SNSの投稿で名誉毀損と言われた|刑事と民事の違い
風俗店の利用をめぐるトラブルのあと、ある朝、警察官が自宅を訪ねてくることがあります。本人にとっては突然でも、同居している家族にとってはさらに唐突な出来事です。玄関先で家族に何と言えばよいのか、どこまで話せばよいのかが分からず、言葉に詰まってしまう方は少なくありません。
この記事では、警察が自宅に来る場面をいくつかに分けたうえで、その場で家族に伝えること、落ち着いてから話すこと、家族に頼まないほうがよいことを順に整理します。
この記事は、2023年の刑法改正(不同意性交等罪の新設など)と性的姿態撮影等処罰法、2025年6月施行の拘禁刑への一本化を反映しています。個別の事件の見通しは、事情によって大きく異なります。
警察が自宅に来るのはどのような場面か
警察官が自宅を訪ねてくる目的は一つではありません。目的によって、その日のうちに本人が帰宅できるかどうか、家族が何に立ち会うのかが変わります。家族への説明も、まずは「今日は何のために来たのか」を把握するところから始まります。
| 来訪の目的 | 示されるもの | 家族に関わること |
|---|---|---|
| 家宅捜索(捜索差押え) | 捜索差押許可状 | 同居家族が立会人になることがある |
| 逮捕 | 逮捕状 | 本人がそのまま警察署へ向かい、しばらく戻れない |
| 任意の事情聴取・出頭の求め | 令状はない | 本人が同行するかどうかを選べる立場にある |
家宅捜索として来る場合
風俗店での盗撮が疑われている事案では、撮影に使ったスマートフォンやパソコン、記録媒体を確保するために、裁判官の発付した令状に基づいて自宅が捜索されることがあります。どのような事情で捜索に至るのかは自宅に捜索が入る条件|盗撮事件で家宅捜索が行われる場合で解説しています。捜索は原則として日の出前や日没後には住居に入って始められないため、朝の時間帯に訪ねてくることが多いとされています。
逮捕状を持って来る場合
不同意性交等の疑いがかかっている事案などでは、捜索と同時に逮捕状が執行されることもあります。この場合、本人は家族とゆっくり話す時間を持てないまま警察署へ向かうことになります。逮捕後の流れは風俗トラブルで逮捕されたら|最大23日間の身体拘束と早期釈放の流れをご覧ください。
任意の事情聴取を求めて来る場合
令状を持たず、「話を聞かせてほしい」「署まで来てもらえないか」と求められる場合もあります。任意である以上、日程を改めてもらうよう伝えることもできますが、応じ方によってはその後の捜査の進め方に影響することもあるため、可能であれば早めに弁護士へ相談したうえで対応を決めることが望ましいといえます。
その場で家族に伝えること・伝えなくてよいこと
警察官が玄関にいる段階で、事情を一から説明しようとする必要はありません。家族の側も驚いていて、細かい話を受け止められる状況ではないことが多いからです。
最初に伝えるのは「枠組み」だけでよい
その場では、次のような事実の枠組みを短く伝えれば足りることがほとんどです。
- 警察が来ているのは自分に関係する件であり、家族が疑われているわけではないこと。
- 今日は捜索なのか、逮捕なのか、話を聞きたいという求めなのか。
- 詳しいことは、弁護士に相談してから落ち着いて話すつもりであること。
- 自分が戻れない場合に連絡してほしい先(弁護士や勤務先の窓口など)。
とくに最後の点は大切です。逮捕された場合、しばらくは家族と自由に連絡を取れなくなるため、誰に何を頼むかをその場で一言伝えておくだけでも、家族の負担は大きく変わります。
その場で避けたい説明
慌てていると、とっさに事実と違う説明をしてしまうことがあります。たとえば「人違いだ」「仕事の関係で参考人として呼ばれただけだ」といった説明は、その場を収めるつもりでも、後に捜査の経過や押収品の内容から家族に別の事情が伝わったとき、家族の信頼を損ねる原因になりかねません。
事実を認めるかどうか、どのように話すかは、捜査に対する方針と切り離せない問題でもあります。家族への説明であっても、その場で事件の中身に踏み込むより、「今は詳しく話せない。弁護士と相談してから伝える」と区切っておくほうが、結果として誠実な対応になることが多いと考えられます。
家族が捜索に立ち会う場面
住居の中で捜索を行うときは、住居主などを立ち会わせなければならないとされています(刑事訴訟法114条2項、222条1項)。本人が立ち会う場合もありますが、本人がその場で逮捕されたときや不在のときは、同居している家族が立会人になることがあります。立会いの際の具体的な注意点は家宅捜索(ガサ入れ)が来た|立ち会いでできること・できないことにまとめています。
家族が立ち会う場合に、押さえておきたい点は次のとおりです。
- 令状の提示を受け、罪名と捜索する場所、差し押さえる物の記載を確かめておくこと。
- 押収された物については押収品目録が交付されるため、受け取って保管しておくこと。
- 家族の私物や共用のパソコンが持ち出されることもあり、事件と関係がない物については、後に返還を求められる場合があること。
- 捜索を妨げたり、物を隠したりはしないこと。
捜索の場に居合わせた家族は、罪名を目にすることになります。何も知らされないまま立ち会うことが家族にとってどれだけ負担になるかは、捜索で家族に知られる場面|同居家族がいる場合の現実でも触れています。本人から事前に説明できる時間がない場合でも、後で「あの場で見たこと」について家族が質問できる機会を設けることが大切です。
本人が警察署に向かった後、家族が知っておくこと
逮捕された場合、逮捕から勾留が決まるまでのおよそ3日間は、弁護士以外の面会は実務上認められないことが多く、勾留後も接見禁止がつくと家族は面会できません。家族がまず動けるのは、弁護士への連絡と、勤務先や日常生活の手配です。家族の側の初動は家族が逮捕されたと連絡が来た|最初の24時間にやることや【刑事事件】逮捕された家族に今日会えるか|接見禁止の見分け方で解説しています。
一方、捜索だけで本人が逮捕されず、その日のうちに帰宅することもあります。この場合は捜査がそこで終わったわけではなく、在宅のまま進むことが多いため、家族への説明も「これから続く手続」として話す必要があります。その後の見通しは【刑事事件】家宅捜索の後に本人が逮捕されなかった|この先の見通しをご覧ください。
落ち着いてから、家族にどこまで話すか
すべてを打ち明けるか、最小限にとどめるかに唯一の正解はありません。ただ、家族の協力が必要になる場面は意外に多くあります。身柄の解放を求めるときに家族が身元引受人になることや、再発防止の取り組みを家族が支えることは、手続の中で評価される事情の一つになりえます。家族が担える役割は家族としてできること|身元引受・治療・監督体制の組み立てで整理しています。全く話さないという方針が、本人にとって不利に働く場合もあることは念頭に置いておきたいところです。
配偶者に話すとき
配偶者への説明では、刑事事件としてどうなるかという問題と、夫婦の間で風俗店の利用をどう受け止めるかという問題が一度に押し寄せます。この二つを同じ場で決着させようとすると、話し合いが行き詰まりやすくなります。刑事手続の見通しは弁護士から説明を受け、夫婦の問題は時間をかけて話し合う、というように分けて考えることが現実的です。考え方の詳細は【風俗トラブル】家族に知られた後の話し合い|夫婦の問題と店との問題を分けるを、民事上の責任については配偶者に発覚した場合の民事責任|風俗利用は不貞になるのかをご覧ください。
親やきょうだいに話すとき
実家で暮らしている場合、捜索の立会いや身元引受人の役割を親が担うことがあります。この場合は、少なくとも手続の流れと、親に頼みたいこと(身元引受、差し入れ、勤務先への連絡の有無など)を具体的に伝えておくと、親も動きやすくなります。事件の詳細をどこまで話すかは、本人の意向と事件の内容に応じて判断することになります。
子どもに話すとき
子どもがいる家庭では、年齢によって伝え方が大きく異なります。捜索の様子を子どもが見ていた場合には、何も説明しないことがかえって不安を大きくすることもあります。伝える前に夫婦や家族で決めておきたいことは【刑事事件】家族が逮捕されたことを子どもにどう伝えるか|伝える前に決めておくことと年齢別の目安で解説しています。
弁護士から家族に説明してもらうという方法
自分の口からは説明しにくい場合、弁護士から家族に手続の見通しを説明してもらうこともできます。弁護士には守秘義務があるため、家族に何をどこまで伝えるかは、本人の同意した範囲に限られます。逆に言えば、「手続の流れと今後の予定だけは家族に伝えてほしい」「事件の中身は自分から話す」といった線引きを本人が決めておくことができます。詳しくは弁護士に相談した内容は家族や警察に伝わる?守秘義務の範囲をご覧ください。
家族に頼まないほうがよいこと
家族を守りたい、迷惑をかけたくないという気持ちから、かえって家族を難しい立場に置いてしまうことがあります。次のような頼みごとは避けることが大切です。
- スマートフォンやパソコン、記録媒体などを隠したり処分したりしてもらうこと。
- 店やキャスト、被害を訴えている方に、家族から連絡してもらうこと。
- 警察から家族が話を聞かれたときに備えて、説明の内容を合わせておくよう頼むこと。
他人の刑事事件の証拠を隠したり壊したりする行為は、証拠隠滅罪として処罰の対象とされています(刑法104条)。家族が本人のためにした場合には刑が免除されることがある旨の規定(刑法105条)はありますが、必ず免除されるわけではなく、本人が頼んだこと自体が問題とされるおそれもあります。また、証拠を隠そうとした事情があると、身柄の拘束が続く方向に考慮されることもあります。
スマートフォンの扱いに迷う場面については【刑事事件】警察に「スマホを任意で出してほしい」と言われた|応じる前に確認することもあわせてご覧ください。
警察が来る前の段階で相談する意味
店から「警察に行く」と告げられた、警察から電話があったなど、捜査が始まる気配がある段階で弁護士に相談しておくと、家族への説明の準備にも時間を使うことができます。出頭の日程の調整や、在宅のまま手続が進むよう働きかけることを検討できる場合もあります。もっとも、弁護士が就いたからといって捜索や逮捕が必ず避けられるわけではありません。それでも、「その日が来たら家族に何を伝えるか」を前もって決めておけることには意味があります。
在宅事件と身柄事件の違いは在宅事件と身柄事件の違い|風俗トラブルで逮捕を避けるための弁護活動、早い段階での相談については【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味で解説しています。
まとめ
警察が自宅に来たとき、その場で家族にすべてを説明しようとする必要はありません。まずは「何のために来たのか」と「誰に連絡してほしいか」を短く伝え、事件の中身は弁護士と相談してから話す、という順序を意識すると、家族との関係を大きく崩さずに済むことが多いと考えられます。その後は、配偶者・親・子どもそれぞれに合わせて伝える範囲を決め、必要であれば弁護士から手続の見通しを説明してもらうことも検討してください。
家族への説明の仕方は、事件の内容や捜査の段階、家族構成によって変わります。一人で抱え込まず、ご家族との向き合い方も含めてご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


