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どん底から栄光へ

2011年2月25日 公開 / 2014年6月4日更新

コラムカテゴリ:スクール・習い事


当館OBのW殿よりメールが届きました。


彼は初めて当館を訪れられたとき、北海道大学の大学院入試に2年続けて落第しておられました。学問への強い熱意はお持ちなのですが、いかんせん、大事な英語力が壊滅的レベルでした。2回目に落ちたとき、担当の北大教授から「バカヤロウ」というメールが来たそうです。あまりに悲惨な英語を2年も続けて書いたため、学問を冒涜しているのかという怒り心頭に達したのでしょう。

彼は一念発起で当館の門を叩き、数年に渡って研鑽を積み、晴れて国立先端科学技術大学院大学に合格されたのですが、さらに昨年、九州大学での研究メンバーに選ばれてご栄転なさったのでした。



彼からのメールです。
「おとつい、九州大学の博士課程の入学試験があり無事に通ることができました。九州大学の~~研究所の学生となります。
略~
結果的には以学館でbe動詞から英語を勉強していた頃の目標に接近してきています。
北陸先端大の卒業式(3月24日)には石川県に戻りますので、もしもお互いに時間が合いそうならば伺います。」

なんという素晴しいご出世でしょうか。



ところで、以下の英文は何と解釈すればいいのでしょうか。
Nothing is as dangerous as to make him appear what he is not.

英語で苦労されている方々に共通なのは「知らない」ことです。
言い換えれば「教えてもらっていない」ことです。
知らないまま無理やり我流に陥って苦しんでおられます。

上の英文ですが、
1. not as ~ as・・は「・・と同じ~ではない」ではありません。
2. makeは 「作る」ではありません。
3. him/heは「彼」ではありません。
4. appearは「現れる」ではありません。
5. whatは「なに」ではありません。
6. isは「~です」ではありません。

苦手度が増すほど上の6つの間違いの罹患率が上昇します。



「彼が何かでありませんと現れる彼に作るために同じくらい危険ではありません」
くらいの解釈をなさる方は珍しくありませんが、それはまだ良いほうです。
バカヤロウとまで言われたW殿の当初の解釈はそんなもんではありませんでした。
「この世に存在する危険の出現には彼を用いて対処する事しかない」



たまげました。
彼の苦労が分かりました。
本当は分からないのですが、「それらしい」論文を書かざるを得ないので、仕方なく単語の意味を自分流にこじつけて
空想文をでっちあげる習慣に陥っておられたのです。
こんな無茶苦茶を2年続けて書かれたら、大学院の先生が「バカヤロウ」と言いたくなるのも無理からぬことかもしれません。



彼のその後の当館でのご努力とご活躍は過去記事に綴ってありますので、最晩年に扱った教材を紹介します。

「文明は誰もが参加できる普遍的な物、合理的な物、機能的なものを指すのに対し、文化はむしろ不合理なものであり、
特定の集団(例えば民族)においてのみ通用する特殊なもので他に及ぼし難い。」

「かつては機械は考え得るかという問いは意味を成さないと考えられたが、最近の工学の発展はめざましく、
例えばチェスをする機械も作られている。もはや人間の行動に関する多くの記述を非生物である機械に適用しても
不自然ではないし、天候について筋の通った会話をする機械もできたそうだ。しかし、もっと中身の濃い会話が
できる機械が作れる可能性はあるか、というのが問題である」

これらの日本語を見た瞬間にスラスラと正確な英語にしておられました。
ちなみに英検でいえば1級レベルです。

これが、あの同じW殿でしょうか?



そういえば、おもしろいことを仰っていました。
今や若手の中では最長老クラスですが、周りの後輩たちには筋金入りの英語苦手人がおられるそうです。
かつての自分を見ているように感じるそうですが、思わずこう言いそうになるとか。

「君、以学館行けば?」

九州からはちと無理でしょう~(爆)


p.s.
上記の例文の正しい解釈は
「人をことさらに背伸びさせることほど危ういものはない」
(自分を見失うほどの無理をさせても決して良い結果を生じない)


ちなみにこの訳を暗記することが英語力ではありません。
なぜそうなるかの理由と過程を身につけることが真の英語力です。
そうすれば、覚えていない初めての英文に出会ったとき、自力で完全な理解や表現ができるのです。


※これまでの記事はこちらにございます:
http://air.ap.teacup.com/applet/igakukan/msgcate11/archive

この記事を書いたプロ

上野伸彦

英語個別指導のプロ

上野伸彦(英語の以学館)

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