【風俗トラブル】示談した後に警察から連絡が来ることはある?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月時点の刑法(令和5年改正後の不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の規定)、刑事訴訟法、犯罪捜査規範に基づいて説明しています。示談の後に警察から連絡が来るかどうか、どのような処分になるかは、事案の内容や証拠の状況によって異なります。


「店と示談して、示談金も払い終えた。もう終わったと思っていたのに、警察署から電話があった」。風俗トラブルのご相談では、こうした声を伺うことがあります。一方で、キャストの側に近い立場の方からは、「店が話をまとめたと聞いたが、本人の気持ちは確かめられていなかった」という話を伺うこともあります。

 「示談すれば刑事事件にはならない」「示談しても捜査は続く」という説明は、どちらも誤りではありません。ただ、どちらが当てはまるかは、示談をした時期、示談の相手、連絡の用件によって分かれます。そこを整理しないまま電話に出ると、必要以上に不安になったり、反対に軽く考えすぎたりしがちです。

 この記事では、示談の後に警察から連絡が来る主な経路と、連絡を受けたときに確かめることを扱います。示談金を払った後に被害届を出された場合の合意の効果は【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続で、被害届が受理された後の流れは【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間で扱っていますので、あわせてご覧ください。

示談しても、警察から連絡が来ることはある

示談は当事者の合意で、捜査を止める効力はない

 示談は、当事者が互いに譲り合って争いをやめる合意で、法的には和解契約にあたります(民法695条)。合意の効力が及ぶのは当事者の間であり、捜査機関の判断まで拘束するものではありません。

 風俗トラブルで問題になりやすい不同意性交等罪(刑法177条)や不同意わいせつ罪(同法176条)は、告訴がなくても起訴できる罪です。そのため、示談書に「被害届を出さない」「処罰を求めない」と書かれていても、それだけで警察が事件を扱えなくなるわけではありません。また、警察が捜査をした事件は、原則として検察官に送致することとされています(刑事訴訟法246条)。すでに捜査が始まっていた事件では、示談が成立した後も、送致に向けた手続として連絡が来ることがあると考えておくのが現実的です。

それでも示談が意味を持つ場面

 示談に意味がないというわけではありません。検察官は、犯人の性格や境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況を考慮して、起訴しないことができるとされています(刑事訴訟法248条)。被害の回復や、被害者が処罰を求めない意思(宥恕)は、この「犯罪後の状況」として考慮される事情です。

 また、届出の前に女性本人との間で示談が成立し、本人が届出をしないまま終わる場合には、警察が事件を把握する機会自体が生じないことも少なくありません。示談の後に連絡が来るかどうかは、示談の効力そのものよりも、事件が警察にどう伝わったか、あるいは伝わっていないかで決まる面が大きいといえます。示談が成立しても処分が残る理由は示談が成立しても処分が残る場合|示談=不起訴ではない理由で詳しく説明しています。

示談の後に連絡が来る主な経路

 示談の後に警察から連絡が来る場面は、大きく分けると次の4つです。

経路連絡の用件として考えられること確かめたい点
示談の前から警察が事件を把握していた示談の内容の確認、事情聴取、送致に向けた調書の作成現場に警察官が来たか、被害届が出されていたか
示談の相手が店だけだった女性本人の申告にもとづく事情聴取示談書に本人の名前と意思が書かれているか
示談の後に話が変わった処罰を求める意思の表明、約束の不履行を理由とする届出支払いを約束どおり終えているか、追加の要求を断っていないか
店や別の事件の捜査で名前が挙がった参考人としての事情聴取自分の件として呼ばれているのかどうか


示談の前から、警察が事件を把握していた

 現場で店や女性が110番をして警察官が来ていた場合や、女性が被害届を出した後に示談をした場合が典型です。このとき警察は、示談の有無とは別に、事件の経緯を記録し、検察官に送るための手続を進めます。示談書の写しを提出した後に、内容の確認や事情聴取のために連絡が来ることもあります。

 この場面での連絡は、示談が効かなかったことを意味するものではありません。示談書は、検察官が処分を判断する際の資料として扱われます。

示談の相手が店だけで、女性本人の意思が書面にない

 風俗トラブルでは、店の担当者が交渉の窓口となり、店との間で示談書を作ることがあります。しかし、被害を申告し、告訴するかどうかを決めるのは、被害を受けたとされる女性本人です(刑事訴訟法230条)。示談書に本人の名前がなく、本人が処罰を求めないことも書かれていない場合、店との合意だけでは、本人が後から警察に相談する道は閉ざされていないことになります。

 店が女性に代わって示談交渉をすることには、弁護士法72条との関係で問題が指摘されることもあります。詳しくは店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点をご覧ください。

示談の後に、約束の履行や処罰の意思をめぐって話が変わった

 分割払いが途中で止まった、示談の後に追加の金銭を求められて断った、といった経過の後に、女性や店が警察に相談することがあります。また、いったん処罰を求めないとした女性が、後から気持ちを変えることもあり得ます。

 宥恕の撤回については示談が成立した後に被害者が処罰を求めた|宥恕の撤回はできるのかで、分割払いの途中で支払いが難しくなった場合は【風俗トラブル】分割払いの途中で払えなくなった|店への連絡と再交渉で扱っています。

自分の件ではなく、店や別の事件の捜査で名前が挙がった

 利用した店が摘発された場合や、別の客の事件で店の記録が調べられた場合に、予約の履歴などをもとに連絡が来ることがあります。店側が弁護士でないのに客との示談交渉を行ったとして逮捕されたという報道もあり、客が示談の経緯について話を聞かれる場面も考えられます。

 この場合、最初は参考人として話を聞かれることが多いものの、話の内容によっては自分自身の行為が問題になることもあります。【風俗トラブル】別の客の事件で自分の名前が挙がった|芋づる式に連絡が来る仕組み、【風俗トラブル】参考人として呼ばれた|客が被疑者に切り替わる分岐点もあわせてご覧ください。

連絡が来たときに、最初に確かめること

相手が本当に警察か、どの署の誰か

 電話を受けたら、警察署名、担当の部署(係)、担当者の氏名を控えます。示談をめぐるやり取りが続いている状況では、警察を名乗る電話であっても、念のため確かめておく方が安心です。不安があれば、その場で話を進めず、警察署の代表番号を自分で調べて掛け直し、担当者につないでもらう方法があります。

何の件で、どの立場で呼ばれているのか

 いつ、どの店の件についての連絡か、自分は被疑者として話を聞かれるのか、参考人としてなのかを確かめます。立場によって、その後の流れも準備の内容も変わるためです。警察が詳しい説明をしないこともありますが、尋ねること自体は差し支えありません。

電話口で事件の中身を話し始めない

 電話の段階で、行為の内容や示談の経緯を詳しく説明する必要はありません。出頭の日時についても、仕事の都合などを伝えて調整を求めることができます。逮捕や勾留をされていない人は、出頭を拒み、また出頭後いつでも退去することができるとされています(刑事訴訟法198条1項ただし書)。もっとも、連絡に応じない状態が続くと、逃亡のおそれなどを判断する事情として考慮される可能性もあるため、日程の調整は誠実に行うことが大切です。

 折り返しの前に確かめておきたいことは「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのことで、取調べでの受け答えについては「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点で説明しています。

手元にそろえておきたいもの

 警察とのやり取りに臨む前に、示談に関する資料を整理しておくと、弁護士に相談する際にも状況を正確に伝えやすくなります。

  • 示談書(合意書)の原本または写し。
  • 支払いの記録(振込の控え、受領証、領収書)。
  • 店や女性とのメッセージ、通話の履歴。
  • 示談の前後に店から渡された書面や、自分が書いた念書の内容。
  • 警察からの連絡の日時、警察署名、担当者名のメモ。


示談書の控えが手元にない場合

 店が示談書の原本を持ち帰り、写しを渡されていないこともあります。その場合は、店に写しの交付を求めるほか、合意した内容を覚えている範囲でメモに残しておきます。【風俗トラブル】示談書の原本を店しか持っていない|控えを求めるべき理由もあわせてご覧ください。

示談書を警察に示すかどうか

 捜査がすでに始まっている事件では、示談書は処分の判断に役立つ資料になります。一方、自分の件として扱われているのかどうかがはっきりしない段階で、示談書を持参して経緯を説明することが適切かどうかは、事案によって判断が分かれます。示談書をいつ、どの範囲で示すかは、連絡の用件を確かめたうえで弁護士と相談して決めるのが安全です。

示談の段階で、後の連絡に備えておけること

女性本人を当事者に含め、宥恕と届出の扱いを書面にする

 これから示談をする方や、示談書を整え直す余地がある方は、女性本人が当事者として合意していること、処罰を求めない旨の文言、被害届や告訴についての取り決め、清算条項が入っているかを確かめます。示談の後の連絡に備えるうえで最も効くのは、誰との間で、何を約束したのかが書面で確かめられることです。本名を明かしたくない事情がある場合でも、代理人を通じて本人の意思を確認する方法があります。示談書に入れる条項は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで整理しています。

連絡が来たときの窓口を決めておく

 被疑者は、いつでも弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条1項)。弁護士に依頼していれば、担当の警察署が分かった段階で、依頼を受けたことを伝え、今後の連絡を弁護士経由にしてもらうよう求めるといった対応がとれることがあります。示談の際に弁護士が関わっていれば、示談書の提出や経緯の説明も、その弁護士を通じて行うことができます。

よくあるご質問

被害届は取り下げたと聞いていたのに、警察から連絡が来ました。話が違うのではありませんか?

 被害届の取下げや宥恕は、捜査を終わらせる手続ではなく、処分を判断する際の事情として扱われます。取下げの後も、送致のための確認や事情聴取が行われることがあり、連絡が来たことだけで合意が守られていないとは限りません。まずは連絡の用件を確かめてください。

示談が成立していても、呼び出しの後に逮捕されることはありますか?

 逮捕には、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由に加えて、逃亡や証拠隠滅のおそれなど逮捕の必要性が求められます(刑事訴訟法199条、刑事訴訟規則143条の3)。示談が成立し、住所や勤務先がはっきりしていて、呼び出しにも応じている場合は、逮捕の必要性を否定する方向の事情になります。ただし、事案の内容によるため、可能性がないとまでは言い切れません。

示談の後、何か月も連絡がありません。もう心配しなくてよいですか?

 連絡がない理由としては、警察が事件を把握していない場合と、捜査が進んでいても連絡の段階に至っていない場合の両方が考えられます。不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意わいせつ罪は12年とされており(刑事訴訟法250条3項)、時間がたってから連絡が来ることもあり得ます。示談書と支払いの記録は、少なくともその期間を見据えて保管しておくと安心です。時効の考え方は風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかをご覧ください。

まとめ


  1. 示談は当事者間の和解契約であり、捜査機関の判断を拘束するものではない(民法695条)。
  2. 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪は告訴がなくても起訴でき、捜査した事件は原則として検察官に送致される(刑法176条・177条、刑事訴訟法246条)。
  3. 示談の成立や宥恕は、起訴するかどうかの判断で考慮される事情になる(刑事訴訟法248条)。
  4. 告訴するかどうかを決めるのは女性本人であり、店との合意だけでは本人の申告を止められない(刑事訴訟法230条)。
  5. 連絡が来たら、警察署名・担当者・用件・自分の立場を確かめ、電話口で事件の中身を話し始めない(刑事訴訟法198条1項)。
  6. 示談書と支払いの記録をそろえ、警察に示す時期と範囲は弁護士と相談して決める(刑事訴訟法30条1項)。
  7. 不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意わいせつ罪は12年であり、記録はその期間を見据えて保管する(刑事訴訟法250条3項)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。示談をした後に警察から連絡があった方、連絡はまだないものの示談の内容に不安が残っている方は、お手元の示談書や支払いの記録をご用意のうえでご相談ください。

キャストの方や店舗の方で、示談の後の手続や警察への対応についてお困りの場合も、ご相談いただけます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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