【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方
風俗店の利用をめぐって被害届が出され、警察から事情を聴かれている。そうした状況にある方の多くが気にかけるのは、「前科がつかずに終わる道はあるのか」「不起訴になるには何がそろえばよいのか」という点です。不起訴は、検察官が事件を裁判にかけないと判断する処分ですが、何か一つの条件を満たせば自動的に不起訴になる、という仕組みにはなっていません。本記事では、不起訴の種類ごとに検察官が見ている事情を整理したうえで、事実を認めている場合と争っている場合のそれぞれについて、準備しておきたいことを解説します。
本記事は、2023年の刑法改正(不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の新設)、性的姿態撮影等処罰法の制定、2025年6月に施行された拘禁刑を反映した内容です。個別の事件の見通しは、証拠の状況や当事者の事情によって異なります。
不起訴には3つの種類がある
不起訴と一口にいっても、その理由によっていくつかの種類に分かれます。風俗トラブルで主に問題となるのは、次の3つです。
| 種類 | どのような場合か | 主に目指す場面 |
|---|---|---|
| 嫌疑なし | 犯罪にあたらないこと、または本人が行為者でないことが明らかになった場合 | 人違いなど、そもそも関与していない場合 |
| 嫌疑不十分 | 犯罪を裁判で証明できるだけの証拠がそろっていない場合 | 同意があった、行為自体がなかったなど、事実を争う場合 |
| 起訴猶予 | 犯罪を証明できる証拠はあるが、さまざまな事情を考慮して起訴を見送る場合 | 事実を認めている場合 |
どの類型を目指すかによって、取るべき行動は大きく変わります。方針が定まらないまま取調べに臨み、話す内容が揺れてしまうと、どの類型を目指すにしても不利に働くおそれがあります。まずは、ご自身の認識がどれに近いのかを整理することが出発点になります。3つの類型の違いは、不起訴の3類型はどう違うのか|どれを目指すべきかでも詳しく解説しています。
風俗トラブルで問題になりやすい罪と処分の幅
風俗店でのトラブルが刑事事件として扱われる場合、問われる罪名によって、起訴された後の処分の幅が異なります。
| 罪名 | 主な場面 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 不同意性交等罪(刑法177条) | 同意のない本番行為を訴えられた場合 | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 不同意わいせつ罪(刑法176条) | サービスの範囲を超えた接触を訴えられた場合 | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
| 性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条) | 無断での撮影が発覚した場合 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 暴行罪・傷害罪(刑法208条・204条) | もみ合いなどでキャストにけがをさせたと訴えられた場合 | 暴行罪は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金など、傷害罪は15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
表のとおり、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪には罰金刑が定められていません。罰金で終わる略式起訴という選択肢がないため、起訴されれば正式な裁判を受けることになります。そのため、これらの罪名が問題になっている事件では、起訴前の段階で不起訴を目指せるかどうかが、とりわけ大きな意味を持ちます。撮影罪のように罰金刑がある罪では、不起訴にならなかった場合に略式起訴で罰金となることもあります。処分ごとの違いは略式起訴・罰金・執行猶予・実刑の違い|風俗トラブルで想定される処分をご覧ください。
事実を認めている場合|起訴猶予に向けて必要なもの
起訴猶予は、刑事訴訟法248条に基づく処分です。同条は、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況を考慮して、起訴の必要がないときは起訴しないことができると定めています。検察官はこれらを総合して判断するため、一つの事情だけに頼るのではなく、複数の材料を積み上げていくことになります。
被害を訴えている女性本人との示談
風俗トラブルでは、被害を訴えている方への謝罪と示談の成立が、処分を左右する事情として大きな比重を占めます。示談書に、処罰を求めない意思(宥恕)や被害届を取り下げる旨が盛り込まれていれば、検察官が処分を判断する際に考慮される事情になります。示談が持つ意味は風俗の性犯罪で前科をつけない|不起訴処分を得るための示談の重要性、宥恕の意味は宥恕文言の意味|「許す」と書かれると刑事処分はどう変わるかで解説しています。
注意したいのは、示談の相手方です。風俗トラブルでは店の担当者が窓口となり、店との間だけで示談書が作られることがあります。しかし、被害を申告しているのは女性本人であり、本人の意思が書面に表れていなければ、刑事処分の判断材料として十分に評価されないおそれがあります。示談書の条項が持つ意味については、【風俗トラブル】示談書に「女性は被害届を出さない」と入れておけば安心?もあわせてご覧ください。
示談が成立しても、それだけで決まるわけではない
弁護士ドットコムにも、「示談ができればほぼ確実に不起訴になるのか」という趣旨の相談が寄せられています。示談は重要な事情ですが、検察官は行為の態様や悪質性、前科・前歴の有無などもあわせて判断します。行為が悪質と評価される場合や、同種の前歴がある場合には、示談が成立していても起訴されることがあります。一方で、弁護士ドットコムニュースでは、風俗店をめぐる不同意性交等の事案について、示談が成立すれば不起訴などの結果につながりやすいとの弁護士の見方も紹介されています。示談は「それだけで不起訴が決まる条件」ではなく「重要な判断材料の一つ」と捉えておくのが現実的です。詳しくは示談が成立しても処分が残る場合|示談=不起訴ではない理由で解説しています。
示談以外に積み上げる材料
示談と並行して、検察官に伝えたい事情には次のようなものがあります。
- 前科・前歴がなく、同種の行為を繰り返していないこと。
- 事実を認め、取調べに誠実に応じていること。
- 反省の気持ちを自分の言葉でまとめた書面があること。
- 家族など、今後の生活を見守る人がいること。
- 仕事や住まいが安定していること。
- 必要に応じて、専門の医療機関などで再発防止に取り組んでいること。
被害を訴えている方が示談に応じない場合でも、謝罪の申し入れを続けた経過や、贖罪寄付などの取組みが考慮されることがあります。この点は被害者(嬢)が示談を拒否している|それでも不起訴を目指す方法と起訴猶予を得るために積み上げる材料|検察官が見ているもので詳しく取り上げています。
事実を争う場合|嫌疑不十分に向けて必要なもの
「同意のうえだった」「そのような行為はしていない」という場合は、嫌疑不十分による不起訴を目指すことになります。風俗店での出来事は個室で起きることが多く、当事者の供述が中心的な証拠になりやすいという特徴があります。
供述を一貫させ、意に沿わない調書に署名しない
取調べで作成される供述調書は、後の判断に大きく影響します。記憶と異なる内容や、ご自身の認識より不利な表現が書かれていれば訂正を求めることができ、納得できなければ署名・押印を拒むこともできます(刑事訴訟法198条4項・5項)。話す内容が取調べのたびに変わると、供述全体の信用性が疑われるおそれもあるため、事前に事実関係を整理しておくことが大切です。取調べで聞かれやすい項目は風俗事件の取調べで聞かれること|供述が争点に直結する項目、調書への向き合い方は「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点で解説しています。
客観的な記録を手元に残す
供述を支える材料として、次のような記録が役立つことがあります。
- 店の予約記録や、利用したサービスの内容が分かるもの。
- キャストや店とのメッセージのやり取り。
- 利用前後の時間の流れを書き留めたメモ。
- 店側から金銭を求められた経過が分かる記録。
ただし、記録を集める目的で相手方に直接連絡をとることは避けてください。相手方への働きかけと受け取られると、証拠隠滅のおそれがあると評価され、身柄の拘束につながる場合もあります。
争いながら示談を検討する場面
事実を争う場合でも、示談を検討する余地がなくなるわけではありません。密室での出来事は証明が難しい反面、被害の申告をくつがえすことも容易ではないため、事実関係についての認識の違いを残したまま、紛争を解決するための合意を結ぶという選択肢もあります。その場合は、示談書に事実を認める趣旨の文言を入れるかどうかなど、書面の作り方に注意が必要です。不同意性交等罪を否認しつつ請求額を減額して示談し、不起訴となった事例として、【解決事例】デリヘル(自宅利用)での本番トラブル|不同意性交等罪を否認し300万円請求を40万円に減額、不起訴も獲得した事例があります。
処分が決まるまでの時間にも差がある
不起訴に向けた準備にかけられる時間は、逮捕されているかどうかで大きく異なります。
| 区分 | 処分までの時間の目安 | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 身柄事件(逮捕・勾留されている) | 逮捕から最長で23日ほどのうちに起訴・不起訴が判断される | 勾留期間内に示談をまとめる必要があり、早めに弁護人を選ぶことが重要 |
| 在宅事件(逮捕されずに捜査が進む) | 法律上の期限はなく、書類送検から処分まで数か月かかることもある | 時間がある分、示談や資料の準備を落ち着いて進められる |
在宅事件では、警察から連絡が来ない期間が続くと「もう終わったのでは」と考えがちですが、処分が決まるまでは捜査が続いています。逮捕と在宅の違いは在宅事件と身柄事件の違い|風俗トラブルで逮捕を避けるための弁護活動、被害届が出された後の見通しは【刑事事件】風俗トラブルで被害届が出されたら、逮捕されるの?で解説しています。
不起訴になった後に残ること
不起訴になれば、裁判にかけられることはなく、前科もつきません。ただし、捜査を受けたという記録(前歴)は捜査機関に残ります。また、被害を訴えた方は、不起訴の判断に納得できない場合、検察審査会に審査を申し立てることができます。弁護士ドットコムでも、示談が成立して不起訴になった後に申立てがされる可能性を尋ねる相談があり、示談によって申立ての権利が当然になくなるわけではない一方、申立てがあっても直ちに起訴されるわけではないとの回答が寄せられています。
不起訴になったことを勤務先などに説明する必要がある場合は、検察庁に請求して、不起訴処分告知書の交付を受けることができます。あわせて前科と前歴の違い|風俗の性犯罪で不起訴でも残るものと不起訴処分告知書は何に使えるのかもご覧ください。
よくあるご質問
店と示談済みですが、それでも不起訴にならないことはありますか
あります。被害を申告しているのが女性本人である以上、本人の意思が示談書に反映されていなければ、処分の判断材料として十分に評価されないことがあります。また、示談の後も捜査が続き、警察から連絡が来ることがあります。この点は【風俗トラブル】示談した後に警察から連絡が来ることはある?で解説しています。
示談金を多く払えば、不起訴の可能性は上がりますか
示談金の額そのものよりも、被害を訴えている方が納得し、処罰を求めない意思を示してくれるかどうかが重要です。事案の内容とかけ離れた要求に応じる必要はなく、金額は事情に即して話し合うことになります。示談金の考え方は【刑事事件】不同意性交の疑いで、示談金はどのくらいになる?を参考にしてください。
警察に呼ばれる前の段階でも、できることはありますか
被害届が出される前であれば、謝罪と示談によって、刑事事件として扱われずに終わる場合もあります。また、取調べに臨む前に事実関係と方針を整理しておくことで、意に沿わない調書が作られる危険を減らすことができます。
まとめ
風俗トラブルで不起訴を目指す場合、事実を認めるなら起訴猶予、争うなら嫌疑不十分というように、目指す類型によって準備の中身が変わります。起訴猶予では被害を訴えている方ご本人との示談と、反省や再発防止の取組みを、嫌疑不十分では一貫した供述と客観的な記録を、それぞれ積み上げることが基本になります。いずれの場合も不起訴が約束されるわけではありませんが、方針を早めに定めて準備を整えることが、結果に向けた土台になります。
不起訴に向けた準備は当事務所にご相談ください
当事務所では、風俗店をめぐる刑事事件について、被害を訴えている方との示談交渉や、取調べに向けた方針の整理をお手伝いしています。事実を認めるのか争うのかが定まっていない段階でも、経緯をお伺いしながら、どの類型を目指すべきかを一緒に検討します。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


