パパ活から性的関係に至った後のトラブル|対価と同意の評価
「起訴猶予を得るために何を用意すればよいのか」と調べると、示談、反省、再犯防止といった言葉が並びます。ただ、言葉が並んでいるだけでは、自分の事案で何から手をつければよいのかまでは見えてきません。
起訴猶予は、検察官が「この事件は起訴しなくてよい」と判断したときの不起訴処分です。その判断のものさしは法律に書かれています。書かれている以上、集める材料にも置き場所があり、どの場所に入る材料なのかが分かると、いま自分に足りないものが見えやすくなります。
この記事では、条文が並べている要素をひとつずつ分け、そのうち事件が起きた後でも動かせる部分はどこか、そこに入る材料が検察官のところまで届くには何が必要かを整理します。風俗店の利用をめぐるトラブルでひっかかりやすい点にも触れます。
この記事で扱う範囲
はじめに、この記事が前提としている場面を示します。
- 風俗店を利用した側、つまり客側の立場を想定しています。
- 成人同士のやり取りを前提としています。相手が18歳未満である疑いがある場合は扱いがまったく異なるため、早い段階で弁護士に個別に相談してください。
- 事実関係の大枠を争わない場面を想定しています。身に覚えがない、事実が違うという場合は別の道筋になり、この記事の内容はそのままは当てはまりません。
- 発覚を避ける方法や、事実と違う説明の組み立て方は扱いません。ここで述べるのは、起きたことを正確に伝えたうえで何を積み上げられるかという話です。
- すでに逮捕されている場合は時間の制約が大きく異なります。ご家族はまず弁護士へご連絡ください。
起訴猶予は「事実が明らかな場合」の判断だと書かれている
起訴するかどうかを決めるのは検察官です。その裁量の根拠が刑事訴訟法248条で、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる、と定めています。
あわせて見ておきたいのが、検察庁内部の取扱いを定めた事件事務規程です。不起訴の理由は同規程75条2項に1号から20号まで区分されており、20号の起訴猶予は「被疑事実が明白な場合において」という言葉から始まります。同じ不起訴でも、17号の嫌疑なし、18号の嫌疑不十分は、行為者でないことが明らかである、あるいは証拠が足りない、という理由づけです。
つまり起訴猶予は、事実関係を争って勝ち取る枠組みではなく、事実の輪郭が定まったうえで「それでも起訴する必要があるか」を判断する枠組みとして組み立てられています。どの理由での不起訴を目指すのかによって、集めるものも、伝え方も変わります。ここを決めないまま材料だけを増やしても、かみ合わないことがあります。
「人柄がよいから見送る」制度ではない
条文の言葉は「訴追を必要としないとき」です。反省しているから許す、という書き方ではありません。この事件について、いま刑事裁判を求める必要があるかどうかが問われています。
そのため、積み上げる材料も、自分がどれだけつらい思いをしているかではなく、この事件を裁判にかけなくても差し支えないと言える事情かどうかで意味が決まります。被害を訴えている方の受け止め、同じことが繰り返されないと見込める事情、生活の立て直しは、いずれもここに関わってきます。
条文が並べている要素を、動く欄と動かない欄に分ける
248条は複数の要素を並べています。これを分けて眺めると、事件の後の行動で変えられる部分と、そうでない部分がはっきりします。
| 条文の言葉 | 中身の例 | 事件の後で動かせるか |
|---|---|---|
| 犯人の性格 | ふだんの生活態度、同じ行為を繰り返しているか | 限られた範囲で動く |
| 年齢 | 年齢そのもの | 動かない |
| 境遇 | 仕事、家族、住まい、関わってくれる人がいるか | 動く |
| 犯罪の軽重 | 何を行ったか、どの罪に当たるか | 動かない |
| 情状 | 経緯、動機、行為の態様、相手方に生じた事柄 | 動かない |
| 犯罪後の情況 | 謝罪、被害弁償や示談、捜査での対応、再発防止の取り組み | 動く |
積み上げる余地が大きいのは、表の下のほうにある境遇と犯罪後の情況です。反対に、犯罪の軽重と情状にあたる部分は、後から積み上げるものではありません。ここでできるのは、起きたことを正確に伝わる形にしておくことだけです。
材料が「材料」として働くための三つの条件
記録に入る形になっていること
検察官が見ているのは、送られてきた記録です。取調べで話した内容は供述調書に録取され(刑事訴訟法198条3項)、その調書は読み聞かせや閲覧を経て、誤りがあれば増減変更を申し立てることができます(同条4項)。誤りがないと申し立てたときに署名押印を求められますが、拒むこともできます(同条5項)。調書の作られ方そのものについては、別の記事で詳しく扱っています。
弁護人がついている場合は、これに加えて、検察官へ意見書と資料を提出する方法があります。法律に手続として定められたものではなく、実務上行われている運び方です。示談書、受領書、通院の記録、家族の書面といったものは、この形で記録に添えられて初めて判断の材料になります。手元に置いてあるだけの書面は、作った時点では材料として働きません。
第三者が確かめられる形になっていること
「深く反省しています」という言葉だけでは、確かめようがありません。いつ、誰が、何をしたのかが書かれ、裏づけとなるものが添えられていると、読む側は事実として受け取れます。
たとえば、通院を始めたのであれば通院日の分かる書類、家族が関わるのであれば誰がどの場面でどう関わるのかを書いた書面です。気持ちの強さではなく、確認できる事柄の量が効いてきます。
処分が決まる前に届いていること
起訴猶予は検察官の終局処分ですから、その判断が出た後に材料を足しても間に合いません。逮捕・勾留されている場合は身体拘束の上限から締切を逆算できますが、在宅で捜査を受けている場合は締切が見えません。連絡が来ないことは、まだ時間があることの証明にはならないという点に注意が必要です。
また、用意すると決めてから届くまでには工程があります。相手方の意向を確認し、連絡が取れ、条件をすり合わせ、書面にし、提出する。ここまでに日数がかかることを見込んでおいてください。
動かない欄をどう扱うか|正確に伝えることが材料になる
何が起きたかは、後から変えられません。ただ、それが記録の中でどう固定されるかは、伝え方によって変わります。
実際より軽く説明すれば、後から出てきた資料と食い違い、説明そのものの信用が揺らぎます。逆に、聞かれるままに事実より広く認めてしまえば、行っていない部分まで前提になります。どちらも「犯罪後の情況」の評価に跳ね返るという点が見落とされがちです。
風俗店の利用をめぐる事案では、店の料金体系やコースの内容、当日のやり取りの順序、どの時点で認識が食い違ったのかといった事情が、経緯の理解に関わってきます。分かる範囲で時系列を整理しておくと、説明がぶれにくくなります。分からないことは、分からないと伝えて構いません。
「犯罪後の情況」の欄に入るもの
被害弁償と示談
被害を訴えている方との示談は、この欄に入る材料の中で大きな比重を占めます。ただし、示談が成立すれば起訴猶予になる、と法律に書かれているわけではありません。示談の効き方や、成立しても処分が残る場合については、別の記事で詳しく扱っています。
性犯罪として扱われる事案では、相手方の連絡先が本人に伝えられることはまずありません。弁護人が捜査機関を通じて意向を確認し、承諾が得られた場合に弁護士限りで開示を受ける、という運び方になります。
店に払ったお金は被害弁償と同じではない
風俗の事案では、店から違約金や賠償として金銭を求められ、その場で支払っていることがあります。ここで意識しておきたいのは、店に対する支払と、相手方個人に対する被害弁償は、別の相手に対する別の清算だという点です。
店に払った事実がまったく無意味になるわけではありませんが、相手方本人への弁償として当然に評価されるとは限りません。誰に、どういう名目で、いくら払ったのかが分かる資料は、金額の多少にかかわらず残しておいてください。
謝罪の気持ちを書面にする場合
反省文や謝罪文は、この欄に入る典型的な書面です。ひな形をそのまま写した文章や、家族が代わりに書いた文章は、読めば分かります。何をしたと認識しているのか、なぜそうなったと考えているのか、これから何を変えるのかが、自分の言葉で書かれていることに意味があります。
相手方に渡せるかどうかは、相手方の意向次第です。受け取りを望まない方もいます。渡せなかった場合でも、申し入れをした事実と時期は残ります。
受け取ってもらえないときに残る手段
示談に至らない場合の手段としては、被害弁償の申出、弁護人が金銭を預かる形、贖罪寄付などがあります。それぞれ意味あいと限界が異なり、風俗の事案では相手方の氏名や住所が分からないために使いにくい手段もあります。この点は別の記事にまとめています。
「性格・境遇」の欄に入るもの|再発防止は誓いではなく設計
「もう二度としません」という言葉は、それだけでは確かめようがありません。この欄で読まれるのは、同じ状況が来たときに同じ行動を取りにくくなっているかです。
そのためには、きっかけを分解しておくと組み立てやすくなります。深夜に一人で飲んでから店に向かう流れだったのか、現金やカードをすぐ使える状態にしていたのか、特定のアプリやサイトを見る習慣があったのか。きっかけが具体的であるほど、対応策も具体的になります。
周囲の関わりを形にする
家族や同居している方が生活に関わる場合、その内容を書面にしておくと、境遇の欄に入る材料になります。誰が、どの場面で、どう関わるのかが具体的であるほど読みやすくなります。頼れる家族がいない場合でも、勤務先の上司や支援団体に相談する道があります。
必要に応じて専門の相談につなぐ
同じ行為を繰り返している自覚がある場合、専門の相談機関や医療機関につながることを検討する余地があります。当てはまるかどうかは事情によりますが、当てはまる場合には、相談や通院の事実が分かる書類がそのまま材料になります。
誰が書いた書面が、どの欄に効くのか
同じ内容でも、書いた人によって位置づけが変わります。
| 書面 | 主に効く欄 | 留意点 |
|---|---|---|
| 本人の反省文・謝罪文 | 犯罪後の情況 | 自分の言葉で書かれているか |
| 家族の上申書・身元引受書 | 境遇 | 関わり方が具体的か |
| 勤務先の書面 | 境遇 | 勤務先に事情を伝える判断が伴う |
| 相談・通院の記録 | 性格・境遇 | 当てはまる事案かどうかを先に検討する |
| 相手方からの書面 | 犯罪後の情況 | 相手方の意向が前提で、こちらでは作れない |
| 弁護人の意見書と添付資料 | 全体 | 法定の手続ではなく実務上の運用 |
この表を見ると、自分の側だけで用意できるものと、相手方の同意がなければ成り立たないものが混ざっていることが分かります。前者は今日からでも着手できます。
材料にならないもの・逆に働くもの
良かれと思って行ったことが、評価を下げる方向に働くことがあります。
- 相手方を自分で探して連絡を取ること。源氏名やSNSから調べる行為は、それ自体が問題として扱われることがあります。
- 端末を初期化する、データを消す、機種変更するといった行動。証拠を隠したと受け取られる余地が生まれます。
- 事件についてSNSや掲示板に書き込むこと。本人が特定される形でなくても、記録としては残ります。
- ひな形をそのまま写した反省文や、家族が代筆した文章。
- 説明の内容が場面ごとに変わること。書面と供述が食い違えば、両方の信用が下がります。
- 店側の担当者に言われるまま書面に署名すること。その書面が後で前提として使われます。
風俗の事案で特にひっかかりやすい点
相手方の名前が分からない
源氏名しか知らないという状況は珍しくありません。連絡先が本人に伝えられることはなく、弁護人を通す以外に接点をつくる方法がないのが通常です。逆に言えば、窓口を弁護人に移すことが、材料を積み始めるための入口になります。
端末に残っている記録
同種のやり取りや画像が端末に残っている場合、繰り返しの有無という形で性格の欄に関わってきます。だからこそ消したくなりますが、消した痕跡は残ることが多く、消したという事実自体が別の評価を招きます。取扱いは弁護人と相談してください。
店の窓口と相手方本人の意向は別
店の担当者が話をまとめようとしてくることがあります。担当者が弁護士でない場合には、そもそも代理して交渉できるのかという問題が生じますし、店との間で話がついたとしても、相手方本人との関係が清算されたことにはなりません。
起訴猶予は「なかったこと」になる処分ではない
起訴猶予となれば刑事裁判は開かれず、刑罰も科されません。ただし、事実そのものが否定されたわけではないという点は押さえておく必要があります。
条文の作りとしても、被疑者に対しては請求があったときに公訴を提起しない処分をした旨を告げると定められており(刑事訴訟法259条)、理由の告知について定めているのは、告訴人などに向けた261条です。処分の内容が自動的に詳しく通知される仕組みではありません。前科と前歴の扱いや、後から再び起訴される可能性については、当事務所の別の解説記事で扱っています。
また、刑事の処分と民事の請求は別のものです。起訴猶予となっても、金銭の請求が当然に消えるわけではありません。
いまの段階でできること
何から進めるか迷う場合は、次の順序で整理すると考えやすくなります。
- 分かる範囲で時系列を書き出す。日付、場所、やり取りの順序、金銭の動きを分けて書きます。
- 手元の資料を消さずにまとめる。予約画面、明細、店とのやり取り、届いた書面などです。
- どの理由での不起訴を目指すのかを、弁護士と最初に確認する。
- 自分の側だけで用意できる材料から着手する。反省文、生活面の見直し、周囲の協力などです。
- 相手方への連絡や店との金銭のやり取りは、窓口を一本化してから行う。
まとめ
- 起訴猶予は、事実の枠が定まったうえで訴追の必要性を判断する枠組みとして定められています。
- 条文が並べる要素のうち、事件の後で積み上げられるのは、主に境遇と犯罪後の情況です。
- 犯罪の軽重や情状にあたる部分は積み上げるものではなく、正確に伝わる形にすることが役割になります。
- 材料は、記録に入る形になり、第三者が確かめられ、処分が決まる前に届いて初めて働きます。
- 書面は名義によって位置づけが変わります。自分の側だけで用意できるものから着手できます。
- 店への支払と相手方本人への被害弁償は、別の清算です。資料は残しておいてください。
- 自分で相手方を探す、データを消すといった行動は、評価を下げる方向に働くことがあります。
- 早く動いたからといって望んだ結果が約束されるわけではありませんが、選べる手段が残っているうちに選べるという違いは残ります。
当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしています。捜査の連絡が来ている、店から請求が届いている、どこから手をつければよいか分からないという段階でも構いませんので、お早めにご相談ください。


