【親子問題】連絡が取れない成人の子の居場所を、親は調べられる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

成人した子と急に連絡が取れなくなった、引っ越し先を教えてもらえない、電話にも出ない。そうした状況が続くと、親としては「せめてどこに住んでいるのかだけでも知りたい」と考えるのは自然なことです。一方で、成人した子には自分の住まいを誰に知らせるかを決める自由があり、親であっても調べられる範囲には限りがあります。この記事では、親が使える公的な手段とその限界、調べること自体が問題になりやすい場面、そして居場所が分からないままでも連絡の道を残す方法を整理します。

この記事は、2026年10月時点の住民基本台帳法の運用や各自治体の案内をもとにしています。証明書の請求に必要な書類や扱いは自治体ごとに異なる部分があるため、実際に請求する際は窓口でご確認ください。


親が使える公的な手段と、その限界


戸籍の附票は、親から請求できる

戸籍の附票は、その戸籍に記録されている人の住所の移り変わりを記録した証明書です。各自治体の案内では、請求できる人として、附票に記載されている本人のほか、その配偶者や直系尊属(父母・祖父母など)、直系卑属(子・孫など)が挙げられています。親は直系尊属にあたるため、子が結婚などで親とは別の戸籍に移っていても、原則として子の戸籍の附票を請求できます。

 ただし、請求先は子の本籍地の市区町村で、本籍と筆頭者を把握しておく必要があります。また、附票に記録されるのは住民登録をした住所です。住民票を移さないまま別の場所で暮らしている場合や、友人宅・交際相手の家に身を寄せている場合には、附票の住所と実際の居場所が一致しないことがあります。

住民票の写しは、別世帯の親には取りにくい

住民票の写しを請求できるのは、原則として本人と、同じ世帯に属する人です。子が独立して別の世帯になっている場合、親は「第三者」としての請求になり、自分の権利を行使するために必要であるなど、正当な理由を示すことが求められます。「心配だから」「会いたいから」という理由だけでは、交付を受けるのは難しいのが実際です。

 親が取れる手段を整理すると、次のようになります。

手段親からの請求注意点
戸籍の附票の写し原則として請求できる(直系尊属として)本籍の把握が必要。住民登録上の住所しか分からない
住民票の写し(別世帯の子)正当な理由が必要心配・面会の希望だけでは理由として認められにくい
子がDV等支援措置を受けている場合親が相手方とされていれば交付されない請求しても住所は分からない


子が「DV等支援措置」を受けている場合

住民基本台帳には、DVやストーカー行為、児童虐待、それらに準ずる行為の被害を申し出た人について、相手方からの住民票の写しや戸籍の附票の写しの請求を制限する「DV等支援措置」という仕組みがあります。支援の必要性は、警察や相談機関の意見などを踏まえて市区町村が確認します。

 この措置は配偶者間に限られず、親子の間で使われることもあります。親が相手方とされている場合、窓口で請求しても住所が記載された証明書は交付されません。

 窓口で交付を断られたときは、制度の仕組みとして住所を明かさないことになっている可能性があります。子が何らかの理由で親に住所を知られたくないと考え、行政に申し出ているという状況でもあるため、別の手段で住所を探り出そうとするより、まずはその事情を受け止めることが大切です。

弁護士や探偵に頼めば調べてもらえるのか


弁護士の「職務上請求」には条件がある

弁護士は、受任した事件の処理に必要な範囲で、住民票の写しや戸籍の附票などを取り寄せることができます(いわゆる職務上請求)。もっとも、これはあくまで依頼を受けた事件のために認められた手段です。「居場所を知りたい」「会いに行きたい」という目的だけで使うことはできません。

 たとえば、子に貸したお金の返還を求める、親の財産をめぐる手続を進めるなど、法的な手続の前提として相手の住所が必要になる場面であれば、その手続に必要な範囲で住所を調べることがあります。この場合も、判明した住所は手続のために使うものであり、親が自由に訪ねてよいという意味にはなりません。また、自治体によっては、代理人や第三者が住民票などを取得したことを本人に知らせる「本人通知制度」があり、取得の事実が子に伝わることもあります。

探偵による調査

探偵業者に所在調査を依頼する方法もあります。ただ、探偵業法により、業者は契約の際に調査結果の利用目的を確認することとされ、犯罪行為や違法な差別的扱いに使われると知ったときは調査結果を提供してはならないとされています。調査で住所が分かったとしても、その後の接し方によっては、親子関係がさらにこじれるおそれがあります。

調べること自体が問題になりやすい場面

居場所を知りたい気持ちが強いあまり、次のような行動に踏み込んでしまうと、法的な責任を問われたり、子との関係が決定的に悪化したりするおそれがあります。

  • 子のスマートフォンやSNS、メールのアカウントに、子の承諾なくログインする。
  • 子の持ち物や車に、無断で位置情報を把握する機器を取り付ける。
  • 子になりすましたり、偽りの理由を書いたりして、住民票などを請求する。
  • 勤務先や友人に繰り返し問い合わせ、居場所を聞き出そうとする。
  • 判明した住所に、予告なく何度も訪ねる。


 他人のアカウントへの無断ログインは不正アクセス禁止法に触れるおそれがあり、偽りの手段で住民票などの交付を受けることは住民基本台帳法の罰則の対象になります。また、勤務先への度重なる問い合わせや自宅への訪問が続けば、子が警察に相談し、先に述べたDV等支援措置などにつながることもあります。そうなると、親子の連絡はかえって取りにくくなります。

 弁護士ドットコムに寄せられた、実家を出た20代の娘の住所を知りたいという母親の相談に対し、回答した弁護士は、子の側に住所を知られたくない事情があることを認識する必要があり、連絡自体が取れているなら緊急時にはその手段を使えばよい、という趣旨の見方を示しています。居場所を調べる前に、なぜ子が住所を伝えていないのかを考えてみることが、遠回りに見えて実は近道になる場合があります。

「居場所」より先に確かめたいこと


連絡が途絶えているのは、親との間だけか

子が仕事に通い、きょうだいや友人とはやり取りをしている様子があるなら、生活は続いていると考えられます。親との連絡だけが途絶えている場合は、所在の調査よりも、関係の距離をどう取り直すかが課題になります。安否確認の進め方については、【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」で詳しく解説しています。

命や安全に関わるおそれがあるか

誰とも連絡がつかない、自殺をほのめかす言葉を残していた、持病の薬を持たずに出ていったなど、命や身体の安全が心配される事情がある場合は、居場所を調べるより先に、警察に行方不明者届を出すことを検討してください。警察は届出を受けて発見活動を行いますが、成人が自分の意思で家を離れている場合には、見つかっても本人が望まなければ、親に所在までは伝えられないことがあります。それでも、無事であることが分かるだけで、親の対応は大きく変わります。

居場所を知って、何をしたいのか

目的によって、取るべき手段は変わります。

知りたい理由考えられる手段
無事かどうかを知りたい知っている連絡手段での短い連絡、きょうだい等を通じた確認、緊急性があれば行方不明者届
親の病気や相続など、伝えたいことがある手紙や伝言、弁護士を窓口にした連絡
貸したお金の返還など、法的な請求がある弁護士に依頼し、手続に必要な範囲で住所を確認する
家に戻ってきてほしい、会いたいまず連絡の道を作ることを優先し、住所の特定は急がない


居場所が分からないまま、連絡の道を残す方法

住所が分からなくても、子との接点を保つ方法はあります。

  1. 知っている電話番号やメッセージに、返事を求めない短い連絡を送る(「元気でいてくれればいい」「困ったときは連絡してほしい」など)。
  2. 子が連絡を取っているきょうだいや親族に、伝言だけを頼む(居場所を聞き出す役目は負わせない)。
  3. 弁護士を窓口にして、子が住所を明かさないまま返事をできる連絡先を用意する。
  4. 伝えておきたいことを手紙にまとめ、受け取ってもらえる経路が見つかったときに渡せるようにしておく。


 弁護士が窓口になると、子は親と直接やり取りをせずに、弁護士を通じて意思を伝えることができます。親と直接やり取りをしたくないという子にとっても、住まいを知られる心配がなく、返事をする心理的な負担が軽くなることがあります。弁護士から子に連絡するときの考え方は、【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで、相談内容の扱いについては【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で解説しています。

 また、親自身の高齢や病気が気がかりで、いずれ子に伝えなければならないことがある場合は、居場所が分からないままでも、遺言や財産の管理方法を整えておくことができます。【親子問題】親亡き後問題|子の生活をどう設計しておくかもあわせてご覧ください。

よくあるご質問


子の勤務先は分かっています。会社に住所を教えてもらえますか

多くの会社は、従業員の個人情報を本人の同意なく第三者に伝えることはしません。親からの問い合わせであっても、住所を答えてもらえることは通常ないと考えておくのがよいでしょう。問い合わせが繰り返されると、子の職場での立場に影響するおそれもあります。

戸籍の附票で分かった住所に、手紙を送ってもいいですか

法律上、附票を正当に取得したこと自体に問題はありません。ただ、住所を伝えていなかった子にとっては、親から届いた手紙が「住所を調べられた」という驚きにつながることもあります。送る場合は、一度に短く、返事を求めない内容にとどめ、訪問は控えるのが穏当です。子がDV等支援措置を受けていて附票が交付されなかった場合は、別の方法で住所を探すことは避けてください。

親の扶養が必要になったとき、子の住所が分からないと困りませんか

扶養を求める調停などの手続を取る場合には、相手の住所が必要になり、その手続のために弁護士が住所を確認することがあります。ただし、成人した子と親との扶養の関係には限りがあり、手続を取るかどうかは慎重な判断が必要です。成人した子との関係で親ができることの全体像は、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。

まとめ


  • 親は直系尊属として、原則として子の戸籍の附票を請求できますが、分かるのは住民登録上の住所です。
  • 別世帯の子の住民票は、正当な理由がなければ親でも取得しにくいのが実際です。
  • 子がDV等支援措置を受けている場合、親が相手方であれば証明書は交付されません。
  • 弁護士の職務上請求は、受任した法的な手続に必要な範囲に限られます。
  • 命や安全が心配される事情があれば、居場所を調べる前に行方不明者届を検討します。
  • 居場所が分からなくても、返事を求めない連絡や弁護士を窓口にした連絡で、接点を残すことはできます。


 成人した子の居場所が分からない状況は、親にとって大きな不安です。ただ、住所を突き止めることが、関係の回復につながるとは限りません。何のために居場所を知りたいのかを整理し、子が応じやすい形で連絡の道を残すことが、結果として再びつながるきっかけになることもあります。当事務所では、親の代理人として、子との連絡の窓口を担うご相談もお受けしています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【親子問題】連絡が取れない成人の子の居場所を、親は調べられる?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼