【親子問題】親が高齢で外出できない場合、自宅に来てもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子の暴力やお金の無心、長く続くひきこもりなどで悩んでいても、親御さんご自身が高齢で、法律事務所まで出向くことが難しい場合があります。足腰が弱っている、持病がある、入院や施設への入所中である、あるいは家を空けると子に何を言われるか分からないといった事情から、「相談したくても行けない」と感じている方は少なくありません。

本記事で紹介する公的な相談窓口の受付時間・費用・対象は、変更されることがあります。ご利用の前に、各窓口へ最新の内容をご確認ください。


 結論から申し上げると、外出が難しいことは相談をあきらめる理由にはなりません。弁護士がご自宅や入院先・入所先に伺う「出張相談」は、弁護士会や法テラスの制度としても、法律事務所の個別の対応としても行われています。また、最初の一歩は電話などで足りることも多く、ご家族が先に事情を伝えておくこともできます。本記事では、外出が難しい親御さんが使える相談の形と、ご自宅で相談するときに考えておきたい点を整理します。

外出が難しい親御さんが使える相談の形

 外出が難しい場合の相談には、大きく分けて三つの入り方があります。どれか一つに決める必要はなく、組み合わせて使うことが一般的です。

電話・メールなどで、まず事情を伝える

 最初から自宅に来てもらう段取りを組まなくても、電話やメールで概要を伝えるだけで、どのような手段がありそうか、次に何をすればよいかの見当がつくことがあります。体調の波がある方にとっては、調子のよい時間を選んで話せる点も利点です。一方で、表情や家の中の様子が伝わりにくく、書類を見ながらの細かい確認にも限りがあるため、具体的な方針を決める段階では、対面の機会を設けることが多くなります。

弁護士に自宅や入院先まで来てもらう

 弁護士がご自宅や入院先、入所先の施設に伺って話を聞く方法です。手元にある通帳や書類、壊された物の状況などをその場で確認できるため、話が具体的に進みやすいという面があります。ただし、移動にかかる時間と費用が生じることや、子と同居している場合にはその場の設計が必要になることなど、事前に考えておきたい点もあります(後述します)。

ご家族が先に相談し、親御さんとは後で話す

 きょうだいや親族、親御さんの配偶者などが先に事情を伝え、そのうえで弁護士が親御さん本人と話す機会を設ける方法です。親御さんが一人で経緯を説明するのが負担な場合や、まず相談してよい内容かどうかを確かめたい場合に向いています。ご家族が相談の窓口になる場合の考え方は、【親子問題】きょうだいが相談者になる場合|親が動けないときでも解説しています。

相談の形向いている場面気をつけたい点
電話・メールなどまず状況を伝えたい、体調に波がある細かな事実確認や書類の確認には限りがある
自宅・入院先への訪問書類や現場を見ながら具体的に話したい移動の費用と時間、子と同居している場合の場の設計
家族が先に相談本人の負担を減らしたい、相談してよいか確かめたい方針を決める段階では親御さん本人の意思確認が必要


公的な機関が行っている出張相談

 法律事務所に直接依頼する前に、公的な機関が行っている出張相談の仕組みを知っておくと、選択肢が広がります。

東京の三弁護士会による高齢者・障害者向けの相談

 東京では、東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会が共同して、高齢者・障害者のための電話相談を行っています(電話03-3581-9110)。電話相談の結果に応じて面接相談や出張相談が案内される仕組みで、出張相談は高齢や健康上の理由から弁護士会館に来ることが難しい場合を想定したものです。電話相談は無料ですが、面接相談・出張相談は有料とされています。また、第二東京弁護士会の「ゆとり~な」では、見守りや財産管理を担う「ホームロイヤー」の窓口でも出張相談のメニューが設けられています。

法テラスの「特定援助対象者法律相談援助」

 法テラス(日本司法支援センター)には、高齢や障害のために認知機能が十分でなく、自ら法律相談を求めることが難しいと思われる方のもとへ、弁護士や司法書士が出張して相談を行う制度があります。この制度は、ご本人からではなく、ご本人を支援している福祉機関などの支援者からの申入れによって始まる点に特徴があります。資力にかかわらず利用できますが、収入や預貯金が一定の基準を超える方には相談料の負担があります。親御さんにすでに担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの職員がついている場合は、こうした支援者を通じて利用を検討することになります。

公的な相談と、継続的な対応の違い

 公的な出張相談は、法的な整理や対応の方向性について助言を受ける場として役立ちます。一方で、子との交渉の窓口を弁護士に代える、子の独立に向けて継続的に関わる、といった対応は、相談とは別に依頼(委任契約)を結んで進めることになります。どの段階でどこに相談するかの全体像は、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。

自宅で相談するときに考えておきたいこと

 弁護士がご自宅に伺う場合、事務所での相談とは異なる配慮が必要になります。特に、相談の対象となっている子と同居しているご家庭では、事前の準備が相談の質を左右することがあります。

子と同居している場合は、日時と場所を選ぶ

 子が在宅している時間に弁護士が訪問すると、子が話し合いの場に入ってきたり、相談していること自体に反発したりするおそれがあります。親御さんも、子に聞かれることを気にして本当の事情を話しにくくなるかもしれません。そのため、子が外出している時間帯を選ぶ、親族の家や入院先・入所先など自宅以外の場所で会う、最初は電話で話して訪問のタイミングを後で決める、といった工夫が考えられます。子がいる場で話すかどうかの判断については、【親子問題】子がいる前で弁護士と話すべきか|面談の場の設計で詳しく解説しています。

 なお、子から暴力を受けている、身の危険を感じるといった状況では、相談の段取りよりも安全の確保が先になります。高齢の親御さんが被害を受けている場合には、行政が関わる仕組みもあります。【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みもご参照ください。

依頼するのは親御さん本人であることが基本

 ご家族が先に相談の窓口になった場合でも、親御さんの代理人として弁護士が動く場合には、親御さん本人と弁護士との間で委任契約を結ぶのが基本です。弁護士は、依頼の内容について依頼者本人の意思を確かめながら進めるため、ご家族からの説明だけで方針を決めることはできず、親御さん本人と直接話す機会が欠かせません。外出が難しい親御さんのもとへ弁護士が伺うことには、この意思確認の場を設けるという意味もあります。

 また、物忘れが目立つなど、親御さんの判断能力に不安がある場合には、契約を結ぶことができるか自体を慎重に確かめる必要があり、成年後見制度など別の仕組みを検討する場面も出てきます。早めにご相談いただくほど、親御さん本人の意思を確かめられる選択肢が残りやすくなります。

相談したことが子に伝わらない連絡方法を決めておく

 自宅の固定電話に事務所から折り返しの電話が入る、郵便物が届くといったことから、相談していることが子に知られる場合があります。弁護士には守秘義務がありますが、連絡の経路そのものは事前に決めておかなければ管理できません。連絡してよい時間帯、電話番号、郵便物の送り先、ご家族を経由するかどうかなどを、最初の段階で弁護士と確認しておくと安心です。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方をご覧ください。

出張にかかる費用と時間を事前に確認する

 弁護士がご自宅などに伺う場合、相談料とは別に交通費や移動時間に応じた費用がかかることがあります。どのような費用が、どの時点で発生するのかは事務所や窓口によって異なりますので、訪問の日程を決める前に確認しておくことをおすすめします。遠方にお住まいの場合の考え方は、【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際で解説しています。

相談の前に手元にそろえておくと話が進みやすいもの

 自宅での相談は、手元の資料をすぐに確認できる点が利点です。すべてがそろっていなくても相談はできますが、次のようなものがあると、限られた時間で話が具体的になりやすくなります。

  • 子の暴力や暴言、金銭の要求があった日時と内容を書き留めたメモ。
  • 子に渡したお金の記録が分かる通帳や振込の控え。
  • けがをした場合の診断書や、壊された物の写真。
  • 警察や行政の窓口に相談した記録や、そのときの担当者名。
  • ご家族の構成と、相談に関わってほしい親族の連絡先。


 これらを整理する際の考え方は、【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報でまとめています。体調によっては準備そのものが負担になることもありますので、無理のない範囲で、思い出せることから書き出しておく程度でも構いません。

当事務所の対応について

 当事務所では、子の家庭内暴力やひきこもり、お金の無心などに悩む親御さんからのご相談を、北海道から沖縄まで全国から受けてきました。弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支えるという役割分担で対応しています。対応の過程では、弁護士がご家庭を直接訪問することも少なくありません。

 親御さんが高齢で外出が難しい場合も、まずは電話などで状況をお聞きし、ご家族の事情や子との同居の有無、安全面の状況をふまえて、どこでどのようにお会いするかをご一緒に検討します。サービスの内容や流れ、費用の考え方は、次の記事で紹介しています。


まとめ

 親御さんが高齢で外出できないことは、相談をあきらめる理由にはなりません。要点を整理すると、次のとおりです。

  • 最初の一歩は、電話などで事情を伝えることから始められます。
  • 弁護士会や法テラスの出張相談、法律事務所による訪問など、自宅や入院先で相談する方法があります。
  • 子と同居している場合は、訪問の日時や場所、連絡の方法を事前に決めておくことが大切です。
  • ご家族が窓口になる場合でも、依頼するときは親御さん本人の意思を直接確かめることが基本です。


 親子の問題は、親御さんの体力や判断力が保たれているうちに動き始めるほど、取れる手段の幅が広くなります。外出が難しい状況そのものも含めてお聞きしますので、「行けないから相談できない」とお考えにならず、まずは今の状況をお聞かせください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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