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島田英泰

自然を利用して景観の美しさと生活の質を高める庭師

島田英泰(しまだひでやす) / 造園業

緑生環

コラム

台風で庭木が傾いたり倒れたりするのは、樹種や剪定方法、土壌環境が関係しています

2019年9月19日 公開 / 2020年12月17日更新

テーマ:植栽

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 剪定

台風で倒れやすい樹種

今年も台風で庭木が傾いた、倒れた、という報告がありました。
最近の台風は大型が多いため、このような被害も多くなっているように感じています。

庭木の場合は、台風で傾いたり倒れたりする樹種には傾向があります。
その樹種は、コニファー類、カイズカイブキ、ハナミズキ、オリーブ、レッドロビン、ミモザ、などが多いようです。
これらは、私の経験上では根の張りが弱く、台風の強風に耐えられないように思います。
植物の機能形質(根の張りの強さ、枝の折れにくさ)は、年間平均気温や降水量などの気候要因に影響されます。
したがって、外国から輸入された樹種の一部は、気候や環境への適性が合っていないからだと考えられます。
このような樹種へは、支柱を設けることをお勧めいたします。

台風での傾斜

剪定の方法によっては、倒木の危険性が増す?

倒木しないように剪定で樹木の大きさを縮小させて強風の影響を緩和させることは有効です。
ただ、極端に縮小させる剪定は逆効果になります。例えば、ぶつ切りのような枝葉を多く切り取る剪定は根の大部分を枯死させることになり、また幹や大枝の切口が腐朽して芯の空洞化を引き起こすので、かえって倒木や折損の可能性を高めることになります。
また、刈込剪定を続けると風通しの悪い樹形になるので風圧の影響が増し、さらに刈込剪定によって根の成長が悪くなるので倒木しやすくなります。これは、特にコニファー類やカイズカイブキなどによく見られます。
このように、剪定方法が倒木の原因を引き起こすことがあります。
倒木の危険性を小さくするには、多くの枝葉を切り取り過ぎないこと(理想は剪定による葉の損失率が20%以下)、刈込剪定や切り戻し剪定ではなく切り返し剪定を多用することです。

根の健全な成長が倒木を防ぐ

根の成長が悪い生育環境では倒木の危険性が高くなります。例えば、街路樹のような土壌面積が狭く、そして土壌の通気透水性が悪い植栽地などは根が十分に発達できない場合があります。この他、稀に植木にフェルト素材のポットを着けたまま植栽されているケースがあり、これらは腐らないために根の張りを制限してしまい、倒木する結果を招いています。
土壌面積はできるだけ広く、土壌の通気透水性を高める植栽方法を用いることが肝要です。

台風でも倒れにくい樹種

一方で、台風でも被害報告が少ない樹種があります。
その樹種は、ヤマボウシ、カシ類(シラカシ)、モチノキ、ツバキ、などの地域の里山や森林に生えている樹種です。特にカシ類は防風林として利用されるほど強靭です。この他、在来種ではないですがキンモクセイなども少ないと思います。
私の観察では、これらの樹種は根の張りが強く、枝の折損も少ないです。関東の気候に適合して機能形質が良好に発達するからだと考えています。ただ、重要な病害(根腐病など)や樹形の構造的な欠陥(入り皮など)がある場合は適切な処置を行ってください。

ケヤキは地域の緑地に生える代表的な樹種で、とても根の張りが良好ですが、剪定管理でぶつ切りされているケースや根を張るスペースが少ない街路樹のような狭小な土壌面積に植栽されているケースが多く、このような場合は倒木したという報告を聞くことがあります。また、ケヤキは「入り皮」という樹形の構造的な欠陥がよく発生するため、樹形を修正する剪定管理が重要です。

まとめ

台風での被害を減らすためには、根の張りが強い樹種を植栽すること、剪定ではぶつ切りや刈込をしないこと、植栽の際は土壌改良などを施して根が十分に成長できるようにすること、樹形の構造的な欠陥を修正する剪定を行うこと、重要な病害を見つけたときは適切な処置を行うことだと考えています。


最近では、台風での倒木や枝折れを減らすことを目的とした剪定方法が開発されました。その剪定方法は「Structural Pruning」です。樹木は台風の暴風を緩和する防風林の役割を果たすので、Structural Pruningを使用して大型の台風から生活環境を守ることができると考えています。
沖縄では「フクギ並木」が防風林の役割を果たし、台風から家屋を守り続けています。
フクギ並木

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