【親子問題】親が入院中に、子が家で何をしているか分からないときは?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

親が入院すると、家に残った成人の子が日中どのように過ごしているのか、家に置いてきた通帳や親宛ての郵便物がどう扱われているのかが、親の側からは見えにくくなります。もともと子との関係に心配ごとがあったご家庭では、病室にいながら「家で何が起きているのか分からない」という不安が大きくなりやすいものです。

この記事は、成人した子と同居している親が入院し、子が家に残っている場面を想定しています。入院の期間、子の状況、親の体調や判断能力の状態によって取れる手段は変わります。


 この記事では、入院中の親が抱えやすい不安を「お金と財産」「家と近隣」「子の安否」に分けて整理し、入院中でも親ができることと、その限界を説明します。

入院中の親が抱えやすい不安

 入院中の親御さんが抱く不安には、たとえば次のようなものがあります。

  • 通帳やキャッシュカードを家に置いたまま入院してしまった。
  • 子が家に知らない人を入れていないか気になる。
  • 親宛ての郵便物を子が開けているかもしれない。
  • 食事をとっているか、火の始末ができているか分からない。
  • 退院して家に戻ったときに、家の中がどうなっているか心配だ。


 こうした不安は一度に押し寄せてきますが、中身を分けてみると、入院中でも手を打てるものと、退院してから確かめるしかないものがあります。まずは、病室からでも確かめられることから見ていきます。

入院中に確かめておきたい3つのこと

 入院が決まった時点、あるいは入院後のなるべく早い段階で次の点を確かめておくと、その後の不安を小さくしやすくなります。

通帳・カード・実印・権利証の置き場所

 まず、通帳、キャッシュカード、クレジットカード、実印、印鑑登録証、不動産の権利証(登記識別情報)がどこにあるかを思い出し、書き出しておきます。暗証番号を書いたメモが一緒に保管されていないかも確かめたい点です。

 病院では貴重品の持ち込みを控えるよう案内されることが多いため、家に置いてきた貴重品が気になる場合は、信頼できる親族に預かってもらう、金融機関の貸金庫を利用するといった方法が考えられます。

家の鍵を持っている人

 家の鍵を誰が持っているかも整理しておきます。子のほかに、子の交際相手や友人に合鍵が渡っていることもあります。

 ただし、子が住んでいる状態で親の判断だけで鍵を替えたり、子を締め出したりすることは、自力救済として問題になるおそれがあります。鍵の扱いについては、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界で詳しく説明しています。

親宛ての郵便物と毎月の支払い

 金融機関や保険会社、役所からの通知は親宛てに届きます。子がこれを開けたり処分したりしていると、親が大切な連絡を見落とすおそれがあります。親族に郵便物の確認を頼む、金融機関などに連絡先の変更を相談するといった方法を検討します。

 なお、正当な理由なく他人宛ての封書を開ける行為は、家族の間であっても信書開封罪(刑法133条)にあたる可能性があります。もっとも、家族間の出来事について刑事手続で解決を図るのが適切かどうかは慎重に考える必要があり、まずは郵便物が子の手に渡らない工夫を優先するのが現実的です。

 あわせて、公共料金、固定資産税、保険料などの引落し口座の残高も確かめておくと、入院中に支払いが滞る事態を防ぎやすくなります。

お金と財産について知っておきたいこと

 入院中の親がもっとも気にかけやすいのが、お金と財産のことです。

子が親の預金を引き出していた場合

 親の承諾なく子が預金を引き出して自分のために使っていた場合、民事上は、不当利得や不法行為として返還を求めることが考えられます。実際の場面では、親の承諾があったのか、親のために使われたお金なのかが争点になりやすいため、通帳の記帳や取引履歴の取り寄せで、いつ、いくら動いたかを把握しておくことが出発点になります。

 一方、刑事の面では、親子のような直系血族の間で起きた窃盗や詐欺、横領などについては、刑が免除される特例があります(刑法244条1項、251条、255条)。引き出しの方法などによって扱いが変わる場合もありますが、警察に相談しても処罰には至らない場面があることは、知っておいたほうがよいでしょう。

 詳しくは【親子問題】親の預貯金を勝手に引き出された|刑事と民事の分かれ道をご覧ください。

親のカードや通販アカウントが使われていた場合

 親のクレジットカードや通販サイトのアカウントを子が使っていた場合は、カード会社やサイトの運営会社に連絡して、利用状況の確認と利用停止を相談します。家族による利用は、カード会社の規約上、補償の対象外とされていることが多いため、早めに止めることが大切になります。

 ただし、子が日々の食費をそのカードでまかなっていた場合、急に止めると子の生活が立ち行かなくなることもあります。止めるときは、入院中の生活費をどのような形で渡すかもあわせて決めておくと、子との衝突を避けやすくなります。

実印や権利証が持ち出されていた場合

 実印や権利証が持ち出されていると、親の名義で契約が結ばれたり、不動産の登記に使われたりするおそれがあります。印鑑登録の廃止や、法務局への不正登記防止の申出といった手続が考えられます。入院中でも、自治体や法務局の取扱いによっては代理人による手続ができる場合があります。

 親の名義で契約されてしまった場合の考え方は、【親子問題】子が親名義で契約した|追認しないという選択で説明しています。

 入院中にできることを整理すると、次のようになります。

気になること入院中に検討できること
通帳・キャッシュカード金融機関に連絡して、利用停止や再発行を相談する
クレジットカード・通販利用状況を確かめ、カード会社や運営会社に利用停止を相談する
実印・権利証所在を確かめ、印鑑登録の廃止や不正登記防止の申出を検討する
郵便物親族に確認を頼む、金融機関などに連絡先の変更を相談する
毎月の引落し残高と引落し予定を確かめ、滞納を防ぐ


家の中や近隣のことが気になるとき

 家が親の名義であれば、親は所有者として家の使い方に意見を言える立場にあります。子の交際相手や知人が居着いている場合には、親から退去を求めることも考えられます。この点は【親子問題】子の交際相手が家に居着いている|第三者を家から出すで取り上げています。

 一方で、子の様子を知りたいからといって、子の部屋に無断で立ち入ったり、子に知らせずに家の中にカメラを設置したりすると、子のプライバシーとの関係で新たな対立を招くおそれがあります。親族に様子を見に行ってもらう場合も、事前に子へ伝え、日時を決めて訪ねるほうが、子の反発を招きにくくなります。

 近所から苦情が寄せられている場合は、誰からどのような内容の連絡があったかを記録しておくと、後で対応を考える際の材料になります。

子と連絡がつかず、様子が分からないとき

 子と連絡がとれず安否が気になるときは、次のような順序で確かめていくことが考えられます。

  1. 電話やメッセージで、短く用件を伝えて連絡を試みる。
  2. 親族やきょうだいに、家の様子を見に行ってもらう。
  3. 数日たっても連絡がつかず心配な場合は、最寄りの警察署に安否確認を相談する。


 子が家の中で暴れている、物を壊しているといった連絡が近所や親族から入った場合など、身体や生命に危険が及ぶおそれがあるときは、ためらわずに110番通報を検討してください。安否確認の考え方については、【親子問題】子が自室から出てこない|安否確認はどこまで許されるかもあわせてご覧ください。

 反対に、心配のあまり頻繁に電話をかけ続けると、子が連絡そのものを避けるようになることもあります。連絡の頻度や時間帯をあらかじめ決めておくと、親子双方の負担を抑えやすくなります。

 また、入院先の病院には医療ソーシャルワーカーが置かれていることが多く、家に残る家族のことも含めて相談できる場合があります。子がひきこもりの状態にある場合は、自治体のひきこもり地域支援センターなどの窓口も選択肢になります。

入院を、退院後の暮らしを考える機会にする

 親の入院は、親子が物理的に離れて暮らす期間でもあります。この期間に家の中のお金の流れや子の生活ぶりが見えてくることで、退院後も同じ形で同居を続けるのか、子に独立を促すのかを考えるきっかけになることがあります。

 今後も入院や介護が必要になる可能性を考えると、親の判断能力が十分なうちに、財産の管理を誰に任せるかを決めておくことも検討に値します。信頼できる人と財産管理の委任契約を結ぶ方法や、将来に備えて任意後見契約を結んでおく方法があります。

 子の独立を考える場合の進め方は、【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順で説明しています。

弁護士に相談するとできること

 入院中の親は、家に戻って自分で確かめることも、子と落ち着いて話し合うことも難しい状況にあります。弁護士が親の代理人となれば、次のような対応が考えられます。

  • 親に代わって子への連絡の窓口になり、通帳や鍵の返還などを求める。
  • 金融機関やカード会社への手続について、進め方を整理する。
  • 預金の引出しや名義の無断使用があった場合に、返還を求める手続を検討する。
  • 危険が予想される場面では、警察への相談を含めて対応を組み立てる。


 入院中で事務所に出向くことが難しい場合でも、電話などでご事情をお伺いしたうえで、ご家族と連絡を取りながら進め方を一緒に考えることができます。

 当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支えるという形で、親子の問題に取り組んでいます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

 入院中は、家のことが気になりながらも動けないもどかしさを抱えやすい時期です。すべてを一度に確かめようとせず、通帳やカード、鍵、郵便物といった手元で整理できることから順に手を打っていくことで、退院後の選択肢を残しやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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