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世界のトップビジネススクールが研究する天職とは?~会社の事業を天職に近づけるための3つの質問~

2023年7月16日 公開 / 2023年7月17日更新

テーマ:天職に関するアカデミックな研究

コラムカテゴリ:ビジネス

1.なぜ天職が世界のビジネススクールで研究されているのか?


日本ではあまり知られていませんが、ハーバード、オックスフォード、ロンドンスクールオブエコノミクス、INSEADなど世界のトップビジネススクールで天職は学術的に研究されています。
また、米国コロンビア大学やスタンフォード大学は天職や自分にとって意義深い仕事を発見・発展させるためのオンライン講座を開講しています。

このように欧米で天職研究やコースが盛んな理由は、人生100年時代になり、60代以降も仕事を続ける人も多く、仕事をする時間が長くなったので、であればより幸せを感じられる仕事をするほうが本人もそれにかかわる人も幸せだからです。*1

天職の研究は、2000年代になって飛躍的に多くなり、以前は欧米が中心でしたが、今や中東、韓国、中国、東南アジアなど世界で研究されています。中国では、経済が成長し、より多くの若者が大学に進学するようになり、職業に対する選択の自由が高くなったこともあり、職業選択で天職に近い仕事を見つけるという視点が生まれてきたことも、研究が行われている背景にあります。

2.天職につくメリット


幸福度以外にも以下のようなメリットが天職につくとあると研究されています。 *2

  • 仕事に対する満足度が高い
  • 人生に対する満足度が高い
  • 仕事にかける熱意・士気が高い
  • レジリエンスがある
  • 仕事のパフォーマンスが高い
  • 欠勤率が低い


会社にその仕事を天職だと思っている社員がいると、いつも楽しそうで、満足していて、仕事もでき、かつ欠勤もないという経営者からすると本当にありがたい社員になります。このような人が増えてるとその会社の売り上げや業績も上がり、社内の雰囲気も良く、また多少の困難があっても、動じることなく、突き進んでいくことができます。そしてこのような会社が増えると、国の社会経済にとってもプラスです。

このようなメリットがあることから、ビジネススクールで組織に天職感を持っている社員を増やすにはといった研究が行われるようになりました。

3.研究者による天職の定義


日本では、天職が学術的に研究されているとあまり認知されておらず、天職というと神様からのお告げとか、天から降りてくるものといったイメージがあり、抵抗を感じられる方もいらっしゃいます。天職の定義は研究者によって数々提案されていますが、近年論文で発表されている天職の定義*3をご紹介します。

  • 人との一体感が感じられる仕事
  • 自分を表現できる仕事
  • 人に貢献できる仕事
  • 自分が成長でき、かつ、自分自身でいられる仕事


定義を知っていかが感じられましたか?これまでふわふわした抽象的なイメージを持たれていた方もより現実的に自分の天職が何かイメージできるのではないでしょうか?

4.経営者と天職の関係


私が天職研究のお話をすると、具体的にどんな研究が行われているのかとか、どういった職業が天職と思える仕事だとみなされているのかといった質問を多く頂きます。

様々な職業(医療従事者、金融機関、アーティスト、動物保護関連団体、起業家などなど)において、その仕事を天職だと思っている人が何割いて、なぜ天職だと思っているのかといった研究が行われています(それ以外の研究もあります)。

経営者については、自分の仕事を天職だと思っている人が多いと言われています。というもの、上記にご紹介した天職の定義の他に、自由の裁量の大きさも天職だと思えるかに大きく影響すると言われており、経営者の方はまさに決断、決定をする立場にあり、より天職だと思える傾向が高いと言えます。

5.会社の事業を天職に進化させていくための3つの質問


では、最後に会社の事業を天職に進化させていくために有効と思える質問を3つ提案させて頂きます。

  1. これまで行ってきた仕事や事業で社内やお客様と一体感を感じられたものは何だったですか?
  2. 会社がお客様や社会に最も貢献したことは何ですか?
  3. これからどんな技術や知見を伸ばしたいですか?


質問に答えることで、会社のアイデンティティーや存在理由がより明確になれば幸いです。

出典:
*1 Wrzesniewski, A. (2014). Chapter 1 Callings and the Meaning of Work in Yaden, D., McCall, T., and Ellens, H. Being Called Scientific, Secular, and Sacred Perspectives. Santa Barbara: Praeger.
*2
H.Weisman 2018. Calling Attention To 20 Years od Research: A Meta Analysis of Calling. Symposium presented at the 78th Annual Meeting of the Academy of Management, Chicago, IL
*3
Bailey, C., Yeoman, R., Madden, A., Thompson, M., & Kerridge, G. (2019). A review of the empirical literature on meaningful work: Progress and research agenda. Human Resource Development Review, 18(1), 83-113.

この記事を書いたプロ

佐藤香里

選ばれる企業をつくる対話型ビジネスコンサルティングのプロ

佐藤香里

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