マイベストプロ長崎
西田英治

「噛み合わせ」から健康へ導く「健口」のプロ

西田英治(にしだえいじ) / 歯科医

にしだ歯科医院

コラム

呼吸と姿勢の深イイ関係

2023年4月6日

テーマ:鼻呼吸 姿勢

コラムカテゴリ:美容・健康

皆さんは1日に何回呼吸していますか?
一般的に成人では1分間に15~20回呼吸していると言われています。とすると1日の呼吸数は1分間に15回としても15(回)×60(分)×24(時間)=21600回、実に2万回以上無意識のうちに繰り返しているわけです。
 では、呼吸の目的、呼吸しないといけない理由とは何でしょうか?
答えは皆さんご存じのように体内に「酸素」を取り込むためです。でもここであまり意識されていない事実があります。それは、呼吸法により酸素を取り込む効率が変わるということです。鼻で息をする「鼻呼吸」と口で息をする「口呼吸」では
「鼻呼吸」の方が圧倒的に効率的
と言われています。(鼻呼吸には酸素の取り込み以外にも様々なメリットがあります)
さらに、「鼻呼吸」の中でも効率が高い呼吸が「腹式呼吸」です。
腹式呼吸は横隔膜を使った呼吸法です。一方、お腹ではなく胸を使って(膨らませて)息をするのが胸式呼吸です。
鼻呼吸=腹式呼吸=横隔膜を使った深い呼吸
口呼吸=胸式呼吸=胸郭を使った浅い呼吸
というわけです。ただし、日常生活の中では腹式、胸式のどちらか一方で呼吸しているわけではなくどちらも使ってはいるものの比率が違うといった場合がほとんどのようです。例えば、口呼吸をしているときに横隔膜が全く動いていないか?というとそうではなく、横隔膜は少しは動いているんだけど、ほとんどは胸を膨らませて胸郭を使って息をしているといった具合です。呼吸を考える上での重要なポイントは、胸式呼吸は効率が悪い呼吸ですので呼吸の「質」としては低下したまま、1日2万回以上の呼吸を無意識にしており、しかもそれが毎日積み重なることでカラダにとっては大きなデメリットとなってしまうという点です。
 ここまで聞くと、効率のいい、質の高い呼吸をしたい、と皆さん考えると思います。その時のポイントは何といっても「腹式の鼻呼吸」です。つまり、横隔膜をしっかり使った鼻呼吸ができればいいということなのですが、ここには一つ大きなハードルがあります。
おそらく、今現在鼻づまりなどがなく、鼻が通っている状態であれば唇を閉じて鼻で息をすることは可能だと思います。さらに、胸とお腹にそれぞれ右手と左手を添えて、息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いた時にお腹がへこむ。胸は膨らんだりしぼんだりしない状況までは何とか意識することで可能だと思います。問題は、これを無意識の時に続けきれるか?言い換えると習慣化できるか?ということです。では、「腹式鼻呼吸」の習慣化を妨げるハードルとは何か?というとそれは
 「姿勢」
です。意外かもしれませんが、姿勢が悪いと日常でいくら「腹式鼻呼吸」を意識しても習慣化することができません。姿勢が呼吸習慣に影響しているというとちょっとわかりにくいかもしれませんが、逆に普段の無意識の呼吸習慣により姿勢が変化=崩れてきていると考えると分かりやすいかもしれません。例えば、「お口ぽかん」で「口呼吸」のお子さんは必ず前方頭位(頭が体の重心より前に位置)です。子供に限らず、大人でもスマホやタブレット、ソファーでTVを見ていても前方頭位になっています。前方頭位では重心が前にズレますのでバランスを取らないといけません。その時の姿勢変化が巻き肩や猫背というわけです。困るのは呼吸と同様に無意識下=気付かないうちに姿勢まで変わってきているということです。
 余談ですが、一部のネット情報ではコロナ禍前の頃の口呼吸している日本人の割合は6割や7割とも言われていました。そして、コロナ禍での3年に及ぶマスク習慣で、その割合は増え9割とも言われています。理由は明白です。マスク装着時の息苦しさから口で息をした方が無意識にカラダが判断して「楽」だからです。
 ついでに口呼吸だとなぜ前方頭位になるのか?もお伝えしておきます。それは、空気の通り道の幅と関係があります。口と鼻では空気の通り道の幅が違うことは想像できると思います。口の方が鼻よりも通り道が広いため一気に大量の空気を取り込める=楽に息ができるといった具合です。そして、口呼吸の際の口の中に目を向けると、当然唇は空いた状態で、口の中では舌の上を空気を通すことになります。楽に息をするためには道幅を広げればいいので舌の「上」の空気を通す通り道を広げようと舌を「下」に下げるようになります。実際には舌は後下方へ引っ込むような位置に変わります。ここで1つ大きな問題が起こります。それは、本来、舌の付け根の部分より後ろには鼻呼吸の際に気管支への空気の通り道となる「気道」があるのですが、舌が後下方に下がることでその気道を狭めてしまうことです。舌が後下方に下がることで気道が狭くなったのなら、気道を広げ楽に息をするためには舌を反対の前上方へ動かせばいいことになります。舌を「べぇ~」と出せば問題解決ですが、そんなことをする人はいないので結局のところ無意識のうちに顎(あご)を少し前に突き出して「前方頭位」を完成させるというわけです。
 いかがだったでしょうか?花粉症であれ、鼻炎、鼻づまりであれ、さらにはマスク習慣による息苦しさであれ、どんな理由であっても口呼吸をしていたら前方頭位となり重心がズレて姿勢を崩すのは必須です。何度も言いますが“知らないうちに”です。
 では、質の高い鼻呼吸を定着させるためにはどうすればいいのでしょうか?
当院でお勧めする方法としては

鼻呼吸トレーニング

姿勢改善トレーニング

の2つのトレーニングです。可能であれば+αとしてウォーキングです。
 脱マスク習慣については、議論が分かれるところではありますが口呼吸がカラダに悪影響を及ぼすのは間違いありません。アフターコロナに向けて、1日2万回以上無意識で行っている呼吸の「質」を上げて、ご自身の健康づくりに是非役立ててください。

この記事を書いたプロ

西田英治

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西田英治(にしだ歯科医院)

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