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内山瑛

独立開業を親身に支援するプロ(公認会計士&税理士)

内山瑛(うちやまあきら) / 公認会計士

内山瑛公認会計士・税理士・行政書士事務所

コラム

個人資格職のM&Aによる譲渡対価の課税について

2017年5月18日 公開 / 2020年4月29日更新

テーマ:税金

コラムカテゴリ:ビジネス

個人事業を廃業する場合に、特に資格が必要な職業(資格独占事業)において、特定の他人に事業を引き継いだうえで、引継に関する対価を受領することがあります。その場合、どのような所得区分となるのでしょうか。検討いたします。

【結論】
事業の引き継ぎにより受け取る対価は、営業権の譲渡収入金額でなく、自己の患者の斡旋による対価と解されており、譲渡所得ではなく、雑所得の収入金額に算入するものと考えられます。

【理由】
譲渡所得は、所得税法に「資産の譲渡による所得」と規定されており、資産の譲渡によって一時に実現する所得で、その資産の保有期間中のキャピタルゲインによる所得をいうものと解されています。
 この譲渡所得の基因となる「資産」は、ほとんどの資産を含む広い概念であり、動産、不動産のほか、特許権、著作権等の無体財産権はもちろん、借家権、営業権や行政官庁の許可、認可、割当等により発生した事実上の権利など一般的にその経済的価値が認められて取引の対象とされ、キャピタルゲインが生じるようなすべての資産を含むものと解されています。
 また、「営業権」の意義については、判例において「営業権とは、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係である」と解されているところです。
そして、通常、資格業では「その資格の保有者なければ、その業務をしてはならない」(業務独占)また「その資格の保有者なければ、その名称を用いてはならない」(名称独占)と規定されており、その業務が一身専属的な業務と考えられており、その地位は当該資格者の死亡や廃業により消滅し、他の資格者がこれを引き継ぐことはできないものと解されるのが通常です。したがって、歯科医業の承継では、超過収益を稼得できる無形の財産的価値を承継できるものではなく、キャピタルゲインが生じるような資産としての営業権を譲渡したとも解することもできませんので、資格業の引き継ぎにより受け取る対価は、自己の顧客の斡旋(紹介)による所得とみて雑所得となるものと思われます。

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