【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由
この記事は、2026年10月時点の弁護士法・弁護士職務基本規程・刑法にもとづいて作成しています。ご家庭ごとの事情によって取るべき対応は変わりますので、具体的な判断は相談の場でご確認ください。
「事務所からの封筒を見られて、弁護士に相談していることを息子に知られてしまった」「娘から『誰に何を話したのか』と問い詰められ、言葉に詰まってしまった」。親子の問題でご相談を始めた親御さんから、こうしたお話を伺うことがあります。知られた瞬間の動揺は大きく、「相談したのは間違いだったのではないか」と迷われる方も少なくありません。
家族のことは隠し事をせず正直に話すのがよい、という助言は、それ自体は誤りではありません。ただ、暴力や金銭の要求が続いているご家庭では、何をどこまで話すのか、誰が話すのかを決めないまま子と向き合うと、話し合いがその場の言い争いになり、かえって身動きが取りにくくなることがあります。
この記事では、相談を始めたことを子に知られた後、介入が始まるまでの間の接し方に絞って整理します。知られないための配慮(守秘義務や連絡方法)は【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で、ご相談から自立までの全体の流れは【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問で扱っています。
子に知られたときに起こりやすい反応
反応はおおむね3つの形に分かれる
相談を知った子の反応は、ご家庭によってさまざまですが、おおむね次の3つの形に分かれます。
- 怒りを向けて、相談相手や話した内容を問い詰める。
- 自室にこもって口をきかなくなる、食事をとらなくなるなど、閉じこもる。
- 表面上は気にしていないように振る舞い、しばらくしてから別の形で反応が出る。
どの反応が出たかによって、親が最初に気をつけることは変わります。怒りが強い場合は安全の確保が、閉じこもる場合は見守りの態勢が、表面上は落ち着いている場合はその後の変化に気づける記録が、それぞれ先に来ます。
知られたことで、相談が無駄になるわけではない
知られてしまった以上、もう相談は続けられないと考える方もいます。しかし、親がご自身の悩みについて弁護士に相談することは親自身が決めてよいことで、子の同意が必要なものではありません。知られたことは「失敗」ではなく、介入の進め方を調整する材料の一つとして扱うことができます。実際、子が相談の存在を知っていることで、後に弁護士やカウンセラーが連絡をとったときの受け止め方が、かえって穏やかになる場合もあります。
知られた直後の数日間に避けたいこと
「相談をやめる」と約束しない
問い詰められると、その場をおさめるために「もう相談はやめる」「弁護士とは縁を切った」と言ってしまいがちです。けれども、守れない約束は、後で介入が始まったときに「約束を破った」という新たな対立の火種になります。その場で約束も否定もせず、「今は答えられない」「落ち着いてから話したい」と伝えるにとどめるほうが、後の選択肢を残すことができます。
相談の中身を詳しく説明しない
「何を話したのか全部言え」と求められても、相談の内容を細かく説明する必要はありません。説明を始めると、一つひとつの言葉に反論が返ってきて、議論が長引きやすくなります。弁護士や相談先について悪く言う、あるいは逆に「弁護士が言ったから」と相手を盾にするような言い方も、子の反発を強めることがあるため避けたいところです。
お金や譲歩で落ち着かせようとしない
子の機嫌をとるために、求められたお金を渡したり、これまで断ってきた要求を受け入れたりすると、「相談の話を持ち出せば要求が通る」という形ができてしまうおそれがあります。金銭の要求への向き合い方は【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけもあわせてご覧ください。
子に伝えてよいことと、その伝え方
伝える内容は短く、一つにしぼる
何も言わずにいることが難しい場合は、伝える内容をあらかじめ一つにしぼっておくと、話がぶれにくくなります。たとえば、次のような伝え方です。
- 家のことを自分だけでは抱えきれなくなって、専門家に相談している。
- あなたを責めたり、追い出したりするための相談ではない。
- これからのことは、落ち着いたときに改めて話したい。
ご家族で伝える言葉をそろえておき、誰が聞かれても同じ説明になるようにしておくと、子が家族の言い分の違いを突いて対立が広がる事態を避けやすくなります。
説明役を親が一人で担わなくてよい
親が子に何度も説明を重ねるほど、話し合いは親子の言い争いになりがちです。依頼をお受けした後は、弁護士が親の代理人として子に連絡をとり、子とのやり取りの窓口を弁護士に代えることができます(詳しくは【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択)。もっとも、同居している間は家の中での会話を完全に止めることはできませんので、家の中でどう振る舞うかもあわせて弁護士と決めておくことになります。
子が「自分も弁護士に相談する」と言ったとき
子にも、自分の立場から専門家に相談する自由があります。それを止める必要はありません。ただし、親から依頼を受けた弁護士は、同じ事柄について子の側に立つことはできません(弁護士法25条1号、弁護士職務基本規程27条1号)。また、弁護士には職務上知った秘密を守る義務があり(弁護士法23条、同規程23条)、子から問い合わせがあっても、依頼者である親の了解なく相談内容を伝えることはありません。
安全にかかわる反応が出たとき
暴力や脅しが出たら、話し合いより安全を先に
知られたことをきっかけに、物を壊す、手を上げる、「殺す」と口にするといった反応が出ることもあります。このような場面では、話し合いで子を落ち着かせようとするよりも、その場を離れることや110番通報を優先してください。判断の目安は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるか、言葉による脅しの扱いは【親子問題】「殺す」と言われた|脅迫罪として扱われる線引きで解説しています。一時的に親が家を離れる選択肢については【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択をご覧ください。
「相談をやめなければ」と迫られたとき
「相談をやめなければ何をするか分からない」などと告げて相談の打ち切りを迫る言動は、内容や程度によっては脅迫罪(刑法222条)や強要罪(同法223条)の問題となり得ます。ただし、親子の間で直ちに刑事手続を考えるかどうかは、安全の状況やご家庭の方針を踏まえて慎重に判断する事柄です。まずは言われた日時と言葉をそのまま書き留め、警察に相談した場合はその記録も残しておくと、後の判断材料になります(【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続)。
ほかの家族にも目を配る
子の怒りが、相談を始めた親だけでなく、きょうだいや配偶者に向かうこともあります。とくに、相談のことを誰が話したのかを子が探ろうとする場面では、ほかの家族が問い詰められることがあります。家族の間で状況を共有し、必要に応じて身を寄せる先を決めておくと安心です(【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合)。
知られたことを、介入の準備に生かす
知られた経緯と子の反応を、早めに弁護士に伝える
知られた後は、なるべく早く弁護士に連絡し、どのような経緯で知られたのか、子が何と言い、どう振る舞ったのかを伝えてください。日付と出来事を時系列で書き留めたメモがあると、状況を正確に共有できます。ご相談の前に整理しておくとよい情報は【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報にまとめています。
予定を早めるか、いったん様子を見るか
知られたことで、介入の時期や最初の連絡の内容を見直すことがあります。一般的な考え方は次のとおりですが、実際の判断はご家庭の状況を伺ったうえで弁護士と一緒に決めていきます。
| 子の反応 | 考えられる進め方 |
|---|---|
| 暴力や脅しが出ている | 安全の確保を最優先にし、避難や警察への相談と並行して、弁護士からの連絡を早めることを検討する |
| 強く問い詰めてくるが、手は出ていない | 伝える言葉をそろえたうえで、窓口を弁護士に代える準備を進める |
| 閉じこもって口をきかない | 安否の見守りを続けながら、カウンセラーが関わる時期と方法を相談する |
| 表面上は変化がない | 予定どおり準備を進めつつ、変化に気づけるよう記録を続ける |
子を孤立させない形で進める
相談を知った子は、「家族が自分を追い出そうとしている」と受け止めることがあります。当事務所では、弁護士が親の側に立つ一方で、民間の自立支援カウンセラーが子の側で生活の立て直しを支える形をとっています(【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由)。親の相談は子を切り捨てるためではなく、親子がそれぞれ自分の生活を取り戻すためのものだという点は、子に伝わるまで時間がかかっても、一貫して示していくことが大切です。実際の進み方は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際でご紹介しています。
よくあるご質問
子に「相談した内容を全部見せろ」と言われました。見せなければいけませんか。
見せる義務はありません。相談の記録やメモは親ご自身のものです。求められても応じず、「今は見せられない」と短く伝えるにとどめてください。記録は子の目に触れない場所に保管し、必要であれば弁護士に預けることも検討します。
知られてしまったので、相談をいったん止めたほうがよいでしょうか。
止める前に、まず弁護士に状況を伝えてください。介入の時期を遅らせる、連絡の方法を変えるなど、進め方を調整することができます。子本人が相談や支援を拒んでいる場合に家族だけで進められる範囲は、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で解説しています。
子が弁護士の事務所に直接電話をかけてきたら、どうなりますか。
弁護士は守秘義務を負っていますので、依頼者である親の了解なく、相談の内容を子に伝えることはありません。子から連絡が来たときにどこまで応じるか、受けた連絡をどのように親と共有するかは、あらかじめ弁護士と決めておくと安心です。
まとめ
- 相談を子に知られても、相談そのものが無駄になるわけではなく、介入の進め方を調整する材料になる。
- 知られた直後は、相談をやめる約束や、相談内容の詳しい説明、お金や譲歩でその場をおさめることを避ける。
- 子に伝える言葉は短く一つにしぼり、家族の間でそろえておく。
- 親から依頼を受けた弁護士は同じ事柄で子の側に立てず(弁護士法25条1号、弁護士職務基本規程27条1号)、相談内容を親の了解なく子に伝えることもない(弁護士法23条、同規程23条)。
- 暴力や脅しが出た場合は、話し合いより安全の確保と記録を優先する(刑法222条・223条)。
- 知られた経緯と子の反応は、時系列のメモにして早めに弁護士に伝える。
- 弁護士が親の側に、カウンセラーが子の側に立つことで、子を孤立させずに進める。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、成人したお子さんの家庭内暴力やひきこもり、金銭の要求など、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士がこれまで北海道から沖縄まで全国のご家庭の問題に取り組んできた経験をもとに、自立支援カウンセラーと連携して対応します。
相談を始めたことをお子さんに知られて、この先どう接すればよいか迷っている方も、ひとりで抱え込まずにご相談ください。ご家庭の状況を伺ったうえで、安全の確保と今後の進め方を一緒に考えます。


