【刑事事件】風俗トラブルで被害届が出されたら、逮捕されるの?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は2026年10月時点の法令に基づいて記載しています。2025年6月から刑法の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されたため、法定刑は拘禁刑で表記しています。


風俗店の利用後に、店やキャストから「被害届を出した」「これから警察に行く」と告げられ、逮捕されるのではないかと不安になる方は少なくありません。先にお伝えすると、被害届が出されたことだけで、直ちに逮捕が決まるわけではありません。逮捕は、罪を犯したと疑う相当な理由に加えて、逃亡や証拠隠滅のおそれといった必要性があるときに行われる手続であり、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むこともあります。

 一方で、事情によっては逮捕に至ることもあります。この記事では、被害届が出された後の手続の流れ、逮捕の方向に働きやすい事情と避ける方向に働きやすい事情、そしてその間にできることを整理します。

被害届とは何か、提出されると何が起きるのか

 被害届は、犯罪の被害に遭った人が、被害の事実を警察に申告する書類です。受理されると警察が捜査を始めるきっかけになりますが、被害届そのものに「この人を逮捕してほしい」という効力があるわけではありません。処罰を求める意思をはっきり示す「告訴」とも区別されます。

 風俗トラブルで被害届の対象になりやすいのは、主に次のような罪です。

  • 不同意性交等罪(刑法177条):同意のない性交等。法定刑は5年以上の有期拘禁刑。
  • 不同意わいせつ罪(刑法176条):同意のない身体への接触など。法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑。
  • 性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条):無断での撮影など。法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。
  • 暴行罪・傷害罪:プレイ中に叩いた、けがをさせたといった場面。


 なお、現行の売春防止法には客の側を処罰する規定がないため、同意のうえでの本番行為そのものを理由に、客が売春防止法違反に問われることは通常想定されていません。刑事事件として問題になるのは、キャスト側が「同意していなかった」と申告した場合です。

 また、上に挙げた性犯罪は、いずれも被害者の告訴がなくても起訴できる罪(非親告罪)です。後に被害届が取り下げられたとしても、それだけで捜査が終わるとは限りません。罪名ごとの考え方は【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理で整理しています。

被害届が出ても、すぐに逮捕されるとは限らない理由

 逮捕には「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3種類があり、後日の被害届をきっかけに問題になるのは主に通常逮捕です。通常逮捕は、裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われます(刑事訴訟法199条)。逮捕状が出るには、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由に加えて、逃亡や証拠隠滅のおそれなど、身柄を確保する必要性が求められます(刑事訴訟規則143条の3)。

 そのため、被害届が受理されて捜査が始まっても、住所や勤務先が定まっていて、呼び出しにも応じる見込みがあるなど、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいと判断されれば、逮捕せずに捜査を進めることがあります。風俗店での本番行為をめぐるトラブルについては、通報があっても逮捕まで至る例は多くないとする刑事弁護の解説も見られます。

 ただし、これは「逮捕されない」という保証ではありません。証拠の状況や本人の行動によって、判断は変わります。

その場で警察を呼ばれた場合は別に考える

 利用中や直後に店から110番通報され、駆けつけた警察官に事情を聴かれる場面では、現行犯逮捕されたり、警察署への任意同行を求められたりすることがあります。後日に被害届が出される場合とは進み方が異なるため、その場で何を話すかには特に注意が必要です。

逮捕の方向に働きやすい事情・避ける方向に働きやすい事情

 逮捕の必要性は事案ごとに判断されますが、一般には次のような点が考慮されます。

考慮される点逮捕の方向に働きやすい事情逮捕を避ける方向に働きやすい事情
客観的な証拠キャストにけががある、通常のサービスでは生じにくい痕跡がある客観的な証拠が乏しく、双方の言い分が食い違っている
被害者への働きかけキャストや店に繰り返し連絡し、口止めや取下げを迫っている連絡は弁護人を通じて行い、本人は接触していない
証拠の扱いスマホのメッセージやデータを消去しているやり取りや記録をそのまま保存している
生活の状況住所や勤務先がはっきりしない定まった住居や仕事があり、身元を引き受ける家族などがいる
捜査への対応警察からの呼び出しに応じない呼び出しに応じ、日程の調整にも協力している


 特に、本人が直接キャストに連絡して「被害届を取り下げてほしい」と頼むことは、謝罪のつもりであっても、被害者への働きかけや証拠隠滅を疑われるおそれがあります。分かれ目の詳しい考え方は逮捕されるケースと逮捕されないケースの分かれ目|通報から立件までに何が起きるかもご覧ください。

逮捕された場合と、在宅で進む場合の流れ


逮捕された場合

 逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最大10日間、身柄の拘束が続くことがあります。起訴されるまでの拘束は最長で23日間に及ぶ可能性があり、仕事や家庭への影響も大きくなります。

 この間、身元引受人の存在や生活状況を示す資料を早めにそろえることが、勾留を避けるための材料になります。逮捕直後の動き方は風俗事件で逮捕された後の72時間|何が決まる時間なのかで解説しています。

在宅のまま捜査が進む場合

 逮捕されない場合でも、事件が終わったわけではありません。警察署に呼ばれて取調べを受け(複数回に及ぶこともあります)、その後、事件が検察庁に送られます(いわゆる書類送検)。検察官からも取調べを受けたうえで、起訴するか不起訴にするかが決まります。

 在宅事件は身柄の拘束がない分、処分が出るまで数か月単位の時間がかかることもあり、その間の見通しが立てにくい点に注意が必要です。両者の違いは在宅事件と身柄事件の違い|風俗トラブルで逮捕を避けるための弁護活動でも取り上げています。

被害届が出されたと言われたときに、避けたいこと

 不安から慌てて動くと、かえって状況を難しくすることがあります。次のような行動は控えるのが無難です。

  • キャスト本人に直接連絡して、取下げや口止めを頼むこと。
  • 求められるまま、事実と異なる内容の謝罪文や念書を書くこと。
  • 「今払えば被害届は出さない」と言われ、根拠のはっきりしない金額をその場で支払うこと。
  • スマホのやり取りや利用履歴を削除すること。
  • 警察からの連絡を無視し続けること。


 謝罪文や念書は、後で金銭を請求する根拠として使われたり、刑事手続のなかで事実を認めた資料として扱われたりするおそれがあります。

 また、店側から「被害届を出した」と告げられても、実際に受理されているかどうかは、客の側からは分かりにくいのが実情です。言われた内容をそのまま受け止めるのではなく、事実関係を落ち着いて整理することが大切です。確かめ方については【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで解説しています。

被害届が出された後に、できること


当日の経緯を記録しておく

 利用した日時、店名、キャストの名前、プレイ中のやり取り、店から言われたことなどを、記憶が新しいうちに時系列でメモしておきます。予約時のメッセージや利用明細、店との通話の記録も、消さずに残しておきます。同意があったと考えている場合には、こうした記録が後で意味を持つことがあります。

弁護士を通じて示談を検討する

 事実関係に大きな争いがない場合は、被害者との示談が成立しているかどうかが、逮捕の必要性や起訴・不起訴の判断で考慮されることがあります。性犯罪の被害者は加害者側と直接やり取りすることを望まないのが通常で、捜査機関も被害者の連絡先を本人には伝えないため、示談交渉は弁護人を通じて行うのが一般的です。

 ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。どの段階で示談を始めるかによっても意味合いが変わるため、示談を始めるタイミング|被害届前・受理後・起訴前で何が違うかもあわせてご確認ください。

身に覚えがない場合は、言い分を崩さない準備をする

 同意があった、あるいはそもそも申告されたような行為がなかったと考えている場合には、事実と異なる内容を認める供述をしないことが重要です。取調べで作られる調書は、後の手続で大きな意味を持ちます。

 取調べの前に弁護士と話し、どの点が争点になるのか、どのように説明するのかを整理しておくことをおすすめします。早期の解決を優先して示談を選ぶ考え方もありますが、進め方によっては不利に働くこともあるため、方針は慎重に決める必要があります。取調べでの注意点は「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点で詳しく解説しています。

よくあるご質問


被害届が受理されたかどうかを、自分で確かめることはできますか

 警察は通常、疑いをかけられている側に捜査の状況を伝えません。警察から呼び出しの連絡が来たことで、捜査が始まっていると分かる場合が多いでしょう。

警察から呼び出しを受けたら、そのまま逮捕されることはありますか

 任意の呼び出しに応じた場合、取調べを受けてその日のうちに帰宅できることが多い一方、事情によってはその場で逮捕されることもあります。呼び出しの段階で弁護士に相談し、話す内容や持ち物を確認しておくと、落ち着いて臨みやすくなります。相談する意味は【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味でも取り上げています。

被害届が取り下げられれば、事件は終わりますか

 不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は非親告罪のため、取下げがあっても直ちに捜査が終わるとは限りません。ただし、被害者が処罰を望まないという意思は、検察官が処分を決めるうえで考慮される事情の一つになります。

まとめ

 風俗トラブルで被害届が出されても、それだけで逮捕が決まるわけではありません。逮捕されるかどうかは、証拠の状況、被害者への働きかけの有無、生活の安定性などから個別に判断されます。在宅で捜査が進む場合でも、取調べや処分の判断は続いていきます。

 ご本人が慌てて動くよりも、まず記録を残し、早い段階で刑事事件の対応に慣れた弁護士に相談して、示談や取調べへの備えを整えることが、結果として選べる手立てを広げることにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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