【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

SNSやマッチングアプリで知り合った相手に、子が繰り返しお金を送っている。家族が「おかしいのではないか」と伝えても、子は「本当に好きな人だ」「必ず戻ってくるお金だ」と言って聞き入れない。こうした状況に置かれた親御さんに向けて、本記事では、SNS型ロマンス詐欺や投資勧誘の構造と、送金がやめられなくなる理由、そして親として取れる手立てとその限界を整理します。

本記事は、2026年9月時点の法令と、警察庁・金融庁の公表資料に基づいて作成しています。


SNS型ロマンス詐欺の現状|被害は若い世代に限られない

 警察庁の確定値によると、令和7年のSNS型ロマンス詐欺は、認知件数・被害額ともに前年より増えています。同じ年のSNS型投資詐欺も、認知件数9,523件、被害額1,288.0億円と増加しました。

項目令和7年のSNS型ロマンス詐欺
認知件数5,645件(前年比47.6%増)
被害額546.4億円(前年比36.3%増)
被害者の年齢層男女とも40代から60代が多数
最初の接触に使われたツールマッチングアプリ32.7%、Instagram22.8%、Facebook18.6%
被害時の連絡ツールLINEが93.8%
実質的に暗号資産で渡した割合認知件数の40.4%


 出典は、警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」です。「子どもがだまされている」と聞くと若者を思い浮かべがちですが、統計上は働き盛りから中高年の被害が中心です。親子の問題としては、同居する中年の子が、親に知られないまま貯蓄や借入れを送金に回しているという場面も考えられます。

送金が「やめられない」のはなぜか

 家族から見ると不可解でも、本人の中では送金を続ける理由が一貫していることが少なくありません。手口の多くは、次のような流れをたどります。

時間をかけて関係をつくり、外の意見を遠ざける

 警察庁は、SNS型ロマンス詐欺を、SNSなどを通じて対面しないまま交信を重ね、恋愛感情や親近感を抱かせて金銭をだまし取る詐欺と位置づけています。最初はお金の話をせず、毎日の連絡で信頼を積み上げます。やり取りはLINEなど外から見えない場に移され、「家族には理解されない」「二人だけの秘密にしよう」といった言葉で、周囲の意見が届きにくい状態がつくられていきます。

「投資」「手数料」という名目で送金が重なる

 要求は「二人の将来のため」「会いに行くための旅費」「荷物の手数料」といった名目で始まり、投資サイトへ誘導される例も目立ちます。サイト上では利益が出ているように表示され、引き出そうとすると「出金手数料」「税金」などの名目で追加の入金を求められる、という形で送金が続いていきます。

取り戻したい気持ちが、次の送金を生む

 すでに大きな金額を送っていると、「ここでやめたらすべて失う」「あと一回払えば戻ってくる」という心理が働きます。詐欺だと認めることは、自分の判断や相手への気持ちを否定することにもなるため、本人ほど認めにくいという事情もあります。家族が強く否定するほど、本人が相手の側に寄っていくことがあるのはこのためです。

脅されて送っている場合もある

 恋愛感情ではなく、やり取りの中で送った画像や個人情報をもとに「拡散されたくなければ払え」と求められ、送金をやめられなくなっている場合もあります。この場合は恐喝などの被害として扱われる可能性があり、対応の組み立てが変わります。どのような罪にあたり得るかはSNSでの脅迫・晒しはどの罪になるかで解説しています。

親はどこまで止められるのか

 前提として、成人した子の預貯金や給与は子自身の財産です。成年年齢は18歳であり、18歳以上の子が自分のお金を誰に送るかについて、親が法的に差し止める権限は原則としてありません。子の口座を親の判断で止めることも、子の同意なくお金を引き出して預かることもできません。

 子が18歳未満であれば、親は親権者として子の財産を管理する立場にあり(民法824条)、親の同意を得ずにした契約を取り消せる場合もある(民法5条2項)など、関与できる範囲は成人の場合より広くなります。

 成年後見制度(後見・保佐・補助)は、病気や障害などによって判断能力が十分でない方を支える制度であり、だまされて送金を続けているという事情だけで利用できるものではありません。補助の開始には本人の同意も必要です(民法15条2項)。親が法的に介入できる範囲については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲でも整理しています。

 子が「送金するお金を貸してほしい」と親に求めてくることもあります。成人した子の送金資金を親が用立てる義務はなく、断ることは法的に問題ありません。扶養義務との関係は【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかをご覧ください。また、子が自分の名義で借りたお金を、親が代わりに返す義務も原則としてありません。この点は【不当要求対応】同居していない家族の名義で請求が来た|誰の債務なのかで解説しています。

家族が最初に取り組みたいこと

 法的に止める手段が限られるからこそ、家族の動き方が大切になります。まずは次のことから始めてみてください。

  1. 「だまされている」と断定せず、「心配している」「一緒に確かめたい」という姿勢で話を始めること。
  2. 送った日付・金額・振込先の金融機関と口座名義・相手のアカウント名を、分かる範囲で控えておくこと。
  3. やり取りの画面は、本人の了解を得たうえで撮影して残しておくこと。
  4. 警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署に、家族として状況を相談すること。
  5. 振込先が分かっている場合は、振込先の金融機関にも連絡すること。
  6. 「実際に会うまでは送金しない」「送る前に一度家族に話す」といった約束を本人と交わすこと。


 本人の同意がないまま家族が相手に連絡したり、子のスマートフォンを無断で見たりすると、子が心を閉ざし、相手への依存が深まるおそれがあります。相手に「家族に気づかれた」と伝わることで、送金の催促が急に強まることもあります。関係をすぐに断たせることにこだわるよりも、送金の前に立ち止まる条件を本人と共有するほうが、受け入れられやすい場合があります。

送ったお金は戻るのか|振り込め詐欺救済法の範囲

 預金口座への振込みでお金を送っていた場合、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)により、振込先の口座に残っているお金から分配金が支払われる可能性があります。金融庁は、SNS型投資・ロマンス詐欺も、預金口座等への振込みによって被害にあった場合は対象になると案内しています。

送金の方法振り込め詐欺救済法との関係
預金口座への振込み対象になり得る。ただし犯人が引き出した後は支払を受けられない
暗号資産の送信・電子マネー・現金の手渡しこの法律の対象外。刑事手続や民事上の請求を別に検討することになる


 分配金は口座の残高を原資とするため、他の被害者がいれば按分となり、全額が戻るとは限りません。金融庁は、支払を受けるまでには少なくとも半年以上かかるのが一般的としています。申請は被害者本人か代理人が行う手続であり、実際には子の協力が欠かせません。被害回復の見通しについては国際ロマンス詐欺で送金してしまった|被害回復の可能性と限界で詳しく解説しています。

あわせて気をつけたい二つの危険


「取り戻せる」とうたう相談先による二次被害

 神奈川県弁護士会などは、ロマンス詐欺・投資詐欺では相手の特定や資金の追跡が難しく、被害回復が困難な場合が多いとして、依頼時の二次被害に注意を呼びかけています。回収が容易であるかのような広告を見て高額な着手金を払ったものの、回収につながらなかったという例も報じられています。依頼先を選ぶ際の目安はロマンス詐欺の「二次被害」に注意|高額着手金を謳う相談先の見分け方をご覧ください。

子が「受け取り役」にされるおそれ

 やり取りが続く中で、「あなたの口座でお金を受け取って、指定先に送ってほしい」「新しい口座を作ってカードを預けてほしい」と頼まれることがあります。応じると、子自身が詐欺に加担した側として捜査の対象になるおそれがあります。口座やキャッシュカードを他人に渡すこと自体も、犯罪収益移転防止法で禁じられています。詳しくは「口座を売っただけ」「名義を貸しただけ」は軽いのかで解説しています。

弁護士が関わることで変わること

 当事務所は、親子の問題について親御さんの代理人として関わっています。この種のご相談では、だまし取られたお金の回収だけを目標にすると、費用に見合う結果にならないことも少なくありません。そこで、次の点を重視して対応を組み立てます。

  • これ以上の送金を防ぐため、家族の中での話し合いの進め方や、警察・金融機関へ相談する順序を一緒に整理します。
  • 子が送金の資金を親に求めてくる場合は、弁護士が親の窓口となり、応じないという方針を子に伝えます。
  • 回収の見込みがある部分とない部分を切り分け、費用をかけるべきかどうかを率直にお伝えします。
  • 生活の立て直しが必要な場合は、提携する自立支援カウンセラーと連携し、仕事や住まい、日々の金銭管理の支援につなげます。


 窓口を弁護士に移すことの意味は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で、相談の前にまとめておきたい事柄は【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報で解説しています。

よくあるご質問


子が詐欺だと認めない場合でも、親だけで警察に相談できますか

 家族として警察に相談すること自体はできます。ただし、被害届の提出や分配金の申請などは、送金した本人の協力がなければ進めにくい手続です。まずは家族の側で状況と記録を整理し、本人が相談に向かえる時機を見計らうことが現実的です。

相談したことは子に知られてしまいますか

 弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容をご相談者の了解なく子に伝えることはありません。連絡の取り方も含めて、【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で解説しています。

子が親のお金を持ち出して送金していた場合はどうなりますか

 子が親の財産を無断で持ち出した場合、窃盗などにあたる行為であっても、刑法244条(親族相盗例)により刑が免除される場合があります。刑事手続での解決が難しい一方で、民事上の返還請求の余地は残ります。詳しくは同居の家族の物を持ち出した|親族相盗例で処罰されない範囲をご覧ください。

 子がSNSの相手に送金を続けているとき、親が法的に止められる範囲は限られています。それでも、記録を残し、相談先を押さえ、子が引き返せる余地を家族が残しておくことで、被害の広がりを抑えられることがあります。一人で抱え込まず、状況を整理するところから始めてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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