【親子問題】子の問題を親がSNSで発信するのは、問題になる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、主に成人した子の問題(ひきこもり、家庭内暴力、お金の無心など)を抱える親御さんが、SNSやブログで発信する場面を想定しています。2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。


子の暴力やひきこもりに長く向き合っていると、誰にも話せないまま時間が過ぎていきます。SNSやブログで気持ちを書き出したり、同じ悩みを持つ人とつながったりすることで、少し楽になったという親御さんは少なくありません。

 一方で、書かれているのは子の私生活そのものです。子が成人していれば、親とは別の一人の人として、私生活を勝手に公開されない利益を持っています。この記事では、親がSNSで子の問題を発信することが法的にどう扱われ得るのか、問題になりやすい書き方と、発信する前に確かめておきたいことを整理します。

発信したくなる事情そのものは、否定されるものではない

 親が子のことを書く理由はさまざまです。相談先が見つからず孤立している、同じ境遇の人の話を聞きたい、支援の情報を集めたい、日々の出来事を記録しておきたい、といった事情は、どれも自然なものです。

 子のプライバシーの発信をめぐって弁護士が解説した報道でも、発信によって支えを得た保護者がいることに触れたうえで、発信を一律に否定すべきではないという見方が紹介されています。この記事も、発信をやめるべきだと述べるものではありません。問題は「書くかどうか」よりも、「何を、どこまで、誰に向けて書くか」にあります。

成人した子にも、親とは別のプライバシーがある

 親子であっても、プライバシーの権利は親と子でそれぞれ別に認められます。子が未成年であれば、親は親権者として子の情報をある程度管理する立場にありますが、子が成人すればその立場もなくなります。成人した子の私生活は、法的には「家族の話」である前に「その子自身の情報」として扱われます。

 プライバシーの侵害にあたるかどうかについて、裁判例では、私生活上の事柄であること、一般の人であれば公開を望まないと考えられること、まだ広く知られていないことといった点が考慮されてきました。さらに最高裁は、公表されない利益と公表する理由とを比べて、前者が優越する場合に不法行為が成立するという考え方を示しています(最高裁平成15年3月14日判決)。

 親子の問題を書く場面に当てはめると、内容によって慎重さの度合いが変わります。

書かれる内容考えられる注意点
病名・通院歴・服薬健康に関する情報は、特に公開を望まれにくい情報として扱われやすい
暴力・暴言・お金の無心の具体的な場面子の人柄の評価に直結し、プライバシーだけでなく名誉の問題にもなり得る
逮捕・前科・前歴公表されない利益が強く保護される情報とされてきた
学歴・職歴の空白・ひきこもりの期間本人が隠しておきたい事情であることが多い
顔写真・自宅や部屋の写真肖像の問題に加え、住所の特定につながることがある


匿名で書いても「誰のことか分かる」場合がある

 実名や顔を出していなければ問題にならない、と考えられがちです。しかし、プライバシーの侵害や名誉毀損では、周囲の人が読んで「あの家の子のことだ」と分かるかどうかが問われます。一つひとつは何気ない情報でも、組み合わさると特定につながることがあります。

  • 住んでいる地域や最寄り駅が分かる記述。
  • 子の年齢、出身校、以前の勤務先。
  • 家族構成(きょうだいの人数、親の職業など)。
  • 近所の人が見聞きした出来事と時期が重なる記述。
  • 写真の背景に写り込んだ建物や窓の外の景色。
  • 親の実名アカウントや、知人とつながっているアカウントとの関連。


 親戚、近所の人、子の旧友など、子を知る人が読者に含まれていれば、ほかの人には分からなくても、その人たちには伝わります。特定の範囲が狭くても、子の生活への影響は小さくないことがあります。

問題になり得る法的な責任


民事上の責任

 プライバシーの侵害や名誉毀損にあたれば、子から損害賠償(民法709条・710条)を求められたり、投稿の削除を求められたりする可能性があります。名誉毀損の場合は、謝罪広告など名誉を回復する措置が求められることもあります(民法723条)。親子だからといって、これらの責任が当然に免除されるわけではありません。

刑事上の責任

 人の社会的評価を下げる具体的な事実を公然と示すと、名誉毀損罪(刑法230条1項、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)に問われる可能性があります。この罪は、書いた内容が事実であっても成立し得る点に注意が必要です。公共の利害に関わる事実で、公益を図る目的があり、真実と証明された場合などには処罰されないとされていますが(刑法230条の2)、家庭内の出来事がこれにあたる場面は限られると考えられます。具体的な事実を示さずに子を侮辱する書き込みは、侮辱罪(刑法231条)の問題になり得ます。

 いずれも、被害を受けた人の告訴がなければ起訴されない親告罪です(刑法232条)。親子の間で刑事告訴にまで進む例は多くないとしても、関係がこじれた後に問題として持ち出される可能性は残ります。

法的な責任とは別に起きやすいこと

 実際の相談の場面では、法的な責任よりも先に、次のような影響が問題になることがよくあります。

  • 子が投稿を見つけ、親への不信や怒りが強まり、暴言や暴力のきっかけになることがあります。
  • 投稿から自宅や家族の状況が知られ、見知らぬ人からの接触や詮索を招くことがあります。
  • 投稿は検索で長く残り、子が仕事を探すときや社会に出ていくときの妨げになることがあります。
  • 後に子と話し合う場面で、投稿が「親に晒された」という反発の材料になり、話し合いが進みにくくなることがあります。
  • きょうだいや配偶者など、ほかの家族の私生活まで一緒に明かしてしまうことがあります。


 とくに、子の自立を目指して第三者が間に入る段階では、それまでの投稿が子の警戒心を強める要因になることがあります。発信が、解決に向けた動きの足かせになっていないかという視点も持っておくとよいでしょう。

発信する前に確かめておきたいこと

 発信を続ける場合は、投稿する前に次の点を見直しておくと、問題が起きる可能性を下げられます。

  • 子を知る人が読んだときに、誰の話か分からない書き方になっていること。
  • 病名、通院先、逮捕歴など、特に慎重に扱うべき情報を書いていないこと。
  • 写真に顔、自宅、部屋の様子、周辺の景色が写っていないこと。
  • 実名のアカウントや、知人とつながったアカウントと切り離されていること。
  • 公開範囲が、目的に見合った範囲に絞られていること。
  • 子が読んだと仮定しても、事実の記録と親自身の気持ちの範囲にとどまっていること。
  • 子への評価や決めつけ、侮辱にあたる表現を使っていないこと。


 鍵付きのアカウントや限定公開にしても、読んだ人が画面を保存して外に出すことはできます。公開範囲を絞ることは有効ですが、それだけで安心とはいえない点も踏まえておく必要があります。

公開の発信よりも向いている場がある

 発信の目的が「話を聞いてほしい」「同じ悩みの人とつながりたい」ということであれば、参加者の範囲が限られ、内容が外に出にくい場のほうが向いている場合があります。家族会や当事者会、行政の相談窓口などがその例です。詳しくは【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできることで解説しています。

 また、目的が「出来事を記録しておきたい」ということであれば、SNSよりも手元の記録のほうが適しています。暴力や金銭要求の日時、内容、けがの写真などは、後に警察や弁護士に相談するときの資料になります。公開の場に載せる必要はありません。記録の取り方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録をご覧ください。

すでに投稿してしまった・子から削除を求められたとき

 気になる投稿があれば、削除や公開範囲の見直しを検討します。ただし、投稿の中に暴力や金銭要求の記録が含まれている場合は、消す前に日時や内容が分かる形で手元に保存しておくと、後で記録として使える余地が残ります。削除と記録の残し方の関係は、アカウントを消せばよいのか|投稿削除と証拠保全の関係でも触れています。

 子から削除を求められた場合、投稿の削除には応じることを前向きに検討してよいでしょう。一方で、削除の求めに慰謝料などの金銭要求が結び付いている場合は、削除の問題と金銭の問題を分けて考える必要があります。金額に根拠があるのか、どのような名目なのかを確かめないまま応じると、要求が繰り返されることもあります。名誉毀損を理由に責任を問われたときの考え方は、SNSの投稿で名誉毀損と言われた|刑事と民事の違いと私生活を暴露した|プライバシー侵害は犯罪になるのかで解説しています。

よくあるご質問


子が先にSNSで親の悪口を書いています。反論の投稿をしてもよいですか

 子の投稿に問題があるとしても、反論として家庭内の事情を公開すれば、今度は親の投稿が子のプライバシーや名誉の問題になり得ます。投稿の応酬は対立を深め、外から見える範囲も広げてしまいます。まずは子の投稿を保存し、削除の求め方や家族の守り方を検討することをおすすめします。詳しくは【親子問題】子がSNSに家族の悪口や個人情報を書いている|削除の求め方と家族の守り方をご覧ください。

子の同意があれば、書いても問題はありませんか

 成人した子が内容を理解したうえで同意していれば、プライバシーの問題になる可能性は大きく下がります。ただし、同意した範囲を超えて書いたり、時間が経って子の考えが変わったりすることもあります。同意を得た内容と範囲を確かめておき、子から削除を求められたら応じられるようにしておくとよいでしょう。

弁護士に相談したことは、子に伝わりますか

 弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容がご本人の了解なく子に伝わることはありません。連絡の方法についても、ご事情に合わせて決めることができます。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方をご覧ください。

弁護士法人若井綜合法律事務所のご案内

 SNSでの発信は、孤立しがちな親御さんにとって支えになることがある一方で、書き方によっては子との関係をさらに難しくすることがあります。発信の内容に不安がある場合や、子の暴力・金銭要求・ひきこもりそのものにどう向き合うかでお悩みの場合は、発信を続ける前に一度ご相談ください。当事務所では、弁護士が親御さんの代理人となり、自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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