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林光輝

心のケアを含めて自毛植毛術専門に取り組む医師

林光輝(はやしこうき) / 医師

紀尾井町クリニック

コラム

自毛植毛とは

2023年8月3日 公開 / 2024年3月21日更新

テーマ:自毛植毛

コラムカテゴリ:美容・健康

 自毛植毛とは、AGA(男性型脱毛症)に対する効果的な治療方法の一つで、現在世界中で広く普及しています。2015年のデータでは、世界中で39万件以上の自毛植毛術が行われており、現在はさらに増加していると思われます。性別の内訳としては男性85%、女性15%と、男性が多いですが、女性の方も受けられています。本邦においては、日本皮膚科学会が発行する「男性型及び女性型脱毛症診療ガイドライン」において、推奨度B(=行うよう勧める)と位置付けられています。
 自毛植毛は、後頭部や側頭部などのドナーエリアと呼ばれるAGAが起こりにくい部位から健康な毛髪を採取し、その毛髪を薄毛が気になる部分に移植することで、自然な髪の毛の再生を促す医療行為です。頭部だけでなく、眉毛やひげ、もみあげなどにも移植可能で、AGA以外にも、事故の傷痕や手術痕、火傷などによる無毛部などを修復する場合にも有効です。



自毛植毛の方法は大きく2通り

 現在の自毛植毛手術では、毛髪の採取方法として、一般的にはFUT(follicular unit transplantation)およびFUE(follicular unit extraction)という2つの方法のいずれかで実施されます。(併せて実施される場合もあります)
 FUTでは、後頭部のドナーエリアから帯状に皮膚を切開し、取り出した皮膚組織から個々の毛包を分離します(この採取した毛包を「株」と呼びます)。一方、FUEでは特殊な器具を使用して株を1つずつ、くり抜くようにしてドナーエリアから採取します。
 そして、移植する部分に小さな切開(スリット)または穴(ホール)を作成し、ドナーエリアから採取した株を植え付けます。株の植え付けは、自然な見た目を実現するよう髪の成長方向や角度に合わせて慎重に行われます。

FUT  
FUE
 手術後、スリットやホールには一時的な傷跡が残りますが、通常は数日から数週間で治癒します。また、株を採取した箇所(=後頭部から側頭部)には、FUTであれば水平に走る線状の傷痕が1本、FUEであれば米粒大程度の傷痕が、採取した株数分残ります。
 移植された株はしばらくの間休止期に入り、数週間後に成長を始めます。成長サイクルに従って、植毛された毛髪は頭皮に定着し、およそ1年後に自然な髪の毛と同様の外観を得ることができます。効果が出るまで1年かかるということは、悪く捉えれば「結果が出るまで時間がかかる」となりますが、良く捉えれば「見た目が急激に変化せず、徐々に変化するため自然に見えやすく周囲にもバレにくい」ということになります。但し体質等によって効果を感じられる時期や傷痕の程度は異なってまいりますので、その点は十分ご注意ください。

自毛植毛のメリット・デメリット

 自毛植毛のメリットは、自分自身の毛髪を使用することで、自然な見た目や感触を実現できる点です。また、移植された毛髪はほぼ生涯に渡って生え続ける事が期待でき、そのための定期的なメンテナンスや特別なケアの必要はなく、手術以外での追加の手間や費用はかかりません。
また、個人の薄毛や抜け毛の状態に応じてカスタマイズできるというメリットもあります。医師との相談のもと、髪のラインや密度を調整することが可能です。これにより、個々の状態やご希望に合わせた最適な結果を期待することができます。そして何よりも大きいのが、気持ちの面でもポジティブな変化が期待できることでしょう。
 一方デメリットとしては、株を採取した部分に傷跡が残ること(FUTであれば水平に走る線状の傷痕、FUEであればくり抜いた米粒大の傷痕。通常、坊主やスキンヘッドにしなければ、頭髪で隠れて見えません)、また医療保険適応外の自由診療扱いとなるため治療費用が比較的高額であることなどが挙げられます。

自毛植毛治療で留意しておくこと

 このように、自毛植毛は薄毛で悩んでいる方にとってはとても魅力的な治療選択肢の一つです。
ただし、自毛植毛にはいくつかの注意すべき点があります。
【1】進行するAGAを見据えた上でのデザイン・施術を行う必要がある
【2】手術にはリスクや合併症が存在し、個人の状態によっては適さない場合もある
【3】かつらや人工毛植毛とは違い、手術後に効果が感じられるまでには時間がかかる
【4】FUT及びFUEいずれの方法を行うにしても、毛根を採取した箇所には線状又は採取した株数分の米粒大の採取痕が残る(2~4cm程度髪を伸ばせば隠す事が可能)
【5】手術費用は植毛方法及び患者の状態や施術の範囲によって異なるが、保険適応外の自由診療となる為、治療費は比較的高額である
【6】自毛を使うため採取できる株数には限界がある。限りある資源をどのように活用していくのかを慎重に検討する必要がある(広範囲に植毛すると密度不足になる可能性があるなど注意が必要)
【7】仕上がりや移植先の毛根定着率は手術を担当する医師や医療スタッフの医療技術や自身の体質による
【8】そのほか、手術後の経過中にいろいろな症状や副作用が出現する可能性がある

 これらを踏まえたうえで、手術の前に、医師と費用や予想される現実的な治療結果について詳細に話し合うことが重要です。また、手術をお受けになる際は必ずメリットだけではなくデメリットや症状・副作用に関する注意事項の説明を受け、十分にご理解された上で手術に臨んでいただくようご留意下さい。

最後に

 自毛植毛は、長い歴史がありこれまで世界中で多くの方々が受けられてきた治療法です。多くの方々にとって自信と満足感をもたらす効果的な解決策となる可能性があります。しかし、最適な結果を得るためには、個別の状況に基づいた適切な評価、手術計画、医療技術等が必要です。また、情報収集にインターネットはとても便利ですが、そこで得られる情報は玉石混交で、中には明確な誤りも散見されるため、注意が必要です。
 そのため自毛植毛を検討している場合は、可能であれば複数の医師との相談を通じて情報を収集し、自身に最適な選択肢を見つけていかれることをお勧めします。
※ 公式サイトの「自毛植毛とは」にてさらに詳しくご紹介させて頂いております。

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