【親子問題】刑事処分だけでは止まらない|依存症支援の窓口

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は2026年9月時点の法令と公的な支援体制をもとに作成しています。相談窓口の名称や受付の方法は、都道府県や市区町村によって異なります。


お子さんの薬物の問題で警察が関わり、処分が決まったことで「これで一区切りついた」と感じたものの、しばらくして再び様子が変わってくる。親子の問題のご相談では、このような経過をたどるご家庭があります。刑事手続は過去の行為に対する評価を決める仕組みであり、薬物への依存そのものを扱う仕組みではないためです。

 この記事では、刑事手続が関わる期間とその後に生じやすい空白を整理したうえで、薬物依存について家族が相談できる窓口の役割分担と、窓口だけでは扱いにくい問題を解説します。成人したお子さんとの同居や金銭のやり取りが続いている親御さんを主な読者として想定しています。

刑事手続が関わる期間には区切りがある

 薬物事件の処分にはいくつかの形があり、どの形で手続が終わるかによって、その後に公的な関わりが残るかどうかが変わります。大まかに整理すると次のとおりです。

処分の形手続後の公的な関わり回復支援とのつながり方
不起訴(起訴猶予など)原則として残らない本人や家族が自ら窓口につながる必要がある
保護観察の付かない執行猶予原則として残らない本人や家族が自ら窓口につながる必要がある。猶予期間中の再犯は取消しにつながり得る
保護観察付きの執行猶予・刑の一部執行猶予保護観察の期間中は保護観察所が関わる期間中は専門的なプログラムを受ける場合がある。満了後は自発的な継続が必要
実刑刑事施設での指導。仮釈放の期間中は保護観察出所後に地域の窓口へ引き継ぐ必要がある


 保護観察が付く場合には、保護観察所での専門的なプログラムの受講が求められることがあり、回復の足がかりになり得ます。ただし、その関わりも期間が満了すれば終わります。保護観察中に守るべき事項については保護観察付き執行猶予の遵守事項と、取り消される場面で解説しています。

 一方、不起訴や保護観察の付かない執行猶予では、手続が終わった時点で公的な関わりはほとんど残りません。起訴猶予となった人などは、本人が申し出れば一定の期間、更生緊急保護という支援を受けられる場合がありますが、本人の申出が前提です。どの形で終わっても、その後の生活の大部分は家庭と地域の中で続いていきます。

依存の問題は処分とは別の軸で続く

 厚生労働省が家族向けに作成している冊子「ご家族の薬物問題でお困りの方へ(家族読本)」は、薬物依存を、乱用を繰り返した結果として生じる脳の慢性的な状態であり、やめようと思っても薬物への渇望を自分で抑えられなくなるものと説明しています。あわせて、回復には長い時間がかかることにも触れています。

 処分は過去の行為に対する評価であり、処分の重さと、依存の度合いや回復の進み具合とは、必ずしも連動しません。「処分が軽く済んだから大丈夫」「重い処分を受けたから懲りたはず」という受け止め方は、どちらも実際の状態とずれることがあります。刑事手続と並行して、あるいは手続とは関係なく、依存の問題を扱う窓口につながっておくことに意味があるのはこのためです。

 また、薬物の問題に最初に気づき、最初に困るのは、多くの場合本人ではなく家族です。本人が相談を拒んでいる段階でも、家族が先に動ける窓口があります。

依存症支援の窓口と役割分担

 国は、都道府県と政令指定都市を単位として、医療機関、精神保健福祉センター、保健所、市町村、民間の回復施設、保護観察所などが連携し、依存症の相談や治療にあたる体制づくりを進めています。家族の立場から見ると、それぞれの窓口には担いやすいことと担いにくいことがあります。親子の問題全般の相談先については【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。

窓口主に担うこと担いにくいこと
精神保健福祉センター・保健所家族だけの相談、家族教室、回復プログラム、医療機関などの案内緊急時の介入、金銭や住まいをめぐる交渉
依存症専門医療機関診察と治療、専門的なプログラム。家族相談を行う機関もある本人が受診しない段階での治療
回復支援施設・自助グループ本人が仲間とともに回復に取り組む場。施設によっては生活の場にもなる家族の側の法的な問題、本人の意思に反する入所
家族会・家族の自助グループ家族どうしの経験の共有、学びの場個別の法的判断、子との交渉
弁護士暴力・金銭要求・住まいをめぐる法的対応、刑事手続での弁護治療や日常の生活支援そのもの


精神保健福祉センター・保健所|家族だけでも相談できる入口

 精神保健福祉センターは、精神保健福祉法に基づいて都道府県と政令指定都市に置かれている専門の行政機関で、全国に69か所あります。多くの地域で依存症の相談拠点を担っており、相談員による個別相談のほか、家族向けの教室や、本人向けの集団での回復プログラムを実施しているところもあります。本人が同行しなくても家族だけで相談でき、無料で受け付けているところが多くあります。

 身近な保健所でも、こころの健康に関する相談を受け付けています。どこから手をつければよいか分からない段階では、まずこのいずれかに連絡し、地域の医療機関や家族会の情報を得るのが一つの方法です。

依存症専門医療機関|都道府県などが選定して公表している

 精神科の医療機関であっても、薬物依存の治療を行っているとは限りません。厚生労働省の通知に基づき、都道府県と政令指定都市が、一定の基準を満たす医療機関を依存症専門医療機関や依存症治療拠点機関として選定し、その名称を公表しています。受診先を探すときは、お住まいの自治体のウェブサイトでこの一覧を確認するとよいでしょう。医療機関によっては、本人が受診する前に家族だけの相談を受け付けています。

回復支援施設・自助グループ・家族会

 ダルクなどの回復支援施設は、薬物依存の経験をもつスタッフが関わり、本人が仲間とともに回復に取り組む場です。施設ごとに独立して運営されており、プログラムや受入れの条件、費用は施設によって異なります。NAなどの本人の自助グループは、ミーティングに参加する形で回復を支え合う場です。

 家族の側にも、薬物依存症者の家族会や家族の自助グループがあり、各地で集まりが開かれています。同じ経験をもつ家族と話すことで、家族自身が持ちこたえる力を取り戻すことが目的の一つとされています。刑事手続の中で治療や施設への参加がどう扱われるかについては、ダルク・依存症治療への参加|情状としてどう評価されるかと家族としてできること|身元引受・治療・監督体制の組み立てで解説しています。

相談すると通報されるのかという不安

 家族が窓口に足を運べない理由として多いのが、「相談したら子どもが警察に通報されるのではないか」という不安です。法律上、犯罪があると考えた人は誰でも告発でき、公務員には職務上知った犯罪について告発の義務が定められています(刑事訴訟法239条)。ただ、先に挙げた厚生労働省の冊子は、家族が相談に行ったことで警察に通報されるようなことはまずないと説明しています。回復に向けた支援を目的とする窓口であることを前提にした説明といえます。

 医療機関については、覚醒剤の使用などを知った医師に警察へ通報する義務はありません。一方で、医師が通報しても守秘義務違反には当たらないとした最高裁の判断があり(最高裁平成17年7月19日決定)、通報するかどうかは医療機関ごとの判断に委ねられています。また、麻薬、大麻、あへんの慢性中毒と診断した場合には、医師が都道府県知事に届け出ることが法律で定められています(麻薬及び向精神薬取締法58条の2)。届出先は警察とは別の行政機関です。

 こうした取扱いが気になる場合は、相談の最初に、話した内容がどのように扱われるのかを窓口に確認しておくとよいでしょう。弁護士には法律上の守秘義務があります。相談内容がお子さんに伝わるかどうかについては【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で解説しています。

家族の関わり方で回復が遠のく場面

 依存症の相談機関の多くは、家族が良かれと思って続ける関わりが、かえって回復を遠ざけることがあると指摘しています。代表的なのは、借金の肩代わりや、薬物の使用に絡んで起きた問題の後始末を家族が引き受け続けることです。本人が問題の大きさに向き合う機会が失われやすいためとされています。

 成人したお子さんから繰り返し金銭を求められている場合、その使い道が薬物につながっていることもあります。親が成人した子をどこまで養う義務を負うのかは、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで整理しています。求めに応じるかどうかを家族だけで判断し続けることが難しい場合は、相談機関や弁護士と一緒に線を引くことが考えられます。

支援の窓口だけでは扱いにくい問題

 依存症支援の窓口は治療と回復を支える役割を担っていますが、家庭の中で起きている法的な問題までは扱えないことがあります。たとえば、次のような状況です。

  • 金銭の要求が続き、断ると暴言や物の破壊がある。
  • 暴力を受けている、または身の危険を感じている。
  • 子が家に居続け、親の生活や健康が保てなくなっている。
  • 子が逮捕された、または捜査の対象になっている。


 身の危険があるときは、まず安全の確保を優先してください。激しい興奮があり、周囲に危害が及ぶおそれがある場面では、警察への連絡をためらう必要はありません。安全と記録の確保については【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で、お子さんに家を出てもらうことの法的な整理については【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで解説しています。

当事務所の取り組み|親と子それぞれの自立を目指す

 当事務所では、家庭内暴力やひきこもり、金銭の要求などに悩む親御さんの代理人として、お子さんとの間に入る取り組みを行っています。お子さんの年齢は問わず、未成年から50歳を超える方まで、5年以上にわたり全国のご家庭からご相談をお受けしてきました。

 ただ、お子さんを孤立させるだけでは自立にはつながりません。そのため、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、弁護士は親御さんの側の保護を、カウンセラーは住まいや仕事探し、生活保護の申請の支援、日々の金銭管理といったお子さんの生活面の支えを担います。薬物の問題が背景にある場合には、医療機関や相談機関とのつながりを保ちながら進めていきます。親子の間に物理的な距離が生まれることで、双方に変化が訪れることがあります。人が関わることなので結果をお約束することはできませんが、家族だけで抱え込まない形をつくることはできます。

 少年事件の付添人活動や、お子さんが逮捕された場合の弁護活動にも対応しています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご案内しています。

まとめ


  • 刑事手続が関わる期間には区切りがあり、処分の形によっては手続のあとに公的な関わりがほとんど残りません。
  • 薬物依存は処分の重さとは別の軸で続くため、刑事手続とは別に依存の問題を扱う窓口につながることに意味があります。
  • 精神保健福祉センターや保健所は、本人が同行しなくても家族だけで相談できる入口です。
  • 依存症専門医療機関は都道府県などが選定して公表しており、回復支援施設や家族会もそれぞれ役割が異なります。
  • 相談内容の扱いが気になる場合は、最初に窓口へ確認しておくと進めやすくなります。
  • 暴力や金銭の要求、住まいの問題など法的な対応が必要な部分は、弁護士が親の側に立って関わることができます。


 薬物の問題は、処分が終わったあとも家族の生活の中で続いていきます。支援の窓口と法律の窓口を組み合わせることで、家族だけで背負う部分を少しずつ減らしていくことができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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