【親子問題】子が親の外出や友人づきあいを制限してくる、止められる?
この記事は、2026年11月時点の法令・制度をもとに、主に成人した子の暴力やひきこもり、お金の無心に悩む親御さんに向けて書いています。18歳未満の子については、児童相談所の手続など別の仕組みが関わる部分があるため、該当する箇所で触れています。
子の暴力やお金の無心に悩みながらも、相談に踏み切れない親御さんは少なくありません。その理由の一つに「相談したら、その日のうちに子が連れて行かれてしまうのではないか」「子と引き離されて、もう会えなくなるのではないか」という不安があります。この記事では、相談することと、親子が離れて暮らすことが法的にどういう関係にあるのか、親の意思と関係なく離れることになるのはどんな場面なのかを整理します。
「相談すること」と「離れて暮らすこと」は別の段階です
まずお伝えしたいのは、弁護士への相談は、事情をお聞きして状況を整理する場であり、それだけで何かの手続が動き出すものではない、という点です。相談の場で子を家から出す日程が決まったり、相談の翌日に誰かが自宅を訪ねたりすることはありません。
相談しただけで子に連絡が入ることはありません
弁護士には守秘義務があり、相談の内容をご本人の了解なく第三者に伝えることはありません。子に連絡を入れるのは、親御さんが正式に依頼を決め、連絡の時期や伝え方を一緒に検討した後になります。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で解説しています。
進め方を決めるのは親御さんです
相談を受けた弁護士は、考えられる選択肢とそれぞれの見通しをお伝えしますが、どれを選ぶか、いつ始めるかを決めるのは親御さんです。相談した結果「今はまだ動かない」と判断されることもありますし、時間を置いてから改めて相談される方もいます。いったん立ち止まった後の再開については【親子問題】一度相談したが動けなかった|時間が経ってから再開するときもご参照ください。
なぜ「すぐに引き離される」と感じてしまうのか
相談そのものに強い不安を感じる背景には、いくつかの情報が重なっていることが多いように思います。
一つは、本人の同意を得ないまま子を自宅から連れ出し、施設に入れるといった民間業者をめぐる報道です。こうした連れ出しについては、本人の意思に反するものとして違法と判断された裁判例もあります。親の依頼があっても本人の同意の代わりにはならない点は、【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないで取り上げています。
もう一つは、児童相談所の一時保護をめぐるニュースです。一時保護は18歳未満の子を対象とする制度で、保護者が反対していても行われることがあるため、「相談すると子を取られる」という印象につながりやすいのかもしれません。
一方で、弁護士ドットコムなどの相談サイトを見ると、成人した子の暴力について警察に相談したものの「親子喧嘩では対応が難しい」と言われた、という声も多く寄せられています。実際には、「すぐに引き離される」よりも「なかなか動いてもらえない」と悩む場面のほうが目立つともいえます。この点は【親子問題】「家庭の問題」と言われて警察が動かないのはなぜかで解説しています。
親の意思と関係なく子と離れることになる場面
とはいえ、親の判断とは関係なく、子と離れて暮らすことになる場面がないわけではありません。主なものを表にまとめます。
| 場面 | 判断する人 | 主なきっかけ |
|---|---|---|
| 逮捕 | 警察・検察、裁判官 | 暴行や傷害などの犯罪の疑いがあり、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとき |
| 警察による保護 | 警察官 | 泥酔や精神的な錯乱で、自分や他人を傷つけるおそれがあるとき(警察官職務執行法3条) |
| 措置入院 | 都道府県知事(政令市は市長) | 精神障害のため自分や他人を傷つけるおそれがあると、2人以上の精神保健指定医の診察結果が一致したとき(精神保健福祉法29条) |
| 医療保護入院 | 精神科病院の管理者 | 医療と保護のため入院が必要とされ、家族等が同意したとき(精神保健福祉法33条) |
| 児童相談所の一時保護 | 児童相談所長 | 18歳未満の子の安全確保や状況の把握が必要なとき(児童福祉法33条) |
これらはいずれも、暴力や自傷他害のおそれといった「起きている出来事」をきっかけに、それぞれの機関が判断するものです。弁護士に相談したこと自体が引き金になるわけではありません。
ただし、相談の中で命や身体に差し迫った危険があると分かった場合、弁護士は警察への通報や医療機関への相談を勧めることがあります。それは子を引き離すためというより、親御さんと子の双方の安全を確保するためです。警察に相談した後の流れは【親子問題】家族が警察に相談した場合の流れ|相談から捜査・逮捕・処分までの見通し、入院への同意を求められたときの考え方は【親子問題】医療保護入院の同意を求められた|家族が同意することの意味で扱っています。
18歳未満の子の一時保護には裁判所の審査が入るようになりました
18歳未満の子の一時保護については、2025年6月から、親権者が同意しない場合などに、児童相談所が裁判官に「一時保護状」を請求する仕組みが始まっています。請求は保護の開始前か、開始から7日以内に行うこととされ、親権者の意に反して2か月を超えて続ける場合には、従来どおり家庭裁判所の承認が必要です。行政の判断だけで長く引き離されることのないよう、手続の面で歯止めが設けられているといえます。
当事務所のサービスでは、離れて暮らすまでに段階があります
当事務所では、子の暴力やお金の無心に悩む親御さんの代理人として弁護士が介入し、民間の自立支援カウンセラーと役割を分けて、子の自立を支える取り組みをしています。その中で、子が家を出て一人で暮らすことを提案する場面はありますが、そこに至るまでにはいくつもの段階があります。
- ご相談で、これまでの経緯やご家庭の状況をお聞きします。
- 親御さんが依頼するかどうか、何を目標にするかを検討します。
- ご依頼後、時期と伝え方を決めたうえで、弁護士から子に最初の連絡を入れます。
- 弁護士とカウンセラーが自宅を訪問し、子と直接話をします。
- 子が家を出ることを受け入れた場合、住まいや収入の手段を一緒に準備します。
- 転居後もしばらくの間、カウンセラーが生活の立て直しを支えます。
最初の連絡で何を伝えるかは【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで詳しく説明しています。
子本人の納得を前提に進めます
家を出るかどうかは、最終的には子本人が決めることです。当事務所は、子の同意なく連れ出したり、施設に入れたりすることはしていません。訪問の場では、なぜ家を離れることが本人にとっても意味があるのかを時間をかけて話します。実際に話をしてみると、「このまま家に居続けたい」と考えている子は思っていたより少なく、家を出ることを受け入れる子も少なくありません。
かかる時間は家庭ごとに異なります
1回の訪問で本人が決める場合もあれば、数回の訪問を重ねてようやく話がまとまる場合もあります。また、転居した後も、仕事や生活保護などの収入の手段を確保し、お金の使い方に慣れるまでには時間がかかります。そのため当事務所では、家を出てから少なくとも半年程度をサポートの期間として考えています。相談した翌日に生活が一変する、という進め方ではありません。
離れて暮らすことは、関係を断つこととは違います
親子が距離を取るのは、互いに頼り合いすぎた状態から抜け出し、それぞれが落ち着いて暮らすためです。転居後の様子はカウンセラーから親御さんに報告することができ、連絡の取り方もご家庭ごとに決めていきます。距離を置くことの意味については【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点、具体的な手順は【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順をご覧ください。
急いで距離を取ったほうがよい場面もあります
ここまで「すぐに引き離されることはない」とお伝えしてきましたが、暴力が繰り返されている、刃物を持ち出された、「殺す」などと言われているといった状況では、安全の確保を先に考える必要があります。
この場合に検討するのは、子を家から出すことよりも、まず親御さんが一時的に家を離れることです。親族の家やホテルなどに身を移すのは、親御さん自身が選ぶ手段であり、誰かに強制されるものではありません。避難の考え方は【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択、その場で通報するかどうかの目安は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで解説しています。
相談の前に決めておかなくてよいこと
相談に来られる方の中には、「子を家から出す覚悟が決まってから相談しよう」と考えて、時間がたってしまう方もいます。しかし、次のようなことは相談の前に決めておく必要はありません。
- 子を家から出すかどうか。
- 警察に被害届を出すかどうか。
- 弁護士に正式に依頼するかどうか。
- 今後、子とどのくらいの頻度で会うか。
これらは、相談で見通しをお聞きになったうえで考えていただければ十分です。相談の時点で整理しておくと役に立つ情報は【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報にまとめています。
よくあるご質問
相談したことを子に知られたら、すぐに状況が変わってしまいますか
相談したことが子に伝わっても、それだけで法的な手続が始まるわけではありません。ただ、子が警戒して態度を変えることはあり得ます。知られた後の接し方は【親子問題】相談を始めたことを子に知られた|その後の接し方をご参照ください。
夫婦の一方が反対していても相談できますか
相談はどちらか一方の親御さんだけでもできます。夫婦で考えが分かれていること自体を相談していただいてかまいません。方針の調整については【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときで取り上げています。
遠方に住んでいても相談できますか
当事務所は、これまで北海道から沖縄まで各地のご家庭からご相談をお受けしてきました。最初のご相談は電話などでもお受けしています。詳しくは【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際をご覧ください。
不安を抱えたままでも、相談はできます
相談したからといって、その日のうちに子と引き離されることは通常ありません。親子が離れて暮らすことになるとしても、その前には、親御さんの判断と子本人の納得、そして住まいや生活の準備という段階があります。一方で、暴力が続いている場合には、引き離されることを心配するよりも、まず安全を確保することが大切です。サービスの流れや費用は【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でもご確認いただけます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


