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林光輝

心のケアを含めて自毛植毛術専門に取り組む医師

林光輝(はやしこうき) / 医師

紀尾井町クリニック

コラム

女性の自毛植毛

2023年12月21日

テーマ:自毛植毛

コラムカテゴリ:医療・病院

 女性で薄毛に悩まれている方はたくさんいらっしゃいます。しかしながら、男性型脱毛症(AGA)と比べると、女性型脱毛症(female pattern hair loss, 以下FPHL)は未だ社会的に認知されておらず、そのためどのような治療法があり、どこに相談すれば良いか迷われている方が多いです。
 なお、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」において植毛術は、男性型脱毛症はB、女性型脱毛症はC1に分類されており、「男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧める。女性型脱毛症には自毛植毛術を行ってもよい。」となっています。


【FPHLの原因】

 AGAの原因がはっきりしているのに対し、FPHLの薄毛や脱毛の原因は未だはっきりとは分かっていません。男性と同様にジヒドロテストステロン(DHT)が関与している脱毛も一部あるようですが、全体としてはそれ以外の要因の影響が大きいと言われています。
 遺伝的要因やホルモンバランスの変化(特にエストロゲンの低下)、喫煙、ストレス、栄養不良(過度なダイエットによる鉄欠乏や亜鉛欠乏、ビタミンD不足など)、内分泌疾患や自己免疫疾患などが関与していると言われています。これらの要因は、髪の毛の健康に影響を与え、ヘアサイクルが変化したり、髪の毛が細くなり、抜け落ちやすくなるなどして、頭皮が透けて見えてしまったり、生え際が後退してしまうなどの症状を引き起こすことがあります。これらの要因のうち、特にホルモンバランスの変化に伴う脱毛を指してfemale androgenetic alopecia(以下FAGA)と呼ぶこともあります。
 また牽引型脱毛と言って、髪をきつく束ねることにより頭皮の血流が悪くなり、長期間牽引されていた部分が薄くなってしまうこともあります。

【FPHLの治療】

 男性のAGA治療として第一に薬が挙げられます。男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)が毛根に作用するのをブロックするフィナステリド(=プロペシア)、デュタステリド(=ザガーロ)、そして頭皮の血流を促進するミノキシジル外用薬です。このうちフィナステリド、デュタステリドに関しては、女性を対象にした臨床試験で効果が認められなかったことから、女性に対する適応がありません。
 よって女性が使用できる薬剤はミノキシジル外用薬のみとなっており、男性に比べると薬が少ないのが現状です。
なお、ミノキシジル外用薬は男性用が5%、女性用が1%と濃度が異なりますので、使用する場合は必ず女性用のものを選んでください。
 FPHLに対する薬剤以外の治療として自毛植毛、LED/低出力レーザー治療などがガイドラインに挙げられています。その他最近ではPRP(多血小板血漿)やミノキシジルの局注などを行うクリニックもあります。

【FPHLに対する自毛植毛】

 ミノキシジルの外用薬で満足な効果が得られなかった場合には自毛植毛が選択肢となってきます。女性に対する自毛植毛は男性の手術と比べて、細かい手技や使用する薬剤濃度などに若干の違いはあるものの、おおまかな流れは同じです。
 FPHLの場合、どこか1ヶ所というより、全体的に髪の毛が細くなって頭皮に透け感が出てくることが多いため、移植株の配分をどうするかのプランが非常に重要となります。全体に濃く植毛するとなると面積が広がり、必要な株数が多くなりすぎることがあるからです。そのためカウンセリングで、患者様がどこを一番気にしているのか、普段はどのような髪型が多いのかなどを踏まえた上でデザインを作成します。
 女性に対する自毛植毛でも、ドナーの採取方法はFUTとFUEを選ぶことができます。FUTの場合は採取するドナー範囲のみバリカンを入れるため、術後はほとんどバリカン幅が残りません(後頭部に、横に走る傷は残ります)。FUEの場合はドナーを採取する範囲全体にバリカンを入れるため、株数が多い手術では術後に髪が生え揃うまでは部分ウィッグなどで対応されることが多いです。(刈り上げない方法を採用している医療機関もございますが、費用はより高額になる傾向があるようです。興味のある方はご確認ください)
 これらの術式の詳細に関しては当院の過去ポストをご参照ください。

【手術痕に対する自毛植毛】

 女性でカウンセリングにいらっしゃる理由としてFAGAに次いで多いのが手術痕の修正です。フェイスリフトなどの手術後に、生え際付近の髪の毛が抜けてしまい、そこだけ無毛部になってしまうことがあります。この部分は毛根がなくなってしまっているため、薬剤などのその他治療は適応がなく、自毛植毛の適応となってきます。
 通常は移植面積がそれほど広くないため、必要な株数も少なくて済みます。

【まとめ】

 FAGAを始めとするFPHLの治療として、自毛植毛は一つの選択肢となります。またFAGA以外でも、手術痕や火傷、抜毛症などによる無毛部にも効果があります。
 女性の薄毛に対する悩みは男性のそれに比べ、まだ社会的に認知されているとは言い難いところがあり、その治療法に関しても情報がなかなか得にくい現状があります。その一助になればと今回の記事を作成しました。悩まれている方は是非一度専門のクリニックへ相談していただければと思います。

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