であり私人が科すものではありません。その請求に支払義務があるか、金額が妥当かは、個別の判断が必要です。

身分証を渡す・コピーさせることは慎重に。

 身分情報を握られると、職場や家族への連絡をほのめかされる材料になり得ます。

本人だけで直接交渉しない。

 当事者同士のやり取りは感情的な対立を招きやすく、不用意な発言が不利に働くことがあります。弁護士が窓口に入れば、連絡先が本人から弁護士に切り替わり、職場や家族への連絡が及ぶことを防ぎやすくなります。

できるだけ早く弁護士に相談する。

 被害届の提出前・逮捕前に動けるかどうかで、その後の見通しは大きく変わります。

美人局・不当請求に注意

 近年、セラピストと店舗が結託し、客が身体に触れた瞬間を狙って高額な金銭を請求する、いわゆる美人局的なトラブルも報告されています。実際に、店側が恐喝罪などで摘発された事例もあります。法的根拠のない請求に一人で応じてしまう前に、専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

  • メンズエステはリラクゼーション目的の施術サービスであり、セラピストは施術に同意していても、身体に触れられることに同意しているわけではない。
  • 触れた部位や悪質性によって成立しうる罪は変わる。胸・陰部など性的部位への接触は不同意わいせつ罪(6か月以上10年以下の拘禁刑)、尻・足・腰などは暴行罪や迷惑防止条例に問われうる。軽微な場合は不起訴となる余地もある。
  • 「同意があると思った」という認識だけでは嫌疑を免れにくく、客観的な状況の説明が求められる。
  • ケガを負わせれば不同意わいせつ致傷罪(無期または3年以上の拘禁刑)とさらに重い。
  • 起訴・不起訴には示談の成否が大きく影響する。誓約書への安易なサインや、その場での金銭支払いは避け、早期に弁護士へ相談することが有効。

 若井綜合法律事務所では、メンズエステを含む風俗トラブルについて、お客様側からのご相談に対応しています。まずはお一人で抱え込まず、ご相談ください。

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Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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