【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続
成人した子に家を出て独立してほしいと考えたとき、まず家族で話し合おうと考える方は多いと思います。そのときに迷いやすいのが、「最初から本人を同席させるべきか、それとも家族だけで先に話すべきか」という点です。本人抜きで決めるのは不公平にも思える一方で、本人がいる場では親の本音を出しにくいこともあります。この記事では、法律の考え方と実際の進め方の両面から、同席の判断と話し合いの組み立て方を整理します。
この記事は、18歳以上の成人した子と同居している、または同居していた家庭を想定しています。家庭内で暴力が起きている場合や、身の危険を感じる場合は、話し合いよりも安全の確保を優先してください。
「最初から同席」より「段階を分ける」ほうが進めやすいことが多い
同席させるかどうかは、二者択一で考えるよりも、話し合いをいくつかの段階に分けて、段階ごとに顔ぶれを変えると考えるほうが整理しやすくなります。家族の考えがまとまらないまま本人を交えると、親どうしの意見の違いが本人の前で表に出て、話が独立から家族間の言い争いにそれてしまうことがあるためです。
| 段階 | 主な参加者 | この段階で扱うこと |
|---|---|---|
| 1.方針をそろえる | 親(両親)、必要に応じてきょうだい | 独立を目指すかどうか、援助の範囲、本人が拒んだときの対応 |
| 2.本人に伝える | 話す役の親と本人(少人数) | 家族として独立を望んでいること、その理由、支える用意があること |
| 3.条件を詰める | 本人と親、必要に応じて第三者 | 時期、住まい、援助の金額と期間、独立後の連絡の取り方 |
本人を同席させるのは主に第2段階以降で、第1段階は本人のいない場で行うのが一般的な進め方です。ただし、これは本人を話し合いから外すという意味ではありません。家族の側で考えを固めてから伝えることで、本人に対して一貫した説明ができるようにするための準備です。
本人のいない場で話し合うことは、問題にならないのか
家族会議に成人した子を参加させなければならない、という法律上の決まりはありません。親が家族だけで方針を相談すること自体が、何かの違反になるわけではありません。
一方で、家族会議で決めたことを本人に一方的に従わせられるかというと、そうではない点に注意が必要です。子が18歳以上であれば、どこに住むか、どんな仕事に就くかは基本的に本人が決めることになります。親権に含まれる居所の指定(民法822条)は未成年の子に対するものであり、成人した子には及びません。
そこで役に立つのが、「親が決められること」と「本人が決めること」を分けて考える視点です。
- 親が決められること=親の家をどう使ってもらうか、親が出す援助の金額と期間、親自身の生活をどう守るか。
- 本人が決めること=どこに住むか、どんな仕事に就くか、どのような生活を送るか。
家族会議で本人抜きに決めてよいのは、前者の「親が決められること」です。後者については、家族の希望として伝え、本人と話し合って決めていくことになります。
なお、親の家に無償で住んでいる成人の子との関係は、法律上は使用貸借(民法593条)として扱われることが多いとされています。弁護士ドットコムに寄せられた相談への回答でも、法的な手続を考える前に、まず家賃や生活費の分担について話し合うことが勧められており、親子間で使用貸借の解除が認められるのは簡単ではないと指摘されています。話し合いを丁寧に重ねることは、後に別の手段を検討する場合にも意味を持ちます。退去を求める手続の考え方は、【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで解説しています。
本人を同席させたほうがよい場面・控えたほうがよい場面
同席させたほうがよい場面
本人と普段から会話ができていて、暴力や威圧的な言動がない場合は、早い段階から本人を交えるほうが話が進みやすいことがあります。本人自身も「いつかは家を出たい」と考えているケースは少なくありません。当事務所がこれまで関わってきた家庭でも、話をよく聞いてみると、家にとどまり続けたいと考えている子は思いのほか少ないという印象があります。
住まいの条件や援助の期間を本人と一緒に決めると、本人が「自分で選んだ」と受け止めやすくなり、その後の取り決めが守られやすくなる面もあります。
同席を控えたほうがよい場面
次のような事情がある場合は、本人を最初から同席させることは慎重に考えたほうがよいでしょう。
- 本人が家族に暴力をふるったり、物を壊したりしたことがある。
- 両親の間で、独立を求めるかどうかの考えが割れている。
- 家族の誰かが感情的になりやすく、責める言葉が出てしまいそう。
- 本人が強い不安や混乱を抱えていて、医療機関での相談が先に必要に見える。
暴力の心配がある場合は、家族会議という形にこだわらず、安全を確保する方法や第三者を入れる方法を先に検討してください。暴力がある場合の初動は、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で整理しています。また、両親の考えが割れている場合の進め方は、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときもあわせてご覧ください。
本人のいない場で、家族が先に決めておきたいこと
第1段階では、次の点をできるだけ具体的に話し合っておくと、本人と向き合ったときに説明がぶれにくくなります。
- 独立を目指す時期の目安(「いずれ」ではなく、おおよその月や季節)。
- 親が出せる援助の内容と上限(初期費用、家賃の補助、生活費など)と、その期間。
- 独立までの間、家にいる場合の約束事(生活費の分担、家事、生活時間など)。
- 本人に伝える役を誰が担うか、ほかの家族はどう関わるか。
- 本人が話し合いを拒んだり、強く反発したりしたときに次に何をするか。
- 家族が身の危険を感じたときの連絡先と避難先。
特に援助の上限と期間は、決めないまま本人と話し始めると、その場の雰囲気で約束が広がってしまいがちです。親の老後の生活を守る観点からも、先に家族の間で線を引いておくことをおすすめします。援助の考え方は、【親子問題】独立した子の家賃を払い続けている|いつまで払うのかも参考になります。
きょうだいや親戚が意見を持っている場合もありますが、話し合いに加わる人を増やしすぎると、本人にとっては大勢に責められているように感じられることがあります。親戚から意見が寄せられる場合の対応は、【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方で解説しています。
本人を交えて話す場をどう整えるか
人数は少なく、話す人を決めておく
本人を交える場では、家族全員がそろうよりも、話す役の親と本人の少人数のほうが落ち着いて話しやすいことが多いです。複数の家族が交互に意見を述べると、本人には一方的に詰め寄られているように映り、反発を招きやすくなります。
責める言葉ではなく、家族の考えとして伝える
群馬県がひきこもりの家族向けにまとめた資料では、親が叱咤激励すると本人がかえって閉じこもってしまうことがあり、家族が本人を責めずに伝えられるようになると反発が和らぎ、対話ができるようになっていくと説明されています。「いつまで家にいるつもりか」と問い詰めるよりも、「家族として、あなたが自分の生活を築くことを応援したい」「そのために親が出せる援助はここまで」と、家族の考えと支える用意を伝えるほうが、話し合いが続きやすくなります。
1回で決めきろうとしない
最初の話し合いは、家族の考えを伝え、本人の受け止めを聞くところまでで十分です。その場で時期や条件まで決めようとすると、本人が追い詰められたと感じ、話し合いそのものを拒むようになることがあります。日を改めて続きを話す前提で、次に話す日の目安だけ決めておくとよいでしょう。
決まったことは書き残す
話し合いで合意できた点は、日付と内容をメモに残しておくと、後になって「そんな約束はしていない」という食い違いを減らせます。援助の金額や時期など大切な取り決めは、書面にしておくことも考えられます。書面の意味と限界は、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で解説しています。
家族だけの話し合いが行き詰まったときの第三者の入れ方
親子の間だけで話そうとすると、過去のいきさつや感情が先に立ち、話が進まなくなることがあります。そのようなときは、第三者に入ってもらうことも選択肢になります。
| 第三者 | 主な役割 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 支援者・カウンセラー | 本人の話を聞き、住まい探しや仕事探しなど生活面を支える | 本人が家族とは話しにくいが、第三者となら話せる |
| 弁護士 | 親の代理人として本人と話し、親への要求や金銭の問題に対応する | 暴力や金銭の要求があり、親が直接対応するのが難しい |
| 家庭裁判所の調停 | 調停委員を交えて親族間の話し合いを進める | 当事者だけでは話し合いの場を持てない |
当事務所では、弁護士が親の代理人として本人と向き合い、民間の自立支援カウンセラーが本人の生活面を支えるという役割分担で、子の独立に取り組んでいます。家族会議で本人を同席させるかどうかに迷う段階でも、第三者が加わる形を前提に、最初の話し合いの組み立てから一緒に考えることができます。詳しくは、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応と【親子問題】子がいる前で弁護士と話すべきか|面談の場の設計をご覧ください。
独立した後のことも、早めに話題にしておく
家族会議では「いつ家を出るか」に話が集中しがちですが、独立した後の関わり方も早めに話題にしておくと、本人の不安を和らげることにつながります。仕送りを続けるのか、いつまで続けるのか、連絡はどのくらいの頻度で取るのかといった点です。
独立後の連絡が途絶えた場合の考え方は【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」で、独立に向けた具体的な流れは【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順で解説しています。
よくあるご質問
本人が家族会議への参加を拒んだら、どうすればよいですか
参加を無理に求めると、かえって関係がこじれることがあります。まずは家族の側で方針を固め、手紙やメッセージで家族の考えを伝える、第三者を通じて話を聞いてもらうなど、別の伝え方を検討してください。本人が相談を拒む場合の進め方は、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で解説しています。
本人のいない場で決めたことを、後から伝えると反発されませんか
反発が出ることはありますが、伝え方で和らげられる部分もあります。「家族だけで決めた」と結論を突きつけるのではなく、「家族としてはこう考えている。あなたの考えも聞きたい」と、本人が意見を述べる余地を残して伝えることが大切です。
話し合いの最中に本人が興奮して暴れそうになったら、どうすればよいですか
話し合いはその場で打ち切り、身の安全を優先してください。危険を感じるときは、ためらわずに警察に連絡することも考えてください。判断の目安は、【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで整理しています。
まとめ
- 子を家族会議に同席させるかどうかは、二者択一ではなく、段階に分けて考えると整理しやすくなります。
- 本人のいない場で家族の方針、特に援助の上限と期間をそろえておくことが大切です。
- 成人した子の住まいや仕事は本人が決めることであり、家族が決められるのは親の家の使い方や援助の範囲です。
- 暴力の心配がある場合や、家族だけでは話が進まない場合は、第三者を入れる方法を検討してください。
子の独立をめぐる話し合いは、家族の事情によって適した進め方が大きく異なります。本人を交えるタイミングや、誰がどのように伝えるかで迷われている段階でも、ご事情をうかがったうえで、話し合いの組み立てから一緒に考えていくことができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


