【刑事事件】風俗トラブルで在宅のまま捜査されると、どう進む?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2026年10月時点の法令(2023年の刑法改正で新設された不同意性交等罪、性的姿態撮影等処罰法を含みます)に基づいて解説しています。個別の事件の見通しは、事情によって異なります。


風俗店を利用した後にキャストや店から被害を訴えられ、警察署で話を聞かれたものの、逮捕はされずに「また連絡します」と帰された。このように、身柄を拘束されないまま捜査が進む事件を「在宅事件」と呼びます。

 逮捕されなかったことで少し安心される方がいる一方で、「この後いつ、何が起きるのか分からない」という不安を抱えたまま、日常生活を続けることになります。在宅事件には逮捕・勾留のような時間制限がなく、手続が数か月から1年以上に及ぶこともあるためです。

 この記事では、風俗トラブルが在宅事件として扱われた場合に、捜査がどのような順序で進むのか、その間にどのような点に気をつけるとよいのかを整理します。

在宅のまま捜査されるとはどういう状態か

 在宅事件とは、被疑者が逮捕・勾留されず、自宅で普段どおり生活しながら捜査を受ける事件のことです。仕事に行くことも家族と過ごすこともできますが、捜査は続いており、警察や検察から呼び出しがあれば出向いて取調べを受けることになります。

 逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることに加え、逃亡や証拠隠滅のおそれなど、身柄を確保する必要がある場合に行われます(刑事訴訟法199条、刑事訴訟規則143条の3)。住所や勤務先がはっきりしている、呼び出しに応じている、関係者に働きかけるおそれが低いといった事情があると、在宅のまま捜査が進められることがあります。

 ただし、在宅事件だから軽い扱いで終わるとは限りません。身柄を拘束されないまま起訴され、裁判になること(在宅起訴)もあります。

身柄事件との違い

 逮捕・勾留される「身柄事件」と比べると、主に次のような違いがあります。詳しくは在宅事件と身柄事件の違い|風俗トラブルで逮捕を避けるための弁護活動でも解説しています。

項目身柄事件在宅事件
生活警察署の留置施設などで拘束される自宅で普段どおり生活できる
時間制限逮捕から最長23日程度で起訴・不起訴が判断される法律上の期限はなく、長期化することがある
起訴前の国選弁護人勾留されれば選任を請求できる請求できない(私選弁護人への依頼は可能)
取調べ留置中に行われる呼び出しを受けて出向く


風俗トラブルで在宅捜査が始まるきっかけ

 風俗トラブルで問題になりやすい罪としては、本番行為の同意をめぐる不同意性交等罪、身体への接触をめぐる不同意わいせつ罪、盗撮をめぐる撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)、暴行罪・傷害罪などがあります。捜査が始まるきっかけには、次のようなものがあります。

  • キャストが警察に被害を申告し、被害届が受理された場合。
  • 店舗が利用時の出来事を警察に通報した場合。
  • 店舗が別の理由で摘発され、利用客として事情を聞かれることになった場合。
  • その場で警察が呼ばれたものの、逮捕されずに帰宅を許された場合。


 店から「警察に行く」と言われていた後、しばらくしてから警察から連絡が来ることもあります。きっかけの違いについては風俗トラブルで警察が動くきっかけ|被害届・通報・摘発から捜査が始まる流れ、被害届の受理後については【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間もご参照ください。

在宅捜査の一般的な流れ

 事件の内容によって前後することはありますが、在宅事件はおおむね次の順序で進みます。

  1. 警察からの連絡と出頭の要請。
  2. 警察での取調べと証拠の収集。
  3. 検察庁への送致(書類送検)。
  4. 検察官による取調べ。
  5. 起訴・不起訴の判断。


警察からの連絡と取調べ

 多くの場合、警察から電話で日時を指定され、警察署に出向くよう求められます。任意の出頭ですので、仕事の都合などで日程の相談をすることは可能です(警察からの呼出しの日程は調整できるのか|仕事との両立)。

 取調べは1回で終わるとは限らず、間隔を空けて数回行われることもあります。店を利用した経緯、予約の方法、室内での具体的なやり取り、同意をどのように受け止めていたか、その後の店との連絡の内容などを聞かれることが一般的です。あわせて、スマートフォンの任意提出や、現場の状況を再現する実況見分を求められることもあります。

 取調べでは、言いたくないことを言わない権利(黙秘権)が保障されています(刑事訴訟法198条2項)。作成された供述調書は読み聞かせや閲覧の機会があり、内容に誤りがあれば訂正を求めることができ、納得できない調書への署名・押印は拒むことができます(同条4項・5項)。聞かれやすい項目は風俗事件の取調べで聞かれること|供述が争点に直結する項目で整理しています。

書類送検

 警察は捜査を終えると、事件の記録や証拠を検察庁に送ります(刑事訴訟法246条)。身柄を伴わずに書類だけが送られるため「書類送検」と呼ばれます。送致の時期が本人に知らされないこともあり、警察での最後の取調べから検察庁の呼び出しまで、しばらく間が空くことは珍しくありません。目安については書類送検されてから処分が決まるまでの期間をご覧ください。

検察官による取調べと処分

 送致を受けた検察官は、必要に応じて本人を呼び出して取調べを行い、起訴するかどうかを判断します。処分には、不起訴、略式命令による罰金、正式な裁判を求める公判請求があります。

 不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は法定刑に罰金がないため、起訴される場合は略式命令ではなく公判請求となります。一方、撮影罪には罰金刑の定めがあり、略式命令で終わる場合もあります。検察庁での手続については検察庁からの呼び出しで何が決まるのかもご参照ください。

どのくらいの期間がかかるのか

 在宅事件には、処分までの期限が法律で定められていません。他の事件が優先されることもあり、最初の連絡から処分が決まるまで数か月、事案によっては1年以上かかることもあります。

 連絡が途絶えた期間があっても、事件が終わったとは限りません。不起訴になった場合も、本人から請求すれば検察官から処分の告知を受けられます(刑事訴訟法259条)。待つ間の考え方は在宅事件になった場合|見えない時間の進み方でも詳しく解説しています。

在宅から逮捕に切り替わることはあるか

 在宅で捜査が始まった後でも、事情が変われば逮捕に切り替わることがあります。たとえば、次のような事情が重なると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されるおそれがあります。

  • 正当な理由なく呼び出しに応じないこと。
  • 被害を訴えたキャストや店に直接連絡し、働きかけること。
  • スマートフォンのデータなどを消去すること。
  • 捜査の過程で、別の被害が新たに判明すること。


在宅捜査の間に気をつけたいこと


キャストや店に直接連絡しない

 謝罪や示談のつもりでも、本人が直接連絡を取ることは、口止めや圧力と受け取られるおそれがあります。店からの金銭請求が続いている場合も、刑事手続と切り分けたうえで、窓口を弁護士に移すことを検討するとよいでしょう。

記録を消さず、時系列で整理しておく

 予約時のメールや店とのやり取りは、自分の説明を裏付ける資料になることがあります。消去はせずに保存し、利用した日時、室内での出来事、その後の連絡を時系列でメモにしておくと、取調べで推測を交えずに話す助けになります。

生活への影響に備える

 在宅事件では、通常は勤務先に連絡が入ることはありません。もっとも、呼び出しのたびに休みを取る必要があることや、事案によっては報道の可能性もゼロではありません(在宅事件・書類送検でも報道されるのか)。早めに見通しを立てておくことが、生活を守ることにつながります。

在宅事件で弁護士に依頼する意味

 在宅事件では、起訴される前の段階で国選弁護人を付けてもらうことができません(刑事訴訟法37条の2は、勾留された被疑者が対象です)。そのため、この段階で弁護人の助言を受けるには、私選弁護人に依頼することになります。

 弁護人は、取調べの前に話す内容や調書の確認の仕方を助言するほか、被害を訴えている方との示談交渉を担います。被害者の連絡先は、本人には伝えず弁護人に限って開示されることが多く、弁護人を通すことで示談の道が開ける場合があります。示談の内容や反省の状況をまとめた意見書を検察官に提出し、処分の判断材料にしてもらうこともあります。

 ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません(示談が成立しても処分が残る場合|示談=不起訴ではない理由)。事実関係に争いがある場合は、示談を急ぐより先に、どこまでを認めるのかを整理することが大切です。

よくあるご質問


警察からの連絡が止まりました。事件は終わったのでしょうか

 書類送検の後、検察庁からの呼び出しを待っている段階であることも考えられます。処分の結果を確かめたい場合は、弁護人を通じて担当の検察庁に問い合わせる方法があります。

取調べに弁護士は同席できますか

 現在の実務では、取調室への弁護人の立会いは原則として認められていません。もっとも、警察署まで同行し、取調べの合間や前後に助言を受けることは可能です(取調べに弁護人は立ち会えるのか)。

身に覚えがない場合も、呼び出しに応じた方がよいですか

 任意の出頭ではありますが、応じない状態が続くと逮捕の必要性を判断する材料になるおそれがあります。応じる前に弁護士に相談し、話す内容と話さない内容を整理しておくと安心です。

まとめ

 風俗トラブルで在宅のまま捜査される場合、警察での取調べ、書類送検、検察官の取調べを経て処分が決まります。期限がないため長期化しやすく、その間の行動が手続の進み方や処分の判断に影響することもあります。キャストや店に直接連絡せず、記録を整理し、早い段階で見通しを確認しておくことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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