【親子問題】息子夫婦・娘夫婦との同居をやめたい|二世帯の解消
この記事は、2026年10月時点の法令と公的な支援制度をもとにまとめています。窓口の名称や受付の方法は自治体ごとに異なるため、実際にご利用になる際はお住まいの市区町村でご確認ください。
子のひきこもりや家庭内暴力、お金の無心などが続くと、ご近所との立ち話や町内の行事を避けるようになる親御さんは少なくありません。「子のことを聞かれたくない」「家の中の物音を知られているかもしれない」と感じれば、人と顔を合わせること自体が負担になるのは自然なことです。
ただ、近所づきあいが途絶えると、親御さんが地域とつながる窓口が一つ減ります。それが重なると、困ったときに頼れる人がいない、外から異変に気づいてもらえない、という状態に近づいていきます。この記事では、子の問題を抱える親御さんが孤立しないために、近所づきあいとの距離をどう取り、近所の代わりにどのようなつながりを外に持てばよいのかを整理します。
近所づきあいを避けるようになるのは、珍しいことではありません
子の問題を抱える親御さんからは、次のような声をよく伺います。
- 近所の人に「息子さんは今どうしているの」と聞かれるのがつらい。
- 子が大声を出した翌日は、隣の家の人と顔を合わせたくない。
- 同年代の子の就職や結婚の話題が出ると、その場にいられない。
- ゴミ出しや買い物の時間を、人に会わない時間帯にずらしている。
- 町内会の役員や行事は、理由をつけて断るようになった。
こうした行動は、家族を守ろうとする気持ちから生まれるものです。避けること自体を責める必要はありません。一方で、人目を避ける生活が長く続くと、親御さんの生活範囲が少しずつ狭くなり、家の外で話せる相手がいなくなっていくことがあります。孤立は、ある日突然起きるというより、こうした小さな回避が積み重なって進んでいくものだと考えておくとよいでしょう。
親が孤立すると、何が起きやすくなるのか
近所づきあいそのものに法的な義務があるわけではありません。ご近所と深く付き合わなくても、生活に支障がなければそれで構わないはずです。問題になるのは、近所づきあいが途絶えたことで、家の外とのつながりが全体として細くなってしまう場合です。
- 相談に動き出すのが遅れ、家庭内だけで判断を重ねてしまうことがあります。
- 暴力や体調の急変があっても、外から異変に気づいてもらいにくくなります。
- 親御さん自身の心身の不調が、周りに見えないまま進むことがあります。
- 本人(子)と社会との接点も、生まれにくくなります。
最後の点は見落とされがちです。ひきこもりの家族会の全国組織であるKHJ全国ひきこもり家族会連合会は、東京都の支援協議会に提出した資料の中で、本人が家族以外との交流を絶っている場合には家族が本人と社会をつなぐほぼ唯一の存在になること、そして家族が社会から孤立すると本人と社会とのつながりも生まれにくくなることを指摘しています。親御さんが外とのつながりを保つことは、親御さん自身のためであると同時に、子にとっても意味があるということです。
法律相談の場でも、役所に相談したものの「家族でよく話し合ってください」と言われるだけで先に進めなかった、という声が見られます。家庭内の問題として扱われているうちに、家族がさらに内側へ閉じていく流れは、多くのご家庭に共通しています。
家族の孤立も、制度の上では支援の対象とされています
2024年4月1日に施行された孤独・孤立対策推進法は、孤独・孤立の状態は人生のどの段階でも誰にでも生じ得るものであり、社会全体の課題として取り組むという考え方を基本理念に掲げています。さらに、孤独・孤立の状態にある人だけでなく、その家族等も含めた「当事者等」の立場に立って、状況に応じた支援が継続的に行われるようにすることを定めています(孤独・孤立対策推進法2条)。
この法律を受けて、自治体では支援関係者が情報を共有し、支援の内容を話し合う「孤独・孤立対策地域協議会」の設置が進められています。既存の重層的支援体制整備事業の会議を活用する自治体もあります。
もちろん、法律ができたからといって、ご家庭の問題がすぐに解決するわけではありません。それでも、「子の問題で家族が孤立している」という状況は、恥ずかしいこととして隠すべきものではなく、公的な支援の対象として扱われるものだと知っておくことは、相談に踏み出すうえでの支えになります。市区町村の福祉窓口の使い方については、【親子問題】重層的支援体制整備事業とは|市町村窓口の使い方で詳しく説明しています。
近所づきあいは「全部話すか、まったく付き合わないか」で考えなくてよい
近所づきあいを避けてしまう背景には、「付き合うなら子のことも話さなければならない」という思い込みがあることが少なくありません。実際には、近所づきあいと子の事情を打ち明けることは、切り分けて考えることができます。
相手ごとに話す範囲を決めておく
誰にどこまで伝えるかを、あらかじめ家族で決めておくと、聞かれたときに慌てずにすみます。目安としては次のような分け方が考えられます。
| 相手 | 伝える範囲の目安 | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| あいさつ程度のご近所 | 事情は伝えない | 「おかげさまで変わりなくやっています」 |
| 日常的に顔を合わせる隣家 | 事情の一部だけ伝える | 「子が体調を崩していて、家で療養しています」 |
| 特に信頼できる一人 | 緊急時に備えて必要な範囲を伝える | 「何かあったら、この番号に連絡してもらえますか」 |
すべての人に同じ説明をする必要はありません。家族の中で説明が食い違うと、かえって詮索を招くことがあるため、伝える内容は家族で揃えておくと安心です。親族から口出しされる場面での考え方は【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方でも取り上げています。
あいさつだけは続ける
深い付き合いを再開しなくても、あいさつや短い会話を続けるだけで、ご近所との関係は保たれます。顔を合わせる習慣が残っていれば、親御さんの様子がいつもと違うときに、声をかけてもらえる可能性も残ります。行事や役員を断る場合も、「今は家のことで手が離せないので」と短く伝えれば足り、詳しい理由まで説明する必要はありません。
物音や騒ぎが外に及んでいる場合
大声や物を壊す音が近所に聞こえている場合、ご近所から苦情や問い合わせが来ることがあります。その場で事情を詳しく説明する必要はありませんが、迷惑をかけていることへのお詫びと、対応を進めていることを短く伝えるだけでも、関係がこじれるのを防ぎやすくなります。子が近所の人とのトラブルにまで発展した場合については、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任で解説しています。
近所の代わりになる「つながり」を外に持つ
ご近所に事情を話せなくても、家の外に相談相手を持つことはできます。むしろ、子の問題は専門の窓口のほうが話しやすいという親御さんも多くいらっしゃいます。主な窓口は次のとおりです。
| 窓口 | どのような相談ができるか |
|---|---|
| 家族会 | 同じ悩みを持つ家族と話し、経験や情報を共有できる |
| ひきこもり地域支援センター | ひきこもりに関する相談を、家族だけで始められる |
| 市区町村の福祉窓口(重層的支援体制整備事業など) | 複数の困りごとをまとめて相談し、関係機関につないでもらえる |
| 地域包括支援センター | 親御さんが65歳以上の場合、介護や生活の相談ができる |
| 保健所・精神保健福祉センター | 子の心の不調や受診について相談できる |
| 民生委員 | 地域で見守りや相談の橋渡しをしてもらえる |
| 弁護士 | 暴力や金銭要求への対応、子との交渉の窓口を任せられる |
家族会は、ご近所との付き合いとは違い、同じ立場の人どうしで話ができる場です。「うちだけではなかった」と感じられることが、孤立を防ぐきっかけになることがあります。家族会の役割については【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできること、ひきこもり地域支援センターについては【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことをご覧ください。
民生委員は地域の住民の中から委嘱されますが、民生委員法により、職務を行うにあたって相談者の身の上に関する秘密を守ることが求められています(民生委員法15条)。ご近所に知られたくないという理由で相談をためらっている場合でも、まずは市区町村の窓口に問い合わせ、どの窓口が合っているかを確かめるところから始められます。
どの窓口に何を相談すればよいか迷う場合は、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担で役割の違いを整理しています。
暴力や金銭要求があるときは、孤立が危険を大きくします
子から暴力を受けていたり、強い調子でお金を要求されていたりする場合、親御さんが外とのつながりを失っていることは、安全の面でも心配な状態です。家の中で起きていることを誰も知らなければ、身に危険が迫ったときに助けを求める先がすぐに思い浮かばないこともあります。
- 身の危険を感じたときは、ためらわずに110番通報します。
- けがをしたときは受診し、暴力や要求の内容を日付とともに記録しておきます。
- 一時的に身を寄せられる先を、親族や知人、公的な窓口の中から考えておきます。
- 夜間や休日に相談できる窓口を、あらかじめ控えておきます。
これらの備えは、親御さんが孤立していないほど進めやすくなります。具体的な手順は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録、【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択、【親子問題】夜間に子が暴れたときの相談先|時間帯別の窓口で解説しています。親御さんが高齢の場合は、行政が関与できる仕組みもあります。詳しくは【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みをご覧ください。
親御さん自身が倒れないための備え
子の問題が長く続くと、親御さん自身が疲れ切ってしまうことがあります。親御さんの不調は、外から見えにくいまま進みがちです。次のような備えをしておくと、いざというときに家族の生活が止まってしまうのを防ぎやすくなります。
- 親御さんが急に入院した場合に、子の存在と状況を伝えられる人を一人決めておくこと。
- 相談している窓口の連絡先を、メモにまとめて分かる場所に置いておくこと。
- 親御さんが休める時間や場所を、意識して確保しておくこと。
- 子の将来について、相談先と一緒に見通しを立てておくこと。
親御さんが休むための手配については【親子問題】子の問題で親自身が限界|親が先に休むための手配、親亡き後を見据えた備えについては【親子問題】親が亡くなった後に子が孤立する|備えとして何ができるかで取り上げています。
弁護士に相談するという選択
近所づきあいを避けるようになった背景に、子からの暴力やお金の無心がある場合には、弁護士が親御さんの代理人として子との窓口になる方法もあります。親御さんが子と直接向き合い続ける負担を減らせれば、その分、親御さんが外とのつながりを取り戻す余裕も生まれやすくなります。
弁護士には守秘義務があり、ご相談いただいた内容を、ご本人の了解なくご近所や子に伝えることはありません。窓口を代えるという考え方については【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択、相談内容の扱いについては【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で説明しています。
当事務所では、弁護士と自立支援カウンセラーがチームを組み、弁護士が親御さんの保護を、カウンセラーが子の生活面の支援を担う形で、親子それぞれの自立に向けた取り組みを行っています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
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まとめ
子の問題で近所づきあいを避けるようになるのは、家族を守ろうとする自然な反応です。大切なのは、近所づきあいを無理に元に戻すことではなく、ご近所とは話す範囲を決めて最低限の関係を保ちつつ、家族会や公的な窓口、専門家といった別のつながりを家の外に持っておくことです。親御さんが孤立しないことは、親御さん自身の安全を守り、子が社会とつながる道を残すことにもつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


